結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年06月05日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その5】ルナールの『博物誌』

猫の目で見る博物誌――。
DSCN8963-2016-4-10-66666

ローマの大プリニウスの『博物誌』
中国の張華の『博物誌』
ビュフォン
『博物誌』
古典的な博物誌はみな、百科事典のようだ。

しかし、1896年、
博物誌のカテゴリーに全く新しい世界が生まれた。

ジュール・ルナール。Jules Renard。
『にんじん』で名高いフランスの作家。
新境地『ルナールの博物誌』〈翻訳は岸田国士〉

「蝶」

二つ折りの恋文が、花の番地を捜している。
fig43603_41

素晴らしい。
ルナールの『博物誌』

DSCN8963-2016-4-10-66666

猫の目は夜でも見える。
猫の目はわずかな光だけで、
白黒を見分けることができる。
しかし猫の目には、
色がない。
『博物誌』の挿絵のように。

今日は、青空文庫の、
そのルナールの『博物誌』から。
挿絵はピエール・ボナール。Pierre Bonnard。
フランスの後期印象派画家。

「蜻蛉」

彼女は眼病の養生をしている。
川べりを、あっちの岸へ行ったり、
こっちの岸へ来たり、
そしてれ上がった眼を
水で冷やしてばかりいる。

じいじい音を立てて、
まるで電気仕掛けで飛んでいるようだ。
fig43603_43

「蟻」

1

一匹一匹が、3という数字に似ている。
それも、いること、いること!
どれくらいかというと、
333333333333……ああ、きりがない。

fig43603_46

そして、ルナールは猫も描いてくれる。

「猫」
2014-04-29

私のは鼠を食わない。
そんなことをするのがいやなのだ。
つかまえても、それを玩具にするだけである。

遊び飽きると、命だけは助けてやる。
それからどこかへ行って、
尻尾で輪を作ってその中に坐り、
拳固のように恰好よく引き締まった頭で、
余念なく夢想に耽る。

しかし、爪傷がもとで、
鼠は死んでしまう。

DSCN8963-2016-4-10-66666

辛辣なお言葉、ありがとう。

〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉


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