結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年07月15日(金曜日)

「水戸黄門」番組終了と栃木県真岡市のスーパーマーケット激戦模様

「水戸黄門」が終わる。
日本最長寿時代劇ドラマが、今年末で終了する。
1969年(昭44年)8月から42年、約1200回。

私が高校2年の夏から番組は始まったことになる。
そして現在放送中は第43部。

1979年がピーク。
番組スタート10年後。
第9部最終話は、史上最高の視聴率43.7%。

40年目の2008年10月20日、
初めて視聴率9.7%の1ケタに落ち込み、
近年は視聴率低迷にあえいでいた。

なんだか業態や企業、店舗の盛衰を見ているよう。
「テレビの歴史上でも役割を果たし切った」
「現代の世相やニーズに、合わなくなった」
関係者のコメント。

主役の水戸黄門を演じたのは5人。
東野英治郎、西村晃、佐野浅夫、石坂浩二、里見浩太朗。

東野、西村といった悪役役者が演じた黄門さまが、
一般から見ると意外性を持っていたし、
実は本質に近かった。

だから大ヒットし、長寿番組になった。
私はそう思っている。

勧善懲悪のわかりやすさには、その奥に、
深くて複雑なものが横たわっていなければ、
面白くはない。

佐野は悪役も演じたが、
晩年は善人役でもあった。

石坂、里見となると、
完全に二枚目役者。

こうなると黄門の本質から遠ざかる。

黄門のコンセプトを活かし、
最後に大悪役を抜擢する手もあったろうが、
果たせるかな日本に、
「ジョーカー」役のジャック・ニコルソンのような役者がいない。

まあ、日本社会全体の特徴でもあるかもしれないが、
政治の世界では小沢一郎が、かすかに資格を有するか。

最後の放送で、
黄門が杖を、
格さんが印籠を、
「静かに置いて」、
この番組は幕を閉じる。

日経新聞経済欄コラム「大機小機」。
コラムニスト一礫氏が、
「経済の基盤は事上磨錬」を書いている。

実践儒学陽明学を起こした中国の思想家・王陽明の「伝習録」。
「人はすべからく事上(じじょう)に在って磨錬(まれん)すべし」

「事の上」、すなわち実際行動の中で、
「磨錬」、知識を磨き、人格を錬る。

「真の理念とは決して日常の生活から乖離(かいり)したものではない、
毎日の生活や仕事の中で自らを磨かねばならない、
そうして初めて成果があがる」

体験した成功・不成功から学ぶ。
すなわち「現場力の維持・向上」を主張するのだが、
そのための土壌として、「長期雇用形態」が必須であるという。

コラムニストは、
「日本経済再建の基盤の1つとして、欠かせない要」と書く。

「事上磨錬」は、小売りサービス業においても、
必須である。

さてさて東日本大震災がらみの発言。
日経の「決算トーク」。
100円ショップ㈱キャンドゥの城戸一弥社長。
「東日本大震災で日本人の生活観が変わった」

どう変わったか。
「低価格で品質の良い商品を以前よりも求めるようになった」
「防災グッズや食品の需要が高まり、
3月以降の既存店売上高が好調に推移」

「2010年12月~11年5月期の営業利益は、
前年同期比2倍の11億円になった」

震災特需ではないのか?
「関東も西日本もまんべんなくいい。
震災後に100円ショップのリピーターが増えた」

分かりやすい購買。
単純明快な消費。

マーケティングの方向性が、この震災で、
そちらに振れたことも確か。
しかし、それだけではないと思う。

「生活者は考えるようになる」
㈱たいらやの村上篤三郎さんの言葉。
生活者が考えるようになることで、
単純な思考と複雑なマインドが混然としてくる。

水戸黄門になぞらえると、
悪役役者の演じる善人役が受けて、
二枚目役者の黄門に味がないのと同じ。

さて、栃木県真岡(もうか)市のスーパーマーケット視察報告。
真岡市は地盤が軟らかかったためか、
内陸部ながら、東北・北関東大地震で
思いのほか被害が大きかった。

屋根瓦の多い地域でもあり、
家屋の修復のブルーシートが目についた。

真岡市は宇都宮市中心部から15キロ圏内に位置する。
人口は、2011年3月1日現在、8万2554人。
この真岡市に、たいらやの新店がオープンしたのが4月21日。
「プライムマート真岡店」

3月オープンの予定だったが、
震災の影響で1カ月遅れとなった。

プライムマートは、たいらやの通常店とは異なり、
ライフスタイルアソートメント型スーパーマーケットを志向する。
「多少グレードの高い商品」を日常的に取り扱う。
真岡店はその4店目となる。
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売場面積551.8坪、駐車台数105台。
初年度の売上目標15億円。

