結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年04月06日(日曜日)

ユヴァル・ハラリの「クモの巣」と「繭に閉じ込められる世界」

日経新聞の[直言]
ユヴァル・ノア・ハラリ登場。
Yuval Noah Harari。

AIと民主主義を語る。

ハラリはイスラエルの歴史学者、哲学者。
1976年、イスラエル生まれの49歳。

ヘブライ大学で地中海史と軍事史を履修。
オックスフォード大学では、
中世史、軍事史を専攻、博士号取得。

現在、ケンブリッジ大学特別研究員。

著作は大作主義。
2011年、デビュー作『サピエンス全史』で、
彗星のように登場し、
2015年、『ホモ・デウス』で、
「知の巨人」のポジションを確立。

2018年、『21Lessons』では、
世界に鋭い提案をした。

著書は65の言語に翻訳され、
累計4500万部発行。
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私はいつもハラリの発言に注目している。

『サピエンス全史』は漫画版がお薦めだ。
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これはkindleで読まないほうがいい。91rX6TyMmpL._SL1500_

新著は『NEXUS 情報の人類史』
「ネクサス」は「絆」「中枢」などを意味する。
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上巻は「人間のネットワーク」

下巻は「AI革命」
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発刊は「トランプ2.0」の前。
だからトランプには全く触れていない。

そこでハラリのトランプ評。
「AI革命という、
宗教改革や産業革命より重大で
途方もない課題に直面している時に、
最も影響力のある国に
最も危険な指導者が現れた」

