結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年05月21日(火曜日)

井上淳の「窮屈な世界」と伸びる惣菜の「本当の危機」

イラン・イスラム共和国大統領。
セイエド・エブラヒーム・ライシ、63歳。
ヘリコプターの墜落によって死亡した。

こんなことが起こるのか。
一国のトップの墜落死。

イランに対して米国は経済制裁をしている。
物価は急上昇し、国民は生活苦境に陥っている。

そんな社会不安が募る中での大統領の死。

1979年、アヤトラ・ホメイニ師によって、
イラン革命が成就した。

皇帝による王政は廃されて、
宗教上の最高指導者が、
国の最高権力をもつ体制になった。

しかしそのイランのサッカー代表チームは、
現在、FIFAランキング世界第20位。

24位のジャパンの上にあって、
アジアナンバー1。

私たちから見ると、
不思議な国だ。

アランの「定義集」で、
[宗教]に関してアランは言う。
「宗教は哲学ではない。
それは一つの歴史なのだ」

宗教が支配する国。
宗教がリードする国。

私たちはその歴史を、
認めなくてはならない。

今日は1日、横浜商人舎オフィス。
井上淳(あつし)さんが訪ねてくださった。
IMG_6067
日本チェーンストア協会副会長を、
先週の総会で退任されて、
今はサポート企画ラボ代表、
開志専門職大学客員教授。

井上さんは2008年7月から、
2024年5月まで16年間、
日本チェーンストア協会の専務理事・副会長だった。

東京大学法学部卒業後、
通商産業省(当時)に入省し、
流通、消費者保護から、
エネルギー、経済協力、貿易金融、
中小企業振興などまで、
幅広く行政分野に携わった。

その後、チェーンストア協会に転じて、
協会運営の中枢を担った。

その間に東日本大震災があった。
COVID-19パンデミックも起こった。

大変な時代だった。

ライフコーポレーションの故清水信次さん、
カスミの小濵裕正さんなど、
専務理事として支えた会長の話に花が咲いた。
IMG_14081-448x310

月刊商人舎2022年7月号には、
特集の中に登場してもらった。
井上淳の独白
時代の「八方ふさがり」と転換期のチェーンストア
202207_inoue1-768x576

井上さんの現在の時代の見方。
「今、流通業にとって、
窮屈な世界になりつつある」

自由にやれる環境が広がるかのように見えるが、
じわじわと選択肢は狭まっている。

同感だ。

こんな時代だからこそ、
井上さんのキャリアと見識は、
まだまだ産業にお役立ちするに違いない。
その機会はあるだろう。
IMG_6071
ひとまず、言っておこう。
お疲れさまでした。

さて商人舎流通SuperNews。
日本惣菜協会news|
2023年度惣菜市場11兆円/食品スーパーがシェア伸ばす

一般社団法人日本惣菜協会の調査。
2023年度の惣菜市場規模は10兆9827億円。
前年比104.9%で伸びている。
11兆円が目前となった。

コロナ前の2019年に比べても、
106.4%で完全復調。

業態別の構成比では、
トップはコンビニの3兆4631億円、
構成比31.5%。
二番目がスーパーマーケット、
3兆2586億円で29.7%。
三番手が惣菜専門店で、
2兆9426億円、26.8%。

しかし伸び率は、
スーパーマーケットが105.7%、
コンビニ105.6%、
総合スーパー104.4%。

わかる。

調査は100 社、6万8683店。

「2024年版惣菜白書」の巻頭言にある。
「コロナ禍で巣ごもり消費が増え、
ライフスタイルが大きく変化した。
消費者も賢くなっている。
中食も外食も進化しないと、
以前のままでは選ばれない。
大きな変化はビッグチャンスでもある」

しかし月刊商人舎5月号。
202405_coverpage-448x6351 (1)

惣菜マーチャンダイジング第一人者の「大警告」
惣菜の本当の危機
202405_hayashi

林廣美の警告。
「売上げが小さい時の惣菜は、
値入れが大きいから儲かる商品でした」

「しかし世の中が惣菜ブームと化した今では、
値入れがあるから少々のロスは気にせずに
大きな売場をつくり、
『最後は半額にして残ったら捨てればいい』
という商売道に反した売場に
なってしまっています」

