しかし品質は落としてはならない。
アメリカ合衆国は過去に三度、
凄いインフレに陥ったことがある。
第1は1920年6月の23.7%のインフレ。
第一次世界大戦後の供給混乱と需要急増のためだった。
第2は1947年3月の20.1%。
今度は第二次世界大戦後の価格統制解除によって、
抑え込まれていた価格調整が一気に進行して、
物価が跳ね上がった。
そして第3は1980年3月の14.8%。
イラン革命後の第2次オイルショックと、
それにインパクトを受けたスタグフレーションの頂点で、
インフレ期待が経済全体に組み込まれて長期化した。
そのあとは2022年6月9.1%。
まだ記憶に残るCOVID-19パンデミックと、
ロシアのウクライナ侵攻によって、
40年ぶりのインフレーションが起こった。
そして今、2026年5月の4.2%。
ドナルド・トランプの無差別相互関税と、
2月28日のイラン攻撃が原因だ。
スタグフレーションの脅威は消えない。
アメリカのチェーンストアの歴史は、
このインフレとの闘いであると断じてよいだろう。
そして最初で最大の1920年のインフレのとき、
シアーズ・ローバック社は銀行から救済を受けるほどだった。
このときジュリアス・ローゼンワールドが会社を救った。
ローゼンワールドは私財2100万ドルを担保に差し出し、
中興の祖たる役割を果たして、
全米一、世界最大のチェーンストアを構築した。
このローゼンワールドの三つの信条。
第1は仕入価格を下げることによって販売価格を下げること。
仕入価格は大量仕入れと現金仕入れによって下げること。
しかし品質は落としてはならない。
第2は販売経費を下げることにより、販売価格を下げること。
商品を生産者から消費者へ移動させる経費を、
絶対的に実現しうる限りの最小限にまで節減させること。
しかし品質は落としてはならない。
第3は一つ一つの品目に関する利益は少なくして、
しかも販売品目の増加と販売量の増加によって、
総体の利益を増大させること。
しかし品質は落としてはならない。
ローゼンワールドの信条のエッセンスは、
「利は元にあり、内にあり、売りにあり」である。
しかし忘れることが許されないのは、
「品質は落としてはならない」である。
ウォルマートもクローガーも、
トレーダー・ジョーもウェグマンズもHEBも、
「利は元にあり、内にあり、売りにあり」である。
そして「品質は落としてはならない」である。
〈結城義晴〉























