結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2023年05月04日(木曜日)

みどりの日の寺山修司と北原白秋

みどりの日。
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1日中、自宅で原稿書き。

セブン&アイとイオンの決算。
昨年は「逆転のダイナミズム」と題して書いた。

「どちらがマーケットリーダーなのか、
どちらがマーケットチャレンジャーなのか」

「この熾烈な競争は、それぞれに
異なる特徴を有することによって、
日本のチェーンストアの世界に
ダイナミズムを生み出す」

「異質性をもつ者同士のコンペティションは、
同質で量的拡大一辺倒の従来の競争を凌駕して、
それぞれにさらなる進化と深化を
求めるからである」

今年はその次の「それぞれの道」。

などと考察していても、
思いは様々にめぐる。

閑話休題。

40年前の今日、
寺山修司が死んだ。

47歳だった。

北海道新聞「卓上四季」が取り上げた。
「万華鏡・寺山修司」
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「1954年、早大に入学した同級生の
寺山修司さんと山田太一さん」

「ちょうど今ごろ、
ひょんなきっかけで親友になる。
戦争の傷痕が残る貧しい時代。
文学や芸術を熱く語り、恋愛に悩む」

「病気で長く入院した寺山と交わした
膨大な手紙が残る」

後に脚本家となる山田さん。
「情報も少く、後期少年時代」と回想する。

「とんでもない。
幅広い読書と豊かな感性、鋭い思考。
2人の才能は手紙の文面から既に明白だ」

良い友。

それが成長を促す。

「寺山の早熟ぶりはめざましい」

海を知らぬ少女の前に
麦藁帽のわれは
両手をひろげていたり

18歳のとき寺山は、
連作「チエホフ祭」で衝撃的デビューを果たす。

「病が癒えると大学を飛び出し、
多方面で活躍した」

劇作家、歌人、詩人、前衛劇団の主宰、
スポーツや競馬の評論家、映画監督…。

「多面体、それとも万華鏡か。
寺山修司というジャンルを確立した
と言えるのかもしれない」

マッチ擦る
つかのま海に霧ふかし
身捨つるほどの祖国はありや

木田元編『一日一文』
岩波文庫別冊24。
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1年366日と設定して日々、
「古今東西の偉人」の言葉が抜き出されている。

その5月4日編は北原白秋だ。
詩人、歌人、童謡作家。

その三篇の歌。
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銀笛のごとも哀(かな)しく
単調(ひとふし)に過ぎもゆきにし
夢なりしかな

夢は単調に過ぎてゆく。

いやはてに
鬱金(うこん)ざくらのかなしみの
ちりそめぬれば
五月(さつき)はきたる

五月は鬱金ざくらが咲いて、散る。

かくまでも
黒くかなしき色やある

わが思うひとの
春のまなざし

こんなにも黒くて悲しい色は、
あるのだろうか。
私の思う人の春のまなざし。

みどりは、
人間に喩えれば早春を象徴する。

若いころの瑞々しい感性。

寺山も白秋も、
若いころから天才ぶりを発揮した。

ゴールデンウィークには、
そんな若さがある。

明日の5月5日は子どもの日。
そして明後日の6日はもう立夏だ。

〈結城義晴〉

2023年05月03日(水曜日)

憲法記念日の「いのちをふたつもちしものなし」

憲法記念日。

昼過ぎに商人舎オフィスに出て、
原稿執筆。

休日に一人、
商人舎のデスクに向かって、
大型モニターで書く。

スピードが上がる。

家の自室で書くときには、
ノートパソコンだから、
画面は小さい。

だから静かなオフィスで書くのは好きだ。

3時ごろに山本恭広編集長が、
突然、やって来た。

山本編集長はもう、
自分の原稿を書き終わっているが、
6月の第20回ミドルマネジメント研修会の、
準備のために休日出勤してきた。

6月13日・14日・15日の火水木曜日に開催する。
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商人舎ミドルマネジメント研修会で、
講師デビューする。

