結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年06月05日(金曜日)

テスコ新CEOルイスのダークストア戦略とM&Sのポストモダン戦略

ロンドンに着いて、2日目の朝。
テレビをつけたらBBCに、
この顔が映し出された。
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テスコのCEOデーブ・ルイス。
昨年10月にユニ・リーバから転籍。
正式名称はUnilever N.V./Unilever PLC。
N.V.はNaamloze Vennootschapの略、
PLCはPublic Limited Companyの頭文字。
前者はオランダ語の株式会社で、
後者は英語のそれ。

ユニ・リーバは2本社制を採用している。

日本の西友CEO上垣内猛さんも、
ユニリーバ・ジャパン社長からの転身だから、
多国籍企業のユニリーバは、
人材の宝庫ということになる。

とは言っても、近年、
ユニリーバ全体の経営状態は悪化し、
再建中。

だから人材が外に流れている。

テスコの業績も、この2年、
よろしくない。

今年2月期の決算は、
過去最大の最終損失57億6600万ポンド。
これは約1兆320億円の赤字。

売上高は696億5400万ポンド、
これは前期比1.7%減。

ルイスは語っている。
「 当社の競争力がここ数年で色あせた。
それを反映した決算だ」

しかし昨年の秋、
不正会計の疑いが発覚。
2011年に中興の祖テリー・リーヒーが退任し、
その跡を継いだフィリップ・クラークは、
3年足らずで辞任した。

イギリスでは、ディスカウント旋風が吹き荒れる。
ドイツのハードディスカウンター・アルディ、
そして同じくドイツのリドルが絶好調。

テスコにはイノベーションがなくなっていた。

ルイスは財務再建を大胆に行うとともに、
1000品目の大幅値下げをし、
在庫を25%削減して、
さらに欠品を徹底的に減らす策に出た。

その結果、
顧客満足度は向上し、
シェアが回復しつつある。

ルイスはBBC放送では、
売り場でトマトを手に取って、
その生産から流通、販売までの、
テスコが実現させたイノベーションを、
真摯に語った。

好感が持てる。

その後、朝からセミナー。
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今回は、ゲスト講師を招いた。

ニック・マイルズさん。
IGDアジア・パシフィック地区マネジャー。DSCN2317-5

見た通りのナイスガイで、
通訳を交えて2時間近く、
丁寧にレポートしてくれた。
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テーマは、
英国オンライン食品市場の動向と、
テスコのダークストア戦略。DSCN2329-5
月刊『商人舎』4月号は売り切れたが、
特集は「ネットスーパー! 移動スーパー!!」
その中でセブン&アイのダークストアを紹介した。

オンラインビジネスのための、
プロセスセンターとディストリビューションを、
併せ持った機能だが、
ここにはテスコの工夫がある。

すごい内容で、これは、
ルイス新CEOの新戦略の一つ。

日本で再会することを誓って握手。
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実に今興味深いレクチャーは、
月刊『商人舎』かmagazineで、
私の分析を含めて、紹介する。

その後、1時間ほど、
結城義晴のセミナー。
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ニックさんのレクチャーの解説をして、
それからイギリスの競争の現状を語った。DSCN2379ー55

テスコ、アズダ、セインズベリー、
マークス&スペンサー、ウェイトローズなど、
有力企業の趨勢とアメリカ以上の寡占状態。
その中で我々は何を学ばなければいけないか。DSCN2381-5
アメリカも学ぶ。
イギリスも学ぶ。
ヨーロッパも学ぶ。

そうして、自分で考える。

デーブ・ルイスや上垣内猛が、
ユニリーバから転職して、
すぐに活躍できるのは、
そういった姿勢を持ち続けたからだ。

多くの事象を見て、聞いて、
自分の頭で考える。

ピーター・ドラッカー先生が言う、
「ポスト・モダンの七つの作法」。
その第一の作法が、
「自分の目で見て、耳で聞くこと」

さて、視察。

ホテルからロンドンの中心部を抜ける。
ウェストミンスター寺院。DSCN2385-5
王室の結婚式、葬式、
ほとんどここで行われる。

チャールズ皇太子とダイアナ妃は、
例外的にセントポール大正堂だったけれど。

ビッグベンの前の人ごみ。DSCN2388-5
ロンドンには観光客が、
溢れかえっている。

そしてテムズ川河畔の大観覧車ロンドン・アイ。DSCN2391-5

そして到着しました。
ウェストフィールドショッピングセンター。
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ロンドンオリンピック跡地にできた最新型。

