結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年09月04日(木曜日)

第25回ミドルマネジメント研修会の「自ら、変われ‼」

第25回ミドルマネジメント研修会。
その最終日。

3日目の朝も理解度判定テスト。
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2日目の講義から設問が設けられる。
作業システム、計数管理と、
マネジメントとリーダーシップ。
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体を前傾し、集中して、
回答用紙に向き合う受講生たち。IMG_8385

私もその奮闘の姿を見て回る。
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30分間のテストが終わると、
会場はざわめく。
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答え合わせをする。
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笑顔の関西フードマーケットの面々。
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設問の山が当たった?外れた?
終わった後の笑顔がいい。
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こちらは万代の面々。
万代知識商人大学の10期生たち。
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2回の記述テストは、
受講生たちには大きなプレッシャーだ。
テストが終わると和んだ雰囲気になる。

3日目の第1講義は結城義晴が担当。
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テストの回答を示しつつ、
大事な事柄を再確認する。
これが理解を深める。
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それからケン・ブランチャードのメソッド。
4つのスタイルによるリーダーシップ実践法。
さらにパワーポイントを使って、
チームワークの考え方と手法。

チームマネジメントは、
アメリカの先進小売業に広がってきた。
従来型のマネジメントを180度転換する。

ウェグマンズ、ホールフーズ、
そしてウォルマートが採用している。IMG_8404
その手法を丁寧に講義する。

第2・3講義は井坂康志講師。
テーマは「ドラッカーのマネジメント」
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井坂講師はものつくり大学教授で、
NPO法人ドラッカー学会共同代表。
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スライドと平易な言葉、
わかりやすいアナロジーで、
ドラッカーの本質を語ってくれる。
ありがたい。

そして最後にQ&A。
4人の受講生が質問をしてくれた。

真っ先に立ち上がったのは、
㈱関西スーパーマーケットの坂田洋介さん。
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日本流通産業㈱の石井晋作さん。
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イズミヤ・阪急オアシス㈱の野口俊雄さん。IMG_8432

㈱万代の小野隆裕さん。
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井坂講師はそれぞれの質問に、
丁寧に答えてくれた。
その姿勢はIntegrityそのものだ。
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ありがとうございました。
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昼食を終えると結城義晴。
90分の総括講義。IMG_8467
ミドルマネジメントが知っておきたい、
「流通経営戦略理論」。

まず「チェーンストア理論」。
難しく考える必要は全くない。

ゴドフリー・レブハーの『チェーンストア』から、
チェーンストアの5つの条件。

M・P・マクネアの「小売りの輪論」

そして「チェーンストア2.0」の理論。
『商業経営の精神と技術』の概論。
その秀逸な点と集積すべき点。IMG_8448

それから私の持論「業態とフォーマット」
「ポジショニング戦略」
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最後はサービス・イノベーション。
「ホッケースティックの関係」は、
忘れないでほしい。

職場で、仲間とともに、
実現させてほしい。

そして「自ら、変われ‼」
Behaviorはいま、すぐに、
自分だけで変えることができる。

それがスタートだ。
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すべての講義を終えて、
ご清聴を感謝した。

スタンディング・オベーションで、
讃えてくれた。
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研修会の初日に私は、
73回目の誕生日を迎えた。

そして10時間以上の講義をした。
いつまでできるかはわからない。
しかし全身全霊を傾けて、
伝えるべきことを語る。

語り終わったときに、
拍手をいただく。
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変わろうとする知識商人たち。
それが何よりうれしい。

研修会が終了すると、
受講生たちはバス3台に乗り込んで、
熱海に向かう。
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最後のバスに乗り込む受講生たち。
ニコニコ顔で元気いっぱい。IMG_8474

その彼らを事務局全員で手を振って見送る。
受講生たちも手を振り返してくれる。
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心から健闘を祈った。