「政治も経済も
人と人の信頼関係で成り立つが、
トランプ氏もAI革命もそれを損ない、
分断を広げる可能性がある」

日経側の質問がとてもいい。

「エコーチェンバー」
AIやSNSの普及によって、
自分に近い考えや情報に閉じこもる現象。

トランプはその申し子か。

「そう思う。
自由な報道や独立した司法など、
権力のチェック機能を
解体しようとするかに見える」

「米国は4年に1度、権力を返還し、
別の指導者を選択する機会を設ける、
優れた仕組みと伝統を持つ」

「私はこの『自己修正メカニズム』が、
民主主義の根幹だと信じるが、
それが危うい」

経営においても、
「自己修正メカニズム」が必須だ。

「トランプ氏は新しい世界秩序について
なんら意味ある指針を示さない」

「自由貿易や多様性などの普遍的価値、
国際法による秩序を、攻撃しているだけだ」

「ウクライナを侵略したロシアに同調し、
『弱い者は従え』というニュアンスの
発言をしている」

「他国はもう国際法や米国に頼れず、
軍事費を増やして
戦争で自国を守るしかないということになる」

「人類は岐路に立っている」

「我々はついに人間でないもの、
私たちより言語や数字に秀でた
AIという技術を創造し、
自らの世界に取り込もうとしている」

ハラリはAIを危険視する。

「何千年、何万年という歴史を振り返れば、
人類は言語という道具で
互いの信頼を醸成してきた」

「そこにAIが割り込んだ時、
以前と同じような、
民主主義や経済活動が成り立つだろうか」

ハラリはAIを警戒する。

「民主主義を守る方法は2つある」

「まずボット、つまり、
インターネット上で人間のように振る舞う
『偽物人間』を法的に禁じることだ」

「ボット」(bot)は、
IT分野で使われるロボット(robot)の略語。

「人と区別ができない状態では、
偽の物語を流して誤った方向に人を導く。
人間もそれに気づかない」

恐ろしいことだ。

「もう一つは開発主体の企業が、
AIの行動に責任を負うことだ」

「IT企業は『言論の自由だ』などと主張するが、
彼らの言論はAIのアルゴリズムに人間のふりをさせ、
何かを決めさせているだけだ」

「要は、IT企業のビジネスモデルに原因はある」

「彼らは人々に長い時間、AIサービスを使わせたい。
エンゲージメントを高めたい。
それがフェイクニュースや陰謀論、憎しみを
まき散らす元凶になっている」

「我々は人類史上、
最も洗練された情報技術を持つが、
まともに話すことも意見の一致を見ることも
しなくなりつつある」

「米国の民主党も共和党ももう、
何かで合意することはないのではないか」

「AIが助長する分断の時代。
生き抜くためのカギと考えるのが、
『自己修正メカニズム』と『信頼の醸成』だ」

新著には「シリコンのカーテン」という、
象徴的な表現が出てくる。

「インターネットは当初、
ワールド・ワイド・ウェブといわれ、
世界中を覆う巨大な『クモの巣』のような存在だった」

「だが、AIは国と国、個人と個人を
『繭』のような狭い世界に閉じこめる懸念がある」

「人類はそれぞれ異なる現実を見て、
意見の一致も見にくくなる」

「取引も気候変動のような重要な問題の話し合いも
できなくなる懸念がある」

「クモの巣」ではなく、
「繭」に閉じ込められる世界。

「地球上あちこちに工場を構えたり、
貿易をしたりするのが難しく」なる危険性がある。

チェーンストアやメーカーの、
マスマーチャンダイジングや、
ソーシング活動の考え方が根本的に変わる。

「世界のつながりはこのままでは弱くなる。
各国が自己修正メカニズムを働かせ、
注意していなければ、いずれ切れてしまう」

米国と中国でAI技術を独占しそうな状況。

「2カ国以外の国々の団結が必要だ。
19世紀の産業革命が帝国主義に行き着いたように、
21世紀もAI化の格差が秩序をゆがめる」

「新薬を発明したり、
気候変動への対処に役に立てたりできるし、
AIの載った自動運転車が増えれば、
毎年100万人の命が救われるかもしれない。

「だが、常に危険も伴う。
エイリアン(人間ではないもの)の知性が出す
アイデアや下す決定は予測ができない」

「人間の理解を超えた存在が導く予測を、
人間が信じ、使いこなしていけるのか」

質問者は最後に「ドラえもん」を持ち出す。

ドラえもんは一種のAI。
だが神でもないし、
恐れられる対象でもない。
友達かペットだ。

日本人は脅威というより少し引いた目線で
AIを受け入れるかもしれない。

「面白い議論だし、
ドラえもんも読んでみよう」

ハラリは最後に、
ドラえもんを読むことになった。
いいことだ。

やや悲観的に過ぎるユダヤ人が、
日本的になってくれたら、
もっといい。

しかしAIとSNSによって、
「繭」に閉じ込められる世界。

その「繭」を利用して、
商売繁盛を狙ってはいけない。

〈結城義晴〉

2025年04月05日(土曜日)

アーベル賞受賞・柏原正樹とその師匠・佐藤幹雄の「代数解析学」

野辺に咲く花。
ハナニラ。
英語ではSpring starflour。IMG_1462 (002)

丈夫で手間いらずな花。
だから植えっぱなしでも、
3月から4月に花を開かせる。

これは藤青色だが、
ピンクや白もある。

星形の花をよく咲かせる。

葉や球根を傷つけると、
ニラやねぎのような匂いを放つ。

秋に球根で売られている。
あるいはポリポットの苗でも手に入る。

歩いていて足元に咲く花に気がつく。
それがハナニラだ。

朝日新聞「天声人語」

「アーベル賞受賞」の話題。
数学界のノーベル賞と言われる。

京都大学特定教授の柏原(かしわら)正樹さんが受賞。
78歳。
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偉業だ。

数学は3つの分野に分かれる。
代数学と幾何学、そして解析学。

私が中学生のころの数学の授業は、
代数と幾何に分かれていた。

代数は鳥羽先生、幾何は吉田先生。
懐かしい。

つまり中高で代数と幾何を学んだ。

それに「解析」が加わる。
解析は「極限」や「収束」といった概念を対象とし、
その基礎は微分学積分学だ。

高校の授業では通常、
数1と数2を教える。
これが代数と幾何。

初歩的な微積分は数3に入っていて、
私は大学に入ってから、
講義を選択して勉強した。

柏原教授の研究は、
解析学の分野に属しながらも、
代数学や幾何学の3分野すべてに関わり、
さまざまな数学の分野に応用されてきた。

柏原さんの師匠が故佐藤幹夫さんだ。
京都大名誉教授で、
「代数解析学」を創始した学者。
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「xがyより大きい」という不等式の数学が解析。
「x=y」という等式の数学が代数。