ご期待いただきたい。

もちろん商業界時代に、
編集長として教育事業担当取締役として、
講演や講義は限りなく経験している。

まったく心配していない。

第20回ミドルマネジメント研修会。
まだまだ募集中。

すでに申し込みは殺到しています。
どうぞ、研修を受けてみてください。
派遣してください。

さて76回目の憲法記念日。

歴史上の憲法は多い。

古代ローマには十二表法があったし、
日本では聖徳太子の十七条憲法があった。
前者は紀元前460年ごろ、
後者は604年の制定だ。

反対に成文憲法がない国もある。
イギリスである。
United Kingdom of  Great Britain。

ひとつの憲法がない代わりに、
三つの歴史的な決め事がある。

1215年のマグナ・カルタ(大憲章)、
1628年の「権利の請願」、
1689年の「権利の章典」である。

しかし現在も機能している憲法として、
最も古いのはアメリカ合衆国憲法だ。
1789年の制定である。

このあと世界中で、
約860の成文憲法が制定された。

問題の我が国の憲法。
1946年に11月3日に公布され、
翌年5月3日に施行された。1

昨年の文化の日のブログで書いた。

日本国憲法の前文。
中学だったか高校だったか、
暗記した。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、
人間相互の関係を支配する
崇高な理想を深く自覚するのであって、
平和を愛する諸国民の
公正と信義を信頼して、
われらの安全と生存を
保持しようと決意した」

「われらは平和を維持し、
専制と隷従、圧迫と偏狭を
地上から永遠に除去しようと努めている
国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う」

「われらは全世界の国民が、
ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和の内に生存する権利を
有することを確認する」

先生は名文だと言ったけれど、
英語の関係代名詞以下をほぼ直訳している。
だから日本語として見れば悪文だ。

私流に改訂すると、
「日本国民は、
恒久の平和を念願する。
人間相互の関係を支配する、
崇高な理想を深く自覚する」

「国際社会の諸国民は、

平和を愛するものである。
私たちは、
その公正と信義を信頼する」

「したがって私たちは、
私たち自身の安全と生存を、
私たち自身で保持しようと
決意するものである」

「国際社会は平和を維持し、
専制と隷従、圧迫と偏狭を
永遠に地上から除去しようと努めている。
私たちはその国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う」

「私たちは全世界の国民が、
ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和の内に生存する権利を有することを
確認する」

さらに、重要なのは、
日本国憲法の「第2章 戦争の放棄」である。
その「第9条」が議論の対象となっている。

「日本国民は、
正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、
永久にこれを放棄する」 

「前項の目的を達成するため、
陸海空軍その他の戦力
これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない」

ここで国際政治学者の篠田英朗さん。
『はじめての憲法』
良い本です。

読んでみてください。
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この本のなかで、
第九条に以下の文面を加えて、
その部分の改憲をすればいい、と主張する。
「前二項の規定は、
本条の目的にそった
軍隊を含む組織の活動を禁止しない」

私も篠田さんに賛成するものだ。

「戦争の放棄」は「原理」ではない。
それを原理のように主張する人たちがいる。

しかし戦争の放棄は「目的」である。

「軍隊を含む組織の活動を禁止しない」
これを第三項に加えるだけで、
「自衛隊」という組織が正当化されて、
憲法に記される。

私の訂正した前文とも一致する。

超党派で検討してくれないかなぁ。

さて北海道新聞の巻頭コラム「卓上四季」
「憲法の水脈」

ウクライナ、スーダン。
世界各地の戦火はなくならない。

土岐善麿(ぜんまろ)の歌。
明治から昭和の歌人。

遺棄死体
数百といひ数千といふ

いのちをふたつ
もちしものなし

日中戦争と太平洋戦争の戦没者は、
軍民合わせて310万人。

二つとない<いのち>を大切に。
この願いが日本国憲法へ実を結んだ。

だから日本の憲法は、
平和主義の理念が主軸となっている。

この理念は時代や国を越えて、
人類が受け継いだ理想の到達点だった。

ルソーやカントが目指した永久平和、
植木枝盛(えもり)や中江兆民らの自由民権思想、
1928年のパリ不戦条約などが源流にある。

平和という理念と、
戦争の放棄という手段。

頭と心の整理をして、
ゴールデンウィークを生きたい。

「いのちをふたつ
もちしものなし」

〈結城義晴〉

2023年05月02日(火曜日)

黄金週間の岡潔「スミレはスミレのように咲けばよい」

ゴールデンウィークの最中だというのに、
1日中原稿書き。

ああ。

だがそれが私の仕事だ。

月刊商人舎5月号。

この雑誌を始めたのが、
2013年5月号から。

特集・ニッポンCRM元年!!