聞いただけ、知っただけでは、
何にもならない。

行動し、実行し、
そのプロセスで自分が変わる。
職場を変える、仲間を変える。
店を変える。

そして会社を変える、社会を変える。

それがあなたの仕事です。
それがあなたの役目です。

頑張れ。
ありがとう。

〈結城義晴〉

2025年09月03日(水曜日)

新浪剛史氏の辞任とミドルマネジメント研修会の「integrity」

新浪剛史さんが辞任した。
サントリーホールディングス会長。
66歳。

東京都内の新浪家宛てに、
海外在住の知人からサプリメントが発送された。

北九州市の門司(もじ)税関がそれを発見した。
海外では正規販売されている商品だが、
日本では違法な大麻成分が検出された。

税関から福岡県警に連絡が入って、
大麻成分を含む麻薬の密輸入の疑いで、
新浪氏の自宅が捜索された。

大麻や違法薬物は発見されず、
新浪氏の尿からも薬物成分は検出されなかった。

新浪氏は県警の任意の事情聴取に答えた。
知人から「健康に良い」と紹介されて送ってもらった。
「大麻成分が含まれていることは知らなかった」

しかし、
サントリーホールディングス鳥井信宏社長。
「取締役会では捜査結果にかかわらず、
新浪氏のサプリメントに関する認識が
代表取締役という立場にある人物として
容認できないとの結論に至った」

新浪さんは1981年に三菱商事に入社した。
2002年5月、ローソン社長兼CEO。
2014年にサントリーホールディングス社長、
今年3月に会長の座に就いた。
2023年からは経済同友会代表幹事。

サントリーは健康食品・サプリメントも売っている。
その売上高は2024年12月期で3363億円。

だからマーケットへの印象はすこぶる悪い。
退任もやむを得ないのだろう。

小売りのことをよく知ったメーカーのトップ。
貴重な存在だし、その発信力も評価されていた。
真相はまだわからない。

日経新聞編集委員の田中陽さんによると、
最近の新浪さんはIntegrityを強調していたそうだ。

だからこそ余計に残念だと思う。
しかし、真のIntegrityは、
この後の態度によって判明する。

新浪さんには凛としていてほしい。

さて第25回商人舎ミドルマネジメント研修会。
2日目は朝8時15分から理解度判定テスト。IMG_8320

商人舎の研修会では、
日本のセミナーでもアメリカ視察でも、
できるだけテストを実施する。IMG_8319

学んだことをどれだけ理解しているか。
それを受講生自身がわかることが大事だからだ。

もし理解していない事柄があれば、
もう一度、理解するまで復習したり、
わかっている人に質問したりできるからだ。

受講生たちの間を見て回る。
皆、よく書いている。IMG_8323

テストが終わると一気になごむ。
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2日目の第1・2講義は高野保男講師。
「作業システムとL.S.P.」がテーマ。
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高野講師は今も、
スーパーマーケットを指導して、
全国を巡る。

すでに60社以上の作業改善に貢献してきた。IMG_8330

現場の改善事例の動画を使って、
わかりやすく講義していく。IMG_8334

ときに質問を投げかけて手を挙げさせる。
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これによって参加企業のレベルと課題を知り、
その実情にあわせて講義をしていく。

ありがたいことだ。
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午前中最後の講義は結城義晴。
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理解度判定テストの回答を確認する。
追加したいことも語るから、
いつも30分近くの時間を使って、
設問の解説をすることになる。IMG_8344

そのあとは働きがいのある企業ランキングと、
顧客満足・従業員満足。IMG_8346

そして戸籍を得たスーパーマーケット産業の話。IMG_8350

昼食をとって、
第3・4講義は山本恭広講師。
月刊商人舎編集長。
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計数の講義は白部和孝講師が担当していた。
シラベ・リテイル・システム研究所代表。
データ活用のポイントを整理し、
在庫管理と人時管理の計数を教授してくれた。