佐藤さんは「解析」を「代数」のように、
等式でスマートに考えられることを発見。

解析の微積分をかけ算や割り算のように、
自由に扱えるようにした。
これが複雑な微分方程式を解く手法となった。

しかし佐藤さんは論文を書かない研究者だった。
そのかわりに弟子たちが、
細部を詰め、証明し、形にしていった。
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弟子たちは「佐藤スクール」と呼ばれ、
1970年代以降の日本の数学界を牽引した。

柏原さんがその代表だ。

東大在籍中に、佐藤さんの講義を聴いた。
「場外ホームラン級のアイデア」と触発され、
佐藤さんのあとを追って京大へ。

京大数理解析研究所3階の佐藤さんの研究室で、
連日のように黒板に式を書いて議論した。

佐藤さんは代数解析学を、
「D加群(D-module)」と名づけて、
構想をつくった。

微分を英語でDifferentiationという。
D加群の命名にはこの頭文字のDが使われている。

それを柏原教授が基礎から確立した。
代数と解析が融合し、それが幾何をはじめ、
分野の垣根を越えて現代数学の発展に広く貢献した。
物理学や情報科学などにも影響を与えた。
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アーベル賞は2003年にノルウェー政府が始めた。

ノルウェーの数学者ニールス・アーベルの名を冠した。
ノーベル賞に匹敵する数学の科学賞だ。

これまでアーベル賞受賞で有名なのは、
2015年のジョン・ナッシュ氏、
2016年のアンドリュー・ワイルズ氏。

ナッシュ氏はゲーム理論の研究で、
ノーベル経済学賞も受賞。

ワイルズ氏は数学の超難問を証明した。
「フェルマーの最終定理」。

柏原教授は彼らに並ぶ功績と評価された。

ノルウェー科学文学アカデミーの選考の評。
多分野の研究をつなぐ柏原さんの「独創的な思考」は、
まるで「日本と南極を結ぶ橋」のようだ。

柏原さんが学んだ「佐藤スクール」の言葉。

「朝起きたときに、
きょうも一日数学をやるぞと
思っているようでは、
とても、ものにならない」

「数学を考えながらいつの間にか眠り、
目覚めたときにはすでに数学の世界に
入っていないといけない」

私はこの言葉に感動した。

こんな心境で、
仕事や商売に打ち込んだら、
凄いことができそうな気持ちになってくる。

㈱万代社長の阿部秀行さんの若いころ。
キャベツを売り切るアイデアを考えついたら、
「夜も眠れず朝が待ち遠しかった」

「佐藤スクール」に通じるものだ。

一心に仕事のことを考えながら、
眠りについてみることにしよう。

〈結城義晴〉

2025年04月04日(金曜日)

世界同時株安・世界同時物価高騰と「最高の二番手」

月刊商人舎4月号、
責了しました。

すべての原稿を入稿して、
すべての原稿を校正して、
あとはデザイナーさんと印刷所にお任せする。

それを「責任校了」、略して「責了」と呼ぶ。

責了間近の編集部。IMG_1455 (004)

みんな、疲れ切った。
それでも安堵の色が見える。

お疲れ様。

いい雑誌になりました。
ありがとう。

表紙もとても良かった。
原稿はもちろん良かった。
写真がすごく良かった。
しかもたくさんの写真を使った。

1827年のフランス。
ニセフォール・ニエプスが、
写真を発明した。

ニエプスに感謝。

もちろん、
ヨハネス・グーテンベルクにも感謝したい。
こちらは1445年に活版印刷を発明した。

歴史的にいろいろな人の、
いろいろな発明によって、
私たちの生活や仕事ができ上っている。

それに感謝しなければならない。
いや、感謝したいと思う。

夜桜は美しい。
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さて、トランプ関税。
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ニューヨーク証券取引所のダウ株価は、
急落の流れが止まらない。

