結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年08月29日(金曜日)

オーケー川口中青木店開業と「人間発見」の玉置泰さん

オーケー川口中青木店が開業した。
昨日の8月28日、金曜日。ok-facade

山本恭広編集長が取材に行った。

JR京浜東北線川口駅から、
東に2㎞弱入った住宅地。

とくにメディア向けの案内はなかったが、
事前に店舗撮影と取材を申し込んだ。
取材者はたった一人だった。

オーケーとしては川口市内5店舗目。
59万5000人の人口の川口に集中出店している。

オーケーのこの新店は、
強いチェーンが集まる激戦地内に飛び込んだ。

1998年10月にオープンしたのが、
サミットストア川口青木店。summit

2001年7月にはベルク中青木店。belc

そして2003年12月に、
ヤオコー川口朝日店が最後発で登場。yaoko-facade1

どの店もオープン以来、20年以上が経過した。

この間、どの店も改装を施し、
最新のMDを展開している。

今、ヤオコーが外壁をリフレッシュ中。yaoko-kawaguchi

オーケーの建物は地下1階地上4階。
売場面積500坪を確保するために、
1階は搬入口と駐車場用の車路スペースとした。
2階から上は駐車場にして、
地下1階に売場を設けた。

9時半に店舗に到着。
開店前には200人が並んだ。

8時半のオープンのあと、
1階で入場制限をしながら、
エスカレータで顧客を誘導する。

次々とエスカレータを降りてきた顧客に、
従業員がカートを渡す。ok-produce

売場先頭の壁面には、
シャインマスカットと巨峰の大量陳列。ok-kawaguchi1

第1主通路に青果、鮮魚、精肉を集中させる。

このゾーニングはオーケーの定石だ。ok-kawaguchi2

売場最終コーナーは惣菜とベーカリー。
開店日限定の握り寿司と焼きたてピザに、
顧客が群がる。
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二宮涼太郎社長は、
手応えを語ってくれた。ok-ninomiya

「川口市内の既存店の地主さんのご縁で、
この店の土地が確保できました」

「川口はオーケーの認知度が高いエリアです。
この店の周囲にはいろいろな国のお客さまが、
住まわれています。
それが特徴ですが、
しっかり対応していきます」

激戦区ではあるが、
手ごたえ十分といった印象だった。

詳細は月刊商人舎9月号に掲載する。

山本編集長のルポルタージュ。
ご期待ください。

さて日経新聞夕刊の「人間発見」
今週の月曜日から5日連続で、
玉置泰さんが登場。

楽しみに読み続けてきたが、
金曜日の今日が最終回。
玉置泰

肩書は、
「ITM伊丹記念財団理事長、一六会長」

ITMグループの祖業は菓子の一六。
自動車販売のネッツトヨタ愛媛と、
スーパーマーケットのセブンスターなど、
愛媛県で多角的に事業を展開している。
年商は約400億円。
愛媛県を代表する企業グループだ。

その玉置さんは、
伊丹十三記念館理事長である。

この「人間発見」は、
その人の意外な側面を発見する、
という趣旨の連載だ。

玉置さんは、
立派な経営者であり、
なおかつ映画プロデューサーであり、
伊丹十三記念館を運営する。

そこにスポットを当てた。

玉置泰さんの父上は、
商業界全国同友会の重鎮だった。
つまり倉本長治の愛弟子だった。

その意味でも私はお世話になった。

玉置さんは同郷の伊丹十三さんに、
一六タルトのCMに出てもらうことで知り合いになる。

それから伊丹さんの初めての映画製作に協力する。
「お葬式」への出資だ。

それが大成功して、
伊丹映画は高く評価され、
次の「タンポポ」などの名作につながっていく。

玉置さんは伊丹プロダクション社長となって、
その後も伊丹さんを支え続ける。

映画「スーパーの女」は記念碑のような作品だ。
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玉置さんはセブンスターの社長だった。

伊丹さんが中内功さんに興味をもっていた。
しかし玉置さんは反対した。
「価格破壊は1~2年で魅力を失うような言葉で、
映画にはなりませんよ」

そこで玉置さんは、
サミット社長の荒井伸也さんに引き合わせる。
伊丹さんは荒井さんの「スーパー愛」に感動する。

そこから映画づくりが始まった。

玉置さんと荒井さんが全面的に支援して、
「スーパーの女」は制作され、封切され、
大ヒットする。

スーパーマーケット業界は産業を上げて、
この映画を支援する。

私も旧サミット方南町店での撮影現場や、
布田の撮影所を訪れて、
少しだけ協力した。

その撮影所の伊丹組の事務所には、
「小説スーパーマーケット」、
「日本スーパーマーケット原論」、
そして食品商業別冊がずらりと並んでいた。
「惣菜の教科書」や「サミットスタディ」などなど。