それらを引き継いで、山本講師が講義する。
商品回転率と交叉比率、
さらに人時生産性の基礎知識。
計算方式。
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コーヒータイム。
ちょっとした菓子も提供。
皆、それぞれにくつろいで談笑している。
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研修ホテルのニューウェルシティ湯河原は、
講義会場自体が広くて天井が高くて快適だが、
ホワイエも広々としている。
缶詰セミナーではこの環境が大事だ。
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2日目の午後4時15分から8時までは、
結城義晴が一気に講義。

最初はミドルマネジメントの経営数値。
山本編集長の現場の計数に対して、
経営に関する損益計算書と貸借対照表、
キャッシュフロー計算書の基礎。

そのあと総資本回転率とROAの原理。
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簡潔に切り上げるつもりだが、
いつも熱が入ってしまう。

そしていよいよマネジメント講義。

まず悪い組織の兆候。
そして大企業病。
茹で蛙状態。

それらが生まれる理由の一つは、
マネジメント理論の間違いである。

古典的なマネジメント理論はすでに、
誤りが多いとされるにもかかわらず、
それを使って経営がなされ、
組織がつくられている場合が多い。

それを180度転換させねばならない。IMG_8364

一言で言えば、
アンリ・ファヨールから、
ピーター・ドラッカーへ。

これは日本の産業にとっても必要なことだ。
もちろん小売業にとっても、
製造業・卸売業にとっても、
それらの関連産業にとっても、
マネジメントにおいて必須のことだ。IMG_8369

具体的な行動に対しては、
私の著書の説明から入る。
『店長のためのやさしいドラッカー講座』

そのあと責任の組織化、
自己管理による目標管理、
そしてコミュニケーション。

ドラッカーのエッセンスを、
小売業の事例を交えて語る。
いつも自分で講義をしながら、
燃えてくる。IMG_8366

みんなよく聴いてくれた。IMG_8373

夜7時を超えて今日の最後の講義。

リーダーシップ実践法。IMG_8368
リーダーシップに関しては誤解が多い。

リーダー的資質とは関係ない。
カリスマ性とはさらに関係ない。
神秘的なものではない。
むしろ平凡で退屈なものである。
リーダーシップは手段である。
その本質は行動にある。IMG_8375

今回はジョン・マックスウェルの考え方を強調した。
「リーダーの中のリーダー」
「世界一のメンター」
そんな風に讃えられる。

マックスウェルも、
Integrityの「終始一貫」を指導してくれる。IMG_8371
2日目は朝8時15分から夜8時まで。

みんなよく聴いてくれた。
よく勉強した。

このあとも明日の理解度判定テストに向けて、
復習に余念がない。

濃密な学習によって、
自分なりの本当のIntegrityを追究してほしい。

私はそう思う。

〈結城義晴〉

2025年09月02日(火曜日)

結城義晴73回目の誕生日と25回目のミドルマネジメント研修会

夏空の駿河湾。
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大島の島影がくっきりと浮かぶ。
手前は初島。
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今日から湯河原。
商人舎ミドルマネジメント研修会。
毎年6月と9月に開催する。

場所は湯河原の研修ホテル、
ニューウェルシティ湯河原。
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コロナ下の2年は中止した。
今年は25回目。

これまでに1700名以上の修了者を送り出した。

知識商人を輩出することによって、
商業の現代化を成し遂げる。

受講者の中には
社長になった人たちや、
経営幹部として活躍する人たちがいる。
コンサルタントとして独立した人もいる。

やりがいを感じるし、なにより嬉しい。

初日は午後1時から8時までの講義。
100名近い受講生が、
研修会場の大観の間に参集。
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第1・2講義は結城義晴が担当。
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いつも最初に話すのは、
「脱グライダー商人」のことだ。
グライダー商人は自分のエンジンを持たない。
自分で判断できない。
上の言うことばかり気にしている。

けれどこれからは自分らしいエンジンが必要だ。
それをこの研修会で学んでほしい。

それから「商人の本籍地と現住所」
最初に仕事を覚えた会社や店が、
商人の本籍地だ。

本籍地と現住所が変わらない人もいる。
それは幸せなことだ。

しかし現住所は変わる。

そのときにも本籍地を大切にしてほしい。
本籍地こそアイデンティティである。

だから本籍地の悪口を言ってはならない。
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2008年4月17日に、
「商人舎発足の会」が開催された。