日経平均株価も下落一方。

世界同時株安。

他国に関税をかければ、
自国の製造業が再生される。

そんなはずはない。

ポール・クルーグマン。
「完全に狂っている」

トランプは経済市場によって裁かれる。
私はそう言っているが、
裁かれるまで待っていては遅い。

トランプを支持していたアメリカの友人も、
「アホか‽」と言い始めた。

ウォルマートは世界で最も大量に、
中国製品を輸入し、店頭で販売している。
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ウォルマートも関税分を、
そのまま価格に転嫁はしない。
相当我慢するだろうけれど、
売価は確実に高騰する。
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ほとんどが必需品だから、
購入量が極端に減るわけではない。

だから売上げは上がるだろう。
年商は軽々と100兆円を超えるに違いない。

しかしアメリカ国民の生活は苦しくなる。
とくに低所得者はそれに耐えられなくなるだろう。

ホームレスも増えるのだろう。

アメリカに進出しているドイツの小売業。
アルディはさらに躍進する。IMG_9886[1].jpg2

米国内店舗数はすでに2400店。
ウォルマート、クローガーに次ぐ店舗数。

アルディの世界年商は、
昨年で1448億ドル(22兆円)。

生鮮食品の品揃えも増え続けている。IMG_9882[1].jpg2

リドルの成長は想像を超えるだろう。
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2017年にアメリカに進出して、
今年1月末の店舗数は183店。

このインストアベーカリーは大人気だ。
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ウォルマートを凌ぐ、ドイツ勢の低価格力。
両者は凄い勢いをもつに違いない。

アルディとリドルの揃い踏みで、
両者が激しく競争し合うと、
周辺のアメリカのスーパーマーケットが、
次々に業績を落とし始める。

アルバートソン以下のチェーンは、
危なくなるだろう。

イギリスのテスコが停滞しているのは、
アルディとリドルの躍進のためだ。

世界同時株安と、
世界同時物価高騰。

苦しむのは持たざる者ばかりだ。

それを救うのはRetailだけれど。

朝日新聞「折々のことば」
第3374回。

鷲田清一さんの編著。
よくまあ、これだけの本や情報に、
目を通している。

同じ場所で太く長く
生きていこうと思ったら、
「最高の二番手」になるべきだ。
〈堺正章『最高の二番手』から〉
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「仕事が、
『ゆるやかに下り坂』になる時期が
誰にもある」

「不安でも、己を知る良い機会だ」

そこで堺は、
「二番手」のポジションをとろうとする。

「トップを競わなければ、
『ガツガツ』した焦燥感から解放されるし、
自分がまだ通過点にいると思い、
努力し続けられる」

鷲田さん。
「誰もが一位をめざす社会より、
一級品の二番手が多い社会のほうが堅牢だ」

マーケット・リーダーよりも、
マーケット・チャレンジャーがいい。

いやマーケット・ニッチャーでもいいと思う。

役者や歌手はとくに。

しかしこの世界でフォロワーは、
絶対に生き残れない。

アメリカチェーンストアで、
アルディやリドルが二番手になったら怖い。

「最高の二番手」はいいポジションなのだから。

〈結城義晴〉

2025年04月03日(木曜日)

クルーグマンの「完全に狂っている」と上野光平の「最高で無比の」

ドナルド・ジョン・トランプ。
アメリカ合衆国大統領。

すべての国への一律関税10%と、
「ダーティ15」への相互関税の概要を発表した。

あ~あ。

2008年ノーベル経済学賞受賞の経済学者、
ポール・クルーグマン博士。
ニューヨーク市立大学大学院教授。
1953年2月28日生まれで、
日本流に見れば私と同学年。
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ニューヨーク・タイムズのコラムニスト。
そのコラムは「マーケットを動かす」と言われる。

トランプ関税を猛批判。
「完全に狂っている」

「関税率は誰が予想していたよりも高い」

そして「貿易相手国について虚偽の主張をしている」

さて、これは脅しなのか。
正気なのか。

世界がそれほど戦々恐々としていないのも不思議だ。

桜は咲いているが、寒い。
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まだまだ満開の一歩手前。IMG_1435 (002)

横浜でも今週末まで楽しめそうだ。 IMG_1436 (002)
無頼派の坂口安吾には、
「桜の森の満開の下」という短編がある。

商人舎オフィスに出ると、
「セルコレポート」が届いていた。IMG_1441 (002)

