結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月08日(土曜日)

[帰国後の米国報告]その3・テスコのフレッシュ&イージー北カリフォルニア第1号店のイノベーション

秋空が、いい。

日経新聞夕刊に、
囲碁女流棋士の小林千寿(ちず)さんが書いたエッセイ。
「秋空に想う」

「秋の空が青く高くなってきた。
私は空に浮かぶ雲を見るのが
子供の頃から好きだった」

「小さいとき、年子の弟3人と、
雲を見ながら口々に『あれが犬で、あっちがキリン』
『アッ!犬が伸びて蛇になっちゃった!』などと
騒いでいたのを覚えている」

この弟たちのひとりが、
小林覚(さとる)9段。
10歳までの子供が、
「形」に関する感性を持っている。

千寿さんは、この子供の感性を評価する。

「澄んだ青空と白い雲を見ながら
心を子供の頃のように遊ばせるのは心地良い。
秋空は『空想の時間』に我を忘れさせてくれる」

秋空が、いい。

今日は、朝から池袋の立教大学キャンパス。
天気がいいこともその理由だろうが、
キャンパスには生き生きした感じの学生が多い。

結城ゼミの、それぞれの発表をしてもらって、
演習指導したあと、
午後、成田日航ホテルへ。

あの秋空に飛び立って、
明日はヨーロッパの空へ。
飛んでいる間も私にとっては、
「空想の時間」。

それがうれしい。

さて、10月1日の大阪版の夕刊を送っていただいた。
大阪朝日新聞と産経新聞。

朝日は一面トップに「就職遠きにありて」のタイトル。
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産経は社会面に「関西から東北復興誓い」の見出し。
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この日朝から、スーパーマーケットの㈱万代が、
106人の学生採用者の内定式を行った。

その中に震災地の宮城、福島の7人が含まれていた。

「雇用の場こそが生活の基盤になる。
大きくなくても企業ならではの採用をしよう」

万代の加藤徹社長の考え。

特別採用枠を設け、動き出したのが5月。
役員らが仙台に出向き、7月に選考会を開いた。
そして男女7人を内定。

石巻専修大学の学生・佐藤元基さん。
「被災しながらも屋外に陳列棚を並べて商品を売るスーパーに感銘を受け、
『人の生活に必要不可欠な販売の仕事に携わりたい』」
佐藤さんはメーカーから小売業に志望を変えて、万代に決めた。

被災地の学生の言葉は、頼もしい。
企業にとっても辛抱強くて力強い戦力になるに違いない。

さて、とびとびになって恐縮だが、
『帰国後の米国報告』その3は、
フレッシュ&イージー・ネイバーフッド・マーケット。
テスコがアメリカで展開する小型スーパーマーケット。
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この店は北カリフォルニア第1号店。
店舗面積は1万平方フィート(約280坪)。
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アメリカでは、まだまだ400店に向けて、
出店攻勢を続けている。
そして少しずつイノベーションの効果が、
表れ始めている。

一方、日本からの撤退が発表されたのは、
夏の終わりの8月31日。

テスコはイギリス第1位の小売業で、
日本とアメリカ以外では、無類の強さを発揮。

『FORTUNE』のグローバル500では、
世界第1位の小売企業で、アメリカ第1位は、ウォルマート。
総合スーパー(ハイパーマーケット業態)のスーパーセンターを主力とする。

第2位は、フランス第1位のカルフール。
こちらもハイパーマーケットを中核とする。

小売業世界第3位は、アメリカのドラッグストアのCVSケアマーク。
その次の4番目に、テスコが入ってくる。

そのテスコは、スーパーマーケット企業で、
この面で、ウォルマート、カルフールとは異なる経営戦略を採用。

14の国・地域で、2665店舗を展開。

日本への進出は、2003年7月。
食品の卸売業と小売業を兼業していたシートゥーネットワーク㈱を、
買収しての参入。

アメリカでは、2007年11月、
直営で、しかも小型店で進出。

テスコの小型店に火をつけられて、
アメリカでは、「小型店開発ブーム」が巻き起こった。

セーフウェイは「ザ・マーケット」を開発、
ウォルマートは「マーケット・サイド」のバナーを創作。
ウォルマートはさらに、今年、
「ウォルマート・エクスプレス」を本拠地アーカンソーに出店。