伊丹さんや製作スタッフたちが、
「面白い、面白い」と言って読んでくれたそうだ。

このときの映画のプログラムに、
私は一文を書いた。

私自身がスーパーマーケットで泣いた話。

食品商業誌上では、
対談「伊丹十三×荒井伸也」を掲載した。

その伊丹さんが突然、亡くなった。
玉置さんは慟哭しながらも、
奔走してすべての実務を処理した。

そんなことが5日にわたって描かれた。
いい連載だった。

今、玉置さんはお二人の息子さんに、
それぞれの事業の社長を任せて、
会長の座にある。

伊丹プロダクション社長は、
伊丹夫妻の次男、池内万平さんに譲った。

私も伊丹映画のファンだ。
とくに好きな作品は「タンポポ」。
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それから「あげまん」。
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もちろん「スーパーの女」はいい。
これらの映画は玉置泰さんの作品でもある。

ありがとうございます。

〈結城義晴〉

2025年08月28日(木曜日)

紀文正月フォーラム2日目の「後ろ向き・下向き・内向き」はNG!

今日も東銀座の時事通信ビルへ。IMG_8068

㈱紀文食品の正月フォーラム2日目。

毎年、時事通信フォーラムで開催される。
紀文正月フォーラムは、
季節の変わり目を知らせてくれる風物詩だ。

高柳謙一郎営業企画部部長が出迎えてくれた。
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控室を尋ねてくれたのは弓削渉副社長。
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海外事業を担当する。
トランプ関税でご苦労されているとか。

会場のホワイエには、
「紀文と大相撲」のプレゼンテーション。
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フォーラムは13時30分にスタート。
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初めに堤裕社長のご挨拶。
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紀文食品の今年の提案が、
「SURIMI(すりみ)」。

若い世代を掘り起こすマーケティングだ。IMG_8081

フォーラムの2025年のテーマは、
「変わるお正月、
どう過ごす?どう売る?
お正月戦略のポイント」

3つのプログラムで2025正月商戦を提案する。

第1が基調講演。
「『これ、なあに?』から始まるおせちの行事食」。
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和文化研究家の三浦康子さんと、
シルミル研究所の岡﨑菜穂子さん。
対談形式で進める。
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行事食を子どもに伝える。
行事食の代表が正月であり、おせちだ。

シルミル研究所の91万人のアンケートをもとに、
丁寧に提案していくお二人。
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ホワイエには、
おせちの「これなあに?」が展示されている。IMG_8087

おせちの「意味」がかな文字で書かれている。
店頭で子どもたちに伝えるときの参考になる。IMG_8089

プログラムの2番目は紀文食品からの提案。IMG_8104

プレゼンテーションは堀内慎也さん。
セールス・カテゴリー推進室戦略推進部部長。

2024正月商戦の総括と、
2025年の取り組みを提案する。

仕掛けの時期や商品トレンドなど、
盛りだくさんの情報で正月商戦を支援する。IMG_8111
の堀内さんの講演内容は、
月刊商人舎10月号に掲載される。

このフォーラムに参加した企業は復習を、
参加できなかった企業は勉強を、
してください。

第3が結城義晴の総括講演。
テーマは、
「トランプ関税と闘え。」

毎年、春先にはフォーラムのテーマを考える。
今年は「円安不況に対抗せよ」と決めた。

しかし8月7日から、
日本に対しては15%の関税がかけられた。
世界中の国に一方的に関税がかけられた。

既存のサプライチェーンは大きく変容する。

そこでタイトルを変えた。

さらに2025年の提案は、
「商品部強化策と年末商戦の考え方」となった。
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講演のプロローグは、
「 不易流行、元は一つ也」
この3年ほど言い続けているのが、
「トレードオン」である。