10年前の写真。
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私は「商売を科学せよ」と、
強く訴えていた。

今、読み返してみると、
ゆったりした誌面だった。

月刊商人舎の良いところは、
こうしていつでもパソコン画面で、
過去の雑誌をすべて閲覧できるところだ。

初めから「の雑誌」を標榜していた。
PaperのMagazineとNetのMagazine。
その融合。

このころから「両利きトレードオン」だった。

そして10年目の雑誌を今、
つくっている。

通巻121号。

今回も力の入った内容だ。
ご期待いただきたい。

この10年の間に、
私は10歳年を重ねて、
70歳となった。

だから60歳のときに、
新雑誌を創刊したことになる。

そして当時やっていたことを、
収斂させてきた。

立教大学大学院の特任教授は、
任期が来て辞めた。
ほかに大学の教授の口は探さなかった。

コーネル大学RMPジャパンの副学長も辞めた。

そして本来の商人舎社長の仕事に専念した。

そうすると万代知識商人大学などが始まった。
ロピアの躍進も起こった。

それが良かったと思う。

そして直近の3年間は、
コロナが時間を早めた。

朝日新聞「折々のことば」
鷲田清一さんの編著。

第2719回。
道義の根本は
人の悲しみがわかる
ということにある。
(岡潔『春宵(しゅんしょう)十話』から)
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「このことが基本にあってこそ
人は日々安心して暮らせるのだ」

「だが悲しみの感情とは難しいもの。
これを”人が悲しんでいるから自分も悲しい”
という程度にまでわかるには、
時間がかかる」

さすがに岡潔さんだ。

顧客が悲しんでいるから、
自分も悲しい。
顧客が喜んでいるから、
自分もうれしい。

この域に達するには時間がかかる。
しかしそれを目指す。

人の在り方の根本は、
人の悲しみがわかることだ。

商人の在り方も同じだ。

岡潔さんは日本を代表する数学者。

湯川秀樹、朝永振一郎、廣中平祐、
皆、岡さんの弟子みたいなものだ。
エッセイもたくさん書き残した。

その『春宵十話』のまえがき。

「人の中心は情緒である」

数学者なのに情緒が中心だと言い切る。

「私は数学の研究を
つとめとしている者であって、
大学を出てから今日まで三十九年間、
それのみにいそしんできた。
今後もそうするだろう」

「私は、人には表現法が
一つあればよいと思っている」

岡さんなら数学だ。
商人ならば商売だろう。

伊藤雅俊さんも岡田卓也さんも、
それに徹したから成功したのだ。

数学なんかをして
人類にどういう利益があるのだ、
と問う人がいる。

岡さんは答えた。
「スミレはただスミレのように
咲けばよいのであって、
そのことが春の野に
どのような影響があろうとなかろうと、
スミレのあずかり知らないことだ」

スミレはスミレのように咲けばよい。

この言葉も、
私のポジショニングの考え方に影響を与えた。

もうひとつ「折々のことば」
第2704回。

「人をコーフンさせる仕事をしてるんだから、
自分がコーフンしないとダメだよな」
〈忌野清志郎(いまわのきよしろう)〉

『あの頃、忌野清志郎と』から。
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この本はとてもいい。

マネージャーと衣装係を務めて、
清志郎のそばに40年、
付き添った片岡たまき。

「どこか遠くに連れて行ってくれそうな彼は、
周囲に濃(こま)やかに心を配る人でもあった」

人をコーフンさせる仕事をする。
だから自分もコーフンしなきゃ。

清志郎は本来、静かな男だ。
しかし自分の仕事に忠実だった。
だからメイクをし、派手な扮装をして、
顧客をコーフンさせた。

スミレはスミレとして咲いた。

このゴールデンウィーク。
自分らしく咲きたい。
自分の歌を歌いたい。

〈結城義晴〉

2023年05月01日(月曜日)

2023年5月の”Cup of Coffee”でも”Do your best!”