93人の発起人の皆さんに、
支援していただいて商人舎は始まった。

私は3時間の講演をした。

その講演のエッセンスを、
ミドルマネジメント研修会では、
冒頭に講義する。

まずは倉本長治とピーター・ドラッカー。
「商売十訓」と「integrity」IMG_8208

休憩を挟んで、「商業の近代化」の歴史。
今はこの中にチェーンストアの発展段階を織り込む。
チェーンストア1.0、2.0、そして3.0。IMG_8197

理屈っぽい講義だが、
これが理解できなければ、
Innovationのトレンドが見えてこない。
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第3講義は鈴木哲男講師。
㈱RAE取締役会長。

午後4時から8時まで、
休憩をはさんで3時間半の講義。

テーマは「52週MDとストアコンパリゾン」。
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商人舎発行の『REA戦略』をもとに、
52週MDの本質を語ってくれる。
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鈴木講師の講義は、
具体的な企業の取り組み事例や、
ご自分の調査資料を駆使して展開される。IMG_8291

ストアコンパリゾンから導き出された、
調査しやすい店のセオリー。

調査しやすい店は、
買いやすい店だし、
作業しやすい店だし、
売れて利益の上がる店である。
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目からウロコだ。

最後は受講生から質問を受ける。
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受講生たちは事前に本を読み込んできている。
だから具体的な質問をする。IMG_8307

いい講義だった。
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ありがとうございまました。

初日の講義が終わると、
レストランで夕食。
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熱海湾の魚介類を使ったメニューと、
すき焼き鍋とローストビーフサラダ、
炊きたての釜めし。
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満足の受講生たち。
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講師席には、高野保男さんが合流。
明日講義してくれる。
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ビールをいただきながら、
情報交換。

話は尽きない。

夕食を済ませると
受講生たちは、次々に会場に戻って、
復習にいそしむ。
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明朝今日の講義の理解度テストが実施される。
だから自ら復習する。
部屋で、会場で、
ホワイエの一角で。

その頑張る姿を見ることは、
講師冥利に尽きる。

今日は私の73回目の誕生日だった。
フェイスブックやメール、メッセンジャーに、
お祝いの言葉をいただいた。

心から感謝します。

しかし止まっている暇はない。
体調には十分に気をつけながら、
まだまだ自分のペースで走り続ける。

どうしても私は怠けたがる。
それと闘う。

「無茶はアカン、
無理はエエけど」

故西端春枝先生から言われた。

忘れてはならない。
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そういえば春枝先生からは、
私の誕生日にいつも、
プレゼントが届けられた。

配慮の人だった。

春枝先生は98歳に永眠された。

私もちょっとだけ、
春枝先生を追いかけたい。
そう思っている。

皆さん、ありがとうございます。

朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。

合掌。

〈結城義晴〉

2025年09月01日(月曜日)

やなせたかしさんの詩「絶望のとなりの希望」

Everyone, Good Monday!
[2025vol㉟]

2025年第36週。
9月第1週。

今月はあちこち飛び回る。

今週は月刊商人舎9月号の入稿をしつつ、
火曜・水曜・木曜と湯河原。
商人舎ミドルマネジメント研修会。

万全の態勢で臨みます。

来週は少し休んで、
9月第3週はロサンゼルス。
9月17日から22日まで。

ドジャースのゲームを観戦し、
店舗視察をします。

帰国したら、
商人舎バイヤーセミナー。

次々にご参加のお申し込みをいただいています。
ありがとうございます。

そうしているうちに9月最終週。
月刊商人舎10月号の〆切がやってくる。

充実した日々に感謝しましょう。

今日は朝から9月号の入稿。
ほんとうに濃密な仕事をしました。

最後に今月の表4ページ。

広告はブルーチップ。
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宮本洋一社長の気合の入った写真。
「解決!!」
[DX×顧客戦略×現場改善]