入ってすぐに、平台で季節の果物を展開。
生活催事や季節、旬に合わせたタイムリーな商品提案が、
売場づくりのテーマのひとつ。
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青果売り場も「デプス・アソートメント」。
深い品揃え。
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デプス・アソートメントには、
それにふさわしいプレゼンテーションが必須。
どちらも一朝一夕には確立できない。

地場モノの野菜コーナー。
地元有志生産者の野菜を強化している。
「ゆでとうもうろこし販売中」のPOPが目立っている。
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奥主通路の鮮魚売り場から精肉売り場を望む。
バックヤードは透明ガラスで仕切られている。
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鮮魚の鮮度はぴちぴちで、
商品化技術も高い。

たいらやは精肉が強く、高い収益力を誇る。
栃木県産しもつけ牛の展開。
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平ケースでは「肉の専門店プライムミート」の幟(のぼり)。
メキシコ産豚肉切り落とし100g88円。
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デプス・アソートメントで、
なおかつコモディティ・ディスカウントも展開する。

日米ともに、
このタイプの店舗の見落とせない政策。

ウェグマンズも「コンシステンシー・ロープライス政策」を採用した。
すなわちウォルマート流のエブリデー・ロー・プライス。

青果売り場の反対側で展開する惣菜売り場。
鉄板焼きコーナー、季節の焼き魚、手焼きの焼きとりなど、
店内手作り食品が強化されている。
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需要の高い揚げ物は買いやすい価格でのバラ売り。

惣菜に続くインストアベーカリー売場「森のパン屋さん」。
透明のリーチインショーケースで販売する。
清潔感があって、とてもよい。
お客様の抵抗もなく、売上げは上々。
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惣菜売り場の一角にある 「田舎の食堂」。
ライス、手づくりのチャーハン、みそ汁、カレーを温めてカップで販売する。
アメリカのスーパーマーケットで展開するスープバーを思い起こさせる。
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加工食品の中通路の床には、大きなサイン。
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通常レジ7台、セルフレジ4台。
セルフレジの稼働率はこの店では22%と高い。
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半径1キロの一次商圏は3023世帯8247人、
2次商圏は8286世帯2万22232人と設定している。
世帯主年齢は30代と若い家族が中心。
したがって、食シーンに合わせた関連販売、
メニューや食べ方の提案など、
さまざまな仕掛けがなされている。

真岡市は、10店舗がひしめく競争エリア。

スーパーマーケット地域一番店と言われるのが、
とりせん真岡店
周辺に専門店が集まり、
自然発生的なオープンエアー型SCが形成されている。
とりせんは、その中心に位置して、
立地はすこぶる良い。
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地元のスーパーマーケット企業オータニ
真岡エリアで2店舗を出店している。
オータニ真岡店と写真のフードオアシスオータニ荒町店。
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さらに、たいらやの親会社エコス真岡荒町店。
やや年数のたった小型店。
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他にも、㈱カスミのフードオフストッカー真岡店、
水戸に本部を置く㈱パワーマートの真岡店がある。

駅前には地元の老舗・福田屋百貨店真岡店、
駅周辺には震災で閉店し、取り壊し中のベイシア真岡店。

わずか8万の人口の都市に、
これだけの数の店舗が展開されている。
まさにオーバーストア状態。

福田屋百貨店はついに、
真岡店の閉店を余儀なくされている。
一方で、ベイシア跡地には、
ヨークベニマルが出店を表明。
ますます、競争が激しさを増す。

激戦の嵐の中でいま台風の目となっているのは、
「ザ・ビッグエクストラ」真岡店。
今年6月17日にリニューアルオープン。
イオン・スーパーセンター渾身のリモデル版。
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私はちょっと驚いた。
イオンが変わり始めている。
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ディスカウント戦略に本気になってきた。
そしてそれが顧客から支持されている。

アメリカのスーパーセンターというよりも、
スーパーウェアハウスストア。

つまりウォルマートではなく、
クローガーのフード4レスか、
ウィンコ・フードかという感じ。
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こちらは分かりやすい店、
分かりやすい売り場、
分かりやすい商品、
分かりやすい価格。

真岡ではその軸が、鮮明になってきた。
だとすると対極のポジショニングがいい。

ウォルマートに対するホールフーズやウェグマンズ。

中間に位置するクローガーやセーフウェイには、
新たなポジショニングが求められることになる。

日本の地方都市にも、
アメリカのようなエリアが出現してきた。

私が真岡で得た収穫は、
このポジショニングの重要性である。

視察が終わると、長くて暑い北関東の夏も、
少しずつ暮れようとしていた。

ご案内いただいた村上さんに感謝。

<結城義晴>

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