Everybody! Good Monday!
[2023vol⑱]

2023年第18週。
5月に入って、
黄金週間の真っ只中。

今日5月1日はメーデー。
デモ行列が行く。
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メーデーの列とはなつてをらざりし
〈稲畑汀子〉

稲畑 汀子さんは昨年亡くなった。
高浜虚子の孫で『ホトトギス』を主宰した。
メーデーの隊列をそのまま見た。

メーデーの中やうしなふおのれの顔
〈榎本冬一郎〉

榎本さんはもっと古い。
1907年(明治40年)の生まれ。
だからこの句はメーデーがまだ、
華やかだったころにつくられた。

メーデーの束の風船昇天す
〈橋本美代子〉

2日間の合間があって、
5月3日から5連休。

淡々と仕事に邁進したい。

中日新聞の巻頭コラム「中日春秋」
東京新聞の「筆洗」と3分の2は同じ。

今日のテーマは、
「カップ・オブ・コーヒー」

そのまま全部、いい話。

今、新聞発行部数は、
読売、朝日、毎日、中日、日経の順だ。
中日新聞、意外によく読まれている。
日経よりも多いし、産経を凌駕している。

“Cup of Coffee”は、
大リーグの独特の言い方。
「下部組織のマイナーリーグから
大リーガーに昇格したものの、
振るわず、またたく間に
マイナーに逆戻りする選手のこと」

「栄光の期間がコーヒー一杯を飲むほどの
短い時間という意味なのだろう」

ピッツバーグ・パイレーツの内野手。
ドリュー・マジ選手。三十三歳。
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十三年間、大リーグでの出場はなく、
マイナーリーグのチームを転々として過ごした。
引退を考えても不思議ではない年齢。

その夢がかなった。
26日のメジャーリーグの試合。
ロサンゼルス・ドジャース戦。
代打で初出場を果たした。

「初打席に向かうオールドルーキーに
ファンが一斉に立ち上がり、
大きな拍手を送る」
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「年俸は低く、
生活の苦しいマイナー暮らし。
それでも、あきらめず、
夢を追い続けたことへの敬意なのだろう」

「良い当たりのファウルを打ったが、
三振に終わる」

「それでも拍手が鳴りやまない」

試合後に語った。
「人生でこれ以上幸せな三振はなかった」

「努力すれば報われるとは
いいにくい時代かもしれない。
が、努力しなければ、
報われないのは本当だろう」

「数えきれぬほど、
コーヒーを楽しめる時間を期待する」

ほとんどの仕事は、
ドリュー・マジと同じだ。

努力しなければ報われることもない。
努力しても報われないことも多い。

それでも努力することに、
人々は感動する。

人々はそれを見ている。

私たちもこの5月、
自分ができる努力を、
精一杯続けようではないか。

私は今週、月刊商人舎5月号の入稿。
連休でデザインや印刷が休むので、
一両日中に終わらせねばならない。

そのあと、来週火曜日から、
米国ラスベガス。

商人舎USベーシックコース。
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満員御礼。

ご参加の皆さん、
楽しみにしていてください。

事前テキストが、
そろそろお手元に届いているはずだ。

ふたつの文章は読んでおいてください。

第1は、
米国チェーンストア産業を「鳥の目」で見る

第2は、
ベーシック店舗視察の考え方を知る
ストアコンパリゾンを経営戦略にせよ!

合わせて28ページになる。
時間を見つけて読むだけでいい。

万代知識商人大学の講義と、
総会での講演がある。

そして月刊商人舎6月号を編集し、執筆する。

私もできる努力を精一杯しよう。
みなさんも、自分のできることに、
真剣に取り組もう。

では、今週も、
“Cup of Coffee”であっても、
Do your best!

Good Monday!