やりますね。

ありがとうございます。

もうそろそろ仕事を終了して、
帰宅します。

お疲れ様。
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1923年9月1日、関東大震災が起こった。
102年前。

死者・行方不明者約10万人。
未曽有の大惨事だった。

その震災の発生日にあたる日が、
「防災の日」と決められた。

新潟日報の巻頭コラム「日報抄」
「安全安心を安易に他人に委ねるまい」

賛同したい。

「一人一人が
想定される災害のリスクを把握する。
その上で正しく恐れる。
でき得る限りの準備を
怠らず、諦めない」

「万が一のための用心ではない。
災害は必ず起こるものだと考えたい」

他者に委ねてはならない。
災害のリスクを把握し、
正しく恐れる。

店を預かる者として、
その店を多く運営する者として、
できうる限りの準備を、
怠らず、諦めず。

災害は必ず起こるものだ。

昨日の朝日新聞の「天声人語」
やなせたかしさんの詩を紹介した。
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絶望のとなりに
だれかが
そっと腰かけた
絶望は
となりのひとに聞いた
「あなたはいったい誰ですか」
となりのひとはほほえんだ
「私の名前は
希望です」

では、みなさん、今週も、
絶望のとなりの希望でありたい。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年08月31日(日曜日)

現代芸術家/森村泰昌の「肖像・ゴッホ」に勇気づけられる。

8月31日。

8月の終わり。
明日から9月。

横浜もまだ暑い。
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日経新聞「私の履歴書」
美術家の森村泰昌さん。

ついつい1カ月間、
読み続けてしまった。

この新聞のこの連載にしては、
異例中の異例。

だから面白かった。

最近の日経新聞は、
大きく変わってきた。

夕刊の「プロムナード」では、
写真家の金川晋吾さんが連載を書いている。
この人も異例の写真家だ。

一言で片づけたいとは思わないが、
「多様性」や「異端性」が極めて大切であることを、
経済の新聞が主張している。

それがいいと思う。

森村泰昌さんは、
自らがゴッホの自画像に「なる」作品によって、
衝撃的なデビューを果たした。
セルフポートレイトの写真作品。
1985年に発表して、もう40年が経過する。62OSXN4X2VJ6DC47PVPTF7FKSA (1)

小学生のころから油絵を描く。
京都芸術大学に入って美術に取り組む。
アーネスト・サトウの弟子となって写真を学ぶ。
それらもあきらめて文筆家を志す。

しかしピンとくるものがない。

述懐する。
「核になるところが見つからない。
何をやってもこれは自分じゃない。
自分がどこにもないと思っていた」

「だが迷っている自分が確かに
ここにいるじゃないか」

「迷っている自分を核に、
これまでやってきたことすべてを寄せ集めたら、
トータルなひとつの世界になった」

それが「肖像・ゴッホ」だった。

以来、次々に西洋の名画の主人公になり切って、
それを自分で写真にした。

レンブラントにも、
ダ・ヴィンチにもなった。
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マネの「オランピア」にも、
フェルメールの「真珠の首飾りの少女」にも、
モナリザにもなった。
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マリリン・モンローにもなったし、
三島由紀夫にもなった。
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これを芸術と分類していいのか。
そんな疑問すらわいてくる。

しかしそれが森村である。

そして74歳の今、究極の形を追う。

森村さんは自問する。
「私は何者か、私に何ができるのかと、
『私』問題を模索しながら、
絵画、映画、20世紀の歴史を巡る歳月。
その歳月を経て、ふと、
頭をよぎる問いがある」

「私のセルフポートレイトは、
これからどこに行き着くのか。
この先にある究極のセルフポートレイトとは、
どんな形なのか」

連載の最終回では、
中島敦の小説「名人伝」に行きつく。
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弓矢の技を極めたと自負する一人の若者が、
峻厳(しゅんげん)な山の頂に住まう、
さらなる奥義を極めた達人を訪ねて行く。

