結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年06月28日(火曜日)

「グレート・ブリテンの落日」と「シュレーディンガーの猫」

週が明けて、地球の裏側でも、
事態が冷静にとらえられてきた。

イギリスの『The Economist』
「グレート・ブリテン」の落日
日経新聞朝刊が翻訳掲載。DSCN2271-6

「何という早さで
『考えられないこと』が
『取り返しのつかないこと』に
なってしまったことか――」

出だしから、嘆き節。

「30年ぶりの安値をつけた英ポンドの急落は、
これから起きることの片りんをうかがわせた。
実体経済の先行きに不透明感が強まり、
英国は景気後退に陥るかもしれない」

やはり当事者は悲観的だ。

「今後、二度と
これまでのような活力は生まれない。
雇用も税収も減り、
いずれ追加の緊縮策が必要になるだろう。
それは脆弱な世界経済をも揺るがす」

そしてこれからの考え方。

「年齢や階級、地域によって国が割れた
今回の国民投票の余波を鎮めるには、
短期的には政治家の
高度な手綱さばきが求められる。
長期的には伝統的な二大政党による
国政支配の見直しと、
場合によっては
地方の境界線の引き直しが
必要になるかもしれない」

「不確実な時代が長く続くだろう」
これは本当に正しい。

ジャーナリストは提案する。
「ノルウェー式の協定を選ぶのがいい」

「世界最大の欧州単一市場へ参加しつつ、
人の移動の自由も認める」

「それが富を最大化するからだ」

イギリスにはまだ、
4つの選択肢がある。
第1のノルウェー型は、
欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟し、
欧州経済地域(EEA)に参加する方法。

人や物や金などが自由に移動できる。
ただし、EUへの負担金が必要となる。

第2がスイス型。
EFTAに加盟し、貿易を含めた個別の条件を
交渉で決めていく方法。

ただし交渉が複雑化し、長期化する。

第3は自由貿易協定(FTA)型。
物やサービスの移動は自由だが、
人の移動は自由ではない。

この選択肢は有力だが、
ビジネス上では足枷を持つことになる。

そして第4が世界貿易機関(WTO)型。
WTOの関税協定を基に、
すべてのWTO加盟国に同じ関税率とする。

エコノミストは、
この第1のノルウェー型を奨める。

「欧州からの移民は
医療費や教育費を十分自己負担し、
財政面で差し引きプラスの貢献をしている。
彼らがいなければ、
学校や病院、農業や建設業などでは
人手不足に陥るだろう」

第2、第3、第4の方法は退けられる。

しかしエコノミストは悲観的。
「連合王国の『グレート・ブリテン』が分裂し
『リトル・イングランド』になって喜ぶ者はいないし、
それが『リトル・ヨーロッパ』につながれば、
さらに悲惨だ」

英国のジャーナリストは、
今、ナーバスだ。

一方、日経新聞経済コラム。
『大機小機』

まず、物理学。
「シュレーディンガーの猫」
シュレーディンガーの思考実験は、
「1匹の猫を箱に閉じ込め、
ある原子が崩壊して放射線を発したときに
機械が作動して猫を殺す装置をつくる。
猫の生死という重大事は
微小な原子の崩壊という
極めてミクロな偶然で決まる」

これを今回の英国民投票に当てはめる。
「量子力学的と呼べるほどの
小さな偶然さえあれば
世界は別の歴史を歩んだかもしれない」

コラムニストはやや楽天的だ。
嘆き節ではない。

「24日の日経平均株価の下げ幅は
リーマン・ショック時を超え、
2000年以来の大きさを記録した」

「しかし世界経済が
リーマン・ショックと同じような危機に陥るかは、
金融システムの反応にかかっている」

彼は金融システムを信じている。

「現時点では、世界の金融システムに
不良資産は潜んでいないように見える。
それが正しければ、
英のEU離脱決定直後に起きた
市場の混乱はいずれ落ち着き、
世界的な危機は起きない」

楽観的だ。

「しかし欧州の銀行については
『不良債権処理が進んでいない』
という見方が前々からある」

「中国経済に蓄積する不良債権も不気味だ」

「これらが顕在化して
カウンターパーティーリスクを引き起こせば、
世界は金融危機の再来に
直面するかもしれない」

カウンターパーティーは相手方金融機関のこと。
金融機関同士の取引先リスク。
その疑念や不信感が募り、
システミックな危機が訪れる。

「どちらになるかは、
この1週間ほどで明らかになるだろう」

日本のコラムニストは、
なんだかクールだ。

これも日経オンラインの経営者ブログ。
鈴木幸一㈱インターネットイニシアティブ会長。
日本のインターネットの草分け。
私の大好きなブログ。

「大きな変動というのは、
ちょっとした拍子で
起こってしまうものかも知れない」

「シュレーティンガーの猫」と同意。

「人々の意向を尊重する民主主義においては、
人々の気まぐれが、風向きを変え、
思いもしなかった方向に舵を切ってしまい、
後戻りができない事態にまで進むことがある」

「理解をする前に判断をしたい」
世界中にそんな人々が増えた。

「こんな人々の共感を得るには、
不満のはけ口となるような
端的な言葉が必要であり、
扇動者が跋扈(ばっこ)する余地をつくる」

ポピュリズムのやり口。
①人々の不満の対象を
的確にすくい上げる。

「物事を理解するという行為は、
まず、懐疑に始まるのだが、
懐疑が人々に訴える力は当然のことながら、
端的な言葉で語る扇動者の力には及ばない」

②理解をしたくないという人々を
過剰に反応させる。
「欧米を襲うデマゴーグの台頭を見ていると、
事態はますます深刻の度を増している」

鈴木さんはFT.comの記事の言葉を思い出す。
「もし英国人が欧州から去るほど愚かなら、
米国人はトランプ氏を選出するほど
頭がおかしいのかも知れない」

「英国人の愚かさ」が現実となった。
「米国人は頭がおかしい」も、
現実のものになるかもしれない。

鈴木さんは、改めて、考え込んだりするが、
「といって、なにができるわけでもない」と、
これもクールだ。

日本のインテリ経営者はクールだ。

悲観的か。
楽観的か。
クールか。

なぜか今回、日本人は、
大陸の端の島国の人々の問題に対して、
クールだ。

〈結城義晴〉


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