結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月29日(水曜日)

日本スーパーマーケット協会会長・川野幸夫さんの「土をなめるくらいの店長」

昨日は夕方、
地方都市のスーパーマーケット店回り。
超のつく有力企業でも、
地方の雄の企業でも、
年末商戦としては驚くほど客数が少なく、
しかも売れていない。

まったくの普通の売場で、普通の状態。

有力企業は店の側も、この時期は、
年末を意識せず、紅白の腰巻など施さず、
普通の火曜日とした方がいいといった態勢。

やはり、「ギリギリ消費」が鮮明だ。
それが厳しい現実となる。

総務省発表の二つの指標。

第1に、11月の家計調査。
1世帯当たりの消費支出が前年同月比マイナス0.2%で3カ月連続減少。
1カ月平均支出金額は28万4212円。
物価変動分を調整した実質消費支出はマイナス0.4%。

第2は、11月の完全失業率。
季節調整値が5.1%。
これは前月の10月から動かず。

完全失業者数は318万人で、この1年間に13万人減少。
就業者数は6252万人で、こちらは1年間に8万人の減少。

一方、厚生労働省発表の11月の有効求人倍率は、
10月よりわずかだが0.01ポイント上がり、0.57倍。
これは7カ月連続向上。

家計調査や失業率、有効求人倍率は、
芳しくないまま、停滞気味。

㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんの言うとおり、
「世の中が明るくない」ことこそ最大の問題で、
小売業・サービス業はなんとかこの明るさを、
表現したいし、主張したい。
それが存在意義だと認識したい。

昨日は、午前中、
カスタマー・コミュニケーションズ㈱の今年最後の役員会。
その後、㈱プラネット本社を訪れて、
玉生弘昌社長、井上美智男副社長と懇談。
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今年も、お世話になりました。
ありがとうございました。

プラネットは2011年1月1日から、
またまた料金の値下げに入る。
プラネットのシステムを利用する製造業・卸売業・小売業にとっては、
有難いこと。

さて、ブログは昨日の続き。
東京・日本橋の日本スーパーマーケット協会。
3団体合同のスーパーマーケット販売統計発表記者会見。
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3団体とは、
社団法人新日本スーパーマーケット協会(横山清会長)
日本スーパーマーケット協会(川野幸夫会長)
オール日本スーパーマーケット協会(荒井伸也会長)

今回は日本スーパーマーケット協会専務理事の大塚明さんの発表。
いわば2010年の総括と2011年の取り組み。
そこへ川野幸夫協会会長がご登場くださって、
一気に盛り上がった。
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小売業界に大転換が始まった。
その中で、来年はどうするか。
その取り組み事項とミッション。
第1に、スーパーマーケットとして「食を創り、食を守る」
これを大きなミッションとして、闘う必要がある。

第2に、「買い物難民」にスーパーマーケットとして、どう対応するか。
ビジネスモデルそのものが、顧客を不幸にしたり、不便にしたりしている。
スーパーマーケットは毎日の食に関して、
多くの消費者に不満足を与えず、
そのうえでいかに利益を出すか。

第3のミッションは、製配販三層のコラボレーション。
製造業・卸売業・小売業の間の無駄をいかに省いていくか。

さらに環境問題、容器リサイクル法見直し問題、消費税、最低賃金問題など、
山積している。

第3の問題に関しては、
「消費財流通業界における『製配販』の取組」というプロジェクトが始まっている。
川野会長がこれに参画。

主催は経済産業省、流通経済研究所、流通システム開発センター。
製造業5社・卸売業4社・小売業6社の合計15社で、
ワーキングがスタートした。
スーパーマーケットからはライフコーポレーションとヤオコーが参画。
総合スーパーからはイオンリテールとイトーヨーカ堂
ドラッグストアのマツモトキヨシとコンビニのローソン
製造業は、味の素、花王、キリンビール、資生堂、P&G。
そして卸売業は、あらた、国分、菱食、Paltac。

そうそうたるメンバーが参画し、
トップが自ら参加して議論が進みつつある。
代理出席はほとんどない。

ここでは、大きく5つの問題が議論されている。
1.リベート、センターフィー問題
2.返品問題
3.物流問題
4.クレート等の標準化問題
5.流通BMS問題

川野さんは述懐する。
『製配販運命共同体』の認識がなければ、
こういった試みはうまくはいかない」
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「真剣に、実のあるものにしていこうと考えている。
分科会で各社事務局が発言し、詰めているから、
それなりに意味が出てくる」