私の連載は「艱難は商人を鍛える」
その36回「西友『流転の艱難』」IMG_1443 (002)
ご愛読をお願いします。

さて商人舎流通SuperNews。

平和堂news|
営業収益4449億円4.6%増・経常利益146億円1.1%増

(株)平和堂の2025年2月期連結決算。
営業収益4449億円(対前年増減率4.6%増)、
営業利益134億円(0.8%増)、
経常利益146億円(1.1%増)、
当期純利益107億円(58.1%増)。heiwado2502-1

営業利益率3.0%、経常利益は3.3%。

当期純利益の大幅増益は、
前期の能登半島地震被害に伴う特別損失の反動と、
政策保有株式の売却益が出たため。

既存店売上高は102.8%。
客数102.1%、客単価101.6%。

みんな、頑張っている。

重点戦略は、
「生産性改善も含むコスト構造改革の推進」

2026年度までの「第五次中期経営計画」は、
地域密着ライフスタイル総合(創造)企業を目指す。

具体的には二つの取り組みがある。
第1は、
「子育て世代ニーズ対応による、
顧客支持の獲得」

子育て世代に人気の大容量パックを強化した。
頻度品をKVIとして価格訴求した。
KVIは「キーバリューアイテム」

2024年7月にHOPアプリをリリースして、
2025年2月現在で81万人が会員登録している。

第2の取り組みは、
「ドミナント戦略をベースとした、
HOP経済圏の拡大」

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ドミナント戦略強化に向けて、
愛知県に3店舗、滋賀県に1店舗、
そして大阪府に1店舗を新規出店した。

ネットスーパー事業は5店舗となった。

平和堂単体の期末店舗数は164店舗。

連結子会社のベストーネが、
プロセスセンター・デリカセンターを運営する。
そのアウトパック活用推進で、
コスト構造改革を進めつつ、
従業員の働きがいを向上させ、
生産性を高める取り組みを進めている。

平和堂は着々とマイペースで進む。
それが平和堂らしくて、いい。

「セルコレポート」では、
故上野光平さんの文章を紹介した。
上野光平

1967年6月の西友ストアー社内報、
その巻頭の「今月のことば」。

「私たちに課せられた課題の大きさに比べて、
私たちの仕事の質の低さに
いらだたざるを得ないのも事実であります」

「私たちの課題は、
『最高で比べるものもない』
ということであります」

「私たちの規模と社会的責任とは、
私たちに最高かつ無比の仕事のレベルを
要求しております。
私たちはこの要求に
こたえなければなりません」

「商品部の諸君、あなた方は、
戦略商品群について、
『最高で無比の』戦略体制を
実現しているのでしょうか」

「管理部の諸君、あなた方は、
経営管理の精度と合理化と管理コストにおいて、
『最高で無比の』業績を
達成しているのでしょうか」

「店舗の皆さん、あなた方は、
高い労働生産性と低い店舗コストの運営によって、
『最高で無比の』店舗運営を
しているでしょうか」

「課題への挑戦には、
自己満足のひとかけらも
許されないのです」

御意。

〈結城義晴〉

2025年04月02日(水曜日)

スクワットしながら思う「トランプは経済市場によって裁かれる」

ニューヨーク証券取引所では、
ダウ平均株価が224ドル安。

東京市場では日経平均株価が、
3万6000円を切った。

明日、米国ドナルド・トランプ大統領が、
「相互関税」の詳細を発表する。

3月25日の日経新聞「大機小機」
「トランプ関税の全廃に立ち上がれ」

「このままトランプ関税が発動されれば、
世界経済はスタグフレーションに巻き込まれる」

スタグフレーション(Stagflation)は、
スタグネーション(Stagnation=停滞)と、
インフレーション(nflation=物価上昇)の、
合成造語。