「近い将来、このしっぺ返しが来ることを
私は心配しています」

「『酸化』がこのしっぺ返しを早める
導火線になっていることを
知ってほしいと思います」

ここでも人間万事塞翁が馬。
いいことが起こると、
それが原因となって悪いことが起こる。

惣菜の原理をこそ、知らねばならない。

〈結城義晴〉

2024年05月20日(月曜日)

「’24紀文正月フォーラム」と尾﨑英雄チェーンストア協会長登場

Everyone, Good Monday!
[2024vol㉑]

2024年第21週。
5月の第4週。

今日は雨。

出社するときに道端の木の葉に、
雨粒が残っていた。
IMG_4530 (002)

自然は美しい。
IMG_4531 (002)

芸術的な雨粒の残り方。
IMG_4535 (002)

「天気の悪い時にはいい顔をせよ」
アランは教えてくれている。
IMG_4525 (002)

しかしそんなことも考える必要はない。
観察する気があれば悪い天気の中でも、
美しいものを見ることができる。

今日は講義のテキストづくり。

夕方、㈱紀文食品の面々が来社。

紀文正月フォーラムの打ち合わせ。
IMG_6061

高柳謙一郎さんと堀内慎也さん、
そして、丸山綾奈さん。IMG_6062

恒例の紀文正月フォーラム。
「業界の風物詩」

今年の開催は8月28日と29日。
必ず水曜日と木曜日。
場所はいつも東京・東銀座の時事通信ホール。

その打ち合わせ。

高柳さん(中)は営業企画部部長、
丸山さん(右)は営業企画部員で管理栄養士。
堀内さん(左)は事業企画室正月ユニット部部長だった。

「一年を二十日で暮らすよい男」
江戸時代の相撲取りを皮肉った川柳。
江戸の定場所は春と秋の二場所だった。
しかも場所は10日興行だった。
だから「二十日で暮らす」

堀内さんは正月専任部長だった。
いわば1年を正月で暮らすよい男。
それだけ紀文は年末年始に力を入れていた。

しかしこのたび、
マーケティング本部マーケティング部長に就任。
もちろん正月担当でもあって、
営業企画部長の高柳さんと二人三脚。

紀文のマーケティング本部長は、
堤裕代表取締役社長。

堤さんは慶応義塾大学の村田昭二ゼミ出身で、
村田先生から直々にマーケティングの神髄を学んだ。

紀文食品全体が歴史的に、
マーケティングカンパニーである。

高柳さんから、
今年度の方針が出され、
堀内さんからは、
提案の骨子が説明された。

私が講演で語ろうと思っていたことと、
見事に一致した。

今年の年末年始商戦は、
完全なコロナ明け後で、
しかも円安不況の中の一大商戦だ。

豊富な情報と的確な分析を提示し、
そのうえで決定的な方針を出す。

ご期待ください。
今から予定を入れておいてください。

さて商人舎流通SuperNews。
日本チェーンストア協会news|
5/17尾﨑英雄フジ会長が新会長に正式就任

第25代日本チェーンストア協会会長に、
尾﨑英雄さんが就任した。
㈱フジ代表取締役会長。

おめでたいし、大いに期待したい。
fuji_ozaki

尾﨑さんは1951年8月27日生まれ。
私の一つ先輩。

1976年3月にフジに入社したプロパー。
順調にチェーンストアを学び、実績を積んで、
2001年5月、取締役、
2005年4月、取締役常務執行役員、
2006年5月、代表取締役専務執行役員。
そして2006年7月、代表取締役社長、
2018年5月、代表取締役会長兼CEO。

2021年12月にはイオン㈱のもと、
フジとマックスバリュ西日本が経営統合に合意し、
今年2024年3月1日に、
フジを存続会社として、
マックスバリュ西日本を吸収合併した。

大仕事を終えて休む間もなく、
日本チェーンストア協会会長に就任。

実にエネルギッシュな仕事ぶりだ。

そのチェーンストア協会は、
初代会長がダイエーの故中内㓛さん。
二代目会長は当時のジャスコの岡田卓也さん、
三代目はイトーヨーカ堂の故伊藤雅俊さん。
20140716005814

その後、イトーヨーカ堂からは、
鈴木敏文さん、亀井淳さん、三枝富博さん。
ジャスコからは二木英徳さんと岡田元也さん、
ユニーからは西川俊男さんと佐々木孝治さん、
西友からは高丘季昭さんと渡辺紀征さん、
ニチイ時代とマイカル時代の小林敏峯さん。