すると「よぼよぼの爺さん」がいた。
老人の前で若者は見事な弓矢の技を披露する。
しかし老人は一向に驚かずこう言った。
「一通りは出来るようじゃな。
しかしいまだ不射之射(ふしゃのしゃ)
知らぬと見える」

それから弓矢を持たず素手のまま、
崩れかけの崖に立った。
一羽の鳶(とび)が空を舞っている。
すると老人は、
「見えざる矢を無形の弓につがえ」
射ち放った。
たちまち鳶は
「中空から石のごとく」落下した。

森村さんは上方落語の桂枝雀にも共感する。

落語家に与えられているのは、
およそ70センチ四方の小さな座布団だけである。
だがここに座れば、愛宕山に登ることも、
三十石船(さんじっこくぶね)で旅することも出来る。

しかもノーメイク。持ち物も、
キセルにも箸にもなる扇子のみ。
この身軽さで、落語家は一人で
何人もの登場人物のすべてに「なる」。

枝雀曰く、
落語は小さくて大きい芸である。
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「座布団に座り、一言も言わんと、
ただぼやーっとしてるだけで、
おかしいなと笑えるんやったら、
それが究極の落語やな」

「『究極』の形は意外にありふれている。
けれど『究極』に至ろうとする道程は
苦難に満ち、決してありふれたものではない。
その苦難の道を歩む者だけが、
至りえぬ『究極』の在り処(か)を照らし出し、
指し示すことが出来るのだろう」

「中島敦や桂枝雀には及ばないが、
私も今少し『究極』を目指し、
粘ってみたい」

森村泰昌、1951年生まれ。
私より一つ年上の芸術家だが、
まだまだ気力は衰えていない。

森村泰昌の存在感。
そのポジショニング。

商売に置き換えると、
自分らしい店、自分らしい売場、
自分らしい商品。

自分らしい経営。

森村泰昌はそれらをやろうとする人間を、
勇気づけてくれる。

〈結城義晴〉

2025年08月30日(土曜日)

結城義晴「ギリギリ主義・コツコツ主義」と丸山眞男「精神の惑溺」

暑いあつい8月末の土曜日。
横浜の最高気温は36℃。

ああ。
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午後から車で商人舎オフィスに出社。
やっぱり原稿執筆には、
ここが一番いい。

着いたらすぐに、
熱い珈琲を淹れる。
いや淹れてもらう。
商人舎オフィスの豆は、
問屋から直接、買ってくる。
酸味が強いのが好きだ。

月刊商人舎9月号の原稿執筆と編集業務。

月曜日から9月。
学校の新学期が始まる。

私は子どものころから、
なぜかギリギリ主義だった。
どうしてだろう。

父も母も何でも着々と進めるタイプだった。
妹もコツコツ宿題をやっていた。

私だけギリギリまで先延ばしにした。

小学生、中学生、高校生。
だからいつもこの時期は宿題に勤しんでいた。

高校3年の時だけは夏休みの宿題はなかった。
大学受験の時期だったからだと思う。
なんだか嬉しかった。

社会人になると、
どういうわけか、
毎月〆切のある仕事に就いた。

それ以来、もう50年近くになる。

ビル・ゲイツもギリギリ主義で、
「これが一番能率が上がる」と言っている。

さらに商人舎を設立する直前から、
毎日〆切のある生活になった。

このブログを始めたからだ。

私は神を信じる者ではない。
けれど運命のようなものは、
ご都合主義で持ち出してくる。

ウォルマート創業者のサム・ウォルトンの言葉。
“Retail is Detail”などは、
「小売りの神は細部に宿る」と訳したりする。

そんな風に神がいるとしたら、
結城義晴のような怠け者には、
〆切を与えねばならないと決めたのだろう。

子どものころからギリギリ主義でも、
一日いちにち、〆切が来れば、
それは日々のコツコツ主義になる。

うまくできている。

それにも感謝しておこう。

さて、朝日新聞「折々のことば」

編著者の鷲田清一さんには、
本当に感謝している。

第3467回。
自由と専制との

抵抗闘争関係そのもののうちに
自由があるのであって、
自由の単一支配は
もはや自由ではない。
(丸山眞男)

