結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月08日(火曜日)

アメリカ報告・その②1兆円企業「ホールフーズ」最新都市型500坪小型店の全貌をくまなく御覧入れます!

今回の風邪は粘り強い。
なかなか熱が引かない。

今朝もちょうど38度。

それでも長編のブログは書ける。
不思議なもので、3年以上も続けていると、
ブログを書くことが日常となって、
どんな体調のときにも書くことはできる。
内容のレベルは、自分では判断できない。

ただし、誤植は多くなってしまう。
校正陣がすぐに直すが、
打ち込みの間違いは多くなる。

前原誠司前外務大臣の辞任について、
各紙巻頭コラムで取り上げている。

こういった事件を一流のコラムニストがどのように描き分けるか。
何しろライバル新聞も必ずこの件を取り上げるのだから、
特徴を出さねばならない。

そこで面白いバトルが展開される。
といっても、結局は、
どんなたとえ話に引っ掛けるかということになるのだが。

読売新聞の看板コラム『編集手帳』は、
ちくま文庫『桂米朝コレクション4』から上方落語『帯久』の一節を取り上げた。
「悪(わる)なると何もかも悪なりますなあ。
弱り目に祟(たた)り目、泣き面に蜂、貧すれば鈍する、
藁(わら)打ちゃ手ェ打つ、便所へ行(い)たら人が入っとおるちゅうぐらいで」
菅直人政権の現状を茶化す。

日経新聞の『春秋』は、松本清張の推理小説『点と線』。
「本人や事務所に『点と線』のような数字への敏感さがあり、
献金を十分チェックしていれば、問題は防げたかもしれない」

前原前大臣が鉄道ファンであったことに引っ掛けたのだが、
はっきり言って、つまらない。
ただの事後説教になってしまった。

朝日新聞の『天声人語』。
大学受験の国語の試験問題に出たりして、
最も権威あるコラムだが、
今回はこれが一番よかった。

米国人作家O・ヘンリーの短編『善女のパン』に重ねた。
「小さなパン屋でいつも古くて安いパンを買う男がいた。
きっと貧乏なのだと女主人は思う」

「ある日、彼女はこっそりパンにバターをたっぷり塗って渡す。
だが男は建築家で、図を描くときにパンを消しゴム代わりにしていたのだった。
情けが仇(あだ)となり、大事な図面にバターがついて台無しになる――」

どんな事件にも、
人間としての暖かさが潜んでいたら、
それをすくいあげる心持ちをいつも持つべきだと、
私は思う。

さて、第10回アメリカ報告第二弾。
「ホールフーズの画期的都市型小型店」
これがいい。

今回、ホールフーズは新店3店と既存店1店を訪れた。

既存店は1500坪の店で、
アメリカのスーパーマーケットとしては標準サイズ。
この店がことのほか良かった。
地域になじんでいて、顧客をよく知っていて、
しかもそのうえでホールフーズのマーチャンダイジングが展開される。

もちろん新店にも、
最新のシステムが導入されていて、
これはこれで素晴らしかった。

しかし日本のスーパーマーケット企業にとって、
最も手が届きやすい存在が、
最新の都市型小型店。
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「NOW OPEN」の立て看板がある。

そしてファサード。
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ホールフーズの2010年度売上高は90億0600万ドル。
いつものように1ドル100円換算で9006億円。
もう1兆円に届きそうな勢いの会社。
その売上高伸び率は前年比12.1%。
さらに既存店伸び率は7.1%。

リーマンショックを受けて停滞していたが、
いち早く回復した。

回復の源となったのは、
「スーパーマーケットの原点に帰ろう」というコンセプト。
CEOのジョン・マッケイが呼び掛けた。

純利益は2億4600万ドル(246億円)。
こちらの伸び率は何と67.3%。

そして期末店舗数は299店になり、
300店を目前にした。
1店平均にすると30億円も売る。
期中新店が16店、期中買収店が2店、そして期中閉鎖店が3店。

ホールフーズは2007年2月21日、
オーガニック・スーパーマーケット第2位のワイルドオーツと統合。
当時のワイルド・オーツは年商12億ドル、110店。

このワイルド・オーツが500坪クラスの小型店を抱えていた。
いま、ホールフーズはこの小型店の改装を盛んに行っている。

これから紹介する店が、
そのモデルであることは確か。

売り場を写真で詳細に追いかけてみよう。
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売場が狭いので、店頭に花売り場を出している。
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青果部門の柱には地域を示した方向指示板がある。
楽しい売場づくり。
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店に入ると左側に青果部門。
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ブドウも山積み。
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何といっても、バナナのぶら下げ陳列は目立つ。20110307160249.jpg

