結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年03月18日(金曜日)

クラウゼヴィッツ「戦争論」の「重たい液体の中」

横浜にもどって来て、
牡鹿半島沖を震源とする地震の話を聞くと、
凄く揺れたらしい。

福井にいるとそれは全然わからなかった。
あらためてお見舞い申し上げたい。

日本列島もウクライナと同じように広い。

毎日新聞3月16日の巻頭コラム「余録」
「戦争における行動は
重たい液体の中で
運動するようなものだ。
ただ前進することも
水中では敏捷、正確には行えない」

クラウゼビッツの名著「戦争論」。
クラウゼヴィッツ

「思うにまかせぬ戦場での行動」を、
クラウゼヴィッツは「水中」に喩えた。

ドイツ帝国の基礎となった、
プロイセン王国の軍人。

この「戦争論」が抽象化されて、
経営における競争戦略としても使われる。

クラウゼヴィッツは、
ロシアに侵攻したナポレオン軍が消耗し、
敗退するさまを目の当たりにした。

この「戦争論」では、
戦場で軍の動きを拘束し、
その計画を台無しにする
予想外の偶然や事故の連鎖を、
「摩擦」と呼んだ。

コラムはロシア軍のウクライナ侵攻を、
この「摩擦」だという。

「自ら飛び込んだ水中でもがく
プーチン氏に同情の余地はないが、
より非道な武力行使を
救いのワラと思い込む錯乱が怖い」

同感だ。

会社の経営や店の運営も、
「重たい液体の中での運動」のようになると、
「摩擦」である。

朝日新聞DIGITALに、
ロシアの知識人女性の手記が載っている。

「おかあさんは侵略者の国にいる。
ほんとうだね」

翻訳は太田丈太郎熊本学園大学教授。

「2022年3月9日(水)
私たちは衝撃を受けています。
あぜんとしている。
がくぜんとしている」

「国外にいる息子が電話してきて、
私に言うのです。
おかあさんは侵略者の国、
占領者の国で暮らしているのだね。
そうね、ほんとうだね」

「どんな攻撃も罪悪です。
でもウクライナの人たちは、
実際私たちの親戚で兄弟なのです。
何世代にもわたって
同じ国で一緒に生きてきた」
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「プーチンが言っていることとは
ぜんぜんちがう。
とてもたくさんの親戚や友人たちが
ウクライナにいるのです」

「ヒトラーがキエフを爆撃したことを
私の父は覚えています。
ところが、こんどはプーチンです」

「私たちは今、
解放者の側でなく、
占領者の側にいる」

「ウクライナには、
ロシア人なら誰にでも友人や親戚がいます」

「連絡を取り合い、お互いに
電話をかけあったりしています。
力の及ぶ限り、
彼らのサポートをしています」

「これは私たちの戦争ではない、
私たちは彼らウクライナの味方だ、
ロシアの味方ではないと
証明しようとしているけれど」

「多くの人たちが国外へ去りました、
言論の自由のためにです」

「プーチンに従わず、
反プーチンのデモに
何年も参加してきた私たち自身、
いまとても悪い立場に置かれています」

「私たちは
プーチンにも、

西側にも、
自分自身の良心にも、

いちどきに
たたかれ続けているのです」

「戦争への態度を
表明することすらむずかしい。
戦争を戦争と言うことすらできない。
私たちのプロパガンダ用語では、
今起こっていることは戦争ではなく、
特殊作戦だという……。」

「戦争反対の署名のために
仕事を辞めさせられる。
デモに出れば、こん棒で殴られたうえに
監獄へ入れられる。
フェイスブックに
あからさまなポストをすれば、
これも監獄へ入れられるおそれがある」

「プーチンは
ウクライナばかりでなく、
ロシアをも殺したのです。
精神的にも、
経済のうえでも」

「今日、ロシアからマクドナルドが
撤退すると告知されました」

「マクドナルドには普段、
むしろ軽蔑的に接してきましたが、
ロシアにとってこれは
象徴的な撤退です」

「ロシアに
マクドナルドがやってきたことから、
あたらしい、ポスト共産主義時代が
始まりました」

「最初にマクドナルドが現れたとき、
行列が何キロもできたものです」

1990年1月31日のことだ。
モスクワマクドナルド1号店
「それまで一度もこういうものを
見たことのなかったロシア人は、
ビッグマックや袋に入ったフライドポテトを、
まるで高級フランス料理のように
見なしたものでした」

「マクドナルドの撤退は
象徴的なできごとです。
これはかつての民主的なロシア、
ゴルバチョフとエリツィンの築いた
ロシアの終わりを意味するのです」

マクドナルドも、
イケアもZARAも、
そして最後にユニクロも撤退した。

フードサービスとリテールが、
ポスト共産主義時代を象徴しいていた。
新しい時代をイメージさせた。

ロシアの知識人たちは、
軽蔑的に接していたというが、
その撤退が象徴するものは、
自分自身の良心からもたたかれる時代だ。

昨日、PLANTの成長の話を書いた。
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「成長のスピード」

トップスピードのときに比べて、
今は遅いと感じるとしたら、
「重たい液体の中」にいることになる。

「摩擦」である。

PLANTにかぎらない。
トライアルもベイシアも。

イオンもセブン&アイも。
西友も、ユニー、ドン・キホーテも。

ヤオコーやヨークベニマルも、
万代やサミットも。
オーケーやロピアも。

前に進もうとしても、
正確さも、敏捷さもなくなったら、
それは「摩擦」があるからだ。

柳井正が一番恐れているのは、
この「摩擦」だと思う。

私が企業に接するときに、
一番気にしているのも、
「重たい液体の中の運動」である。

〈結城義晴〉

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