景気後退とインフレが同時に起こる現象。

景気は後退局面にあるのに、
モノ不足によってインフレの状態となること。

一般的には不景気のときには、
デフレ圧力がかかりやすい。

それが不景気なのに、
インフレが起こる。

つまり「最悪の経済状態」

それが起こるかもしれない。

コラムニストは無垢さん。
ズバリズバリとモノを言う。

「米大統領就任から2カ月、鮮明になったのは
その『経済音痴』ぶりである」

「関税ほど美しい言葉はない」と繰り返す。

「貿易黒字は利益で、
貿易赤字は損失と思い込む」

「高関税で貿易赤字は減ると信じる」

「貯蓄投資バランスを軸とする、
経済学の常識に欠けている」

4つの展開を予想する。

第1に、
高関税で2国間の貿易収支の均衡はできない。

第2に、
関税戦争はエスカレートする。
鉄鋼やアルミから、
自動車、相互関税へと拡大すれば、
危機は深まる。

不確実性の時代に、
消費も投資も手控えられる。
市場の波乱による逆資産効果も無視できない。

第3に、
軍拡競争しだいで債務膨張も懸念される。
リーマン・ショック以来の信用危機を前に、
日米の金融政策は身動きできない。

第4に、
その影響をまともに受けるのは、
トランプ政権を支えた社会的弱者である。
危機が経済格差をさらに広げる。

そして解決策をたとえ話で説明する。
アンデルセンの童話「裸の王様」

「王様は裸だ」と言った少年が世界を変えた。

「日米同盟は重要だが、
裸の王様に追従するだけでは、
国際信認を失う」

「見て見ぬふりではすまない。
世界に視野を広げて、
自分さえよければいいという姿勢から
卒業するしかない」

しかし2025年の裸の王様は、
少年の声では目覚めないだろう。

どうなるかわからない。
どうすればいいかわからない。

けれど私は最初から言っている。

トランプは経済市場によって裁かれる。

私はスクワットでも続けるか。IMG_4170 (002)

⑴基本は深いスクワット
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⑵スロートレーニング
深く、しっかりしゃがんで、
そこからゆっくり立ち上がってきて、
完全に立ち上がりきらずに、
またしゃがむ。

⑶逆スクワット
しゃがんでから速く立つ。
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商人舎流通SuperNews。、
大創産業news|
「今治製 紋織ハンカチ」Standard Productsで発売

Standard Products by DAISOは、
国内地域産業とのコラボ商品を開発している。

愛媛県今治市の、
「今治製紋織(もんおり)ハンカチ」

これはいい。
すぐに買おう。

6色で展開する。
⑴新橋(しんばし)
⑵薄墨(うすずみ)
⑶灰白(かいはく)
⑷臙脂(えんじ)
⑸辛子(からし)
⑹草(くさ)
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薄墨と草がいいかな。

最後に朝日新聞「折々のことば」
第3372回。

毎日毎日、中身の濃い連載である。
感心を超えて、感動している。

万物に後ろ姿はある
〈東海林さだお〉

「『経営の神様』とされる松下幸之助は、
人を採用する時にはその人の運と、
愛嬌(あいきょう)と後ろ姿をよく見ろと諭した」

漫画家・東海林さだおは、
その言葉に刺激された。

「ではカボチャや牛蒡(ごぼう)
後ろ姿はどこかと思案する」

「でもこの神様、ひょっとしたら
面接員の洞察力を後ろから
密かに測っていたのかも」

すべてのものに後姿があって、
それがその人間や野菜、モノの、
本質を表している。

トランプにも後姿はある。

それが人々によく見えるときが必ずくる。
いつかはわからない。

〈結城義晴〉

2025年04月01日(火曜日)

河合隼雄の「逆転思考」と遠藤周作の「くるたのしい」

4月に入った。

4月1日は、
エイプリルフール。

河合隼雄(かわいはやお)さん。
1928年~2007年。
京都大学教授、日本のユング派心理学の第一人者。
臨床心理学者、文化功労者。
そして文化庁長官を務めた。

その河合さんは「日本ウソツキクラブ会長」を自称。
架空の親友・大牟田雄三との共著は、
『ウソツキクラブ短信』
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最近の心理学の研究では、
ウソは高く評価されているらしい。

それを踏まえて某教育委員会が、
「ウソのつき方」を教え、
生徒たちに週13回以上のウソをつくように指導した。
すると生徒たちの精神衛生がぐっとよくなり、
いじめも不登校もまったく消滅……
という報告も、あるらしい‽!