「トレードオフ」は、
何かを得ると、別の何かを失うという、
相容れない関係のなかで、
何かを達成するために何かを犠牲にする、
と決めることである。

その反対にトレードオンは、
二律背反の要件を、
新たな価値を生み出すことで
両立させてしまうこと。

コロナ禍を経て、
トレードオンが必須となった。

松尾芭蕉も作句において、
同じことを教えた。

千歳不易の句と一時流行の句。
どちらも必要だが、
その「元」は一つだ。

トレードオンの時代の心理がここにある。

プロローグの後が、
ごく簡潔なPEST分析。

①PESTのPはPolitical。
政治が商売にもビジネスにも、
大きく影響を与える。IMG_8122

②PESTのEはEconomics。
日本銀行2025年7月の基本的見解は、
「経済は2025年度と2026年度、
下振れリスクの方が大きい」

しかし昨日の政府の8月報告でも、
「わが国の景気は緩やかに回復している」

これをどう考え、どう行動するか。

③PESTのSはSociety。
社会全般に不安要素が充満している。
だから生活は全体的に保守的になる。

④PESTのTはTechnology。
技術革新では二つの潮流を提示。
第1がデジタルトランスフォーメーション。
第2がソフトウェアの技術革新。

それらに関しても簡潔に対策を示した。IMG_8121

それから具体的な二つの提案。
第1が「商品部を強化し、重用せよ」

これはトランプ関税対策には、
商品部の躍動しかないと考えるからだ。IMG_8126

そのためにも緊急セミナーを開催する。
9月24日(水)・25(木)。
商人舎バイヤーセミナー。
バイヤーセミナー
この正月フォーラムでは、
そのエッセンスを5分ほどで語ったが、
実際のバイヤーセミナーでは、
私は7時間、熱を入れて講義する。

バイヤーの仕入れと商品開発の「精神と技術」

鈴木哲男講師、中村徹講師と、
三人で全力を挙げて講演する。

自分で言うのも恐縮だが、
これは参加して、
勉強したほうがいいと思う。

メーカーや卸売業の皆さんも、
受けつけています。
一緒に学んでほしい。

正月フォーラムの第2の提案は、
「選ばれる店づくり」
紀文食品の提案と同期している。
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最後に「勝ち組と負け組」の差異を示した。

勝ち組は例えば年間25%伸びれば、
3年で2.0倍、6年で3.8倍となる。

10%成長ならば8年で2.1倍。

一方、前年比98%が5年続けば1割減、
10年続けば2割減で売上げは8割になってしまう。

前年比95%が7年続けば3割減、
10年続けば4割減で6割となる。

会社全体でもこうなるし、
店でも商品部門でも商品カテゴリーでも、
この大きな格差が生まれる。

だからこそ必要なのは、
「前向き・上向き・外向き」のプランであり、
「前向き・上向き・外向き」のアクションだ。

「後ろ向き・下向き・内向き」はNG!

最後の最後に「ホッケースティックの関係」
これは全社で貫徹してほしい。

2日目も気合を入れて語り切った。

ご清聴、感謝。

講義が終わるとホワイエで試食会。
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㈱ハローズの佐藤利行社長も参加してくださった。
前期も7.7%の増収、12.9%の増益、
絶好調の凄い会社だ。IMG_8136

登壇者の皆さんと写真。
右から三浦康子さん、岡﨑菜穂子さん、
そして堀内慎也さん。IMG_8139

2日間を終えてみんな笑顔。

最後の最後は、
堤裕社長と國松浩常務。
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何といっても「前向き・上向き・外向き」
「後ろ向き・下向き・内向き」はNG!

そこんとこ、よろしく。

〈結城義晴〉

2025年08月27日(水曜日)

「2025紀文正月フォーラム」の「期待されるもの」

もう9月が近いというのに暑い。
東京も横浜も36℃。

ああ。

日経新聞夕刊の「あすへの話題」
作家の多和田葉子さん。
ドイツに住んで、
日本語・独語で小説を書く。
芥川賞作家でノーベル文学賞候補。

「季節はつかみにくいもの」
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「四季というのはどうも
人間を焦(じ)らしたり、
がっかりさせたり、
驚かせたりするものらしい」

ん~、その通り。

「早く春が来ないかと思って待っていると
雪が降ってきてがっかりする。
雪を白い花だと思えばいいんだ、
と気持ちを切り替えて白い季節を楽しんでいると、
今度は春を飛び越えて酷暑が襲ってくる」

