結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年02月23日(火曜日)

デニーズ「個店メニュー」とマック「北のいいとこ牛っとバーガー」

帰国して気づいたが、
ずいぶん日が長くなった。

春の予感。

音たてて木の芽の空の込み合へる
〈朝日俳壇より 岡山県早島町・綾野静恵〉

木々が芽吹いて、見上げると、
視野の中の空が込み合っている。

浅春の雨のひかりを伴へり
〈同 米子市・中村襄介〉

雨の光、いいねぇ。

如月の風凛として空の透く
〈同 北海道音更町・信清愛子〉

しかし北海道ではまだ、
風は凛としている。

これも日本だ。
いいねぇ。

帰国したら新聞の束が届いていた。
中学高校の先輩の記事が載っている。
IMG_7880
野渡和義さん。
ユースキン製薬㈱社長。

讀賣新聞地方版の記事だけでなく、
地元の神奈川新聞では連載記事。

中学高校と器械体操部に属していた。
その3年先輩。

自分のことのように、うれしいなぁ。

さて日経新聞に、
フードサービス業の記事が二本。
デニーズとマクドナルド。

外食産業は食品小売業の水先案内人。
私はそう見ている。

だから食品産業全体で、
ウォッチし続けねばならない。

まず、セブン&アイ・フードシステムズ。
そう、社長は大久保恒夫さん。

3月8日からメニューの個店対応を始める。
全店ではなく4分の1にあたる約100店。

セブン&アイ・ホールディングスは、
セブン-イレブンをはじめとして、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマルなどが、
「個店経営」を標榜している。

それをフードサービスのデニーズで、
本格的に展開しようという狙い。

その意味では、ある時には、
小売業が外食業の水先案内人となる。

「約60種類のメニューから、
来店客のニーズに合うとみた2~6種を選び、
通常のメニューに組み入れられるようにする」

商品台帳から、
自店で売りたいメニューをチョイスする。

全店が全店、完全に、
同じメニューではないということ。

これを「脱標準化」と呼ぶのか、
ポスト・モダンの標準化か。

後者であることは間違いない。

さらに、試みは個店対応を極める。
「東京都内と千葉県内の3店舗では、
現場の店長が開発したメニューを販売する」

東京・江戸川区の篠崎店では、
昨年末に「地域限定メニュー」を販売した。
例えば、地場産の小松菜を使ったパスタなど。
それが1日40~50食の好調な売れ行き。

この2月にはこれを、
江戸川区内の全5店に広げた。

篠崎店では近隣客向けの割引制度も導入。
名づけて「ご近所パスポート」。

これは小売業で言えば、
個店仕入れ、個店開発商品ということになる。

一方、日本マクドナルド。
今月2日から、新メニューを、
「名前募集バーガー」で販売して、
一般消費者から商品名を募集していた。

このメニューは、
ジャガイモやベーコンなどを使用して、
北海道テイストをアピールしていた。

その正式名称が決まった。
「北のいいとこ牛っとバーガー」
「牛っと」は「ぎゅっと」と読ませる。
mc1

15日までに500万件を超える応募。
つまり話題を集めた。

そこで23日から正式名称に切り替えて、
3月中旬まで積極販売する予定。

しかし、しかし。
このハンバーガーの主成分の原産地が、
ちょっと問題になっている。

バンズはアメリカ、カナダ、オーストラリア、
ビーフパティは オーストラリア、ニュージーランド、
チーズは日本の北海道、
ニュージーランド、オーストラリア、
ベーコンはアメリカ、デンマーク、
玉ネギは日本、ニュージーランド、中国、フランス。
ジャガイモは日本の北海道。

マクドナルドはすべてのメニューに、
主要原材料の原産国と最終加工国を記す。

この商品もすべての原材料に、
最終加工国「日本」と表示されている。

それにメニューのキャッチフレーズには、
「バター風味の北海道産じゃがいもと、
濃厚で味わい深い北海道チェダーチーズが
特長のビーフハンバーガーです」とある。

しかしネット上で物議をかもしているのは、
少なくとも「北のいいとこ牛っと」だとすれば、
アメリカ、カナダ、デンマーク、北海道くらいで、
まとめてもらいたかった、という点。

消費者から公募したということもあって、
このネーミングで行くのだろうが、
せっかくの新しい試み、
変な展開にならねばいいが。

昨日の日経新聞『経営の視点』
編集委員の田中陽さんが書いている。
見出しは、
マクドナルド、再生は可能か」

田中さんの指摘。
「同社は商売の基本を
踏み外しているのではないだろうか」

「前期の直営店舗売上高は1425億円。
一方、材料費や労務費などの原価は1431億円。
原価率は100.4%に なる」

「創業者、藤田田氏が陣頭指揮を執り、
低価格化に突き進んだ00年12月期でも
原価率は79.3%。利益は出ていた」

「100%超は上場以来、今回が初めてだ」

原価を割る商売は、
まさに基本を外している。

「旧経営陣末期の12年12月期ごろから
原価率が急上昇する」

「チキンを使ったバーガーで
3倍以上 の価格差をつけたり、
チーズバーガー2個の合計金額が
ダブルチーズバーガー1個の金額よりも
安いことがネット上で『不思議だ』と
話題にもなったりした」

つまり原田泳幸前社長時代から、
商売の基本が外れ始めた。

日本マクドナルドの1月は、
「33カ月ぶりに来店客数が前年を上回」った。

「北のいいとこ牛っとバーガー」にも、
期待満載だった。

1999年に刊行された本が、
『マクドナルド化する社会』
著者はジョージ・リッツア。
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マクドナルド化は英語で、
McDonaldization。

「徹底したマニュアル運用で大成功し、
今や米国のシンボルとして君臨する
ファストフード・レストラン・チェーンを支える諸原理が、
世界中を席巻している」

これがマクドナルディゼーション。
いわば、モダンの「標準化」思想。

それが「ポスト・モダンの標準化」や、
「脱チェーンストア」宣言へと転換したことは明白。

だからデニーズの個店メニュー、
マクドナルドの期間限定メニューとなった。

私は『流通革命論』に対しても、
「テーゼ⇒アンチテーゼ⇒ジンテーゼ」を唱えた。
その「アウフヘーベン」を主張した。
フリードリッヒ・ヘーゲルの弁証法。

つまり商売の基本は、
貫徹されねばならないのだ。

アメリカでは、シェイクシャックが大評判。
DSCN8110-6

インアウトバーガーも大人気。DSCN8539-6
どちらも、なにより美味い。

商売の基本ということならば、
「北のいいとこ牛っとバーガー」が、
美味くて、コストパフォーマンスが高ければ、
売れることにはなる。

〈結城義晴〉


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