〈結城義晴〉

2023年04月30日(日曜日)

絵本「こころってなんだろう」の「コトバの力ってすごい」

ゴールデンウィークが始まった。

ネモフィラ。
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ムラサキ科ネモフィラ属。
和名はルリカラクサ(瑠璃唐草)。

北米大陸の太平洋岸に分布。
耐寒性一年草。
草丈10 cmから20 cm。
4月から5月に開花する。

ネモフィラの意味は、
「森林を愛する」

茂みの中の明るい日だまりに自生している。

白いネモフィラは殊に美しい。IMG_30103

陽が長くなって、
今度の土曜日はもう立夏だ。IMG_30113

朝日新聞「折々のことば」
第2716回。

いろんな人に
会うごとに 

こころが動いて 
いろんなきもちが
うまれてくる
〈細川貂々(てんてん)〉
絵本『こころってなんだろう』から。
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「心は誰かとかかわるときに動く」

「おこってないもん」
「うらやましくなんかない」
「何がスキかおしえない」
「イヤだけどがんばる」
などと思ううち、
「自分にしかわからないヒミツ」が生まれる。

「それが一人ひとりの心だ」

「だからその『ひきだしのなかみ』は
それぞれ違うんだ」

編著者の鷲田清一さん。
「心とは動き、
だからエモーションなのだ」

このつづき。

「それじゃ、どうやって、
自分のきもちを、
わかってもらう?」

「きもちを伝えるために、
コトバがあるんだよ」

「コトバで自分のきもちを
ほかの人に伝えることができるし、
ほかの人のきもちを
きくこともできる」

「コトバの力ってすごい」

「あんしんできるあたたかい毛布にもなるし、
あいてをきずつけるナイフにもなる」

「どんなふうにコトバをつかうかは
自分しだい」

「こころは
コトバときおくのひきだしで
できてる」

「これはだれでも同じだよ」

「こころにまどわされないでね。
だってこころはいつもくるくる動いてる」

「自分のそとがわのできごとで
くるくるかわるし」

「自分のうちがわのできごとでも
くるくるかわる」

「今 かなしくても
すこしじかんがたてば
たのしくなるかも」

「それがこころだよ」

「こころが
自分のまわりの世界をつくるよ」

こころが世界をつくるなら、
どんなお店も、
こころでできている。

こころはくるくるかわる。
お店もくるくるかわる。

こころは
コトバと記憶のひきだしで
できている。

お店もコトバとひきだしでできている。

だからコトバがだいじだ。
記憶のひきだしもだいじだ。
「ひきだしのなかみ」は、
それぞれに違う。

それぞれのお店にも、
コトバがひつようだ。

それがミッションである。
ひきだしのなかみがポジショニングである。

岡田卓也さんの旭日大綬章は、
こころに贈られたものだ。

そのコトバと記憶のひきだしに、
贈られたものだ。

伊藤雅俊さんも商いのこころと、
商いのコトバを残してくれた。

そのこころにみんなが共感したい。
コトバと記憶のひきだしは、
みんなが共有したい。

「コトバの力ってすごい」

〈結城義晴〉

2023年04月29日(土曜日)

岡田卓也さんの旭日大綬章受章と「商業の近代化・現代化」

岡田卓也さんが、
旭日大綬章を受章された。

イオン㈱名誉会長相談役。

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真っ先に思った。

故倉本長治先生が、
しみじみと喜んでくださっただろう。
岡田さんは倉本先生の愛弟子中の愛弟子だ。

故中内功さんも、
故伊藤雅俊さんも、
ちょっと悔しいかもしれないけれど、
すごく喜んだに違いない。

お二人は岡田さんの先輩であるし、
同志である。

故渥美俊一先生も、
ご自分のことのように、
嬉しがってくださっただろう。
コンサルタントとしてサポート役に徹した。

もちろん私も嬉しい。
小売業、商業の地位が認められたと思う。

令和5年春の叙勲。

旭日大綬章は、
かつての勲一等旭日大綬章。
「勲章制定ノ件」にある。
「国家又ハ公共ニ対シ勲績アル者ニ之ヲ賜フ 」

小売業ではもちろん初の受章。

政治家、裁判官などが受賞する勲章だが、
民間では奥田碩トヨタ自動車会長、
渡邉恒雄読売新聞グループ会長、
中村邦夫松下電器産業社長、
樋口廣太郎アサヒビール会長、
御手洗富士夫キヤノン会長など。
製造業、とくに重厚長大産業の、
傑出した経営者が受章してきた。