「地球の温暖化のせいもあるが、
それだけではない」

そこで多和田さんは「古今和歌集」を読む。

「四季は昔から、
人々の期待通りにはやって来なかった」

「雪のうちに春はきにけり」で始まる春の歌。
これは暦の上では春が来ていても、
実際には雪が降っていたということ。

「また雪に隠れて梅の色は見えないけれど、
せめて香りを放ってそこにいることを
教えておくれ、と梅に訴える歌もある」

「春が来たと人は言うけれど
自分は鶯(うぐいす)の声を聞くまで信じない、
という歌もある」

「訪れているはずの秋は
視覚ではとらえられないが、
風の音にそれを聞くという有名な歌もある」

「季節というものは、
そこにあるのか、ないのか、
意外につかみにくいものなのかもしれない」

「『古今和歌集』の歌の詠み手たちは
室内で過ごすことの多い階級に属していた」

貴族階級だった。

「彼らは、春はこういうもの、秋はこういうもの、
という強い思い込みのようなものを持っていた」

「これを『思い込み』ではなく、
『教養』と呼んでもいい」
多和田さんらしい。

「ところが戸外の現実を見ると、
あるべき季節がそこにない」

「期待が満たされない時にこそ
強く季節の存在を感じる、
という矛盾した人間の心が
文学になりやすいということも
あるかもしれない」

「期待が満たされない時にこそ
強く季節の存在を感じる」

これこそ文学だけでなく、
商売やビジネスに活かすことができる。

今日は昼に東銀座の時事通信ホールへ。
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2025紀文正月フォーラム。
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毎年8月末から9月初旬にかけて、
㈱紀文食品がフォーラムを開く。

業界の秋の風物詩。
しかし暑い。

年末年始商戦の消費トレンドを分析し、
その取り組みを具体的に提案する。

今年は、今日27日と明日28日の2日間。
全国からお取引先の小売業のトップや幹部、
そしてバイヤーの皆さんが参集する。

2025年のテーマは、
「変わるお正月、
どう過ごす?どう売る?

お正月戦略のポイント」

初日は100名ほどが集まった。IMG_8015

開会のご挨拶は堤裕社長。IMG_8023

今年、紀文食品が力を入れる
「SURIMI(すりみ)」について、
丁寧に説明した。

練り製品からSURIMIへ。
紀文食品の提案も大きく変わろうとしている。

基調講演は対談形式。
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和文化研究家の三浦康子さんと、
シルミル研究所の岡﨑菜穂子さん。

テーマは
「『これ、なあに?』から始まるおせちの行事食」。

シルミル研究所は、リサーチ会社。
子育て情報誌『あんふぁん』『ぎゅって』読者や、
公式Web会員などのパネルのリアルな声を収集する。

行事食についての調査結果と、
行事食が果たす役割を、
二人で明らかにするという趣向。
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紀文食品からは昨年の正月商戦の総括と、
今年の具体的な「ご提案」。
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プレゼンテーションは堀内慎也さん。
セールス・カテゴリー推進室戦略推進部部長。IMG_8034

総括講義は結城義晴。
テーマは「トランプ関税と闘え。」
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大きな潮流をとらえるために、
まずは「PEST分析」から。

PESTの「P」はPolitical。
政治もビジネスや消費に影響を与える。
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PESTの「E」はEconomics。
PESTの「S」はSociety、
PESTの「T」はTechnology。

それぞれに現状をごく簡潔に分析。

そして2つの提案。IMG_8054

40分ほどの講演だったが、
今年はなぜか上着を脱いで力が入った。
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フォーラムの締めくくりは試食会。
今年もおでんなどが供された。

最後は堤社長とツーショット。
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とてもいい「正月フォーラム」だった。
ご清聴、感謝したい。

人間は、
期待が満たされない時にこそ

期待するものの存在を
強く感じるのだ。

〈結城義晴〉

2025年08月26日(火曜日)

「空っぽの時間」を意図的につくること。

8月26日。

今日を含めて6日で8月が終わる。
子どもたちの夏休みも終わる。
夏休み終了のカウントダウン。
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糸井重里の「今日のダーリン」
先週の金曜日のエッセイ。
「夏休みのこどもの、空っぽの時間。」
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――ぼくは、
戦後の豊かでない時代に生まれた人間なので、
いろんな「たのしみ」の商品もそろってなかったし、
たとえそういうものがあったとしても、
思うように買えるような生活をしてなかった。

