結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月07日(月曜日)

アメリカ報告・その①「ダイソーの歴史的バラエティストア新展開と行きつく先のウォルマートの現状」

Everybody! Good Monday!
[vol10]

2011年も第10週、5分の1が過ぎた。
3月第2週。

来週月曜日の14日は、
ホワイトデー。

バレンタインデーにチョコレートなどプレゼントをもらった男性が、
お返しにプレゼントする日。

キャンディやマシュマロ、ホワイトチョコレートなどが代表的。
福岡市の老舗菓子屋「石村萬盛堂」が始めた。
どこの誰が始めたかは諸説あるが、
私は福岡生まれなので、石村萬盛堂説を応援している。

いずれにしても日本発のイベントで、
東アジアの韓国、台湾、中国などに広がった。
アメリカをはじめとした欧米にはない。

日本発だから、日本男児たるもの、
ホワイトデーには大いに奮発して、
プレゼントのお返しをしてもらいたいところ。

これでわずかでも日本の消費が活性化される。

今週はホワイトデーや春分の日を控えた冬から春への移行点。
商人舎ホームページの「常盤勝美の2週間天気予報」では、
今日の雪を予測している。
「春本番の暖かい陽気はもうしばらくおあずけ」とある。
来週も全国的に平年より気温が低いらしい。

さて、前原誠司外務大臣が辞任。
「前原本人が一番得をした」などのコメントもあるが、
自分のこと、自分の政党のことよりも、
地域全体のことから始まって国全体のこと、地球全体のこと、
つまり全体のことを考え行動する人間が必要だ。

ほんとうにそれを考え行動しているのは、誰か。

それを見極めることができるのも、今である。

今朝の日経MJの一面トップ。
「ダイソー変身『100円』に磨き」の特集。
見出しは「宝探しより見つけやすさ」
ダイソーが変わり始めていることのレポート。

これが3面の矢野博丈社長のインタービューにつながっている。
とてもいい特集構成。

現在の100円ショップの売上高と店数。
日経新聞調べ。
1位 大創産業 3414億円(5年前比伸び率+7%)3000店
2位 セリア 762億円(52%)999店
3位 キャンドゥ 624億円(▲5%)843店
4位 ワッツ 346億円(113%)795店

マーケット・リーダーのダイソー以下、
2位から4位までが団子状態。
3位キャンドゥはこのところ成長が見られないうえに、
先日、城戸博司社長が突然、逝去してしまった。

記事には、この団子状態の3企業が合併して、
ダイソーを追走するとか、
外資参入を前にダイソー自身が他を買収して迎え討つとか、
派手なことが書かれているが、
私の関心はそんなところにはない。

JR亀有駅前のイトーヨーカ堂の5階。
ダイソーの店は見違えるほど「おしゃれな空間」となっている。

「DAISO JAPAN」
105円を中心に、210円、315円の商品が並ぶ。

3面の「売り手の考え」のインタビューの中で、
矢野社長は答える。

「以前のように宝物さがしを楽しみ、
じっくり買い物するお客さんは減ってきた。
短時間で買い物を済ませたい。
100円ショップのコンビニ化ですよ」

これは歴史的にみたら、
バラエティストア化の兆候である。

私はいつも言っているし、書いている。
「ダイソーはオーソドックスなバラエティストアになる」

1879年 フランク・ウールワースが、
「バラエティストア」という業態を創業している。
店名は「The Great Five Cent Store」

このバラエティストアは、アメリカで、
非食品のチェーンストアとして大発展を遂げる。

食品のチェーンストアはスーパーマーケット。
衣料品を含んだ総合チェーンストアがゼネラルマーチャンダイズストア。
シアーズ・ローバックとJCペニー。

バラエティストアはその後、1962年、
ハリー・カニンガムが巨大チェーン「クレスゲ」を、
非食品総合ストアのディスカウントストア「Kマート」に「業態」転換。
サム・ウォルトンも、
「ウォルトンズ・ファイブ&ダイムストア」のバラエティストアから、
ディスカウントストア「ウォルマート」に転換。

その後、このディスカウントストアは、
米国国民に必須の業態として飛躍的発展を成し遂げ、
1988年にウォルマートが食品を取り込んだスーパーセンターを開設。

1990年以降は、
このスーパーセンターを展開するウォルマートの独壇場となった。

つまりスーパーセンターは、
バラエティストアとスーパーマーケットの両者の系譜を、
もっていることになる。

矢野さんのダイソーが、
まさに「The Great Five Cent Store」から
バラエティストアに転換しつつ、
次のディスカウントストアへの視野を持ち始めたのだと思う。