河合さんの箴言(しんげん)。
「うそは常備薬、真実は劇薬」

エイプリルフールにこそ読むべき本だ。

その河合隼雄さんの著書。
『「老いる」とはどういうことか』81QZRVWC9dL._SL1414_
昨日のブログは「若返れ」と主張した。
けれど今日は「老いも、いい」という話。

河合さんの「老いる」の本の「その一の2」
「逆転思考」

――昔々、ある殿様が老人は働かず、無駄だから山に捨てるように、というお触れを出した。ある男が自分の父親の老人を捨てるにしのびず、そっとかくまっておいた。

殿様はあるとき、灰で作った縄が欲しいと言いだした。皆がわれもわれもと灰で縄をなおうとするが、どうしても作れない。

例の男が父親に相談すると、わらで固く固く縄をない、それを燃やすといいと教えてくれた。なるほど、やってみると灰の縄ができたので殿様に献上した。

殿様は喜んで誰の考案かと言う。実はかくまっていた老人の知恵で、と白状すると、殿様は、老人は知恵があるので、以後捨てずに大切にするようにとお触れを出した――。

おもしろい。

縄を作ってから灰にする。
「逆転思考」

そこで河合さんの提案。

「老人は何もしないから駄目」と言うが、
「老人は何もしないから素晴らしい」と、
言えないか。

「青年や中年があれもするこれもすると
走りまわっているのは、それによって、
生きることに内在する不安を
ごまかすためではなかろうか」

「何もせずに『そこにいる』という老人の姿が、
働きまわる人々の姿を照射して、
不思議な影を見せてくれるのである」

同感したい。

私は何もせずにいることができない。

まだまだ「生きることに内在する不安」に、
勝てないでいるのかもしれない。

これは嘘ではない。

さて商人舎流通SuperNews。
帝国データバンクnews|
4月の値上げ4225品目/1年半ぶりに4000品目超

主要食品メーカー195社の調査。
4月の飲食料品の値上げは4225 品目、
値上げ1回当たりの平均値上げ率は月平均16%。
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今年1月以降4カ月連続で前年を上回った。

値上げのピークは2023年10月だった。
それ以来、1年6カ月ぶりに、
単月で4000品目を超える。

「値上げの季節」は、売りにくい。
覚悟が必要だ。

4月の値上げ品目をカテゴリーで見ると、
調味料が2034品目で最多。

酒類・飲料は1222品目。
缶ビール・缶チューハイ、
コーヒー飲料が値上げ。

加工食品は659 品目。

2025年通年での値上げは、
9月までの発表分で累計1万1707 品目。

昨年の実績は1万2520品目だった。

昨年に比べて値上げペースは早い。

9月までのカテゴリーでは、
冷凍食品やパックごはんなど加工食品が3499 品目。
調味料が3294 品目、酒類・飲料が2089 品目。

2025 年の値上げ要因。

原材料高が97.8%。
物流費由来の値上げは81.8%、
人件費要因の値上げは45.1%。

これにドナルド・トランプの、
「関税不況」が重なってくる。

今年の夏から秋、年末まで、
厳しい消費局面が続く。

賢い「老人」に聞いたら何と言うだろう。

「逆転思考」と一言、
答えるに違いない。

「具体的方策は自分で考えよ」

苦しければ苦しいほど、面白い。
やりがいがある。

河合隼雄さんの著書『父親の力、母親の力』
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作家の遠藤周作さんと対談した。
もうお二人とも故人だ。

遠藤さんは言った。
「小説書きの仕事はくるたのしい」

「くるたのしい」は「苦楽しい」

苦しくて、楽しい。
苦しいことは、楽しい。
苦しいほど、楽しい。
そして楽しいことには必ず、
苦しいことがつきまとう。

今年の4月以降は、
「くるたのしい」

ああ、くるたのしい。
くるたのしい。

〈結城義晴〉

2025年03月31日(月曜日)

トライアルHD、PPIH、GU社長「60の退任」と「40・50の若返り」

Everybody, Good Monday!
[2025vol⑬]

