結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年06月19日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その7】カラス

猫の目で見る博物誌――。
DSCN8963-2016-4-10-66666
ローマの大プリニウスの『博物誌』

中国の張華の『博物誌』
ビュフォン
『博物誌』
そして
『ルナールの博物誌』

こんな名作には、
とても及ばないけれど。

猫の目は夜にも機能する。
猫の目はわずかな光で、
白黒を見分ける。
しかし猫の目には、色がない。
猫の目で見る博物誌――。

カラスは黒い。
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だから、猫にも、よく見える。

カラスは『ルナールの博物誌』でも、
描かれている。

からす)  

Le Corbeau

なんだ?コア)・??・・・・ なんだ?コア)? なんだ?」コア)?
「なんでもない」
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〈青空文庫より 岸田国士訳〉

鳥類のうちのスズメ目カラス科に属する。
そのうちのカラス属に属する鳥の総称。IMG_8525-6

つまりカラスといっても、
いろいろ多様。

英語では、おもにcrowとraven。
カラス属の小型種はcrow、大型種がraven。

尾の形は、
crowが楔(くさび)型、
ravenは扇型。

文学作品の翻訳の場合、
crowの「カラス」に対して、
raven を「大ガラス」と訳す翻訳家がいる。

エドガー・アラン・ポーの詩「The Raven」を、
壺齋散人は「大鴉」と訳した。
71af2032

日本で日常的に目にするのは、
ハシブトガラスとハシボソガラス。
IMG_8526-6

これも、ハシブトガラス。IMG_8529-6
全長57cm。
クチバシが太い。
頭部の羽毛を立てている。
だから額が盛り上がっている。

嗅覚はないが、視力はいい。

主に「カァカァ」と鳴く。

それに対して、
ハシボソガラスは
全長50cm。

ハシブトガラスより、
ちょっと小さい。
けれど、大きさでは見分けにくい。

クチバシが細い。
頭部の羽毛を寝かせている。
だから額がスラッとしている。

主に「ガァガァ」と鳴く。

こちらはかなり器用。

ハシブトもハシボソも雑食性。
何でも食べる。

一応、ハシブトは動物性を好むし、
ハシボソは植物性の傾向がある。

「貯食行動」がみられる。
獲得した食物を隠し、
後で食べる。
IMG_8530-6
鳥類のなかで、
最も知能が発達している。

ある程度の社会性を持つ。
互いに協力するし、
鳴き声によって意思の疎通を行う。

色覚で色を識別できる。
つまりRGBを見分ける。
Rは赤(Red)、Gは緑(Green)、Bは青(Blue)。

これは猫とは違う。

さらに紫外線も識別できる。

哺乳類・鳥類などを区別して認識できる。
人間の個体まで見分けて記憶する。
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繁殖期は春から夏。

一夫一妻制。
協力して子育てを行う。

営巣期間中は縄張り意識が強い。
巣に近づく人間や動物に、
威嚇・攻撃行動をとる。

都市にカラスが増えた。
その原因は、生ゴミ。

カラスにとって、
栄養価の高い餌だ。

だからカラスは、
森林から都市へ、
生活転換をした。

それに都市は人間の生活圏で、
天敵が少なかった。

つまり都市はカラスにとって、
理想的な生活環境だった。

そこで人間とカラスの生活圏が重なった。
問題が頻発した。

2000年度に環境省は、
「自治体のためのカラス対策マニュアル」を作成。
各自治体ごとに体制を整えて継続的に、
カラス対策を行っていくよう指導した。

このマニュアルには、
カラスについての基礎知識と、
具体的対策法がまとめられている。

一度、読んでおくとよい。

石原慎太郎都知事の時代に、
東京都は「カラス対策プロジェクト」を組んで、
ゴミ対策とカラス捕獲・駆除も展開した。

それに対して、
日本野鳥の会が意見書を提出。

捕獲・駆除によるカラス対策には、
その効果を疑問視している。

この二律背反性など、
カラスは極めて現代的な存在である。
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イソップ物語「カラスと水差し」

カラスが見つけた瓶の中に、
水に浮く餌がある。

しかしカラスのくちばしでは、
その餌に届かない。

カラスは石をとってきて、
瓶の口からそれらの石を沈めて、
水位を上げる。
そして餌をとる。

カラスの頭の良さは、
多くの物語で指摘される。

最後に、童謡。
「七つの子」
野口雨情作詞、本居長世作曲。

烏 なぜ啼くの
烏は山に
可愛い七つの
子があるからよ

可愛 可愛と
烏は啼くの
可愛 可愛と
啼くんだよ

山の古巣へ
行って見て御覧
丸い眼をした
いい子だよ

俳優の故森繁久弥。
あるとき盲学校を訪問して、
この歌を歌った。

1番とサビをつつがなく歌ったが、
2番を歌い始めたら、
次の「ま~るい目をした」の歌詞が、
頭に浮かんだ。

森繁は歌い淀んだが、咄嗟に、
「まるい顔した、いい子だよ」と歌った。

カラスは身近な存在だ。
人気はないけれど。IMG_8534-6

しかし、
色を見分けることもできる。
頭もいい。
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うらやましくもあり、
そうでなくもある。

〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉


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