まずは腹ごなし。DSCN2402ー5
Wagamama。

1992年、香港出身のアラン・ヤウが創業。
ロンドンを中心にアイルランド、オランダ、
トルコ、オーストラリア、
そしてアメリカに出店するチェーン。

メニューは「日本風料理」。DSCN2401-5
カジュアルな店内で、
麺や丼、カレーなどを提供する。

しかし日本人の手は入っていない。

このショッピングセンターは、
2つの核店舗を持つ。

一方が、百貨店のジョンルイス。 DSCN2405-5

高級百貨店だが、
大衆化路線を走っている。DSCN2406-5

その1階フロアには
高級スーパーのウェイトローズ。  DSCN2410-5
ジョンルイスの傘下にある企業。

H2Oにおける阪急オアシス、
三越伊勢丹におけるクイーンズ伊勢丹。

百貨店が43店、
スーパーマーケットが336店。
全体の売上高は109億ポンド、
ウェイトローズはその中で65億ポンド。

入口の花売り場。DSCN2426-5

そしてベーカリー。DSCN2411-5

キッチンサービスコーナーと惣菜。DSCN2412-5

その奥に生鮮食品売り場。DSCN2413-5

青果部門も奥にある。DSCN2414-5

クレート陳列。DSCN2415-5
私はこれには疑問を抱いている。
この方式はテスコが開発して、
テレビでルイスCEOが語るように、
目覚しい成果を上げた。

そしてみんな真似をした。

しかしウェイトローズは、
アメリカのホールフーズやウェグマンズのように、
美しい立体陳列をすべきだ。

そうしなければ、
ウェイトローズのポジショニング、
アウトスタンディングにならない。

精肉・シーフードの対面コーナー。DSCN2419-5

ワインは25%offを強調している。DSCN2422-5
つまりこの店、売れていない。

一方の核店はM&S。
マークス&スペンサー。DSCN2431-5
こちらが断然、いい。

マークス&スペンサーは、
ほぼプライベートブランド100%の、
ディスカウントデパートメントストア。

かつて一世を風靡して英国第一の小売業だった。

しかし、その後、低迷。
どんな企業にも成長と低迷がある。

今でも世界50カ国に出店しているが、
国内の建て直しが最大の課題。

そして建て直ってきた。

食品売り場は素晴らしい。DSCN2432-5

地下鉄出入り口の近くに、
店舗の導入口を設けて、
客数はジョンルイスを圧倒している。DSCN2433-5
入口の右手に長いレジがあり、
それの前の通路は、
斜めに切り込まれている。

ポストモダンな店づくりは、
新しいポジションを予感させる。DSCN2434-5

天井も床もアメリカ流。
それがイギリス人にとっては、
斬新なイメージを作り出す。DSCN2436-5

イギリス国内の売上げは、
食品が今や55%、衣料品・住関連が45%。DSCN2440-5

精肉・シーフード・デリは、
対面販売方式とセルフの併用。DSCN2445-5

コンビニエンスフードも、
全てプライベートブランド。DSCN2448-5

花売り場がポストモダンな店づくりに、
見事にフィットしていて、
その向こうはイートインコーナー。DSCN2449-5
アメリカではウェグマンズ、ホールフーズ、
これが当然のごとしだが、
イギリスではM&Sだけ。

ウェイトローズにもこの観点はないし、
テスコやセインズベリーにも薄い。
アズダにはそれがあるけれど。

昔から定評のある衣料品売り場。DSCN2461-5

既存のブランドを刷新して、
2013年からBest of Britishを開発。
ポストモダンの店づくりと相まって、好調。DSCN2465-5
イギリスでも、
イノベーションとポジショニング、

極めて重要な競争与件となっている。

そのあと、テスコ・メトロと、
セインズベリー・ローカルへ。DSCN2506-5
テスコもセインズベリーも、
マルチフォーマット戦略。
その都市型小型店。

いい勉強は続く。

夕食はチャイナタウンの中華。DSCN2518
大満足。

その中で一番は、カニのヌードル。DSCN2520-5
青島ビールと紹興酒で、
10時まで明るいロンドンの夜を、
存分に堪能した。
(つづきます)

〈結城義晴〉

追伸で日本のイベントを紹介。
3日、全国セルコグループトップ会、
2015年懇親会が開かれた。
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全国セルコチェーンの経営トップと、
卸・メーカーの幹部が参集。
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地域密着型のスーパーマーケットが終結し、
グッドカンパニーを目指す。
それがセルコグループ。
それを長年率いてきたのが、
エコス会長兼CEOの平富郎さん。
今年、理事職を離れ、相談役となった。
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現理事長の佐伯行彦さんと、
副理事長の伊原實さんが、
次代のセルコを率いることになる。

平さん、まだまだ砥石ならぬ、
セルコの重石として
活躍ください。

ロンドンの空から、
応援しています。

2015年06月04日(木曜日)

フランクフルトからロンドンへ、テスコ・ケンジントン店は懐かしい!!

