結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2007年09月27日(木曜日)

イギリス・テスコスタディ①「シェア30%超のクリティカル・マス」

イギリス第1位の小売業は、
スーパーマーケットである。

総合大型セルフサービス店のハイパーマーケットではないし、
もちろん百貨店でもない。

日本のイオン。
アメリカのウォルマート。
フランスのカルフール。
これらはみな総合店を主体に展開して、
ナンバー1の座を占めているが、
そういった企業ではない。

スーパーマーケットのテスコである。

英国内に1988店、11カ国に1275店。
年間売上高466億ポンド(10兆7000億円)。

英国内のスーパーマーケットの総売上高の、
なんと30.47%の占拠率。
(テイラー・ネルソン・ソフレス調べ)

イギリス第2位のスーパーマーケットがアズダで、
16.6%のシェア。
ウォルマート傘下。
第3位は、老舗のセインズベリーで15.74%。

この3社で、62.88%を占めてしまう。
イギリスは、スーパーマーケット王国なのだ。

テスコは、世界小売業ランキングでは、
ウォルマート、
カルフール、メトロについで、
第4位。

私は、単純に、日本の企業が、
このあたりに顔を出してもいいと思っている。
国際的なチェーンストアというからには、
日本くらいの消費大国のナンバー1企業が、
最低でも5番手くらいにランクされることは、
むしろ当たり前だろう。

mike
そのテスコのマイク・ベイフォード氏の講演会があった。
オペレーション・ディベロップメント・マネジャー。
専門は店舗オペレーションで、
テスコが実施している150のプロジェクトの、
オペレーション改革の責任者である。

「テラオカニューバランスフェア東京」の記念講演で来日し、
貴重な話を聞かせてくれた。
ニューバランスフェアは、寺岡精工が全国で開催しているが、
私はもう20年以上も、このフェアで講演している。

マイクの講演が午前中。
私が午後。

だから10時30分からマイクの講演を聴き、
昼食時にインタビューし、
13時から私の講演というスケジュールとなってしまって、
昼食抜きの講演。
それでいて、私のテーマは、
「食育とオーガニックMDの謎を解く」
矛盾している。

マイクの話は、私には、極めて興味深かった。

テスコは今、4つの経営戦略をとっている。
第1が、イギリスでのビジネスを強力な核とすること。
足場を固めるということだ。
私は「クリティカル・マス論」を標榜しているが、
そのポイントは一般に、17%といわれている。
テスコの30%強は、明らかにクリティカル・マスを越えている
第2位のアズダが今一歩。
しかしすぐに超えるだろう。

そして、かつてトップの座にあったセインズベリーは、
クリティカル・マスを下回ってから、
急激に業績がダウンして、
ウォルマートに買収されたアズダに、
一気に抜き去られてしまった。

だからテスコが、国内のビジネスをコアとするということは、
クリティカル・マスのご利益をさらに高めようという基本戦略を意味する。
そう思いながら、マイクの話を聞いていた。

すると、テスコの経営戦略第2、第3、第4は、
思ったとおりであった。

私は、膝をたたいた。

その第2の経営戦略は、
非食品でも強くなること。

すべてのテスコの店舗で非食品を扱っている。
当然、そのシェアもクリティカル・マスを越えている。
非食品の大半は、コモディティグッズである。
だから、さらに低価格実現を目指す。
非食品は、食品の2倍の成長率である。
2006年、「テスコ・ダイレクト」という事業をスタートさせた。
ノンフーズのカタログ販売である。
これは大きなビジネスチャンスをもたらし、
初期段階から利益を上げた。
大成功。

食品で圧倒的な占拠率をもち、
「クリティカル・マスを」突破したら、
非食品マーケットというご利益が、零れ落ちてくる。
非食品市場が伸びているから、
そのマーチャンダイジングを強化しよう、という発想ではない。

テスコの経営戦略第3は、
国際的な小売業の地位をさらに上げること。

メトロ、カルフールあたりを抜き去ろうということだ。
日本では、2003年にシートゥネットワーク(テスコ・ジャパン)を買収して、
現在、109店。

今期、35店の出店計画を発表している。

国際戦略の要は、資金と人材である。
これも国内の圧倒的なクリティカル・マス抜きには果たせない。

山之内一豊の妻ではないが、
内助の功無しに、外で存分に闘うことは出来ない。

テスコはイギリス以外の11カ国に進出し、
1275店の店舗を展開している。
そのうち5カ国で、ナンバー1シェアを獲得している。

それら5カ国でも、
クリティカル・マスの突破を狙っているということだ。
そして、国際的な小売業となるからには、
根本にこの発想がなければならない。

どこかの国に進出して、
繁盛店をつくる。
超繁盛店をつくる。

長い目で見ると、こんな店舗は、
やがて売却するしかなくなるに違いない。

それが国際企業の考え方である。

テスコの第4の経営戦略は、
小売サービス業の強化である。

小売業に関連して派生するサービス業で利益を上げること。
2000年から始めた「テスコ・ドットコム」
これはイギリスの96%以上の世帯が登録し、
世界最大の雑貨のインターネット販売額を記録する。

1997年から始めた「テスコ・ファイナンス」
銀行と保険会社。
スコットランドのロイヤルバンクとの合弁事業。
「複雑なマーケットに、簡素で価値のあるサービスを提供する」
見事な唄い文句。

セブン銀行やイオン銀行は、テスコの真似。
セブン銀行は、セブン‐イレブンが、
日本のコンビニ市場で、クリティカル・マスを越えている。
だから成功しつつある。

イオン銀行は、いかに。
まだまだクリティカル・マスにはほど遠い。

「テスコ・テレコム」
携帯電話、インターネット、固定電話の事業。
テスコの200万人のカスタマーにアプローチしている。

これらはすべて、テスコのスーパーマーケット展開の、
クリティカル・マスのご利益である。

クリティカル・マスに到達していない企業が、
この分野に将来性があるとして進出しても、
ほとんど失敗するに違いない。

本業をすべて辞めて、
こちらに本業を移すというくらいの決断をしても、
クエッションマーク? か。
もうすでに専門家がわんさといるからである。

マイクの専門分野に入る前に、
今日の話は終了。

明日に続く。
乞う、ご期待。

<結城義晴>

 

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