結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
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2023年09月17日(日曜日)

高度成長時代の「半ドン」と伊藤雅俊&鈴木敏文のトレード・オン

9月の三連休の中日の日曜日。
週末の二連休が当たり前になると、
三連休はありがたい。

それがサラリーマン消費者の気持ちだろう。
その真ん中の日は、
不思議なゆったり感がある。

私の父の時代は、
土曜日は「半ドン」と言って、
半日仕事をし、半日休んだ。

半ドンの「半」はもちろん、
「半分」のこと。

「ドン」は「ドンタク」の略。

博多どんたくの「ドンタク」。
もともとはオランダ語の”ゾンターク”、
「日曜日」あるいは「休日」の意味。

つまり半ドンは、
半分休日。

半ドンという言葉を聞くと、
高度成長期の日本が思い浮かぶ。
よく働きつつ、土曜日は半分休み、
もっともっと豊かになるぞ。
そんな印象がある。

いい時代だったのかもしれない。

学校も土曜日は、
午前中に授業があった。

2002年4月から学校は、
毎週、土曜日が休みになった。

学習指導要領が大きく変わって、
勉強する内容が3割減った。
「ゆとり教育」である。

はたして「ゆとり」は良かったのか。

日経新聞電子版。
編集委員の田中陽さんが書く。
「そごう・西武売却の教訓」

昨日、私はイトーヨーカ堂の、
人員削減の話を書いた。

そうしたら田中さんが、
そごう・西武のことを書いた。

セブン&アイ・ホールディングスの社是は、
「お客様、取引先、株主、地域社会、社員に、
誠実な会社でありたい」

そごう・西武の売却では、
ストライキが決行され、
「幅広いステークホルダーの不評を買った」

この百貨店の売却について、
財界トップたちは批判的である。
日本商工会議所の小林健会頭。
「経営者が従業員のために働けば
ああいうことはあまり起きない」

経団連の十倉雅和会長。
「組合の方々が客、地域社会を
重要な利害関係者として思っていることに
非常に感銘を受けた」

田中さんは言う。
「セブン&アイの取締役会には
耳の痛いコメントだったに違いない。
取締役会は今回の売却を最善の策として
胸を張って誇れるのか」

そごう・西武の経営問題は2016年、
井阪隆一セブン&アイ社長が誕生した直後から、
くすぶり続けた。

「グループ戦略の洗い直しの過程で、
百貨店事業は抜本改革のもと、
縮小を余儀なくされた」

「改装投資は抑えられ、
店舗はくすんでしまった」

その通り。

店は再投資し、
リニューアルしなければ、
業績が落ちる。

百貨店はとくに追加投資が必要な業態だ。

「百貨店だけでなく、
前体制の鈴木敏文会長が主導した
多様な流通企業のグループ化は
少子高齢化時代の消費の取りこぼしを、
防ぐためだった」

鈴木敏文さん。
「私がいつまでもトップでいられるわけがない。
次の世代にいろいろと考えてもらいたい。
そのための企業群だ」
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「井阪体制は、
コンビニへの選択と集中を加速させ、
セブン&アイの経営・管理層に
セブン-イレブン・ジャパン出身者を重用した」

人事の公平性は足りなかったと、
私も思う。

それがどんな結果を招いたか。
「セブンイレブンの業績が
優れているのは間違いないが、
統一した店舗運営を徹底する社風が支配し、
多様性のある柔軟な経営体制にはならなかった」

コンビニのフランチャイズチェーンと、
百貨店、さらに総合スーパー。

それらを抱え込んだ、
コングロマーチャントが、
セブン&アイである。

「将来をにらんだ多様な戦略を培う経営からは離れ、
“高級ブランドはわからない”と
さじを投げるセブン-イレブン出身の役員もいた」

「金太郎あめ的な社員が多く、
その画一性がセブン-イレブンを
強固な企業体質へと押し上げた」

鈴木敏文さんはいつも、
それを危惧していた。

「売却交渉では、
資本の論理の土俵外にいる地元関係者や自治体、
そごう・西武の雇用に配慮が足りなかった」

セブン-イレブン・ジャパンには、
労働組合がない。

イトーヨーカ堂もそごう・西武も、
UAゼンセンに加盟して、
セブン&アイグループ労働組合連合会を組織している。

セブン-イレブン育ちの井阪さんは、
労働運動とは縁のないところにいた。

鈴木敏文さんは、
最初に入った東販という出版卸会社で、
書記長を務めた。
労働問題の専門家だ。
そのうえでイトーヨーカ堂では、
労務担当だった。

この経験の違いは、
今回、大きかったと思う。

田中編集委員。
「”最も頭を下げなくていい会社”
食品メーカーの間では
セブン&アイをこう呼ぶことがある。
日本一の販売量を誇る商品は山ほどあり、
メーカーがこぞって取引を望む。
その空気感を売却時の説明にも
持ち込んでしまっていなかったか」

創業者の故伊藤雅俊さんは、
「驕(おご)りや傲慢さが災いを招く」と説いた。
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田中さん。
「今回の騒動は多くの教訓を残した」

教訓は役立てるものだ。

それが役立つのならばいいのだが。

伊藤雅俊からだけでなく、
鈴木敏文からも離れては、
この会社は駄目になる。

両者をトレード・オンするところに、
セブン&アイの活路がある。

〈結城義晴〉


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