私も同世代。

――いやぁ、ぼくの子ども時代の夏休みは、
太陽やら青空やら夕立やらプールやらという
一通りの舞台装置のなかにいたものの、
不思議とよく憶えているのは
「なにをしたらいいかぁ」と
日の光やら天井を眺めて
ぼんやりしている時間のほうだ。

わかる、わかる。

――ちょうどよくともだちがいて、
ちょうどよくどこかで遊んでいる時間も
もちろん多めにあったのだと思うけれど、
大人につきあってもらうような遊びは、
ほとんどまったくなかったし、
あいにくともだちが出払っている
「ひとり」の時間のほうを妙に思い出してしまう。

――明るくて、暑くて、
そうだなぁ、さみしい時間だ。
マンガを読んだりもしてたし、
多少は本も読んだ。

私も同じだ。

――それにしても、
あの「なにもすることがない」という
空っぽみたいな夏の時間のことは、
心に染み付いている。

――ちょっと盛り気味に言わせてもらえば、
ぼくは、主にあの「なにもすることがない」という
空虚な時間に育てられたような気がするのだ。

じみじみと同感。

――その空っぽな時間のなかには、
怖さと、さみしさと、
得体のしれない大切な栄養分があった。

――逃げようにも逃げられずに、
そこにいることが、
なにかを思うことや、
考えることをさせたのだと思える。

――実は、大人になっても、
「空っぽの時間」は必要なんだよね。

糸井重里の真骨頂。
こういった観点から、
名コピーが生まれた。

つくづくと同感させられる暑さだ。
右の銀杏の木はいつものように葉がついていない。
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「空っぽの時間」を意図的につくる。
それが大事なことだ。

商売をやったり、
仕事をしたりしていると、
どうしてもそんな時間が足りなくなる。
いや、なくなる。

しかし「空っぽの時間」は、
実は空っぽではない。

何らかの熟成の期間なのだと思う。
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さて子どもたちは夏休みだろうが、
私は仕事。

午前中は自宅で連載の校正。
それから月刊商人舎9月号の原稿整理。

キリがいいところで昼ごろ、
横浜商人舎オフィスに出社。

それから午後3時に、
浅間台歯科へ行って治療。

70歳を3年ほど過ぎて、
歯周病というわけではないが、
歯茎が弱ってきている。

もっと丁寧なブラッシングをしなければ。

すぐにオフィスに戻って、
再び仕事。

今度は講演のパワーポイントづくり。
私は結構、凝る。

写真を加え、フォントを工夫し、
構図を整える。

ここでも空っぽのスペースは大事だ。

レジュメ一枚で、
力を入れて講義することもあるが、
短時間の講演はビジュアルを増やして、
情報量をコントロールする。

そのビジュアルが説得力の一部となる。

生成AIも使わず、
自分らしいパワポをつくり込む。

明日からの紀文正月フォーラム。
ご期待ください。

〈結城義晴〉

2025年08月25日(月曜日)

「ベストオブスーパー25」ロピア1位と「だめだよ! そんな高いの」

Everyone, Good Monday!
[2025vol㉞]

2025年第35週。
8月最終週。

来週の月曜日から9月。

今週は月刊商人舎9月号の原稿執筆と入稿。

8月27日(水曜日)と28日(木曜日)は、
紀文正月フォーラム。
東京・東銀座の時事通信ホール。

皆さん、ご参加ください。
お待ちします。

来週の9月2日(火)・3日(水)・4日(木)は、
第25回商人舎ミドルマネジメント研修会。

すでに100名近くの参加申し込みあり。
満員御礼です。

ありがとうございます。

そして9月第4週の25日(水曜)・26日(木曜)は、
商人舎バイヤーセミナー。
バイヤーセミナー

まだまだ席は空いています。

学んでください。
学ばせてください。

1泊2日の缶詰合宿。
鈴木哲男、中村徹、そして結城義晴。

全力で講義します。
2日目の朝には理解度判定テストがあります。
講義終了後にはレポートが課されます。

バイヤーのためのマーケディング技術、
バイイングとマーチャンダイジング技術。

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モンソーフルール。IMG_5090 (002)

向いにはカジュアルレストラン。
「SHUTTERS」
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スペアリブが美味しい。

花屋は気温が高すぎて、
店頭のプロモーションが出せない。
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もう少しの辛抱だ。