店舗面積は約500坪。
だから至るところに商品を並べている。
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果物の森の中を歩いている気分になる。
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壁面の青果部門のダミー。
小型店は量販型にはならない。
しかし一定以上の品揃えをしなければ、
ホールフーズとしての完成されたライフスタイル提案ができない。
だからダミーを上手に使って陳列しなければならない。20110307160643.jpg

コンパクトな紙袋のケース。
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POPには、最小限の情報しか書かない。
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青果部門の次にあるコーヒー売り場。
コンパクトに出来上がっている。
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ばら売りコーナーの秤。
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青果、コーヒーの次に、
コーナーを右に曲がると、
プリペアードフードからミートの対面売り場へ。
下段にも相変わらず、商品が埋め込まれている。
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さらに乳製品売り場が続く。
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チーズ売場の下段にも商品陳列。
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チーズの対面売り場の向かいには、
島陳列のチーズ売場。
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その前に、スープバー。
店は狭くとも、スープバーは必須。
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スープバーの反対側にはサラダバー。
レギュラー店舗ではこれらがそれぞれ独立したアイランドになっているが、
小型店では一つにまとめられている。

そのサラダバーのペーパータオル。
プライベートブランドの「365」。
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スープバーの横にも、コーンブレッドが、
関連陳列されている。
ホールフーズの小型店売場づくり政策がよく出ている。
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チーズ売場からピザ、イタリアンのデリ売場へ。
店舗左手に位置付けられている。
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オーダー・サンドイッチの申し込みボード。
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パン売り場のサイド陳列。
こういった小物の陳列器具がふんだんに使われている。
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乳製品、デリから鮮魚・精肉売り場へ。
店舗左サイドは対面販売コーナー。
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魚売り場の冷蔵ケースの前面にもケース売りを設けている。
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ゴンドラアイル内のリーチインケース。
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今年の店の特長、
最新設備「新型リーチインケース」。20110307160433.jpg

枠部分が細くて、商品がくっきりと見える。
飛び出してくるようにもみえる。
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ゴンドラエンドではこれまた新製品のワイン。
「チャック・ザ・チャック」1ドル99セント。
そう、トレーダー・ジョーの1ドル99セントワイン「チャールズ・ショー」のコピー。
チャールズ・ショーは通称「2ダラー・チャック」と呼ばれる。
明らかにそれを意識して開発された商品。
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両者を飲み比べてみたが、
私はトレーダー・ジョー派。

チーズとワインが対面で完全に関連販売。
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ワイン売り場にスウィート・バゲットを関連付ける。
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ゴンドラ列は冷凍食品の2本を入れて、全部で5本。
エンドにはウィング陳列。
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365のプライベートブランド「パーパータオル」。
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下段にもきちんとしたフェースどり。
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グロサリーはスーパーマーケットの収益源。
きちんと品揃えするが、
在庫はゴンドラ上部に積んである。
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天井には採光システム。
木造りのエコ店舗。
究極のエコストアはダウンサイジングによってなされる。
ダウンサイジングとは小型化のこと。
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ダウンサイジングする代わりに、
フック陳列のような関連販売を多用する。
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ホールフーズは全店で「ローカル」の商品を開発し、売り込む。
日本流にいえば「地産地消」。
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売場のあちこちにあるごみ箱。
ホールフーズのごみ箱は、
なぜかセンス良く感じられる。
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多分、色づかいだろう。
イエローの什器にグレーとブラックのごみ箱。

青果部門の作業カート。
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これは葉物用の多段カート。
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そしてグロサリー用のカート。
ホールフーズでもカートシステムで、
オペレーションが展開されている。
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精肉のセルフサービス売り場のビニール袋ケース。
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そして冷凍食品売場の隅に掃除用具。
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床に「チェックアウトはこちら」のシールが張ってある。20110307161546.jpg

その先をみると、顧客が並んでいる。
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そして店舗右手が、
その集中チェックアウト・レジ。
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両サイドに13台のレジがあって、
顧客は一列に並んで待ち、
順番に空いたレジに入る。
日本の新幹線の切符窓口と同じ方法。
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いかがだろう。
ホールフーズの小型店。

テキサス州オースティンのランドマークストアは2200坪。
その4分の1ほどの店に、ホールフーズの持てる力を全部出し切った店。

ここに唯一、存在しないのは、
イートインスペース。

それ以外の要素はすべて盛り込まれている。
都市型小型店の典型をみた気がする。

もちろんオープンしたばかりであるから、
これからどんどん修正も加えられるに違いない。

しかしここには1兆円を目指すホールフーズの新フォーマットがある。
(明日へつづきます)

<結城義晴>

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