近畿地方、中四国地方が、
梅雨入り。

その梅雨を避けるように、
ヨーロッパに向かった。

成田空港は雨模様。
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飛び上がると、
日本列島は雲に覆われている。
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真っ青な空、
真っ白な雲。

シベリア上空にはちぎれ雲。
地上では緑が美しい。
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ネバ川か、大河。
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そしてカスピ海に流れ込むヴォルガ川。
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ドイツまで3時間弱。
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見えてきたフランクフルト。
ドイツの表玄関。
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ドイツは森の国。
上空から臨むと、
それが実感される。
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ルフトハンザ機のトップのところ。
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そしてフランクフルト国際空港。
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ここで関空から発った、
万代ドライデイリー会の面々と合流。

そしてドーバー海峡を超えて、
グレイトブリテン島へ。
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テムズ川が見えてきた。
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大ロンドン。
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ニューヨークもすごい、
パリも美しい。
東京もいいけれど、
ロンドンには特別の魅力がある。
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ヒースロー空港について、
互いに挨拶。
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街に出ると、
赤いダブルデッカーのバスが走る。
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すぐにイングリッシュパブへ。
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ジョージ4。

7時すぎだというのに、
中庭は明るい。
現地のイギリス人が集って、
ビールやスコッチを楽しんでいる。
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私たちは一番奥のホールを借り切って、
歓迎ディナー。

挨拶は今津龍三さん、
㈱今津社長で万代ドライデイリー会会長。
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全9チーム、全員が、
自己紹介と自分なりの研修の目的を決意表明。
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今回はいつも以上に、
目的意識が高い。

帰り際には、
小さなステージで、
女性シンガーが弾き語り。
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あまり上手ではなかったが、
私はいい気分だった。

そして最後に、
テスコ・ケンジントンへ。
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約800坪のスーパーストア。
24時間営業の大繁盛店。

1996年9月にオープンして、
何度も何度もリニューアルを施した。
なぜならテスコの顔となる店だからだ。

入口の青果部門からデリにつながるが、
ここは素晴らしい。
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青果はクレート陳列。
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産地で収穫する際、
商品はクレートにそのまま、
積み込まれる。

あとは一切、手をつけず、
物流され、店頭に並べられる。

テスコが開発したこのシステムは、
抜群の生産性を上げ、
それはイギリス中、ヨーロッパ中に広がった。

入口左手には、
Scan as you Shopのコーナー。
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カード会員の顧客は、
入口でこのハンドスキャナーをとって、
店内を回遊し、購買のたびに、
商品のバーコードをスキャンする。

生鮮も秤にかけて、
スキャンする。
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リカーとワインは一番奥に位置づけられ、
特に強化された。
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その中でもシャンパンは、
最も力を入れられている。
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ケンジントンの高級住宅地の店だからだ。

クッキングウェアもコーナー化されている。
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道路側の一角には、
テスコ直営のファーマシー。
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1996年の10月に、私はパリにいた。
シアルドール日本代表審査委員として、
パリ国際見本市に参加していたからだ。

その際、イギリスの審査委員が、
この店のことを教えてくれた。
専門誌『ザ・グローサー』のジェフリー・ハント記者。

この店は当時、最先端のフォーマットだった。

私はフェアが終わるとすぐに、
ロンドンを訪れて取材し、
月刊『食品商業』で分析紹介した。
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今、20年ほど経過して、
その店を見ている。

随分多くの日本人が、
この店を視察に訪れた。

実に感慨深いものがある。

視察を終えて、
ホテルはノボテル・ロンドン。
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全員が疲れ切って、
ロビーに集合。
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私もテスコの店を歩きながら、
半分、居眠りをしていた。

部屋に入って、
湯に浸かり、
そのままベッドへ。

1万字の原稿も、
ヒースロー空港についた時に、
日本に送ったし、
明日から全開でロンドンを駆け巡る。

お楽しみに。

〈結城義晴〉

2015年06月03日(水曜日)