東急ストアからは中原功さんと川島宏さん、
さらに小川信行さん。
ライフコーポレーションの清水信次さん、
イズミヤの林紀男さん。

関東・関西・中京のビッグチェーンのトップが、
日本チェーンストア協会の会長を務めてきた。

例外はカスミの小濵裕正さんと、
今回のフジの尾﨑さん。

小濵さんは「らしい」会長であったし、
堂々たる協会運営だった。

尾﨑さんは初めての、
地方からの会長就任だ。

地方創生をはじめとして、
円安不況の中のチェーンストアの在り方など、
課題は多い。

そしてチェーンストアの責務は重い。

日本チェーンストア協会の目的は、
「チェーンストアの
健全な発展と普及を図ることにより、
小売業の経営の改善を通じて、
わが国流通機構の合理化、
近代化を促進するとともに、
国民生活の向上に寄与する」

先輩に向かってまことに僭越ながら、
尾﨑英雄でなければできないことを、
やっていただきたいと思う。

いい時期の、いい会長の登場である。
みんなで応援していきたいものだ。

では、みなさん、今週も、
エネルギッシュな仕事を。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2024年05月19日(日曜日)

「心は燃やせ、頭は冷やせ」の「オプチミズムとペシミズム」

何かの機会があって、
自分のブログを検索する。

みなさんもぜひ、
やってみてください。

この商人舎公式ホームページの、
タイトルの下の横長の□のところ。
[検索]と薄い文字が入っている。

検索しやすいようにと、
結構大きなスペースをとってある。

ここに単語を打ち込む。
できれば二つくらい。
あるいは三つくらい。

そうすると、
その二つや三つの言葉を使った投稿記事が、
ずらりと出てくる。

読んでみると面白い。

現在の時点で6622のブログがある。

あと9年ちょっとで大台の1万になる。
80歳のときだ。

それまでは書き続ける。

さてウォルマートの記事を探していたら、
2016年12月1日のブログに行きついた。

『パリはわが町』という本。
ロジェ・グルニエ著、2016年10月刊。
71ojgxl8GZL._SL1500_

発刊元のみすず書房は、
いい出版社だ。

哲学、科学、心理学、社会学、
それに現代史、西洋史などの専門書を発刊。
学術出版社のジャンルに入る。

出版界のマーケットニッチャーだ。

資本金1500万円で、
2023年2月期の売上高6億2000万円。
従業員28名。

㈱商業界よりもずっと小さな出版社だが、
頑張って経営を維持している。

創業は1947年。
創業者の小尾俊人(おびとしと)は、
大東亜戦争から復員して、
「出版社か農業をやろう」と考えた。
そうして最終的に出版社を設立した。

そのみすず書房発刊のグルニエの本。

グルニエは、
フランスのジャーナリストで作家だ。
第2次大戦中には、
パリ解放のレジスタンス活動に身を委ねて、
英雄的な働きをした。

あるインタビューに答えて語った。
「小さなことについては
オプチミスト、

大きなことについては
ペシミスト」

オプチミストは楽観主義者、
ペシミストは悲観主義者。

小さなことは楽観する、
大きなことは悲観する。

これは革命家の心構えだというが、
着眼大局・着手小局の極意に通じる。

先週木曜日の日経新聞「大機小機」
タイトルは、
「冷静な頭脳と温かい心」
コラムニストは九転十起氏。
学者だろうか。

「国内の消費が振るわない。
国内総生産(GDP)の実質個人消費は
3四半期連続でマイナス、
家計調査による消費支出は
実質で13カ月連続のマイナスである」

悲観的な材料がそろう。

「背景にあるのは物価高だ。
相次ぐ値上げによる”値上げ疲れ”が、
消費者の買い控えや節約志向につながっている」

同感だ。

月刊商人舎5月号では、
「円安不況」と表現して、警告を発した。
202405_coverpage-448x635

実質賃金は3月まで24カ月連続でマイナス。

今年の春闘で連合のベアは全体で3.57%、
中小組合でも3%を超えてきた。

「しかし、昨年の春闘も、
30年ぶりの高い賃上げ率だったはずだ」

連合の最終集計ベアは2%強だった。
一方、毎月勤労統計の所定内給与は、
パートも含めた全体の平均では1.4%増。

今年の上昇率は、
「前年比で3%に達するかどうか」

