2021年、コロナ禍の中の桃の節句。
菜の花の季節でもある。
桃色と黄色は妙に合う。
そのひな祭りの句。
紙雛や恋したさうな顔許(ばか)り
〈正岡子規〉
子規の盟友、夏目漱石の句。
端然と恋をしてゐる雛(ひいな)かな
子規も漱石も、「恋」を詠む。
今日も1日中、横浜商人舎オフィス。
原稿書きと入稿。
良い雑誌になりそうですよ。
その今日の夕方の、
菅義偉首相。
1都3県の緊急事態宣言を、
2週間程度延長すると、
ぶら下がり記者会見で表明した。
アベマTVでビデオを見た。
断言したわけではないけれど、
金曜日に2週間の延長を決定するらしい。
しかし、そうなると、
今日のぶら下がり会見には、
何の意味があったのだろうか。
記者会見をするならば、
正式にやればいい。
トップマネジメントは、
自分の発言が周辺にどう影響を与え、
その影響が社会や組織をどう変えていくかを、
深く考察し、鋭く洞察しなければならない。
山田真貴子前内閣広報官が、
東北新社の接待問題で辞任し、
外務省の小野日子外務副報道官が、
その後任となる人事は、
持ち回り閣議で決定されている。
しかし現時点では内閣広報官が不在だ。
だから正式な記者会見にならなかったのか。
ただしそれでもやはり、
中央官庁には人材がいるものだ。
それを感じさせる人事で、
私は山田さん、小野さん、
どちらも悪くないと思う。
これからもガラスの天井を、
突き破ってほしいものだ。
昨日の朝日新聞、
「天声人語」
城山三郎の代表作『官僚たちの夏』
高度成長期の旧通産官僚を描く。
「おれたちは国家に雇われている。
大臣に雇われているわけじゃない」
主人公の風越(かざごし)信吾。
大臣が自室に来ても座ったまま迎え、
堂々と論争した。
風越には実在のモデルがある。
強烈な自負と熱意をもつ、
「国士」のような官僚たち。
この国士型官僚に代わって、
「調整型」、さらに「吏員型」が増えていく。
元財務官僚の田中秀明さんは、
著書『官僚たちの冬』の中で、
いまはもはや「下請け型」だと嘆く。
天声人語は山田内閣広報官に関して、
「官界の新たな悲劇か」と書く。
「本来、政界と官界は、
車の両輪たるべきだろう」
「いまは政と官の均衡が崩れ、
官界に生気が感じられない。
霞が関は冬を通り越し、
氷河期に入ったように見える」
同感だ。
最後に「谷川俊太郎詩集」より。
うそとほんと
うそはほんとによく似てる
ほんとはうそによく似てる
うそとほんとは
双生児
うそはほんととよくまざる
ほんとはうそとよくまざる
うそとほんとは
化合物
うその中にうそを探すな
うその中にほんとを探せ
ほんとの中にほんとを探すな
ほんとの中にうそを探せ――
本来の官僚も、
本物の政治家も。
優れた経営者も、
真のジャーナリストも。
うその中にほんとを探すし、
ほんとの中にうそを探す。
〈結城義晴〉