百貨店の今夏商戦「早仕掛け」撤回を笑いつつ、フランクフルトに発つ

厚生労働省の毎月勤労統計調査。
4月の実質賃金指数は、
前年同月比でわずかだが0.1%上昇。
実質とは「物価上昇による目減り分を除いた数値」

これは2年ぶりの上昇。

マクロデータで、
ようやく賃金の伸びが、

物価の伸びを上回ってきた。

そうすると経済の好循環が生まれる。
所得増→支出増→消費増→
生産増→所得増→支出増→

この好循環。

勝った者はますます強くなる。
この好循環と同じ。

そして好循環のサイクルをつくれば、
もう、しめたもの。

4月の常用雇用者数も、
前年同月比で2%増。

総務省の家計調査では、
4月の勤労者世帯の実質消費支出額は、
前年同月比0.5%増。

一方、物価上昇も鈍化傾向を示す。
4月の全国消費者物価指数のうち、
生鮮食品を除く総合指数は、
前年同月比0.3%上昇。
昨年4月の消費増税要因を除くと、
ほぼ横バイ。

政府と日銀のインフレターゲット政策は、
ちょっと思い通りにはならないよいうだが、
賃金上昇と物価下落で、
実質的な購買力は高まる。

商売はやりやすい。
商売の追い風が吹き始めた。

しかし、そんな環境の中で、
ちょっと笑ってしまう話が、
日経新聞に書かれている。

百貨店がこぞって、
今夏のセール開始時期を遅らせる。

昨年、ほとんどの百貨店は、
6月末から夏の商戦をスタートさせた。

三越伊勢丹だけ、
7月中旬スタート。

しかし景況感の改善が追い風となって、
伊勢丹は「通常価格販売期間」を延ばして、
収益が上がった。

そこで他の百貨店も、
右へ倣え、となる。

高島屋は7月8日スタート。
昨年より2週間近く遅くする。

大丸松坂屋百貨店も、
7月8日に繰り下げ。

阪急うめだ本店も足並みをそろえる。

そごう・西武は7月1開始。

かつて百貨店の夏のセール開始は、
7月中旬が通り相場だった。

それが1990年代から前倒しされ始めた。
そして最近は7月1日前後の開始となった。

しかし三越伊勢丹だけが、
2012年から7月中旬に戻して、
収益改善に取り組んだ。

つまり異なるポジショニング戦略を展開したわけだ。
この際、同社が大手アパレルとの連携を図る。

その結果、昨年7月の各社の売上高。
高島屋が前年同月比4.3%減、
大丸松坂屋百貨店は2.6%減。

一方、三越伊勢丹は3週遅れで0.9%増。

この三越伊勢丹に今年は、
各社が追随する形となった。

マーケット・リーダーが伊勢丹。
他社はみんなフォロワー。

笑える話とは、
「前倒しをしても売り上げを伸ばせず、
商機をいかせなかったこと」

早仕掛け・早仕舞い・際の勝負。

早仕掛けしても、
単に値引きセールするだけでは、
話にならない。

百貨店の早仕掛けならば、
知恵とアイデアを出して、
夏を存分にアピールすべきだ。

今年1月。
極寒のニューヨークでは、
ウォルマートが衣料品売場のトップに、
水着を早仕掛けした。

ドキっとする売場だった。

それがなければ、
早仕掛けも全く意味がない。

遅仕掛け、あるいは並び仕掛けで、
単にセールするだけならば、
またしても三越伊勢丹に、
してやられるだろう。

「今の消費者は価値を認めれば
値下げしなくても買う。
逆に価値を感じない物は
値下げしても買わない」
オンワード樫山の馬場昭典社長は辛口コメント。

全くの同感。

一方で、ユニクロの5月。
国内既存店売上高は前年同月比12.3%増。
増加は2カ月連続だが2桁の増加が目を引く。

ユニクロはスーパーマーケット並みに、
52週マーチャンダイジングを展開する。

だからユニクロが早仕掛けすれば、
他の追随を許さない。

百貨店の横並びを見て、
ユニクロは今夏、早仕掛けするに違いない。

総合スーパーも、
中身のある夏商戦の早仕掛け。

目一杯、百貨店から顧客を奪うことが出来る。

なにしろ、総合スーパーのGMSは、
もともとディスカウント・デパートメントストアなのだから。

さて私は朝一番で、
Yキャットからベイブリッジへ。
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雨のベイブリッジ。
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そして横浜港。
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みなとみらい。
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80分ほどで、
成田空港第1ターミナル南ウィング。DSCN2228-5