商人舎流通SuperNews。

OICnews|
「Shufoo! ベストオブスーパー2025」で総合賞第1位獲得

㈱ONE COMPATH(ワン・コンパス)が、
「Shufoo! ベストオブスーパー2025」を開催。

全国のスーパーマーケットを対象に、
ユーザー投票を行って、
順位を決定する企画。

今年の7月1日(火)から7月22日(火)に行われた。

投票項目は8つ。
⑴品揃え
⑵コスパ
⑶おもてなし
⑷チラシ
⑸お肉
⑹お魚
⑺野菜
⑻お惣菜

星1つ~5つの中で得点をつけ、
評価と投票数で順位を決定する。

このベストオブスーパー2025で、
ロピアが総合賞第1位を獲得した。
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ロピアの総合賞 第1位獲得は初の受賞。
あわせて「お肉部門賞」と「エリア賞」を受賞。

2位はマミーマートの生鮮市場TOP。
3位はヤオコー。
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昨年のベストオブスーパー2024では、
ヤオコーが1位。
ロピアは2位だった。
3位はベイシア。
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ユーザー投票だから、
低価格政策を採用するチェーンも入っている。

朝日新聞「折々のことば:子ども編」
だめだよ! 
そんな高いの
〈子連れの母親〉

「何かの売り場で、赤ん坊をおぶった母親が、
こう言って4歳くらいの男の子の手を引っぱる」

「石垣りんは、連れ去られる子どもが
腕に感じた『容赦のないものの力』と
『身のほどを知るせつなさ』を懐かしんで
『ああいいなあ』と思う」

「そしてそのせつなさが
本物の『ごちそう』を用意するのだと語る」

(『焔(ほのお)に手をかざして』から)
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石垣りんは1920年に生まれ、2004年に没した。
14歳から定年まで銀行員を勤め上げながら、
次々と詩を書いた。

だめだよ!
そんな高いの

母親の気持ちがよくわかる。
それに応えるお店が選ばれる。

男の子もそれは知っている。

「身のほどを知る」ことを学んでいる。
それに応えるお店が選ばれる。

そして母親だけの本物のごちそう。
それに応えるお店が選ばれる。

この詩集は1980年の刊行。
バブルがはじける前のことだが、
庶民はつましい生活をしていた。

今も、それに応えるお店が選ばれる。

では、みなさん、今週も、
お客の声に応えよう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年08月24日(日曜日)

イトーヨーカ堂とセブン-イレブンの「二段階革命論」

暑さはつづく。

日曜日だがずっと家にこもっていた。
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昨日の日経MJの記事の後半には、
伊藤順朗さんが登場した。
セブン&アイ・ホールディングス会長。
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鈴木敏文さんと伊藤順郎さんを、
対比させる意図のある記事だ。
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伊藤さん。
「社内でもっと総括すべきだと
思ってるんですよ。
誰が悪かったっていうより、
なんでダメになったのかを
徹底的に」

その通り。

「ヨーカ堂っていう会社なり、
GMSっていう業態の中で見ていくと、
ある意味で言い訳が立っちゃう」

「食品だけを突き詰めれば
できたかもしれないけども、
衣料品があるから普通のスーパーより
商品が広い面もあった」

「重厚な設備や店舗の投資含め、
それを捨て切ることができなかった」

「セブン-イレブンの成功で、
グループ全体はキャッシュリッチだったので、
そこまで踏み切れなかった」

「すごく情緒的で、
とろとろした話になってしまうんだけども、
やっぱり親会社意識が
あったのかもしれません」

それが大企業病だと私は思う。

伊藤さん。
「以前から利益率の高いコンビニと、
スーパーを比べるのは違うのではと思っていた。
ゲームのルールやゴールの基準が違う」

「スーパー業界にも高収益企業はあるが、
資本市場はコンビニと一緒に比較しようとする」

資本市場や株式市場には、
「業態」の概念がない。

鈴木敏文さんは、
「業態」よりももっと底流にある、
「商売」の鉄則を重視した。

「私の中のグループ経営は
家族みたいなもんでね。
親が一生懸命育てた暁に子が独立していく。
親が年老いると子は兄弟で助け合って
家をもり立てる」

それは伊藤雅俊さんの考え方でもある。
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「セブン-イレブンが育って
全体をもり立ててくれれば、
というのがグループの経営観なんだけど、
それではヨーカ堂が肩身の狭い思いをする」

