結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年09月21日(火曜日)

イオン幕張店の「総合便利店」改装リニューアルは「新しいフォーマット」実験だ

今日、明日まで、暑い日が続く。
秋分の日の23日から、全国的に秋。
やっと秋がやってきた。

果物や野菜の生産は、
この猛暑・酷暑・炎夏で、
明暗くっきり。

リンゴやナシ、クリなどは、
生産量が落ちたり、
例年の品質と違ったり。

ブドウは甘くなって、
良好だとか。

自然を相手にする仕事は、
常に天候との戦い。

良い時もあれば、悪い時もある。
いちいちくさっていたら、埒が明かない。
その意味で、農民は強い。

「生産量は去年の1割くらい」
平気でこんなことを言う。

口蹄疫の問題が発生した時にも、
宮崎県の生産者はすべての飼い牛を失った。
それでも、淡々とした表情を崩さなかった。
東国原英夫知事のほうが、
泣きじゃくっていた。

日本人はもともと農耕民族だった。
だからこの辛抱強さを備えている。

中国と揉めている尖閣列島問題も、
アメリカとの普天間基地問題も、
農耕民族の辛抱強さを活かして、
丁寧に丁寧に解決していくことだ。

「あちらを立てればこちらが立たず、
こちらを立てればあちらが立たず」

それが21世紀の現象の特徴。
だから私の言うオクシモロンの問題解決姿勢が必要。

さて、昨日の日経MJ「総合小売り」欄。
「イオン、新型GMS始動」の記事。

18日の土曜日、イオン幕張店が改装オープンした。
もうそろそろ「GMS」という用語は、
やめにしてもらいたいところだが、それはさておき、
このリニューアルは重要な問題をはらんでいる。

日本の「総合スーパー」は国際的にみると、
ハイパーマーケットに分類される。
コーネル大学でも「ハイパーマーケット」という用語を使っているが、
ハイパーマーケットは「総合便利店」である。

ここで日本のハイパーマーケットという「業態」のライフサイクルは、
とうにピークを越え、平準期に入っている。
衰退期という認識すらある。

ただしイオンですら、
全国に420店のハイパーマーケットが現存している。

この既存の店舗群の「業態」をどう転換するのか。

私は、今年発刊された『小売業界大研究』(産学社刊)で、
初めて、「フォーマット」という概念を意図的に使った。
神戸大学名誉教授の田村正紀先生の『業態の盛衰』に、
「フォーマット」の定義が出てくる。
「業態が分化した様々な形」。
小売業が成熟してくると、業態がフォーマットに変化してくる。

ハイパーマーケットは業態。
ウォルマートのスーパーセンターは、
ハイパーマーケットという業態が分化した一つの形、
すなわちフォーマットである。

それはアメリカのサバーバンエリアの大衆の生活に、
これ以上ないというくらいに適合したフォーマットとなった。

ウォルマートは上海では、
「スーパーセンター」を作っていない。
まだ、ハイパーマーケット段階である。
それが上海というマーケットの現状だから。

翻って日本の総合スーパーというハイパーマーケット。
フォーマットへの特化が求められている。

日本の競争環境の中で、
「総合便利店」としての新しい役割や特徴を、
イオンはいかに考案するのか。

その回答が幕張店に表れる。

コンセプトは「narrow & deep」

「重点分野をより深く」と日本語解釈が付けられている。

2003年、私は商業界ゼミナールのメインテーマを決めた。
「小さく、狭く、濃く、深く」

千葉県の舞浜で行われたゼミナールで、
イオン名誉会長相談役の岡田卓也さんが、
私にコメントしてくれた。
岡田さんは商業界同友会エルダーと呼ばれる重鎮。
故倉本長治の愛弟子たちだけに与えられる呼称。

その岡田さんのコメント。
私は今でも覚えている。
「『小さく、狭く、濃く、深く』はいいテーマだね。
以前、アメリカのコンサルタントが来日して、
『ナロー&ディープ』を提唱したけれど、
あれと、おんなじだ」

私は今回のイオンのハイパーマーケットのフォーマット化実験が、
この「narrow & deep」に定められたことに、
長い潜伏期間があったのだと思う。
コンセプトの発酵期間。

「狭くて、深い品ぞろえ」
すなわち深い品揃えの専門店の集積によって、
「総合便利店」を「フォーマット」として蘇らせるという考え方。

イオン幕張店に導入された専門店。
生活雑貨の「アール・オー・ユー」
ペット用品「ペットシティ」
靴「アスビー」
書籍「未来屋書店」
カジュアル衣料品「トップバリュコレクション」
自転車「イオンサイクルショップ」
化粧品「ザ ボディショップ」
ファッション雑貨「クレアーズ」

ザ ボディショップや未来屋書店は、
もう確立した専門店といえる。

このレベルまで、他の専門店群が昇華できるか。
時間はかかるに違いない。
しかしそれがフォーマットをつくることになる。

田村先生とは違った概念だが、
故渥美俊一先生は早くから「フォーマット」という用語を使ってきた。

「TPOSごとにフォーマットがつくられる」。
「フォーマットは新しい業種」。

イオンが「総合便利店」 のフォーマット化に取り組み始めた。
久しぶりに注目すべき実験といえよう。

ただしこれは一朝一夕には、
完成しないものだと心得てとりかかるべきだ。

<結城義晴>


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