ルフトハンザでフランクフルトへ。DSCN2230-5

乗り込んで、02Kのシート。DSCN2231-5

これから向かうドイツでは、
ヘルムート・コール元首相が、
意識不明だとか。

85歳。

腸の手術後に、危篤状態に陥った。

西ドイツ時代を含む1982~98年に首相を務めた。

そして1990年10月、
歴史に残る東西ドイツ統一を実現させた。

私は1995年、ケルンで、
目の前で演説を聞いたことがある。

ド迫力の政治家だ。
もちろん信念も持っていた。

心配しつつ、
ルフトハンザに乗り込む。

では、行ってきます。
あとはよろしく。

〈結城義晴〉

2015年06月02日(火曜日)

6月の「商人舎標語」とセブン-イレブン井阪隆一の「飛耳長目」

6月に入って、2日目。

いい季節だと言ったとたん、
南から雨雲の一団が、
日本列島に押し寄せた。

九州南部と九州北部は、
今日、梅雨入り。

明日も雨や雷雨。

西日本、近畿、東海北陸も、
関東、東北、北海道も、
明日は雨模様。

湿度が高く、蒸し暑い日が訪れる。

その明日に、私は、
フランクフルトに向かって飛び立つ。

今日はスーパークールビズで、
月刊『商人舎』6月号の責了作業。
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そして6月の商人舎標語。
ダイバーシティ産業の強みを活かそう!

「男並み女を使え!」
故渥美俊一先生の言葉。
「なるほど・・・・・」
全員、目からウロコだった。

しかし結果としてこれは、
男社会を助長させた。
女性を排除した。
多様性を無視した。

時代はダイバーシティ。
いや、時代ではない。
小売業こそ、ダイバーシティ。
サービス業こそ、ダイバーシティ。

もともとダイバーシティ産業だからこそ、
かつてチェーンストアは標準化を強調した。
ダイバーシティ産業だからこそ、
最初はマニュアルが必須だった。

しかしそれは、
レース型競争下のセオリーだった。
コンテスト型競争下では、
ダイバーシティ産業の強みを活かせばいい。

象徴的な目標は、
女性が働きたい店をつくることだ。
女性が働きやすい会社に変えることだ。
女性が活躍する産業を構築することだ。

女性が働きやすい職場は、
誰もが働きやすい。
女性が活躍しやすい組織は、
誰にもそれぞれの活躍の場が約束されている。

女性がドキドキワクワク働く店は、
顧客がドキドキワクワクする。
女性がニコニコ働く店は、
顧客もニコニコする。

こんな店、こんな会社、
そしてこんな産業は、
人間の尊厳に対して、
真摯に向き合うことになる。
〈結城義晴〉

日本一働きたい会社は、
まず女性が、
日本一働きたい、
と思ってくれなくてはいけない。

その意味で、
裏も表もない会社、
言行一致の会社になる必要がある。

さて昨日から、
東京証券取引所が、
上場企業に対して、
「企業統治指針」の適用をスタートさせた。
いわゆる「コーポレートガバナンス・コード」。

その課題は、
社外取締役の選任。
社外取締役というからには、
経営からの独立性がなければいけない。

主要100社の調査では、
9割近くの上場企業が、
複数を選任している。

東証の指導が行き渡った結果だが、
昨年度より2割近くの増加。
社外取締役に占める女性の比率も、
100社中50人で、17%。
昨年が14%だったから、
3ポイントの増加。

私自身、ご指名をいただいて、
社外取締役を務めているが、
私なりのあり方を決めている。

第1に第三者の立場から客観的に、
経営をチェックすること。
そして直言すること。
これは社外取締役として、
当然の役目。

確かな経営者ならば、
励ますことのほうが多くなる。

第2にその際に、
会社独自のポジショニングが、
何よりも重要であること。
従ってそのポジショニングの観点から、
観察し、考察し、監督し、
意見を述べ、提案をすること。
もちろん私の知見は存分に提供する。

この6月から、
新しい時代に入ったことは確かだ。

さて最後に、
日経新聞の『キャリアアップ』に、
井阪隆一さん、登場。
セブン-イレブン・ジャパン社長。
「話すことよりエネルギーがいりますが、
根気よく話を聞くことが
何よりも大事です」