「過去6年間、年率2%増の低成長」と記事は決めつけるが、
バラエティストアへの転換期であることを、
これが示している。

1800年代後半から1900年代中ごろまで時代を謳歌したバラエティストアは、
ディスカウントストアに業態転換するか、あるいは淘汰されてしまう。

その後、再び新しいバラエティストアが登場する。
現在、「ダラーストア」と称する。
クレイトン・クリステンセンの言うブレークスルー型イノベーション、
シンプルでプリミティブなイノベーションを彼らは果たした。

アメリカのバラエティストアは3強状態となっている。
全米チェーンストアランキング28位のDollar General。
年商118億ドル(100円換算で1兆1796億円)(前年比12.8%増)
純利益9億5300万ドル(64.2%)店数8,828店(伸び率5.6%)

次が全米46位のFamily Dollar。
年商74億0100万ドル(伸び率6.0%)
純利益4億5700万ドル(25.2%)店数6,655店(1.3%)

そして61位のDollar Tree。
年商52億3100万ドル(12.6%)
純利益3億2100万ドル(39.7%)店数3,806店(6.0%)

ダイソーの3000店、3414億円はこれらに次ぐ存在。

セリアやキャンドゥ、ワッツを買収・合併して、
外資に対抗するなんてことは、
矢野さんは考えてはいないだろうが、
自然体で店を客の方に向けていくと、
バラエティストアから、
ディスカウントストアへの転換が進むだろう。

私はいつも、そう見ている。

そのバラエティストアが行きついた極地。
ウォルマートの現状。

「ウォルマートを中心に回り続けるメリーゴーランド」
それがアメリカ小売業。
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そのウォルマートの今年1月末日決算。
いわゆる2010年度決算。
売上高は4189億5200万ドル(1ドル100円換算すると41兆8952億円)
これは前年比プラスの3.4%。

純利益は159億5900万ドル。
こちらは前年比プラス6.3%とほぼ合格。

ただし既存店の売上高成長率がマイナス1.1%。

ウォルマートには3つの事業部門がある。
第1は米国内のウォルマート部門。
スーパーセンターとディスカウントストアの2業態で構成される。
こちらはスーパーセンターに収斂されつつある。

その既存店成長率はマイナス1.6%。

第2はメンバーシップ・ホールセールクラブ部門のサムズで、
こちらの売上高はプラス12.9%。
スーパーセンターやディスカウントストアよりも安さを提供する業態は、
成績がいい。

第3がインターナショナル部門で、
この売上高はプラス14.4%。
日本の西友もこの中に含まれる。

全体の連結決算は「増収増益」。
しかし米国内主力業態の既存店成長率がマイナス。

だんだん日本のイオンやセブン&アイの総合スーパーに似てきた。

スーパーセンターがウォルマートの中核だが、
このフォーマットの飽和が見えていて、
既存店売上げ減の第1の理由は、国内のカニバリゼーション。

自社内競合を当然としながらの出店。
だから既存店の落ち込みも、
ある一定レベルは「想定内」。

その証拠に、どこの店に行っても、
売場のレベルは落ちていない。

驚くべきことだ。

第2の理由は、プロジェクト・インパクトの失敗と評価されている。
私は、失敗ではなく、行き過ぎだと捉えている。
アソートメントの「絞り込み」を狙ったが、
「削り込み」になってしまった。

これは、かつて「業務改革」を進めていた時のセブン&アイの鈴木敏文さんの言い回し。
まさにその隘路にウォルマートが落ち込んでしまった。
だからその修正をやっている。

第3の理由は、ダラーストアにお客を奪われている点。
これは今日のブログで良くわかっていただけると思うが、
ダラーストアやバラエティストアが、
ディスカウントストアやスーパーセンターの源だから、
基本的なところで、顧客の取り合いが起こることになる。

既存店が落ちてくるということは、
次の主力フォーマットの登場が待たれるところで、
ウォルマートもマーケットサイドに次ぐさらに新フォーマット実験を発表した。

しかし店頭は、しっかりマネジメントされ、オペレーションされている。
「Market」と書かれた入口をはいると食品売り場。
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店内でも場合によっては臨時セミナーをやる。
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店舗入り口にはプロモーションコーナー。
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青果部門は広々としている。
どんどん客がやってきて、
大量に売れても通路は混雑しないし、
顧客の買いやすさが損なわれることはない。
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バナナの売場。
ウォルマートはいつもいつも、
売り方の改善をしている。
什器の改良が大好きな企業だ。
バナナの島陳列もイノベーションの挙句にこの形式になった。
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パイナップルやメロンの島陳列。
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主通路に面したトマトのエンド売場。
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店舗に入ると右手にデリのコーナー。
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ウォルマートも手をかけるところには人を配する。