「明治の思想家・福沢諭吉が、
生涯説き続けたことの一つが、
価値の多元的存立が自由の基盤をなす
ということだった」

政治学者の丸山眞男はそう言った。
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「たえず変化する状況の中で、
各人が一つの価値規準に呑(の)み込まれ、
主体的な判断を放棄する、
そんな精神の『惑溺(わくでき)』から
社会の停滞が起こる」

丸山眞男らしい。
あえて「惑溺」という言葉を使った。

「耽溺(たんでき)」と言う言葉もある。

惑溺も耽溺も、
「あることに夢中になり、
それ以外考えられなくなること」

「耽」は一つの物事に熱中することだが、
「惑」は正しい判断ができなくなること。

だから「惑溺」には、
心を奪われて判断力を失うというニュアンスがある。

正しい判断ができなくなるほど、
一つの価値基準に吞み込まれてしまう。
多くの人がそうなると、
社会は停滞する。

だから丸山は言う。
「自由は“多事争論”の中で育つ」

専制主義やポピュリズムは、
そこが危うい。

丸山著『福沢諭吉の哲学』から。
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昨日の玉置泰さんの「人間発見」で、
伊丹十三さんが亡くなったあと、
宮本信子さんが詩を教えてくれる。

三好達治の「涙をぬぐって働こう」

とてもいい。

みんなで希望をとりもどして
涙をぬぐって働こう

忘れがたい悲しみは
忘れがたいままにしておこう
苦しい心は苦しいままに
けれどもその心を
今日は一たび寛(くつろ)ごう

みんなで元気をとりもどして
涙をぬぐって働こう

あんまりいい感じのしない世の中でも、
お客さんに喜んでもらう。
商売はとても明るい。

みんなでげんきをとりもどして、
涙をぬぐって働きたい。

〈結城義晴〉

2025年08月29日(金曜日)

オーケー川口中青木店開業と「人間発見」の玉置泰さん

オーケー川口中青木店が開業した。
昨日の8月28日、金曜日。ok-facade

山本恭広編集長が取材に行った。

JR京浜東北線川口駅から、
東に2㎞弱入った住宅地。

とくにメディア向けの案内はなかったが、
事前に店舗撮影と取材を申し込んだ。
取材者はたった一人だった。

オーケーとしては川口市内5店舗目。
59万5000人の人口の川口に集中出店している。

オーケーのこの新店は、
強いチェーンが集まる激戦地内に飛び込んだ。

1998年10月にオープンしたのが、
サミットストア川口青木店。summit

2001年7月にはベルク中青木店。belc

そして2003年12月に、
ヤオコー川口朝日店が最後発で登場。yaoko-facade1

どの店もオープン以来、20年以上が経過した。

この間、どの店も改装を施し、
最新のMDを展開している。

今、ヤオコーが外壁をリフレッシュ中。yaoko-kawaguchi

オーケーの建物は地下1階地上4階。
売場面積500坪を確保するために、
1階は搬入口と駐車場用の車路スペースとした。
2階から上は駐車場にして、
地下1階に売場を設けた。