インフラは共有して、
それぞれはサービスと商品で闘っていく。
そのためのプラットフォームづくりが必須。

「モノ離れの今、まだまだモノを売ろうとしているが、
小売り、卸、製造業一体となって、
顧客との距離を短くしていきたい」

大塚専務理事の言葉。
「35年前、白菜はふた束売りが主流だった。
それがひと束売りになり、
今は半分、4分の1カットが出てきた。
そのうちざく切りも売るようになるに違いない。
つまり、お客に近づいていくことが必要です」

このあたりから記者の質問が出る。
「都市型小型店とコンビニの競争はいかに?」
大塚さんが答える。
「生まれてこのかた『コンビニの客』というお客さまも増えてきた。
スーパーマーケットの最終の敵はコンビニだと思う。
マスではなく個をターゲットにし、
すぐに使うものをターゲット商品にすれば、
当然、ぶつかり合う」
この認識は正しい。

「いま、卸が強いから、
小売業が強くなっていくには卸機能をどれだけ上げていくか。
チェーンストアでも本部は儲かっているし、
卸企業も統合しつつ、儲かっている」

川野幸夫さんの今年への感想。
「足掛かりとして、突破口として、
参議院選では清水信次さんに当選してもらいたかった。
まだまだ小売業は味噌っかすで、
失業のバッファー程度にしか考えられていない。
それを変えていくのが今の経営者の役割だし、
若い連中がこの業界に入ってこられるような、
足掛かりをつくっていけたらいいなと思っている」

「私たちの意識がまだ高くない。
どうしても当選してもらう、
なぜ受かってもらうか、の認識がない。
だから運動がうまくいかなかった。
小売業は隣同士で戦っている。
個々の競争の問題に頭が向いて、
業界の認識になっていない」

「去年は『安売り大会』だった。
しかし今年も『安売り大会』から抜け出られなかった。

ただし日本人は舌が肥えている。
おいしさを求めている」

「小売業は買い物意欲、消費意欲を、
いかに高めていくかが仕事。

それをいかに実現するか。
そのために知恵や工夫をする」

「わが社も含めて、それができていないから、
行ったり来たりしている」
「『スーパー』の本家は『スーパーマーケット』。
一般マスコミを含めて、
われわれの代表は『総合スーパー』だと思っているが、
それは違う」

「小売業はお客様に伝えていくことが役目だ。
わが社は雪印問題のときにも、
全工場が悪いわけではないという立場をとった。
そうするとお客さんからは、叱られる。
しかし伝えることは伝えていかないと、
小売業の役目は果たせない」

「原材料に関しては、買い負けしている。
日本そのものがクラッシングして、
ハイパーインフレとなる危険性がある。
その時にどう対応すべきか。
協会として考えていかねばならない時期に来ている」

「農業問題一つとってみても、
生産者は、だれが消費するかを意識せずにつくってきた。
しかし小売業もだれがつくっているか、
どうつくっているかを意識化しなければならない。
農家の方にあったとき、
小売業の店長がその畑に行って、
土を舐めるくらいでなければ、
農業者は信用しない、
と言う。
あなたたちは汗水たらしてつくってくれている。
私たちがその価値を認めなければ、
相手は本気になってくれない」

「商品やサービスについて、
もっと真剣に、本気になって進めていかないと、
地産地消もうまくいかない。
土を舐めるほどの店長がいる店では、
互いに信頼している農家が、
1年間に千数百万円分もつくっている」

「お客の情報が生産者に伝わっていかなかった。
生産者の情報は生活者に伝わらなかった。
その意味でも小売業の果たすべき役割は大きい」。

最後は川野さんの一人舞台だった。

「12月後半、11日かけて全店を回った」

川野さんは、満足そうに語った。
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私は言った。
「年末商戦は小売業の従事者にとって無上の喜びがあります。
それは商売の神様がすべての商人にくれるご褒美です」

川野さんは答えた。
「私は店を回って、年末は通信簿だと言ってる」

私は言った。
「だからヤオコーは成績がいいんだ」

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記者会見が終わると、乾杯して、懇親。
日本スーパーマーケット協会・大塚明専務理事と。
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オール日本スーパーマーケット協会・松本光雄専務理事と。
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そして新日本スーパーマーケット協会・島原康浩事務局長と。
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日本スーパーマーケット協会事務局長の江口法正さんと、
オール日本スーパーマーケット協会の統括マネジャー、中村伸一郎さん。
事務方として今年一年、お疲れ様でした。
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最後に、日経新聞消費産業局次長・白鳥和生さんと。
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良い記者会見と記者懇談会だった。

「土を舐めるくらいでないと信じてもらえない」

印象に残る言葉だった。

皆さん、ありがとうございます。
来年もよろしく。

<結城義晴>

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