「大型景気が始まる」
日経新聞コラム『大機小機』で、
コラムニストの富民氏が書く。
「わが国の交易条件が急回復している」
交易条件とは、
輸出商品と輸入商品の交換比率。
輸出物価指数と輸入物価指数の比で表す。
その交易条件は
昨年9月から今年2月までの半年で、
13.5%上昇。
これによって、
海外に流出していた所得が、
還流して景気を押し上げる。
年率10兆円の改善。
バブル崩壊以来20年あまり、
未曽有の長期不況が続いた。
そして平成大デフレが終わり、
需給ギャップが解消される。
景色が一変する。
設備投資は拡大され、
縮小均衡から拡大均衡へ、
経営の大転換が始まる。
設備投資を再開すれば、
資本ストックが拡大して、
成長率は押し上がる。
人口減少の問題に関しても、
女性と高齢者の労働参加率向上で、
労働力人口が年率0.5%で増え始めた。
「新年度は事業計画を見直し、
新しい長期計画を策定して、
拡大戦略に転じる企業が増える」
「期初の業績予想は慎重でも
期中で上方修正され、
最高益を更新する企業が増えるだろう」
コラムニストは煽るように書く。
消費増税によって、約半年間、
景気は踊り場にあった。
しかし昨年9月から上昇に転じた。
「今回は潜在成長率の上昇を伴った
息の長い大型景気になりそうだ」
この予想が当たるとありがたいのだが。
しかし流通業では、
ユニーグループ・ホールディングス。
2015年2月期の連結最終損益が、
24億円の赤字と発表。
前期は74億円の黒字だったし、
期中予想は54億円の黒字だった。
ファミリーマートと経営統合する機会に、
「膿を出し切る」
そこで一転、5年ぶりの赤字。
不採算のユニー店舗を対象に、
92億円の減損処理の実施をする。
コンビニエンスストア事業も減損処理。
損失額は通期で174億円に達する。
これがユニーの実態だった。
だからファミリーマートの傘下に入る。
先のコラムニストの分析に、
この現象も符合するのか。
ユニーグループの連結営業収益は、
1兆189億円、前年比マイナス1%。
営業利益は202億円で、
20%のマイナス。
一方、これも日経の消費Biz。
日本コカ・コーラグループが、
セブン&アイ・ホールディングスと
缶コーヒーを共同企画。
主 力ブランド「ジョージア」のロゴと、
「セブンプレミアム」のロゴが同居する。
日本コカコーラは、
「PB商品はつくらな い」という方針だった。
しかしこのジョージアは、
セブン&アイの約1万8000店だけで販売。
だからPBに違いはない。
日本コカは言い訳のごとく説明。
「PBでなく、
あくまで共同企画の『ジョージア』だ」
しかし客観的に見て、
PBに間違いはない。
2014年の缶コーヒー市場は、
3億4300万ケースで、
減少傾向が続く。
その原因は、
コンビニのいれたてのコーヒー」の影響。
コンビニ大手5社の販売計画は、
14年度で計13億杯。
スーパーマーケットも、
これに対抗すべく挽きたてコーヒーを販売する。
つまり「コーヒー戦争」。
すでにセブン&アイは、
サントリー食品の「ボス」を、
共同企画品として展開してき た。
それによって、
トップブランドのジョージアは、
出荷数量が昨年2%減。
2位のボスは6%増。
これへの対抗策が、
ジョージアの「共同企画」と称するPB化。
そこでセブン&アイは今回、
サントリーから日本コカにくら替え。
セブン&アイは、
カテゴリー大手メーカーと組んで、
ブランド商品を独自の競争力にする戦略。
カップ麺では日清食品、
ビールはアサヒビールとサントリー、
スナック菓子ならカルビー。
日用品でも、花王やライオン。
それぞれのカテゴリーのトップメーカー群が、
共同企画PBに参画せざるを得ない形。
ユニーホールディングスの件、
コカコーラのセブンPBの件。
こういった入れ替わりの激しさが、
今回の大型景気の特徴かも知れない。
平成の大型景気の進み方は、
従来型とは異なる、
社会的効率化現象を生み出す。
しかしはもうひとつの現代化を考える。
大企業とボランタリーチェーン、
ローカル企業と個人事業主。
そういったコラボレーション。
ヤマダ電機とコスモス・ベリーズ、
住友達也さんのとくし丸。
巨大企業同士の製販共同。
大と小との資本関係のない同業協業。
いずれも商業の現代化ではあろう。
どちらが将来を見ているか。
それは考慮に入れておかねばならない。
〈結城義晴〉