結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年04月07日(木曜日)

セブン&アイ決算電話会議の「拠り所とするもの」

米国メジャーリーグ。
プロフェッショナルのベースボール。
メジャーリーグ
プレイヤーだけではなく、
その機構も先進的(?)

今期からバッテリー間のサイン伝達に、
電子機器の使用を認める。
バッテリーとは、
ピッチャーとキャッチャーのことだ。

捕手は送信機の付いたリストバンドを着装。
投手も機器を携えていて、
音声で球種とコースが伝えられる。

メジャーリーグでは、
サイン盗みが横行している。

それへの対策として、
電子機器は期待される。

2017年のワールドシリーズ勝者のアストロズ、
18年のレッドソックス。

どちらもサイン盗みで、
監督らが処分されている。

今春のオープン戦で導入実験が行われて、
どうやら成果が出たようだ。

しかし先進的とは言ったが、
どこがどう先進的なのかは、
わからない。

さて今日は午後4時から、
㈱セブン&アイ・ホールディングス、
決算発表。

電話会議方式で行われた。
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商人舎流通スーパーニュース。
セブン&アイnews|
年商8兆7598億円51%増・米コンビニ事業が牽引

2022年2月期の営業収益は、
8兆7497億5200万円。
51.7%増。

昨2021年5月14日に、
米国のコンビニ「Speedway」を買収した。
220億ドルの投資だった。

それがこの決算で貢献した。

私はこのブログの3月5日版で書いた。
「ああ、もったいない」

一度、買収をすると発表したが、
3月初旬にそれを断念するという報道が出た。
日経新聞のスクープだった。

そこで私は思ったことを書いた。
「ああ、もったいない」

そうしたら5月14日、
紆余曲折の末、逆転して、
買収が成立した。

米国のジョセフ・デピントCEOが活躍した。

私は書いた。
「源になければならないのは、
勇気ある決断だ」

そして続けた。
「セブン&アイ・ホールディングスは、
ますますコンビニ主体の企業となり、
本格的に世界を視野に入れていくだろう」

この言葉の通り、
2022年2月期決算で成果が現れた。

それが8兆7498億円の年商だ。
51.7%の前年比増。

一気にイオンに追いついた。

コンビニ加盟店を含めた「グループ売上げ」は、
14兆2433億万円で前年同期比29.0%増。

営業利益は3876億5300万円、
これは前年同期比5.8%増。
経常利益3585億7100万円で0.3%増。

営業利益率は4.4%、経常利益率4.1%。

セブン‐イレブン・ジャパンは、
微増収減益。

海外の7-Eleven, Inc.は、
チェーン全店売上6兆4639億円で89.7%増。
営業利益2248億6400万円で88.6%増。

営業利益はイトーヨーカ堂が、
16億2000万円の79.2%減。
ヨークベニマルが147億0400万円で11.1%減。

さらにそごう・西武は、
81億5300万円の営業損失。
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電話の向こうの井坂隆一社長の声。
「事業のポートフォリオの見直し」をして、
そごう・西武は売却する。
「構造改革を進めながら、
ベストオーナーを探す」