労働界では、
高木剛日本労働組合総連合会(連合)会長も。
高木さんは商人舎発起人のお一人。

岡田さんの受章の理由は、
「小売業の近代化と発展への貢献」

イオンの前身ジャスコの社是は、
「商業を通じて地域社会へ奉仕しよう」

理念は
「お客さまを原点に平和を追求し、
人間を尊重し、地域社会に貢献する」

そして岡田卓也さんの、
キャッチフレーズのようになっているのが、
三つの産業論。

平和産業、
地域産業、
人間産業。

イオンはセブン&アイと並んで、
日本最大の小売業となった。

産業のなかで重要な役割も担った。

1976年、日本チェーンストア協会二代目会長。
1995年、日本小売業協会会長。
1993年、財団法人日本ファッション協会理事長、
1995年、日本ショッピングセンター協会会長。

商業界ではエルダー。

一方、社会貢献活動を積極的に展開した。
私財を投じて3つの財団を立ち上げた。

「公益財団法人 イオン環境財団」では、
世界各地で「植樹」活動を推進した。

「公益財団法人 イオンワンパーセントクラブ」は、
青少年育成などの社会活動に努めた。

「公益財団法人岡田文化財団」は、
芸術・文化の振興・発展と教育機会を設け、
伝統産業の振興に努めた。

受賞にあたってのコメント。
「このたびの春の叙勲を受章することに際し、
身に余る光栄であると感じております。
長きにわたり、共に小売業発展のため、
ご尽力されてきた同志や、
その経営を支えられた従業員の皆さまを含め、
多くの方々に支えられたことに
感謝しております。
今回の叙勲は、小売業の重要性が
社会的に認識されたと感じており、
日本の小売業全体としても
大変栄誉あることで、
重ねて、関係者の皆さまに
厚く御礼申し上げます。
これからも、小売業のさらなる発展を願い、
地域社会への貢献に
引き続き寄与してまいります」

実に謙虚な、いいコメントだ。

1925年(大正14年)9月19日のお生まれ。
中内功さんは三つ年上、
伊藤雅俊さんは一つ上、
故清水信次さんや渥美先生は一つ下。

1946年6月、㈱岡田屋呉服店代表取締役就任
1959年11月、㈱岡田屋に社名変更して代表取締役就任
1970年4月、ジャスコ㈱代表取締役社長就任
1984年5月、ジャスコ㈱代表取締役会長就任
2000年5月、 ジャスコ㈱名誉会長相談役就任
2001年8月、イオン㈱に商号変更して、
名誉会長相談役(現任)。

1985年、藍綬褒章受章。

国際的にも数々の栄誉を受けた。

1985年、全米小売業者協会国際小売業者賞受賞
1986年、台湾経済部奨牌受賞
1989年、大英勲章C.B.E.受章
2007年、カンボジア王国 Le Grand Officer 受章
2007年、タイ王国勲三等ディレクグンナポーン賞受章
2009年、北京市栄誉市民賞受章
2010年、カンボジア王国 Le Grand Cross 受章
2017年、ベトナム ハノイ市名誉市民章受章

私は『岡田卓也の十章』という単行本を、
商業界社長時代の最後につくった。
岡田さんの実印が押された本だ。
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その「あとがき」が素晴らしい。
全文を紹介しよう。

「わたしは、常々、
あれだけの自由競争の中でやってきた
アメリカ商業の歴史を、
日本の商人はきちんと学ぶべきだと思っている」

「私が初めてアメリカに行った1950年代、
世界最大の小売業はA&Pだった。
当時、既に1万店近い小型のスーパーマーケットを
アメリカ全土につくっていた。

ところが、その1万店近い店舗を持っていた企業が、
没落するのである。

原因は、店舗のスクラップができなかったことと、
A&P自身の出自にあった。

A&Pは、メーカーから出発した会社で、
自分の工場を幾つか持っていた。
そして、工場を持った小売業には、
そこから仕入れなければならないという
不自由さがあった。

