結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2007年08月25日(土曜日)

「レガシー問題」はコンピュータの世界だけではない!

プラネット代表取締役・玉生弘昌さんと対談
玉生さんと

 

写真中央の書は、
早稲田大学第4代総長・田中穂積のもの。
「和光同塵」
――知恵ある人が、
その知の光を和らげ、隠し、
俗世間の人々の中に同化して交わること――
玉生さんの実家に所蔵されていたもの。

 

㈱プラネットは、凄い会社だ。

EDIやデータベースサービスを通じて、
一般消費財の流通ネットワークを支える
“インフォメーション・オーガナイザー”。

これがプラネットの自己紹介。

通信事業の規制緩和を契機に、1985年に設立。
日用品化粧品業界の有力メーカー8社の合意の下、
VAN運営会社として発足(VANとは、付加価値ネットワーク)。

会社の目的は、
流通システム最適化のための業界共通インフラの構築。

以来、受発注・出荷・請求・支払いなど、
企業間取引に必要な情報をデータ交換(EDI)するサービス機能を中心に、
日本のVAN事業をリードする企業に成長。
(EDIは、エレクトリック・データ・インターチェンジの略)

現在の取引先は、
ライオン、ユニ・チャーム、エフティ資生堂、エステー化学、
さらにP&G、花王、ユニリーバ・ジャパンなどメーカー311社、
そして日用品化粧品卸売業463社。
両者の間で、発注データ、請求データなど24種類のEDIを運用する。

 

2008年には、メーカー500社、卸売業600社の、
1100社のネットワークを結ぶ共通インフラが構築される。

事業内容は、三つ。
①4つのEDIサービス
②2つのデータベースサービス(商品データベース、取引先データベース)
③プラットフォームサービス(バイヤーズネット)

 

プラネットは、ユニークな会社ではあるが、
難点は、この会社の概要を説明するのに、
多くの言葉を要すること。

私ですら、ここまで555文字を使ってしまった。
それほど言葉で説明するのが難しく、
分からない人に分からせることが、困難な会社だが、
分かる人には分かりやすく、
必須の機能を持つ会社なのだ。

多数の、それぞれ異なるデータ言語を持つ法人たちのための、
「自動データ通訳機能」とでも言ったらいいのだろうか。

 

この会社は、平成18年度年商22億8139万円.
経常利益4億5889万円。
何と、経常利益率20.1%。
正社員数36人のスモールビジネスであるが、
ジャスダックに上場している。

 

そのプラネット代表取締役の玉生弘昌さんは、凄い人だ。

玉生さんとの対談は、議論百出。意気投合。

―――「レガシー」(Legacy)というのは、古いタイプのコンピュータのこと。
日本のメーカーや卸売業は、いまだに、
30年前の基幹系業務機能を搭載した古いコンピュータを、
使っているところが多いのです。
少なくとも3分の2は、
レガシー問題を抱えています。
現在は、ウィンドウズ、リナックスなど、
オープン系サーバーへと進化しているのにもかかわらず。
オフィス内では、当然パソコンが並び、インターネットにもつながっています。
家庭も同様。
でも、受発注や請求業務などでは、ダウンサイジングが進んでいない。
すなわち、当たり前のオープン系への転換が果たされていないのです―――。

玉生さんは、このことになると、
無念さが甦るというか、
心の底から怒りがこみ上げるというか、
なんともいえない気分になるようだ。

それほどまでに、古い業界慣習と闘ってきた。

しかし逆に、それが、プラネットの成長を支えてきたとも言える。

私も同感。

 

「遺物」とでも訳したらよい「レガシー」問題は、
しかし、コンピュータにとどまらない。

ものごとを変えることを拒む体質。
自己変革に、金と時間と人知をかけることを拒否する風土。
イノベーションを忌む社風。

現代の会社や組織には、残滓のように残っている

玉生さんも、私も、
はっきり言えば、それが嫌いな人種だ。
我慢がならないタイプの人間だ。

それが、二人の意気投合の、本当の理由だったと思う。

まったくの偶然にも、
「そうは問屋が卸さない」
という言葉使いの共通性も、
意気投合の理由だったかもしれない(内輪受け?)。

日米の流通論。
とりわけて、ウォルマートの評価。
コモディティグッズ<パッケージ商品>論。
クリティカルマス論。
情報社会への見解。

プラネットのラインロビングの方向性。

 

対談は、昼食にまで及び、
満たされた時間は過ぎていった。

芝浦のプラネット・オフィスが入っているビルの最上階レストラン。
東京ベイを眺めながら。

久しぶりに、仕事を超えた知性と向かい合った。
私は、そんな充実感を味わった。

心より、感謝。

<㈱商業界社長 結城義晴>


0 件のコメント

  • Posted by 早起き営業マン at 2007年08月25日 13:55

    以前、玉生社長の講演を聞いたことがありますが、非常に論理的でダンディな印象深い方だったと記憶しています。
    それにしても、レガシーな組織や仕組みの中で、一握りの人たちが思考をとめず頑張り続けているから、変革や進歩があるのですね。そうした成長エンジンの一人でありたいと、つくづく思います。

  • Posted by 結城義晴 at 2007年08月26日 00:02

       「成長エンジンの一人でありたい」
       良いですね。
       組織や会社の中の成長エンジン、
       社会コミュニティの中の成長エンジン、
       国家の中の成長エンジン。
       そして、地球の中の成長エンジン。
       ここで成長とは、必ずしも大きくなることではない。
       より良くなることです。
       より良くなるための成長エンジン。
       環境問題などというテーマの中でこそ、
       「より良くするための成長エンジンの一人でありたい」
       という意思は、貴重です。
       ありがとうございます。

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