井阪さんの社長室のドアは、
常に開けられている。

「部下からの話を聞かずに
こちらが一方的に話していたら、
誰も情報を伝えてくれなくなる。
情報が入ってこなくなったら
『裸の王様』になってしまう」

「誰でも、いつでも、
話をしやすいように
していないといけません。
それが私の一番の仕事
といっても過言ではない」

その井阪さんの座右の銘。
「飛耳長目」
「ひじちょうもく」と読む。

「遠くのことを聞くことができる耳と、
遠くまでよく見える目を持っている、
つまり、物事の変化に鋭敏で、
情報の収集力にたけていること」

吉田松陰が松下村塾の塾生たちに説いた。
だから松陰自身、ペリーの船に乗り込み、
渡米を懇願する。

弟子たちも後に、イギリスに渡って、
世界最新の情報を得た。
木戸孝充、井上馨、伊藤博文など、
長州五傑と呼ばれた若者たち。

「飛耳長目」は、
石ノ森章太郎『サイボーグ009』で言えば、
003のフランソワーズ・アルヌール。

9人のサイボーグ戦士の、
9つの特徴の一つが、
「飛耳長目」
面白い。

井阪さんに話を戻すと、
「現場にいた時はそこまで
意識していませんでした」

「聞くことを実践するようになったのは
役員になってから」

ミドルマネジメントよりも、
トップマネジメントこそ、
話を聞かねばならない。

「直接会って顔を見て話せば、
相手の反応が見えます」

私はインタビューを、
本業の一つにしているが、
それはまさに、直接会って、
顔を見て、話を聞くこと。

ピーター・ドラッカー先生の、
「ポストモダンの七つの作法」
その第1がやはり、
「自分の目で見、耳で聞く」

井阪隆一、
吉田松陰、
そしてフランソワーズ・アルヌール。
もちろんピーター・ドラッカーも。

社内取締役も、
社外取締役も、
「飛耳長目」は必須である。

〈結城義晴〉

2015年06月01日(月曜日)

6月「スーパークールビズ」とユニークな決算月企業の競争力

Everybody! Good Monday!
[2015vol22]

2015年第23週に突入、
そして6月の始まり。

欧米で「ジューン・ブライド」というけれど、
まさに5月から6月にかけてのこの時期は、
1年で一番素晴らしい。

「6月の花嫁」は、
一番いい季節の花嫁のこと。

ただし日本列島の6月はすぐに、
梅雨に入ってしまう。
その直前の1週間ほど、
だからこそなおさら貴重だ。
心して楽しみたい。
心して顧客を楽しませたい。

雲低くとどまる日なり麦の秋
〈日経俳壇より 藤枝市・ 山村昌宏〉

「麦の秋」、あるいは「麦秋(ばくしゅう)」。
麦の穂が実り、収穫期を迎えた初夏の季節。
麦の収穫の秋であることから、
こう名付けられた。

雨が少なく、乾燥した季節。
すぐに梅雨が始まる。
二毛作の農家にとって、麦秋は短い。

日本中青嶺となりし空を行く
〈朝日俳壇 気仙沼市・前川忠〉

いいですね。

今日から中央官庁は、
「スーパークールビズ」。
5月は「クールビズ」で、
6月から「スーパー」のつく「クールビズ」。
もう5年目を迎えた。

大事なことは9月末まで続けられる点。

イオンでもスーパークールビスを採用している。

「スーパー」と名のつく新しい慣習。
先取りするくらいに取り入れたい。

トレーダー・ジョーは、
年中、スーパークールビスで、
アロハシャツ。

スーパーでも、ポロシャツが無難。
沖縄のかりゆしなども、小粋。

この時期の軽装は、
おしゃれです。

積乱雲中世のごと村圧す
〈朝日俳壇 松戸市・大谷昌弘〉

さらに北陸や東北では、以下の感じ。
若葉もくもくと山々深々と
〈朝日俳壇 白山市・辰巳葉流〉

俳句はずっと、
日経より朝日がいい。

さて今日は、千葉県の海浜幕張。
イオンを訪問。
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海浜幕張の駅を出たところで、
数人の人々に目礼された。

ここに来ると、いつもそんな感じで、
誰かに会う。

しかし今日の目的は女性陣。
イオン㈱田中咲(えみ)さん(中)と、
イオンリテール㈱松野寛子さん(左)。
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田中さんはダイバーシティ推進室室長、
松野さんは人事部ダイバーシティ推進担当。

じっくりと2時間以上も話を聞いて、
私も意見を述べた。

考えさせられることが、ひどく多くて、
ちょっと閃きかけたことがある。

お二人に感謝。

その閃きは、
月刊『商人舎』6月号で、
披露できる・・・・だろう。

さて今週から、
2月期決算企業は第2四半期。
3月期決算企業は、
第1四半期の詰めの月。

あるいはホップ・ステップ・ジャンプで言えば、
2月期決算企業はホップ、
3月期の企業はジャンプ。

Weekly商人舎の日替わり連載、
月曜朝一・2週間販促企画は、
そんなことを提案している。

ゴルフでも、
1日を漠然とラウンドするのではなく、
3ホールずつ区切って、
ホップ・ステップ・ジャンプでアウトの9ホール、
ホップ・ステップ・ジャンプでインの9ホール。
それを繰り返すと、18ホールになる。