「もう一回やり直すため
この2年間は地域の店舗を閉鎖した。
改革で少しずつ自信をつけ始めているなか、
自分たちで歩んで行った方が
いいんじゃないのと思った」

ヨーク・ホールディングスは、
ベインキャピタルに資本をもってもらった。

「もう一つ背中をプッシュされることは大事」

「ファンドの見方はすごいシビアだが、
事業を本当に深く理解している」

「単純に売却するんじゃなくて
会社のことを考えてくれる良いパートナー」

「今回は売り切りじゃなく、セブンや私、
大高家も(株を)持ってやっていく。
きっと良いグループになっていくと思っています」

会長としての意気込み。

「自信ありますよ。
させないといけないし」

「ただ、楽観はしていません。
国内を見たら少子高齢化、
胃袋が小さくなっている」

「さらにニューカマーとして、
トライアルとかロピアとかが
出てくるわけじゃないですか。
その中で戦っていくには、
勝ち筋をちゃんと見極めないと
ダメだと思っている」

「『自分たちがナンバーワン、自分でやればいい』
という感覚の人たちがやっていては
ダメだと思うんです」

伊藤さんは言った。

「寄り道、回り道、
振り向けば1本の道」

トヨタは豊田自動織機の事業部として始まった。
1933年(昭和8年)創設の自動車部。
そしてトヨタ自動車が本命の業態となった。
toyotajidousoki

故渥美俊一先生は二段階革命論を唱えた。
まず「ビッグストア」をつくり、
そのあとで「本格的チェーンストア」に挑む。

イトーヨーカ堂は自動織機だった。
セブン-イレブンがトヨタ自動車だ。

イトーヨーカ堂はビッグストアだった。
セブン-イレブンがチェーンストアだ。

それが一本の道だ。

最後に昨日のこと。
商業経営問題研究会が開催された。
略称はRMLC。

左から小林清泰さん、高木和成さん、
そして村上篤三郎さんと加藤弘次さん。
山本恭広編集長が参加して報告してくれた。IMG_5062 (002)

テーマは2つ。
第1はセブン&アイ買収騒動後の行方。
国内セブン-イレブンやイトーヨーカ堂の展望。
さらに食品主体の日本小売業の国際戦略の難しさ。

このブログの伊藤順朗会長の発言が、
その行方を少し示している。

第2は少子化時代の小売業の対応。
ドン・キホーテが食品特化型店舗を展開する。

商人舎流通SuperNews。
PPIHnews|
食品強化型店舗を出店/2035年6月期6000億円目指す

ppih-2506-food

食品強化の新フォーマットを、
200~300店舗出店する。

2026年6月期下期、2027年1月以降からスタート。
ピアゴの店舗転換から始める。

まあ、これも本命のビジネスになるのだろう。

議論が終わったら一献。IMG_5063 (002)
お疲れさまでした。

ありがとうございます。

〈結城義晴〉

2025年08月23日(土曜日)

鈴木敏文セブン&アイ元会長が日経MJに登場して語ったこと

今日は二十四節気の処暑。
「暑さが峠を越えて後退し始めるころ」

しかし全国で35の都府県に、
熱中症アラートが発せられた。
20250818_tokiwa

第107回全国高校野球選手権大会決勝。
K10014899881_2508231104_0823111247_02_08
沖縄尚学高校が日本大学第三高校(西東京)を、
3対1の投手戦で破って初優勝。

いいゲームだった。
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沖縄尚学は春の選抜大会を2度制覇している。
1999年と2008年。
しかし夏は初めて。

嬉しかっただろう。
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一方の日大三高は、
夏の甲子園で2度優勝している。

私の長男が東京地区で高校野球をやっていた。
最後は東東京の第2シードだったが、
その前の練習試合で日大三高と戦った。

プレイボール前に向かい合って並んだら、
全員が大人と子供ほどの体格の差だった。

それだけ日大三高は、
体力のある選手ばかり集めていた。
今回も、どの選手も鋭い振りをしていた。

2年生が多い。
来年がある。

頑張れ。
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さて日経MJに、
鈴木敏文さん、ご登場。
92歳。