「物価上昇にやっと追いつく程度だ。
消費者がインフレを上回る賃金増を感じるには
ほど遠いだろう」

そこでコラムニストの専門の、
日銀の金融政策。

「緩和的な金融環境を維持し、
企業・家計のマインド悪化と
景気の腰折れを防ぐというのが
最善策であろう」

「それにもかかわらず、
年内の利上げが既定路線のように議論されている」

「データは大事だがあくまで数字でしかない。
より重要なのは国民生活の実態だ」

同感だ。

ここでアルフレッド・マーシャルの有名な言葉。
近代経済学の祖にしてメイナード・ケインズの師匠。
Alfred-Marshall-1842-1924-Nenglish-Economist-Oil-On-Canvas-1908-By-Sir-William-Rothenstein-Poster-Print-by-18-x-24_945dc648-ae41-4ce6-a820-7d497c7e0a02_1.a10c96074b67d45a0acc9fcb6c8ae3a0

マーシャルはロンドンの貧民街を歩き、
困窮する人々のために
経済学を役立てるべきだと主張した。

そしてそのために、
「冷静な頭脳と温かい心」が必要だと説いた。
「Cool head but warm heart」

マーシャルから直接ヒントを得たわけではないが、
私は商業界の社長を退任した2007年から、
同じような言葉を自分の標語にしている。

「心は燃やせ、頭は冷やせ」

九転十起氏。
「経済学者をトップに頂く日銀は、
今こそ冷静な頭脳と温かい心で
我が国の現状を分析し、
臨機応変に対応する柔軟さが必要だ」

そしてこの際、大切なのは、
グルニエの言葉だと思う。
「小さなことにはオプチミスト、
大きなことにはペシミスト」

よろしく頼みます。
植田さん。

今の小売業や製造業の経営にも当てはまる。
いや、現場をもつ者にとってはもともと、
この心構えが必須なのだ。

〈結城義晴〉

2024年05月18日(土曜日)

アラン「上機嫌療法」の「悪い天気の日にはいい顔をせよ」

朝はゆっくり起きて、
ゆったりと過ごす。
昼ごろには午睡、
3時過ぎにはまた夕寝した。

よく眠ることができる。

少しずつ自分の心身が治癒していくのがわかる。

作家の宇野千代。
若いころは個性的できれいだった。
602150_xl
1996年に98歳で没した。
恋多き女流作家だった。

後輩の瀬戸内寂聴にたびたび、
アランの言葉が好きだと言っていた。

寂聴がそれを弔辞で披露した。

「世にも幸福な人間とは、
やりかけた仕事に基づいてのみ
考えを進めていく人であろう」

やりかけた仕事があること。
日々、それだけに集中して、
さまざまな考えを進めていくこと。

今の私も同じ状況にある。
だからアランと宇野千代に共感した。

『定義集』で著名なアラン。
エミール・オーギュスト・シャルティエ。
「20世紀のソクラテス」と称された。
フランスの哲学者。

アランはペンネーム。

そのアランの『幸福論』
IMG_4525 (002)
訳者が串田孫一と中村雄二郎という、
贅沢な本だ。

串田は詩人、随筆家。
中村はパスカルの研究者で哲学者。

「仕事というものが、
心を楽しませる唯一のものであり、
それだけで十分である」

本当にそう思う。

例証として使われるのは、
ドストエフスキー『死の家の記録』
81DgiR6WVDL._SL1500_

徒刑囚たちは労働している。
その仕事はおよそ無益なものである。

なんの期待もなく働いているかぎり、
彼らは怠け者で、もの悲しく、不器用である。

だが一日がかりの仕事、
つらく困難な仕事を与えると、
たちまち彼らは器用で、巧妙で、陽気になる。

ドストエフスキーがシベリア流刑された時の、
四年間にわたる獄中の体験と見聞の記録。

「役に立つ仕事はそれ自体楽しみである。
それ自体なのであって、
そこから引き出す利益によってではない」

「人間的な楽しみの最大のものは、
協働でやる困難で自由な仕事であることは
まちがいない」

だからウォルマートは、
テレワークを廃止し、対面での仕事に変える。

CEOダグ・マクミロンは言う。
「対面で集まることで
協力やイノベーション、
迅速な意思決定がしやすくなる」
Photo by Iron Lotus Creative / Stephen Ironside

