結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年05月05日(日曜日)

こどもの日の「人口減少問題」と「成熟社会の構築」

こどもの日。

季節はちょっとずれるけれど、
雪とけて村いっぱいのこどもかな
〈小林一茶〉

実にいい句だ。

総務省の人口推計。
15歳未満の男女は4月1日時点で1401万人。
前年からまた33万人減った。
43年連続で減少。

比較可能な1950年以降の最少記録を更新。

総人口に占める比率は11.3%。
前年に比べて0.2ポイント低下。
これも過去最低。

3歳ごとの区分でみると、
12~14歳は317万人、
0~2歳は235万人。

低年齢ほど人口が少ない。
これも悲観材料だ。

1950年段階では、
子どもの数は総人口の3分の1を超えていた。

それ以降、1975年から50年連続で低下。

一方、65歳以上の高齢者は29.2%。
もっとも多い。

「村いっぱいの老人」である。

1950年の高齢者の割合は4.9%だった。
そして1997年に高齢者が子どもの数より多くなった。

1997年は日本の分岐点だった。
橋本龍太郎内閣で、
消費税が3%から5%に増税された。

北海道拓殖銀行が破綻し、
続いて山一證券も破綻。

小売業ではヤオハンが倒産した。

総合スーパーがピークを迎え、
外食産業も頂点にあった。

現在の子どもの比率は諸外国と比べても少ない。
人口4000万人以上の37カ国のうち、
下から二番目だ。

日本が11.3%で、
韓国が11.2%。

ドイツが14.0%、中国が16.8%、
アメリカが17.7%。

インドは24.9%。

しかしこの少子化をどう考えるか。

毎日新聞の巻頭コラム「余録」

「人口減少は過去にも起きた。
縄文時代後半や平安時代。
江戸時代後半にも、
東北や北関東で減少した」

歴史人口学者の鬼頭宏さんの分析。
「文明システムの成熟化に伴う現象」

鬼頭著『人口から読む日本の歴史』
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「明治以降の日本社会の変化は、
工業化を軸とした現代文明の帰結でもあった。
出生率の低下は先進国に共通する現象だ」

「700超の自治体に消滅の可能性がある」

鬼頭さんの20年以上前の提言。
「少子高齢化をどう防ぐか」ではなく、
「どのような成熟社会を構築するか」

一方、歴史人口学の泰斗・速水融博士。
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その著『歴史人口学事始め』
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速水博士の分析。
「特に日本など父系が強い、
“マッチョな国”の出生率が低い」

そしてこう指摘する。
「浮世絵や俳句など
江戸の庶民文化が花開いたのは
人口減少期」

考えさせられる。

日経新聞「大機小機」
「岸田政権子育て支援策の大罪」
コラムニストは吾妻橋さん。

岸田文雄政権の「子ども・子育て支援金」の創設。
財源として個人や企業から徴収する。

「本来の少子化対策とはいえない」

「少子化は様々な社会課題が凝縮した結果で、
バラマキ政策では解決しない」

その通り。

若年世帯の多くは夫婦共働きで、
子育ての最大のコストは母親の所得減だ。

「仕事との両立が困難なため、
出産を機にした退職や残業のない業務へ転換すれば、
家計収入が大きく減る」

「政府は育児休業の改善には熱心だが、
肝心の休業明けの就業継続支援には、
ほとんど手を付けていない」

片手落ち。

小売業もサービス業も、
休業明け就業継続支援は、
大いに助かる。

「効果が不明確な少子化対策にもかかわらず、
その財源として医療保険料に上乗せするかたちで
子育て支援金を徴収する方式に批判が集中した」

これが愚策だ。

岸田首相は社会保障の歳出削減により
「実質的な負担を生じさせない」と強弁した。

「しかし社会保障給付の削減も、
その受給者にとっては負担増であり
論理矛盾である」

「少子化防止のために真に必要な政策なら、
そのための負担増を国民に堂々と求めるのが筋だ」

「財源は年齢や就業形態にかかわらず
負担する消費税の一定割合とするべきだ」

1997年の消費税増税から、
今、10%である。

その使い方こそ、国の未来を左右する。

「子育て支援金の徴収は、
本来必要な少子化のための制度改革を
遅らせる点でも有害である」

「やってる感」だけの岸田政権。

江戸の庶民文化が花開いたのは、
人口減少期だった。

人口減少には何とか歯止めをかけつつ、
この視点を未来への足場としたい。

雪とけて村いっぱいのこどもかな

〈結城義晴〉

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