フランスパンはカゴ盛りでセンスよく盛り付ける。
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壁面は多段陳列のパン売り場。
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青果部門の真ん中に、「5 a day」のコーナー。
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「1日に5種類の違った野菜やフルーツを食べよう」と呼びかける。
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「地産地消」はウォルマートにおいても、
重点課題。
積極展開している。
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カリフォルニアは農産地。
だから地産地消も盛ん。

カットフルーツにも進化がみられる。
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クレート陳列の野菜部門。
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ストック・ベースと呼ばれる陳列什器に乗せられる島陳列。
かつてのウォルマートの店舗の特徴だったが、
プロジェクト・インパクト戦略で一掃されていた。
それが食品売り場に復活している。
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精肉部門の前にも島陳列は復活。
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積極的に「売ろう」とする姿勢が蘇っているが、
それでも美しい陳列は維持されている。
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わかりやすい陳列、商品が主役の陳列。
ウォルマートの店舗には、
小売業の原理原則が満ち溢れている。
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エンドは縦陳列。
そのうえ、よく売れている。
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ゴンドラ・アイルの間にもスペースを設けて島陳列を置いている。
グロサリーで「売ろう、売ろう」の意図が良く見える。
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生鮮食品、デリ(惣菜)とデアリ―(乳製品)、そして加工食品。
それを繋ぐのがドラッグストア。
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全店にドラッグストアを設けている。
それがスーパーセンターの特長。
ここには固定客がついている。

マーケットの低所得者層から中産階級までの客層を、
ごっそりと奪うのがウォルマート。

そのために全部門・フルラインの構造。
私はこれほど便利な店はないと思う。

グロサリーから非食品売場へ。
グロサリーと非食品。
これはバラエティストア・ダラーストアの品揃えの基本。
このあたりでウォルマートと重なってくる。
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春を意識させた売場。
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ホームリビング部門。
こういった部門も、
ベッド・バス&ビヨンドとウォルマートによって複占されている。
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スポーツ&レジャー。
ウォルマートは、例えばフィッシングのような部門が圧倒的に強い。
専門店チェーンが発達している部門は、その企業に任せて、
徹底して二番手戦略を採る。
しかし一番になれるところはこれまた徹底して一番手戦略。20110307174241.jpg

自転車は圧倒的な一番手。
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専門性は高めないが、
マス市場のマス商品のなかで、
ちょっと良いものを圧倒的なお買い得価格で提供する。

ホームセンター部門は、
ホーム・デポとロウズがしのぎを削っている。
だから基本的な定番商品と、
必需品の非定番のシーゾナル商品で構成されている。
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ベビーはウォルマートの強化部門。
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非食品ソフトライン、つまり衣料品が店舗中央。

この店は環境対応型で、
天井もやや低く、採光システムをとっているほか、
様々な環境対応対策が打たれている。
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「総合スーパー」としてのスーパーセンターに陰りが見えている。
これは決算数値を見れば歴然。
くしくも日本と同じ現象。

しかし現場は、いつも、十分に管理されている。
ウォルマートのミドルマネジメントのインテグリティと優秀さが、
ここに表れている。

そしてアメリカ中の小売業が、
このウォルマートのミドルマネジメントと闘っている。
ただしこの闘いの外にいる者がある。
ホールフーズ・マーケットやトレーダー・ジョー。

ナゲット・マーケットもバークレーボウルも、
ウォルマートにできないことをやろうとしている。

もちろんコストコも。
ウォルマート・グループ内のサムズですら、
ウォルマート・スーパセンターの外で仕事をする。

それがアメリカの小売業の闘いである。

今週は、今回の第10回アメリカ報告を中心にお届けする。

乞う、ご期待。
(明日へ、つづきます)

では、Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

[追伸]
昨夜は7度8分、今朝は7度9分の熱がでた。
通常は咽から来るのが結城義晴の風邪。
しかし今回はいきなり発熱した。
原因は疲労。

養生して頑張ります。
養生さえすれば、
必ず急回復するのだから。

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