「協働」や「協力」が、
仕事そのものをより楽しいものにする。

アラン。
「私のいう仕事とは、
力の結果であると同時に、
力の源泉でもある、
自由な仕事のことである」

「繰り返して言うが、
いやいやながらがまんするのではなく、
行動することである」

これにも同感。

アランのお薦め。
「ぐっすり眠って、
よく食べよ」

私は今、そうしている。

アランの「上機嫌療法」
「呪いの言葉でも言いたくなるような
すべての不運や、
取りわけてつまらぬ物事に対して、
上機嫌にふるまうこと」

だから教える。
「悪い天気の日には、
いい顔をすること」

「笑うのは幸福だからではない。
むしろ、笑うから幸福なのだ」

アランの上機嫌療法。
今日はこれだけで幸せだ。

〈結城義晴〉

2024年05月17日(金曜日)

日本GDP「世界4位転落」とウォルマートの「対面での働き方改革」

時差ボケが治らない。

それからラスベガス研修中に、
風邪引きの名残で、
講義をすると時々咳き込んだ。

帰国してからはまだ、
長時間の講義をしていないから、
それも出ない。

ただし2時間以上も全力で語ると、
多分、咳が出る。

休養をとって、
少しずつ直すしかない。

さて、お知らせ。
商人舎ミドルマネジメント研修会。
スクリーンショット 2024-05-17 160756

第22回の6月4日・5日・6日の研修会。
このホームページ巻頭の告知欄で、
締め切りは5月2日となっているけれど、
若干の席が空いています。

ご派遣のご検討をお願いします。

6月には時差ボケも咳き込みも、
完治しています。

全力を挙げて講義します。
勉強しに来てください。
待ってます。

さて今朝の朝刊。
日本のGDPが世界4位に落ちた話題。

国内総生産、
Gross Domestic Product。

私たちが生徒のころは、
GNP(Gross National Product)で教わった。
国民総生産。

しかしGNPには、
海外での生産活動の報酬などが含まれている。
だから本来の国の生産量を正確に計ることはできない。

1980年くらいからGDPが使われるようになった。

2023年度の日本の名目GDPはドル換算で4.1兆ドル。
150円換算で615兆円。

ドイツは4.5兆ドルだったから、
結局、ドイツに抜かれて世界4位となった。

1位 アメリカ
2位 中国
3位 ドイツ
4位 日本。

物価高で前年度比5.3%増加した。
だが円安で1.3%減少した。

国際通貨基金(IMF)は、
2025年に今度はインドに抜かれると推計する。

しかし私はあまり気にする必要はないと思う。

第1は今、円安がひどすぎる。
円安によってドルベースのGDPは激減する。
1ドル120円あたりで考えるのが妥当だと思う。

第2は国全体の総生産よりも、
国民1人あたりの総生産が大事だ。

2023年段階で日本は3万3800ドルくらい。

世界1位はルクセンブルクの12万9800ドル。

アメリカは8万1600ドル。
ドイツは5万2700ドル。

中国は1万2500ドル。
インドは2500ドル。

亡くなった清水信次さんはよく言っていた。
「日本はまだまだ豊かな国だ。
誇りをもって頑張っていこう」
202212_shimizu-kaichou

その通りだと思う。

政治は低級だが、
国民は優れている。

アメリカのウォルマートのニュース。
第1は働き方改革。

コロナ禍で進んでいたリモートワーク。
ウォルマートは遠隔勤務を縮小して、
オフィスでのリアル勤務を増やす。
従業員に働きかけている。

ウォルマートは考えている。
対面での勤務のほうが生産性が上がる。

日経新聞のニューヨーク特派員の報告。

リモートワークをするアソシエーツの大部分、
それからテキサス州とジョージア州などの、
サテライトオフィスで勤務するアソシエーツ。

彼らにアーカンソーの本社や、
ニューヨーク、サンフランシスコの近郊店への、
転勤や異動を求める通知を出した。

「対面で集まることで
協力やイノベーション、
迅速な意思決定がしやすくなる」

ウォルマートは2020年9月から、
「チームマネジメント」に180度の転換をした。

そしてコロナ禍中には、
リモートワークも取り入れた。

しかし収束に向かった2022年、
本社部門の従業員は原則として、
出社するよう社内ルールを変更した。

今回の措置は、
コロナ前の働き方への復帰を、
一段と進めることに貢献する。

店舗のアソシエーツは、
当然ながらリモートはできない、しない。