2025年第14週。
今日は3月最終日。

年度末、期末。

そして関東は典型的な「花冷え」

桜の花が咲くころに急に寒くなる。
それが「花冷え」である。

粋な言葉だ。

「寒の戻り」という言葉もある。
こちらは3月から4月にかけて、
冬に戻ったように寒くなること。

花冷えは桜の時期だけ、
寒の戻りはもう少し期間が長い。

どちらも日本語、
使い分けると楽しい。

さて今週は明日から4月。
私は金曜日まで、
月刊商人舎4月号の原稿執筆。

頑張ります。

さて商人舎流通SuperNews。
人事の季節。

トライアルnews|
4/1付けで永田洋幸氏が社長/亀田氏は副会長

西友の買収が決まって、
7月1日で子会社にするのが、
㈱トライアルホールディングス。

4月1日(火)付けで代表取締役社長となるのが、
永田洋幸㈱RetailAI社長。
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オーナーの永田久男会長の長男、42歳。

亀田晃一現社長(61歳)は取締役副会長となる。

大胆な若返りを図る。

PPIHnews|
9/26付でPPIH社長に森屋秀樹氏、ドンキ社長に鈴木康介氏

㈱PPIHもトップ人事は若返る。
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス。

PPIH代表取締役社長には、
森屋秀樹PPIH代表取締役兼専務執行役員CSO (47歳)。
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㈱ドン・キホーテ代表取締役社長には、
鈴木康介ドン・キホーテ代表取締役副社長(48歳)。
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昇格人事で大幅に若返る。
森屋、鈴木両社長は大卒プロパーから、
ドン・キホーテ入社組だ。

吉田直樹代表取締役社長(60歳)は、
代表権のない特務担当取締役となる。

さらに、
ファストリnews|
4/1付でジーユー社長に黒瀬グローバルCOOが就任

㈱ファーストリテイリングは4月1日付で、
子会社の㈱ジーユー社長に、
黒瀬友和ジーユーグローバルCOOが就任する。
ファーストリテイリンググループ執行役員でもある。
53歳。

2010年のテレビ番組「ガイヤの夜明け」では、
ユニクロ銀座店の店長として、
日本一の売上げを達成したエース店長だった。

ジーユーの創業者・柚木治社長(60歳)は、
ファーストリテイリンググループの、
上席執行役員コーポレートサービス担当に就任。

トライアルホールディングス、
PPIH、ジーユー。
いずれも現社長は60歳、61歳。

それらの社長が退いて、
42歳、47、48歳、53歳の新社長と交代する。

60歳は社長の「アガリ」なのか。
そんなことを感じる。

しかし若手に任せるのは、
悪くない。

2021年、コロナの年の商人舎標語。
「若返れ!」

時代と時代の節目のとき。
「断絶」を乗り切る武器は若い力である。
若さによってしか「時代の溝」は凌げない。
だから組織は若返るべきだ。

まず商人一人ひとりが自分を若返らせる。
さらにその商人の集団を若返らせる。
すると組織が若返る、会社が若返る。
産業全体が若返る。

コロナ禍によって生まれる「キャズム」は、
この2021年も継続する。
早ければ東京五輪までに片がつくか。
だが遅ければ2022年も続く。

その間に自らを刷新する。
「キャズム」を凌ぐ作業そのものが、
若返りにつながるような態勢をつくる。
若返りを前提にすべての経営戦略を策定する。

人を若返らせる。
店を若返らせる。
売場を若返らせる。
商品を若返らせる。

若さが「キャズム」を乗り越える
早さの鍵を握る。
若さが「キャズム」を凌ぐ
柔らかさの源である。

若さが「キャズム」を
ばねにする強さの礎である。
そして若さが
企業の生命線である。

人よ、若返れ。
店よ、若返れ。
売場よ、若返れ。
商品よ、若返れ。

コロナ禍による時代の節目のとき。
この「断絶」を乗り切る武器は若い力である。
失敗を恐れぬ力によってしか
「キャズム」は凌げない。

だから私たちは、
若返らねばならない。〈結城義晴〉 20210102-768x512 (1)

大きな会社だからこそ、
社長は若くなくてはいけないかもしれない。

経験は少ないが、
若さはある。

若さが早さの鍵を握る。
若さが柔らかさの源である。
若さが強さの礎である。
そして若さが企業の生命線である。

では、皆さん、今週も、
老いも若きも、若返ろう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

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