結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年07月29日(金曜日)

梅雨明けの「土用丑のウナギ」とC・テイラーの「専制と断片化」

梅雨明けのあとの陽光。DSCN7661-6

ああ、夏だ。

そんな気分がむくむくとわいてくる。

私は自分の人生を、
もう一度やりたいとは思わない。

こんなにしんどい一生、
ふたたび繰り返したくはない。

それでも、
この夏の日差しを浴びるときには、
あの10代に戻りたい。

それだけはつくづくと感じる。

夏という季節には、
そんなパワーがある。

朝日新聞一面『折々のことば』
鷲田清一さんの編著。

「危険なのは
実際に専制において行なわれる
コントロールではなく……
断片化なのです」
(チャールズ・テイラー)

テイラーは1931年、
モントリオール生まれの84歳。
ちょっと変わった政治哲学者。

カナダ・マギル大学、
英国オックスフォード大学などで学び、
新左翼運動に加わったり、
国政選挙に立候補したり。

大学教授になってからは、
ヘーゲルの研究者として名を成す一方、
トクヴィル主義、多文化主義の提唱者でもある。

ちなみにアレクシ・ド・トクヴィルは、
19世紀のフランスの思想家。
「アメリカの民主主義」研究は、
現在でも教科書となるくらいの不朽の名作。

「民主政治は
大衆の教養水準や生活水準に
大きく左右される」
至言。

多文化主義は、
単一文化主義を乗り越えるために考案された。
1970年代にカナダやオーストラリアで、
実際に政策に取り入れられた。

カナダ人のテイvラーは、
この考え方を主導していて、
1991年にハーバード大学から、
「The Ethics of Authenticity」を刊行。
日本ではそれが2004年に翻訳された。
『〈ほんもの〉という倫理――近代とその不安』

『折々のことば』も、
この本からの引用。

鷲田さんはテイラーを、
「成熟した知性」と呼ぶ。

「一つの意思、一つの原理で
社会を管理運営しようという動きより、
人がたがいに義務を負いあう
同じ社会の一員であるという実感が
崩れてゆく過程のほうが
さらに危うい」

ヒトラーのナチス然り、
スターリンのソビエト連邦然り。

ドナルド・トランプ旋風など、
ほんの小さな出来事かもしれないが、
それも然り。

鷲田さんの使う「社会」を、
「会社」と置き換えたときにも、
ぴたり、当てはまる。

「信頼と共感を寄せられる範囲が
知らぬまに縮まって、
人びとの意識が
自分の属する特定小集団の利益を
図るほうに向かうから」

専制的経営者や独裁創業者が去った後の組織。
たとえば現在のセブン&アイにも、
もしかしたら当てはまるかもしれない。

最も危ういのは、
「断片化」である。

月の終わりにいつも届く。
「AJSネットワーク」
オール日本スーパーマーケット協会機関誌。
DSCN7656-6

巻頭は田尻一会長の「会員企業訪問記」
今回は「マルマンストア」「片浜屋」「マルニ」DSCN7658-6
この行動力は、いい。

そして私の連載・第104回。

連載タイトルは、
「応援団長の辛口時評」
応援するから辛口となる。DSCN7659-6
今回のテーマは、
「中国オムニチャネル経済圏の
後進の先進性」

もうちょっと書きたいところだが、
3000字だからねぇ。

長いのは月刊商人舎に書きましょう。

でも、3000字だから、
100回以上も続いているのかもしれない。

今回の最後のフレーズ。
「日本のスーパーマーケット産業が
井の中の蛙状態で留まっていると、
それはガラパゴス産業となってしまう
という危惧を抱いたものです」

井蛙、我田引水なり。

気をつけねばならない。

さて、7月の終わりと、
今週末が近づいた。

明日の土曜日30日が、
今年の土用丑の日。

今日、明日、明後日は、
鰻(ウナギ)一色。

もちろんイオンのように、
鰻が高いからと鯰(ナマズ)を開発するもよし。

ただし鯰は鰻の代用品にあらず。
代替の品のようでいて、
鯰の価値、すなわちその〈ほんもの性〉が、
きちんと主張されて、
売り込まれねばならない。

多様性を実現するために、
差異を追究するもよし。

ただしテイラーが指摘している。
「多様性や差異の強調は、
目的の選択ではなく、
選択それ自体の肯定へと
すべり落ちてゆく」

つまり多様性や差異性が
強調されること自体が、
目的化してきてしまうことの危うさ。

テイラーの視点。
「個人、コミュニティ、市場、国家、
それぞれの存在を、
単一の原理でではなく、
民主的なイニシアティヴの下で、
どう編んでゆくのか。
すべてはそこにかかっている」
(鷲田清一の書評より引用)

ウナギの販売に、
こんな七面倒な議論は必要ないが、
それでも〈ほんもの〉を売るには、
その現代思想のイズムを、
知っておくのも悪くはないだろう。

〈結城義晴〉


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