20240222_walmart

本部やオフィスで働く人たちも、
対面で仕事するほうが絶対にいい。
気分もいいし、生産性も上がる。

コロナの流行で定着した遠隔勤務が、
企業の生産性を下げているかどうか。
アメリカで議論になっている。

米国内アソシエーツ160万人の同社。
この議論に決着をつけることになるかもしれない。

ウォルマートの第2のニュースは第1四半期決算。

商人舎流通SuperNews。
ウォルマートnews|
第1Q営業収益1615億ドル6%増/EC販売2桁増

2月から4月の第1四半期。
営業収益は1615億ドルで、
前年同期比6.0%の増加。

営業利益は68億ドルで9.6%増、
純利益は51億で205.1%増。

ホーム・デポの第1四半期は減収減益。
外食のスターバックスなども減収。

原因はインフレ疲れだ。
物価は前年同期比3%台半ばの上昇率。
とくに低所得者層に響く。

日本でも同じだ。

そこでウォルマートは、
中高所得層へと客層の拡大を図る。
とくに年収10万ドル以上の高所得世帯を増やす。

そこで新しいプライベートブランドの投入を発表。
ズバリ「bettergoods」

レギュラーブランドは「Great Value」。
対して新PBは高品質・ヘルシーで、
なおかつ5ドル以下の価格設定。

ライフスタイルブランドだ。

トレーダー・ジョーやコストコを狙う。

ダグ・マクミロンCEO。
「食品PBとして過去20年間で最大規模になる。
最新トレンドと最高の品質に焦点を当てる」

もちろん低所得者層はがっちり捕まえている。

ウォルマートとして実に妥当な戦略だ。

オンライン購買の顧客に対しても、
大きく響くに違いない。

ダグ・マクミロン、57歳。
Photo by Iron Lotus Creative / Stephen Ironside
その着眼大局、着手小局。

感心するばかりだ。

〈結城義晴〉

2024年05月16日(木曜日)

訃報/「勘治の前に勘治なく、勘治の後に勘治なし」

谷川俊太郎。
「そのあと」

そのあとがある
大切なひとを失ったあと
もうあとはないと思ったあと
すべてが終わったと知ったあとにも
終わらないそのあとがある

そのあとは一筋に
雲の中へ消えている
そのあとは限りなく
青くひろがっている

そのあとがある
世界に そして
ひとりひとりの心に
IMG_4518 (002)

訃報です。

私が渡米している間に、
亡くなられた。

中野勘治さん。
84歳。

元㈱菱食社長で、三菱食品㈱会長。
5月8日午前0時06分、
心不全のため入院先の病院でご逝去。

お元気だったのに、
本当に驚いた。

1939年7月7日、愛知県生まれ。
私よりも13歳年上。

1962年3月に慶応義塾大学商学部ご卒業。
1962年4月に日本冷蔵㈱(現在の㈱ニチレイ)入社。
ニチレイの取締役から常務、専務になられて、
冷凍食品業界に「この人あり」と言われた。
2001年1月、ニチレイの子会社で卸売業の、
㈱ユキワ代表取締役社長就任。

そして2003年10月、そのユキワと、
菱食子会社㈱リョーショクフードサービスが合併。
新会社の㈱アールワイフードサービス誕生。
中野さんはその代表取締役社長に就任。
低温卸売業で年商2500億円規模だった。

さらに2006年10月、菱食の代表取締役副社長。
2003年1月に廣田さんが会長に就任し、
後任社長は後藤雅治副社長が昇格。
2008年3月、その後藤さんのあとを受けて、
中野さんは菱食代表取締役社長に就任。

2011年には㈱明治屋商事、㈱サンエス、
㈱フードサービスネットワークの3社を、
完全子会社化。
さらに連結子会社の㈱リョーショクリカーを吸収。

三菱食品㈱に商号変更するとともに、
三菱食品代表取締役会長へ。

四社合併は中野さんが成し遂げた。

その後、2013年6月、相談役。
それから2015年7月にオフィスKを設立して、
自由に活躍した。

さらに2018年7月、
㈱ロック・フィールドの社外取締役就任。

「生涯現役」が中野さんの持論だった。

1996年、アメリカのFMIが、
「ミールソリューション」のスローガンを掲げた。
中野さんはいち早くそれを取り入れ、
「冷凍食品=弁当の具材」だったものを、
夕食のメインディッシュにすることを訴えた。

これ、私の主張と同期していた。

私は2010年8月にインタビューした。
中野さんは菱食社長だった。
???????????????????????????????