私は日経電子版で読んでいる。

タイトルは、
「セブン&アイ、激動の20年」

セブン&アイ・ホールディングスは、
この9月1日に設立から20年を迎える。

鈴木さんは1963年に、
イトーヨーカ堂に入社した。
東京出版販売(トーハン)からの転職だ。

1973年にヨークセブンを実質的に設立し、
そのセブン-イレブンが奇跡的な成功を収めた。

1978年、㈱セブン-イレブン・ジャパン社長。
1992年、㈱イトーヨーカ堂社長。
2005年からセブン&アイ会長兼CEO。
2016年、退任。
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鈴木会長時代に社長として右腕となったのが、
村田紀敏さん、今、81歳。

このインタビューは村田さんが説明役となり、
核心の一言を鈴木さんが語った。

その鈴木さんの言葉だけを拾った。

プライベートブランドを開発したとき、
最初は「安さ」を狙おうとした。

しかし鈴木さんは違った。
「時代の変化を見ないで、
自分たちがやってきたことの延長で
ものを考えていた」

「ところが、実際には、
世の中が変わっていく。
世の中の変化に対して
どう対処していくかを
考えなくてはいけなかった」

「要するに、
モノを売る側から考えるのではなく、
消費者である顧客の側に立って
考えるように変化した」

ヨーカ堂やデニーズの今の停滞に対して。

「さっきも言ったけどね、
売り手側の立場で考えるな。
消費者である買い手側の立場で考えるように
変わったということよ」

「セブン-イレブンは最初から
顧客の立場で考えていた」

いまコングロマーチャントから、
コンビニ業態への集中を決定した。

「なんて言ってよいのかな、要するに、
世の中の変化に立ってモノを考えることに
変わってきたということだろうね」

「時代とともに変わる。
モノが不足していた時代は
売り手側の立場で考えれば良かったが、
今は買い手側の立場で考えるように変わった」

セブン-イレブンの商品や味について。

「商品はまず身近であること。
味は時代とともに変わる」

今のセブン-イレブンに満足しているのか。

「いや、満足ということはあり得ない。
どんな時代になろうとも満足はあり得ない」

「売り手側も変わるが、
もっと変わるのは買い手側。
お客さんが変わるということは
売り手側はそれに合わせないといけない」

「ということはね、
もっと努力した方がいいなと思います。
何もやっていないということではなくてね」

「限界はないのよ。
なぜなら世の中は変化するから。
日本の流通業の変化はほとんど、
我々が先頭に立ってきたからね」

アリマンタシォン・クシュタールが、
セブン&アイに買収提案した。

「あのね、色々な考え方があるが、
それは見極めないといけない」

加盟店オーナーからは不安と期待の声がある。
「店の立場から言えばそうでしょう。
店からすると売上げや利益が
増えることはうれしいこと」

人材の育成について。
「次の社長をつくるというより、
自分たちが新しいモノに挑戦するということ」

「次の時代の人たちがそれに追随して、
考えるようになるんじゃないの」

次の経営者に伝える言葉は。
「世の中の変化よ」

イオンをどう見ているか。
「あんまりね、同業他社がどうとかこうとか、
そういう目で見たことがない」

「まずは自分たちの成長だ」

新聞に載った写真は、
眼鏡をかけていなかった。
だから余計に92歳の年齢を感じさせた。

かつての鈴木さんは、
いつもピカピカに磨かれた眼鏡を、
キリッとかけていた。

今回も眼鏡は欲しかったなあ。

同じことを言っているように見えるが、
それはずっと変わらない。
同じなのだ。

私は商業界社長の時代に、
鈴木さんと相対で問題解決をしたことがある。

商業界とセブン&アイとの間の問題だ。
10年くらいかかったが、
2004年の年末の12月30日に、
二人だけで話をして、
お許しをいただいた。

このブログの2005年1月の項に、
さりげなく書いている。
「2005年1月の20日〆行動日誌」
これは両者にとって歴史的なことだった。

商人舎の社長になってからも、
退任した鈴木さんにインタビューを申し込んだ。
もちろんセブン&アイの広報を通してだが。

丁重にお断りの返事が来た。

予想通りだったし、
そのことは十二分に了解している。

お話をしたかった。
ただ、それだけ。

「世の中は変わる」

「とくに買い手側が変わる。
だから顧客の立場で考えねばならない。
売り手はそれに合わせなければいけない」

「いつも新しいものに挑戦する。
自分たちがやってきたことの延長で
考えてはいけない」

「人がどうかなどということも考えない」

「満足ということはあり得ない。
もっと努力したほうがいい」

御意。

ありがとうございました。

〈結城義晴〉

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