結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年03月16日(月曜日)

最善の経済対策は「感染致死率抑制」と新型コロナとの「共生」

Everybody! Good Monday!
[2020vol⑪]

2020年第12週。
3月も第3週で春本番を迎える。
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横浜商人舎オフィス裏の遊歩道は、
もう満開の桜。
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一瞬、心が晴れる。IMG_57660

明日の3月17日(火)が彼岸の入り。
3月20日(金)が彼岸の中日で、
春分の日。
そして来週の23日(月)が彼岸の明け。

今週は彼岸週間。
しかし同時に新型コロナウイルス感染の、
正念場の1週間となりそうだ。

もちろん長い闘いとなる。

なんだか東京オリンピックも、
延期または中止の方向が暗示され始めた。

中国はもとより、
アメリカも日本も、
そしてヨーロッパ各国も、
国民総生産は落ち込みそうだ。

つまり世界中の生産性が、
著しく低下することになる。

これは人類の危機だ。
進化の逆戻りである。

今日は各紙朝刊が休みだが、
先週土曜日の日経新聞「大機小機」
硬派のコラムニスト一直さん。
「新型コロナの経済リスク」

同感することばかりだ。

「新型コロナウイルスの世界的まん延は、
経済活動の甚大なマイナス要因となる」

有効な手立てのために、
米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長の発言。
「非常に示唆に富んでいる」と一直さん。

「金融緩和政策を維持することで
家計や企業の景況感を
好転させることに役立つ」

金融政策だけでは直接効果はない。
それを維持することで、
家計や企業の景況感を好転させる。

この消費とビジネスの好転がなければ、
人類の危機を脱することができない。

コロナウィルス禍には、
マクロ経済政策はあまり効果がない。

感染拡大を防ぐために
人々の集合や移動が抑えられる。
それが経済活動の足を引っ張る要因となる。

一つは供給サイドの影響。
中国発の新型ウイルスの感染拡大は、
工業製品の世界的な供給不足を生じさせる。
労働力が確保できないために、
世界の生産基地といわれる中国の工場が、
動かなくなるからだ。

「そうなれば、
国際的サプライチェーンがマヒし、
多くの国で雇用が失われる」

「このような突然の供給ショックには、
即効性のある対応策は存在しない」

これは深刻だ。

もう一つは需要サイドの打撃。
「今回の感染症ショックは、
人々の移動によって成り立つ
旅行・観光業を直撃する」

「さらに音楽・映画・観劇から
各種スポーツイベント、
多種多様の小売・卸売業まで
いわゆるサービス産業全体の
需要を縮小させる」

そしてサービス産業従事者が
雇用の大部分を占めるのは、
日米はじめ先進国だが、
その経済は大きな打撃を受ける。

われわれ日本の小売りサービス業も、
全体として大打撃を受ける。

伝統的な不況対策はといえば、
財政出動や減税だった。
つまり公的需要創出策が中心だった。

しかし今回のコロナ感染ように、
「人々が動けないことが原因であれば、
これらの施策も効果はあまり期待できまい」

コラムニストは言う。
「日米で減税を主張する向きがあるが
見当違いではないか」

ここで注意すべきことは、
「世界的な超金融緩和政策によって、
かつてない規模に達した債務膨張のリスク」

「今回の事態でどこかで
デフォルトが発生すると
一気に債務危機に発展しかねない」

政府に対して注文をつける。
「企業の資金繰り対策に万全を期してほしい」

そして結論。

「ここはパンデミックを
早期に抑え込むことに
全力を傾注するしか
方法はない」

「それが最善の経済対策なのだ」

その通りだ。

一方、毎日新聞の3月12日版。
山本太郎長崎大熱帯医学研究所教授が語る。
その著作は『感染症と文明』
サブタイトルは「共生への道」
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専門家は指摘する。
新型コロナウィルスの「封じ込めは不可能」。

だから、
「感染拡大のスピードと
致死率を
下げる努力をしながら
共存するしかない」

「犠牲者をできるだけ
出さないようにしながら、
共存するしかない」

新型コロナウィルスとの「共存」?

すぐに体内で増えてしまう病原体の場合、
潜伏期は短いかわりに周囲に急激に広がる。
そして毒性が強いために、
宿主である人間を殺してしまう。
だから結果として、
拡大は途中で止まる。

ペストやコレラがそれだった。
サーズ(SARS)もそうだった。

これに対して、
体内で増殖しにくい病原体は、
急激に広がるわけではないが、
安定して人間の間で増え続けていく。
そして毒性が弱くなっていって、
最後には潜伏期が、
人間の寿命に等しくなってしまう。

ここに至ると、
ある種の共生の状態となる。
「共存」である。

この気の長い病原体が居座っていると
他の病原体が感染しづらくなる場合がある。

ただこの関係は決して「静的」なものではなく、
危うい「動的な平衡状態」を保っている。

それが山本教授の見解。
アフリカ、ハイチなどで感染症対策に従事した。

新型コロナウィルスの治療薬開発は必須だ。
しかし同時に治療薬を得たうえで、
この病原体と「共生」することも、
頭の中に入れておく必要がある。

アルベール・カミュは、
『ペスト』の最後の段落で、
主人公に語らせる。
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「ペスト菌は決して死ぬことも
消滅することもないものであり、
(中略)おそらくはいつか、
人間に不幸と教訓をもたらすために、
ペストがふたたびその鼠どもを呼びさまし、
どこかの幸福な都市に
彼らを死なせに差向ける日が来るであろう」

毒性がそれほど強くはないウィルスとは、
共存することになる。

ただし現在のパンデミックは、
早期に抑え込まねばならない。
それが最善の経済政策である。

商人もそれを知って、
行動しなければならない。

では、みなさん、
今週も、最悪を覚悟して、
最善を尽くす。

Good Monday!

〈結城義晴〉


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