「目下の最大の話題は、4社経営統合です」

「菱食を中心に、
三菱商事傘下の食品卸売企業3社の経営統合」

「㈱明治屋商事は酒類に伝統があり、強い。
㈱フードサービスネットワークは、
低温商品の機能を持つ。
そして㈱サンエスは菓子問屋として強力である。
もちろん菱食は加工食品だけで、
1兆円のスケールを持つ」

「それぞれの機能において、
製造業にも小売業にも
十分な役割が果たせる総合化を成し遂げる」

中野さんは言った。
四社合併は、
「生活編集能力の高い生活者の
ライフスタイル多様化に対応するために、
新しい中間流通として必須の機能である」

この「生活編集能力の高い生活者」だとか、
「ライフスタイル多様化」だとか、
そんな概念は卸売業からは、
出てこないものだったので、
とくに印象に残っている。

私は廣田正さんに、
大変にお世話になった。

㈱商業界の時代には、
新しい事業をコラボしてくださった。
先輩が残した負の遺産解消を、
廣田さんに助力していただいた。

それ以外にも、
廣田さんは日本の食品卸売業に、
多大な貢献をした。

だから私は何度も言ったし、
何度も書いた。
「廣田の前に廣田なく、
廣田の後に廣田なし」

中野勘治さんはそれを見ていて、
面白くなかったのだと思う。

それでも㈱商人舎発足のときには、
廣田さんにも中野さんにも、
快く発起人になっていただいた。

以来、15年。

各所で一緒に仕事をしたり、
交流したりした。
DSCN00364

月刊商人舎2022年9月号。
特別企画は、
「冷食」が主役になるとき

冒頭に私は書いた。

「この8月に、
中野勘治さんから葉書が届いた。
『ついに冷凍食品が
加工食品の主役になりました。
見届けられて倖いです』」

「中野さんの本来の専門は冷凍食品である。
だから冷凍食品の躍進は、
率直にうれしかったのだろう」

この特別企画を編んだきっかけも、
中野さんだった。

そして「冷食」は今、
まさに主役の座を占めるに至った。
DSCN0021-1-448x336 (1)

ずっと言いそびれていた。
遅きに失したかもしれないが、
ここであらためて言い切ろう。
「勘治の前に勘治なく、
勘治の後に勘治なし」

心からご冥福を祈りたい。

合掌。

〈結城義晴〉

2024年05月15日(水曜日)

球体「スフィア」体験とギターセンターで買った「little Martin」

商人舎US研修ベーシックコース。
ご参加の皆さん、
あらためてお礼を言います。
ありがとうございました。

とてもいい研修会でした。
皆さんの学ぶ姿勢が相互に作用しあって、
事務局を含めた今年の50人が、
「学習する組織」となりました。

さて5日目のすべての講義が終わって、
自由研修の時間になった。

それぞれが思い思いにプランをつくって、
よく学びよく遊ぶ。

ショッピングセンターや店舗を訪れたり、
観光したり、ショーを見たり、
街を歩いたり、買物したり。
それぞれが今度は自由に、
アメリカの時間を過ごす。

それもいい学習です。

私たち事務局が行ったのは、
The Sphere。
「スフィア」。
意味は「球、球体、球形」

球形の大型アリーナ。
2万人を収容できる。

昨2023年9月29日、
マディソンアスクエガーデン社によって開業。
高さ336フィート(102m)、
幅516フィート(157m)。
IMG_4392 (002)

途中に世界第2位の大きさの観覧車がある。
IMG_4388 (002)

ホテルべネツィアンの敷地にオープン。
IMG_4225 (002)

私たちのホテルからも、
夜には浮き上がって見える。
IMG_4226 (002)