9時半に店舗に到着。
開店前には200人が並んだ。

8時半のオープンのあと、
1階で入場制限をしながら、
エスカレータで顧客を誘導する。

次々とエスカレータを降りてきた顧客に、
従業員がカートを渡す。ok-produce

売場先頭の壁面には、
シャインマスカットと巨峰の大量陳列。ok-kawaguchi1

第1主通路に青果、鮮魚、精肉を集中させる。

このゾーニングはオーケーの定石だ。ok-kawaguchi2

売場最終コーナーは惣菜とベーカリー。
開店日限定の握り寿司と焼きたてピザに、
顧客が群がる。
ok-deli

二宮涼太郎社長は、
手応えを語ってくれた。ok-ninomiya

「川口市内の既存店の地主さんのご縁で、
この店の土地が確保できました」

「川口はオーケーの認知度が高いエリアです。
この店の周囲にはいろいろな国のお客さまが、
住まわれています。
それが特徴ですが、
しっかり対応していきます」

激戦区ではあるが、
手ごたえ十分といった印象だった。

詳細は月刊商人舎9月号に掲載する。

山本編集長のルポルタージュ。
ご期待ください。

さて日経新聞夕刊の「人間発見」
今週の月曜日から5日連続で、
玉置泰さんが登場。

楽しみに読み続けてきたが、
金曜日の今日が最終回。
玉置泰

肩書は、
「ITM伊丹記念財団理事長、一六会長」

ITMグループの祖業は菓子の一六。
自動車販売のネッツトヨタ愛媛と、
スーパーマーケットのセブンスターなど、
愛媛県で多角的に事業を展開している。
年商は約400億円。
愛媛県を代表する企業グループだ。

その玉置さんは、
伊丹十三記念館理事長である。

この「人間発見」は、
その人の意外な側面を発見する、
という趣旨の連載だ。

玉置さんは、
立派な経営者であり、
なおかつ映画プロデューサーであり、
伊丹十三記念館を運営する。

そこにスポットを当てた。

玉置泰さんの父上は、
商業界全国同友会の重鎮だった。
つまり倉本長治の愛弟子だった。

その意味でも私はお世話になった。

玉置さんは同郷の伊丹十三さんに、
一六タルトのCMに出てもらうことで知り合いになる。

それから伊丹さんの初めての映画製作に協力する。
「お葬式」への出資だ。

それが大成功して、
伊丹映画は高く評価され、
次の「タンポポ」などの名作につながっていく。

玉置さんは伊丹プロダクション社長となって、
その後も伊丹さんを支え続ける。

映画「スーパーの女」は記念碑のような作品だ。
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玉置さんはセブンスターの社長だった。

伊丹さんが中内功さんに興味をもっていた。
しかし玉置さんは反対した。
「価格破壊は1~2年で魅力を失うような言葉で、
映画にはなりませんよ」

そこで玉置さんは、
サミット社長の荒井伸也さんに引き合わせる。
伊丹さんは荒井さんの「スーパー愛」に感動する。

そこから映画づくりが始まった。

玉置さんと荒井さんが全面的に支援して、
「スーパーの女」は制作され、封切され、
大ヒットする。

スーパーマーケット業界は産業を上げて、
この映画を支援する。

私も旧サミット方南町店での撮影現場や、
布田の撮影所を訪れて、
少しだけ協力した。

その撮影所の伊丹組の事務所には、
「小説スーパーマーケット」、
「日本スーパーマーケット原論」、
そして食品商業別冊がずらりと並んでいた。
「惣菜の教科書」や「サミットスタディ」などなど。

伊丹さんや製作スタッフたちが、
「面白い、面白い」と言って読んでくれたそうだ。

このときの映画のプログラムに、
私は一文を書いた。

私自身がスーパーマーケットで泣いた話。

食品商業誌上では、
対談「伊丹十三×荒井伸也」を掲載した。

その伊丹さんが突然、亡くなった。
玉置さんは慟哭しながらも、
奔走してすべての実務を処理した。

そんなことが5日にわたって描かれた。
いい連載だった。

今、玉置さんはお二人の息子さんに、
それぞれの事業の社長を任せて、
会長の座にある。

伊丹プロダクション社長は、
伊丹夫妻の次男、池内万平さんに譲った。

私も伊丹映画のファンだ。
とくに好きな作品は「タンポポ」。
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それから「あげまん」。
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もちろん「スーパーの女」はいい。
これらの映画は玉置泰さんの作品でもある。

ありがとうございます。

〈結城義晴〉

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