小売業の大きな特徴の1つは、
『メーカーのつくったものを選択できる』
ということである。

ところが、自分でメーカーになってしまうと、
どうしても自社製品を買わなければならなくなり、
小売業としての特徴がなくなってしまうのだ」

「そして、その後に出てきたのが
シアーズローバックであり、
そのシアーズローバックに
『追いつけ、追い越せ』と
成長してきたのがKマートだった。

創業時にはクレスゲという
バラエティストアを展開していた同社を
売上高世界一の座に押し上げたのは、
ハリー・カニンガムという経営者だった。

彼はクレスゲの店舗を
片っ端からスクラップし、
Kマートというディスカウントストアを
次々と大都市郊外に出店させる。

同社がカリフォルニアの郊外に
出店を敢行している最中に、
わたしがその店舗開発事務所を訪れると、
『7、8人の社員で
年間200店もの店舗をつくっている』と言われた。

その勢いのまま、シアーズを抜いて、
世界最大の小売業になったのである」

「そのKマートを、
後ろから追いかけてきたのが
ウォルマートだった。

ウォルマートは、
Kマートよりもさらに郊外に、
Kマートより大きな店をつくることで
急成長したのである。

戦後60年間のアメリカ商業の歴史には、
これだけの栄枯盛衰があった」

「ウォルマートとて、
今から20年後、30年後には
どうなっているか分からない。

必ずしも、
今大きいところがいつまでも大きい、
ということはあり得ない。

これからの日本においても、またしかりだ」

「しかも、規制が厳しかった小売業は、
裏を返せば、一番レベルの低いところに
合わせて安住してきた業界ともいえる。

その意味でも、これからの変革は
非常に大きなものになり、
必ず新しい勢力が出てくるはずだ。

わたしには、イオンが30年後に
どうなっているかは分からない。

小規模の段階で革新を行うのは
そんなに難しいことではないが、
規模が大きくなればなるほど
ものすごい力が必要になる。

しかし、思い切った革新を行わなければ、
企業は必ず衰退する」

「と同時に、規模の大小にかかわらず、
どんな企業でも倫理観を失ったときが一番危ない。

小売業は毎日毎日お客さまに接する、
まさに人間産業だ。

小売業の行動は、人間であるお客さまが
毎日毎日見つめていらっしゃる。

もし、人間の道にもとるようなことがあれば、
企業は一気に倒産する。

『どうやって毎日
お店にいらっしゃるお客さまから
信頼を勝ち得るか』――。

小売業は、真剣勝負の連続である」

岡田卓也さんが、
「小売業の近代化」に貢献したならば、
これからの人たちは、
「小売業の現代化」を模索し、
成し遂げなければならない。

〈結城義晴〉

2023年04月28日(金曜日)

将棋名人戦/藤井聡太の「落ちつき」と渡辺明の「格下の闘い方」

明日からゴールデンウィーク。

新茶をお送りいただいた。
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㈱伊藤園最高顧問の江島祥仁さんから。
IMG_29953