だからこそアメリカのフレッシュ&イージーの動向には、
目が離せない。

しかし現状は、いまだ164店舗。
黒字化もしていない。

それでも現地企業のCEOは、
「400店を突破すれば、
損益分岐点をクリアできる」
と意気軒昂。

だからこそ、この北カリフォルニアのサンフランシスコ郊外に、
新たな商勢圏を求めて、進出した。

視察の前にインタビュー。
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ストア・マネジャーのマット君が、
元気に答えてくれた。
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入り口を入るとすぐに、かご盛りのバゲット。
フレッシュ&イージーも陳列が洗練されてきた。
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反時計回り・左回りの客動線で、初めに青果売場。
入ってすぐにプロモーション平台でかぼちゃを販売。
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常温野菜はクレートをそのまま多段で並べて売る。
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これがテスコの特徴。
バナナ売場は狭い店ながら広いスペース。
よく売れているのがわかる。
1ポンド23セント。
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ロメインレタス、キャロット、パプリカなどのサラダ野菜は、
パック詰め。
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カット野菜やサラダ野菜はカップ入りや袋入り。
青果はどんどん加工食品化している。
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それがオペレーションコストを引き下げる。
この考え方は、トレーダージョーと全く同じ。

もちろんアルディも同様。

アメリカでは小型スーパーマーケットの成功をもたらすのは、
リミテッド・アソートメント(限定品揃え)&ローコスト経営。

青果売場の奥壁面は、
フレッシュ&イージー・キッチンと名付けられた
コンビニエンス・フードとデリ売場。
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スープ、ピザ、パスタ、サラダなどが並ぶ。
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エスニックフーズの焼きそば。
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デリ部門に続くのが、デアリー売場。
ミルクなどの乳製品が冷蔵ケースで販売されている。
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コンビニエンス商品の売場には、
「new」の青いスポッターがつけられて、
積極的に新製品が投入される。
この面ではまさに「試行錯誤」。
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しかしそれがテスコの意気込みをよく表している。

機内食のようなキット。
電子レンジで温めるだけで食べられる。
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「new」を集めたコーナーだが、
ハイ・フラクトーズ・シロップやトランスファット、
さらにどぎつい着色料を使わないスナックを、
開発していることを明言している。
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レジ前には、そういった開発商品の「特売」コーナーがある。
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安全・健康で、なおかつ安い。
まさに「オクシモロン」のコンセプト。
だから試行錯誤。
すぐにはうまくいくはずはない。
だから模倣がかなわない。

それがアメリカ・テスコの狙い。

精肉部門も、
この地域初お目見えの店舗にしては、
本当によく売れている。
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真ん中の段は、寿司。
最下段はキット商品。
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安全・健康・廉価の上に、
「簡便」まで欲張る。

卵も、安全・健康・廉価。
だからよく売れている。
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冷凍素材売場はセミ多段。
ポテト、ベジタブルなどなど。
上段は日用雑貨。
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この店は焼き立てパンを、
1日に3回店頭に並べる。
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それも売り物。
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主通路の真ん中には、
エブリデーロープライスのトルティーヤ、98セント也。
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ワイン&リカーのアイル。

右手ワイン売場は、
上から二段目の10%割引の赤いスポッターと、
最上段、下から2段の青い「new」のスポッターが並ぶ。
新製品をどんどん投入しつつ、
旧製品は売り切っていく。
つまり回転率を高めつつ、
その中からこの地域での売れ筋を探る方策。
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左の冷蔵ケースでは、
ビールなどを冷やして売る。

小型店テスコの面目躍如の売り方。スナックなどは、ラック陳列。
こちらもプライベートブランドばかり。
健康的で安い。
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調味料のPB、値付けがうまい。
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価格ラインは、1ドル99、2ドル29、
3ドル99、4ドル29。
面白い値付け。
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1ドル99と2ドル29の30セント違いと、
3ドル99と4ドル29の30セント違い。

分かりやすくて、
比較しやすいプライス設定。

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売場の中にマネジメント・デスク。
折り畳み式。
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チェックスタンドはすべてセルフレジ。
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しかしレジのうしろには必ず2人のオペレーターがついていて、
迷ったり、困ったりしている顧客には、すぐにケアする。
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出口の特売スペース。
ここにずっとコカコーラやネスレなどナショナルブランドが並んでいた。
しかしいま、フレッシュ&イージーのPB(左)と、
ハロウィン・ポップ・ソーダのプロモーション・アイテムが大量陳列。
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テスコのフォーマットが定着してきた証拠。

ストアロイヤルティが確立されていないときには、
ナショナルブランドでストアロイヤルティの代役をさせる。

しかしすこしずつ店の信用ができてきたら、
プライベートブランドで、サービスする。
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いかがだろう。

日本から撤退した改革のなかったテスコ。
フレッシュ&イージーのイノベーション。

アメリカのテスコは本気だ。

では皆さん、良い三連休を。
「体育の日」まで、秋空を楽しみたい。

<結城義晴>


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