この考え方でプレーすると、
マインドコントロールが可能となるし、
いわゆるコースマネジメントにも、
余裕が生まれる。

ところで、この競争相手との違いを、
各社は意識して営業活動しているんだろうか。

例えばイオンやセブン&アイ、
ほとんどの企業は2月決算。

いまホップ段階に入った。

ヤオコーやオーケー、
スーパーマーケット企業のほとんどは、
3月決算。
いまジャンプ段階。

両者の店頭での競合は、
ホップ段階vsジャンプ段階。

どちらが有利か、
どちらが必死か。

そういえば、
ユニークで業績のいい会社は、
決算月も他社と異なる。

ツルハホールディングスは5月。
ドン・キホーテが6月、
アルペンも6月。
ファーストリテイリングは8月、
ビックカメラも8月。

アマゾン・ジャパンは12月。
ウォルマートは1月だけれど、
西友は12月。

今度、決算月のユニークさと、
競争力の関係を研究してみよう。

決算セールを当てにしている消費者も、
ずいぶん大量にいることだし。

さてさて今週の結城義晴のスケジュール。
今日はイオンを訪問。

明日は月刊『商人舎』責了の日。

そして明後日の水曜日から、
ヨーロッパへ。

フランクフルトに降り立ってから、
ロンドンへ。

その後、バルセロナ。

帰国は来週の水曜日。

一番いい季節の終わりを楽しむことなく、
帰国したら多分、梅雨入りしている。

毎年毎年、そんな生活。

それでもヨーロッパの香りを、
みなさんに届けたい。

というところで、
今週も、よろしく。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2015年05月31日(日曜日)

ジジとウェディング・パーティ[日曜版2015vol22]

ジジです。
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夏です。

けれど、ベランダに、
カーネーション。
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母の日のお花が、
まだ、咲いてます。
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きょうは、おとうさん、
朝から、正装して、
でかけました。

だからボクは、
ひとりでさがしもの。
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それから、おふろ。
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お湯をぬくのは、
わかるんです。
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でも、いれるのは、
むつかしい。
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かえってきたら、
やってもらおう。

おとうさんがいったのは、
白金台の八芳園。
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Rikkyoゼミ生のウェディング・パーティ。
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結城ゼミ1期生のカキヌマさん。
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おめでとう。
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記念写真。
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将人さんと由希絵さん。
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しあわせそう。
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テーブルには、
ホスピタリティ。
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Rikkyoのなかまが、
お祝いにかけつけた。
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おめでとう。
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ふたりで、ピアノとフルート。
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ウェディングドレス。
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新郎が太鼓。
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プロフェッショナル。
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そしてお礼。
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おとうさんは、
かえってくると、
いいました。
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「とってもいい披露宴だった。
カキヌマくんは、
いい奥さんをもらった」

おめでとう。
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しあわせになってください。

さあ、おふろ、
はいろう。
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おつかれさま。

〈『ジジの気分』(未刊)より〉

2015年05月30日(土曜日)