球体の表面の映像は、
くるくると変わる。
IMG_4228 (002)

今、球体の中で行なわれている演目は、
「Postcard From Earth」
IMG_4454 (002)

スフィアのドームの中には、
15万7000の超指向性スピーカーがある。
「ウルトラ・ダイレクショナル・スピーカー」という。

ビーム・フォーミング技術が備わっていて、
一つひとつの席ごとに、
最高の音質と音量が計算され、届けられる。

演目によっては特定エリアを、
特定外国語席として提供することもできる。

さらに席に着いてショーを楽しむ間、
音を深みのある「振動」として体感できる。
「インフラサウンド・ハプティック」、
触覚・超低周波音システム。

入り口からドームの中に入ると、
不思議な空間が現れる。IMG_4393 (002)

目眩がする。
IMG_4394 (002)

そしてエスカレーター。
IMG_4395 (002)

未来の空間に入り込んでいくような印象だ。IMG_4398 (002)

3Ⅾの女性が空中歩行をする。
IMG_4400 (002)

アリーナの急な階段状の客席に着くと、
すぐに場内が暗くなって、
演目が始まる。

「地球からの絵葉書」

宇宙から帰還した宇宙飛行士二人。
目覚めて、地球の美しさを再発見する。IMG_4402 (002)

監督はダーレン・アロノフスキー。
ロシア系ユダヤ人のアメリカ国籍。
55歳。

2010年の「ブラック・スワン」、
2023年の「ザ・ホエール」などを監督。

世界の山岳や海中、
人間の祭りやイベントの映像が、
臨場感たっぷりに描かれる。
IMG_4403 (002)

クラゲの大群。
IMG_4405 (002)

これも海中の微生物。
IMG_4406 (002)

海の生き物の大群。
IMG_4407 (002)

そして魚群。
IMG_4409 (002)

座席にいると振動が直接伝わってくる。
祭りの灯。
IMG_4412 (002)
地球からのメッセージ。

面白かったし、
あっという間に1時間が過ぎた。
IMG_4417 (002)
ラスベガスにまた一つ、
名所が増えた。

そのあとタウンスクエアへ。
ホールフーズが核となったライフスタイルセンター。
研修団で2日目にやってきた。

その一番奥にあるのが、
「ギターセンター」IMG_4452 (002)

アメリカ最大の楽器のチェーンストア。
1959年、ハリウッドで創業。
本部はカリフォルニア州ウェストレイクビレッジ。
304店舗、年商21億4000万ドル(3200億円)。IMG_4453 (002)
楽器のスーパーストア。
つまり超大型店の専門大店。

その中のアコースティック部門へ。

小型のフォークギターを見に来た。

古希を超えて、
小ぶりのギターが欲しくなった。

YAMAHAの小型アコースティック。
なかなかいい。
IMG_4422 (002)

これはミッシェルの4弦ギター、珍しい。
ちょっと食指が動いた。
IMG_4420 (003)

しかしほしいと思っていたのがMartin。
店員も一番先に持ってきた。
IMG_4424 (002)

Martin LX1。
シリアルナンバーは418427。
IMG_4425 (002)

これに決めた。
little Martinという。
IMG_4515

ボディは小さいけれど、
いい音がする。
IMG_4514

Martin & Co.
IMG_4513

ケースに入れてもらって、
すぐに背負った。
IMG_4435 (002)

小さいし、軽い。
IMG_4430 (002)

リトルマーチンを背負って、最高の気分。IMG_4440 (002)

後ろ姿はこんな感じです。
IMG_4443 (002)

1978年に全米を回ったときに、
最後にサンフランシスコに来て、
ギターを買った。

店は1853年創業のシャーマン・クレイ。
1980年代までには約60店舗に増えたが、
2013年に閉鎖した。

そこでオベーションを買った。
1111-1モデル。

生まれてはじめて手に入れたのは、
ヤマハの初心者用ギターだった。

今、家には3本のギターがある。
右がオベーション、
真ん中がギブソンJ100。
左がソリッドギターのギブソンレスポールモデル。
DSCN8523-1
ここにリトルマーチンLX1が加わる。

本当にうれしい。
45年半ぶりにアメリカでギターを買った。
45年分、若返った気がした。
IMG_4449 (002)
心からありがとう。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年11月
« 10月  
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.