2027年4月消費減税の「ギャンブル」と「政策手段の乖離」

さて最近、スーパーマーケットのトップに会うと、
みんな、何らかのかたちで、
「消費減税への対応」を考えている。
高市早苗首相は食料品の消費税率を、
2027年4月から2年間限定で、
現行の8%から1%へ引き下げることを表明。
チェックスタンドの変更など、
もう準備を始めねばならない。
しかし根本の問題はまだ、
すっきりと解明されていない。
日経新聞「大機小機」
異なる識者が別々の視点から、
その問題点を指摘する。
「消費減税、サイは投げられた」
コラムニストは与次郎さん。
いきなり問う。
「それで日本は良くなるのか」
「消費税率を下げるのは
物価高で困窮している人たちを支援するためだが、
減税で最も恩恵を受けるのは
消費額が大きい富裕層だ」
「最大の問題は、
『社会保障国民会議』という
大きな看板を掲げた会議を
立ち上げたにもかかわらず、
消費税が支える社会保障について
全く議論しなかったことだ」
「高市首相が敬慕する安倍晋三元首相は、
財務省嫌い、消費税嫌いだったが、
結局消費税を5%から10%へ引き上げた」
1989年4月、
竹下登首相が3%の消費税を導入。
バブル崩壊の寸前だった。

1997年4月、
橋本龍太郎総理が5%に引き上げた。
金融危機が起こった年だ。

安倍晋三首相は2014年4月に、
消費税率を8%に上げ、
2019年10月には10%に引き上げた。
このとき食料品は軽減税率を採用した。

コラムニスト。
「少子高齢化が進行する日本社会で
医療、介護、年金などの
社会保障制度を支えるためには、
消費税の税率を上げる必要があることを
十分に理解していたからだ」
1961年に国民皆年金・皆保険の制度が導入された。
それは安倍総理の祖父・岸信介元首相だった。
安倍さんの頭の中にはそれもあった。

「民意が減税に流れやすい中で、
社会保障を支えるために歴代の首相は、
小石を積み上げるようにして
消費税率を上げてきたのである」
自民党政権は消費増税のたびに苦難に遭い、
選挙で負け、内閣が潰れた。
高市政権と高市早苗首相は、
「消費税率の引き下げは選挙公約」を繰り返す。
しかし、
「社会保障制度に関する大局観を
全く持たないという意味で、
まさに『特異点』だ」
そして言う。
「政権の前に立ちはだかるのは
『市場の力』だけである」
その通りだ。
「消費税率引き下げを表明した日に、
円安が進むことは許されない」
「だからこの日に合わせて、
為替市場への介入が行われた」
だが今回の日米協調介入の効果は、
一時的なものだった。
「『次の世代』のことを忘れた政策の射程は、
『今日』なのである」
高市政権は、金利より、
名目経済成長率を高くすることで、
債務残高のGDP比率の引き下げを目指す。
コラムニスト。
「これはもともと
ギャンブルである」
「今回消費税率を引き下げることにより、
政府は市場相手のギャンブルに勝利する確率を
自ら下げることになった」
消費減税はギャンブル。
手厳しい指摘だ。
一方、おなじみの隅田川コラムニスト。
「物価の実態が問う消費税減税」
「消費者物価は2022年以降、
ほぼ一貫して2%を上回って推移してきた」
「しかし、その主役は入れ替わっている」
物価の推移の主要因が変化している。
経済学者らしく時代区分をして、
その主因を明らかにする。
[第1期]22年から23年前半。
輸入エネルギー価格の上昇が、
物価上昇を引き起こした。
[第2期]23年後半から25年前半。
コメなど食料品の価格上昇が中心だった。
そして[第3期]25年後半以降。
再び輸入エネルギー価格の上昇が、
主役となっている。
25年の参院選では、
第2期の物価上昇を背景として、
消費税が大きな論点になった。
この流れが引き継がれ、
今回の減税策が打ち出された。
「物価の実態は第3期なのに、
第2期型の政策が
実行されることになる」
食料品の消費税減税は、
かねてから問題が指摘されている
⑴社会保障財源が損なわれる
⑵富裕層が相対的に大きな恩恵を受ける
⑶景気刺激効果は小さい
これに加わった問題点が、
⑷政策手段が物価の実態と大きく乖離(かいり)している
世の中の議論。
否定論は「財源が不明確だ」
肯定論は「公約だから実行すべきだ」
墨田川さん。
「しかし、これだけ多くの問題があるのだから、
財源が明確になればやってもいいとは言えない」
「公約だったとしても、経済が変化し、
政策の意義がなくなったのだから、
公約にこだわることの方が誤りである」
そう、公約にこだわる方が間違いだ。
「今回の減税は
やらない方がいいとしか
言えないように思われる」
2027年4月の消費減税への準備を整えつつ、
動静を見据えていかねばならない。
〈結城義晴〉






