結城義晴の「上司」徒然と『私の履歴書』川村隆さんの「ラストマン」

緒方知行さんの訃報を書いていて、
自分の歴代上司のことを思い出した。

1977年、社会人最初の上司が、
㈱商業界『販売革新』編集長の緒方知行さん。

次が、やはり同誌編集長の高橋栄松さん。

それから三人目は、
『食品商業』編集長だった今西武さん。
私は『販革』から『食品』に異動したのだった。

四人目も同誌編集長の小島稔さん。

それから1989年、
私が『食品商業』編集長に昇格したので、
五人目は取締役編集局長だった丸木伊三さん。

私はそのまま1996年に、
編集担当取締役に昇格し、
その時点でも上司は、
社長となっていた丸木さん。

その後、社長は高岡真佐雄さんに代わって、
六人目の上司は高岡さん。

それから2003年に私は、
㈱商業界代表取締役社長に就任して、
上司はいなくなった。

ただし、商業界には、
倉本初夫主幹の存在があって、
社長の私の上司のようなものだったが、
私は個人的には尊敬こそすれ、
倉本さんを上司とは考えなかった。

その後、2007年に、
任期満了で退任し、
半年ほど無印になった。

この間はもちろん、上司はいない。
全くの自由。

そして2008年2月1日に、
㈱商人舎を設立して、
代表取締役社長に就任。
結城挨拶

だから、今もボスはいない。

私の生涯には、
6人の上司がいた。

これからの人生でも多分、
私にとってボスとなる存在は、
登場しないだろう。

都合、6人。

少ないだろうか。

でも、㈱ドゥ・ハウス社長の稲垣佳伸さんは、
多分、生涯でたった一人、
小野貴邦さんだけが上司だったと思う。

今西さんと緒方さん、
そして小野さんも、
故人となってしまった。

今西さん、緒方さん、小野さん。
いずれも凄い人だったが、
伊藤雅俊さん、岡田卓也さん、清水信次さん、
そして鈴木敏文さんのような、
化け物級ではなかった。

しかし、恐ろしく、凄い人たちだった。

ご冥福を祈るとともに、
私の上司だったみなさんに、
心から感謝したい。

さて5月が終わろうとしている。
日経新聞最終面の『私の履歴書』

先月の似鳥昭雄さんが、
あまりに強烈だったので、
今月の川村隆さんは、
霞んでしまうかとも心配したが、
杞憂に終わった。

日立製作所の社長・会長を務めた川村さん、
キーワードは「ラストマン」。

この言葉を教えてくれたのは、
川村さんの課長時代の上司、
日立工場長だった綿森力さん。

後に日立の副社長になる。

「ラストマン」とは、
「船の船長のようなもの」。
「嵐が来て万策尽きて
船の沈没やむなしとなった時、
すべての乗客や船員が
下船したのを見届けて、
最後に船から離れる」

だから船長は「ザ・ラストマン」と呼ばれる。

「ザ・ラストマン」の覚悟で仕事をする。

2009年3月、川村さんは、
子会社の日立マクセルの会長だった。

当時、69歳。

突然、日立の指名委員会が、
川村さんを次期社長に指名した。

川村さんは、大いに迷った。

友人に相談する。
「やめた方がいい」という声が圧倒的。

しかし川村さんの胸の内には、
「ラストマン」の言葉があった。

1999年7月23日、川村さんは、
羽田発新千歳行きの全日空61便に乗った。

離陸して房総半島上空に差し掛かったころ、
機体は突如Uターン。

「当機はハイジャックされました」と機内放送。

「女性や子供の悲鳴が上がった」

犯人は精神的に不安定な若者だったが、
絶体絶命の危機を救ってくれたのは、
「偶然その便に乗り合わせた、
非番の全日空パイロットの山内純二さん」

「犯人は機長を刺殺し、
自分の操縦で横田基地への着陸を試みるが、
とてもそんな技量はなく、うまくいかない」

「『このままでは墜落する』と判断した山内さんは
ドアを蹴破ってコックピットに突入し、
操縦かんを奪い返した」

この山内パイロットの行動は、
実は航空会社マニュアルに反するものだった。

「しかし、マニュアルに沿って、
この犯人の言うとおりにして、
機体が墜落してはどうしようもない。
緊急事態には自分の頭で考え、
自分の責任で行動しないといけない」

この事件は、
川村さんの人生観をガラリと変える。
「人はいつ死ぬか分からないのだから、
毎日を大切に生きなければと
自覚するようになった」

もう一つ、この事件から、
川村さんは「ラストマン」の意識を、
改めて強く持つようになった。

ラストマンは「最終責任者」。

1997年のハイジャック事件。
2009年の社長指名。

自宅近くの雑木林を散歩している時、
天啓のごとく「ラストマン」の言葉が、
川村さんに降りてきた。

山内パイロットが、
「全日空機でラストマンの役割を果たしたように、
自分も日立でその役回りを引き受けよう――」

昨日の連載の会長退任時にも、
川村さんは考える。

日立では経営者予備軍を、
日立グループ内の他社に派遣して
鍛える仕組みを導入している。

「タフ・アサインメント」と称する。

川村さんは、つくづくと述懐する。
「小さい企業であっても、そこで、
『自分がラストマンだ』という気持ちで
自ら鍛錬することが重要だ」

私自身のことを振り返ると、
ボスは6人しかいなかった。

最後の上司の高岡社長の部下となったとき、
今から思うと、私は確かに、
「ラストマン」の考え方を強く意識していた。

それはいまも、変わっていない。

もちろん化け物級には、
とてもかなわないけれど、
恐ろしく、凄い人たちには、
感謝しつつも、負けてはならじと、
「ラストマン」を貫きたいと思う。

このブログ読者のみなさんには、
「タフ・アサインメント」を、
お薦めしたい。

子会社社長、部長、店長、部門長、
みんな船長であり、機長だ。

小さい企業、小さい店であっても、
『自分がラストマンだ』という気持ちで
自ら鍛錬することが重要だ。

〈結城義晴〉

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