毎年のことで、心から感謝している。
そしてすごく楽しみにもしている。
IMG_E30043
「夏も近づく八十八夜」

八十八夜は、
立春から数えて88日目。
今年は5月2日。

春から夏に変わる。

いい季節です。

伊藤園には、
「ティーテイスター制度」がある。
1994年に始まった社内資格制度。

年に1回、希望者が勉強して受験する。
そして厳正な審査によって合格者が決定。

試験科目は学科、検茶、口述で、
茶文化からおいしいお茶のいれ方などまで、
幅広い知識と技能が求められる。

2017年には厚生労働省から、
社内検定の認定を受けた。

資格保有者は昨年5月段階で、
1級が17名、
2級が390名、
3級が1914名。

新茶は二番茶に比べると、
栄養にも優れているし、
おいしさも格別だ。

ありがたいことだ。

さて第81期将棋名人戦。
将棋界で最も重要な棋戦。
名人位は江戸時代から続く。

その2023年度は、
渡辺明名人対藤井聡太挑戦者。

第1局は藤井が勝利して第2局。

静岡県静岡市の料亭「浮月楼」。
IMG_29733

27日の朝9時に開始。
IMG_297401
後手の渡辺名人が、
「雁木」という戦型に持ち込んで、
初日が終わった。

封じたのは藤井竜王。

二日目の朝、立会人の青野照市九段が、
その封じ手を開封。
IMG_297822

青野は私と同年の70歳だが、
まだ現役の棋士だ。

その封じ手は「1六香車」
IMG_29793

そして対局再開。
IMG_29803

藤井の朝の「初手(しょて)」、
つまり第一手は「お茶」。
IMG_29813
ここで江島さんからお送りいただいた新茶を、
私は思い出した。

静岡だけに藤井の初手は新茶だったのだろう。
そう私は「読んだ」。

互いに持ち時間は9時間。
その半分ほどを初日に使って、
42手まで進んでいた。IMG_298933

藤井はいつも手が進むと羽織を脱いで、
書生のような姿で手を読み、
駒を動かす。
IMG_29913
誰かに習ったのか、
自分で考えたのか。

私はとても好ましく思っている。

私も講演のときには、
マクラの話が終わると上着を脱ぐ。
肩が凝るからだ。

藤井はまだ20歳で、
そんなことはないのだろうが、
リラックスして考えるために、
羽織を脱ぐのだろう。

その姿がいい。

朝10時のおやつ、
12時の昼食休憩、
3時のおやつ、
そして夕方6時の軽食をとって、
手はどんどん進んだ。

渡辺も大胆な手を指した。
IMG_29703

中盤で藤井の読み違いがあった。
しかし軌道修正して終盤に突入。

その終盤は藤井の読みが冴えに冴えた。

渡辺の夫人は漫画家の伊奈めぐみさん。
その作品が「将棋の渡辺くん」
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このなかのエピソード。
渡辺棋聖に藤井が挑戦した棋聖戦。

渡辺はあっさりと2連敗した。

しかし第3戦は序盤を研究し尽くして、
「格下の闘い方」をした。
それで勝った。

しかし渡辺は正直に、
伊奈めぐみのインタビューに答えている。

「藤井くんは 難しい局面で
ひとりごとを言うんだけど」
(「いやぁー」)
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「勝ちになってくると
ぴたっと落ち着くんだよね」watanabekunn
伊奈めぐみ、
「怖いね」^^

このシーンと同じように、
藤井は87手目で、
「3四歩」と相手の玉頭に打ち付けた。
IMG_29903
そして「すーん」と落ち着いた。

これをしばらく見ていて、
渡辺明が深々と頭を下げた。
藤井聡太もそれに合わせて頭を下げた。IMG_29933
午後7時51分、渡辺の投了である。

これで藤井の2連勝。

名人戦は七番勝負で7局を戦う。
先に4勝すれば勝利して、
タイトルを獲る。

藤井はあと2勝。
渡辺が不利になった。

インタビューに答える藤井聡太。
あくまで謙虚だ。
IMG_29863

渡辺は無念そうだったが、
こちらも淡々としていた。

将棋界には現在、
8つのタイトルがある。

そのうちの6つを藤井が持っている。
竜王、王将、王位、棋王、棋聖、叡王。

渡辺は2019年度と2020年度は、
3冠を保持して実力ナンバー1だった。

それらは次々にすべて藤井に奪われて、
現在は名人位のみという状況になった。

そして最強の挑戦者を迎えて、
2連敗を喫してしまった。

39歳。

人間は変人だが、
人柄はすこぶるよろしい。

第3戦は渡辺の「格下」の狂気の指し手が見てみたい。
それもまた渡辺明には良く似合う。

私は将棋名人戦をちらちら見ながら、
一日中原稿執筆に勤しんだ。

小売業の店舗競争でも、
「格下の闘い方」に徹すると、
活路が見えてくる。

渡辺明は凄い。

〈結城義晴〉

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