米国のアクティビストは、
祖業イトーヨーカ堂の切り離しを求めている。
アクティビストは物言う株主のことで、
セブンの場合、「バリューアクト・キャピタル」。

その意見を聞く必要は全くない。

井阪社長の発言。
「同じグループにあることが、
将来の成長に資する」
アジェンダ

けれど電話会議を通じて感じられるのは、
セブン&アイのトップたちが、
株主ばかりを気にしている点だ。

電話会議は16時から始まった。
会社側の説明があって、
まず証券アナリストの質問を受けた。
それが終わったのが17時39分。

なんと1時間39分もかかった。

そのあとにやっとマスコミからの質問。
日経新聞、読売新聞、朝日新聞、
そしてNHKなどとの質疑応答。

業界マスコミからは、
「国際商業出版」だけ受け付けられた。

その時間は30分足らず。

私は端(はな)から質問する気はなかった。

この電話会見全体が、
「株主」と証券業界の方しか、
見ていない印象を強く受けた。

マスコミも大新聞やテレビ中心。

つまりは株価が一番の関心事のような印象。

小売業は顧客が大事だ。
さらに従業員、取引先が、
株主よりも重要なステークホルダーだ。

顧客と従業員、取引先は、
成果を生み出す過程に貢献してくれる。

そこから離れたら、
小売業の成長はない。

株主や株価は、
その成果の結果を問題視している。

言うことを聞いて、
成果が出なかったら、
責任をとってくれるわけではない。

45年もこの産業を見ていると、
経営者がそこから離れているか否かは、
わかるものだ。

セブン&アイにとって、
今、一番心配なのは、
そのことだ。

電話会議という方式も、
オンライン会議と比べると、
ずいぶん遅れている。

その電話会議で気になったのは、
今、セブン&アイのトップマネジメントには、
口では何度も社是を強調するものの、
真の拠り所とするものがないことだ。
あるいはそれが薄れていることだ。
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そしてその「拠り所」は、
株主や株価ではない。

〈結城義晴〉

2022年04月06日(水曜日)

桜満開の令和拡大名人会とニュートンの「未知の大海」

名人会。
平成元年に始まったゴルフの会。
基本的に4人のメンバーで、
毎月、研鑽する。

平成が令和に変わって、
「令和名人会」と名称を変えた。

それでも33年間が経過して、
34年目に入った。

私はどんなことでも、
結構、辛抱強く続ける。

その拡大令和名人会。
4人のメンバー以外の人々に声をかけて、
拡大版で開催される。
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今日は名門・多摩カントリークラブ。
東京都稲城市の丘陵コース。IMG_20982

桜は満開。
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天気は快晴。
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9番ホールからは東京都心が見える。IMG_21062

グリーンの練習場ネットの左に、
東京スカイツリー。
右には東京タワー。IMG_21072

8番ホールは桜の名所。IMG_21012

もう散り始めて、
花びらがティーグランドに散らばる。IMG_21022

第1組の面々。
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左から宮本洋一さん、亀谷しづえさん、
そして土井弘さん。

その亀谷プロ。
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私たちの第2組。
新谷千里さんと平野一郎さん。IMG_21042

ラウンドが終わって、表彰式。IMG_21082

今回もまた宮本プロが優勝。IMG_21202
ちなみに私が準優勝。

何十度目かのスイング改造中だが、
最後の方でそれが少しだけ実り始めた。

全員がスピーチをして、
次の拡大名人会を約した。IMG_21212

アイザック・ニュートン。
「世間の人びとの目に、
私という人間がどう映るかはわからない」

「しかし、私自身には、
目の前に真理の大海が、
未知のまま広がっているというのに、
私ときたらただ浜辺で遊び戯れ、
時おり普通のものよりも滑かな小石や、
きれいな貝殻を見つけては喜ぶ
子供のようなものだった、
としか思えない」
(デイヴィッド・ブルースター『ニュートン伝』より)
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ご存知、ニュートンは、
イギリスの物理学者・天文学者・数学者。
万有引力の原理を使って、
力学体系を構築した。

微積分法を発明したのも、
このニュートンだ。

ブルースターはスコットランドの科学者。
「ブルースターの法則」などを発見したが、
ニュートンの伝記も書いた。

ニュートンはあくまで謙虚だ。

真理の大海は未知のまま目の前に広がる。
その大海に入っていくこともなく、
浜辺の小石や貝殻を見つけて喜んでいる、
と自分を表現する。

万有引力の法則や、
微分積分を見つけたニュートンが、
それを述懐する。

しかししかし、それでもいい。

ある著書を数ページ読んだだけで、
その内容を見切ったと勘違いして、
読むのをやめてしまうといった、
浅はかさは持ち合わせていなかった。

仕事においてはもちろん、
たとえゴルフにおいても。

大海に入ることもできず、
浜辺で極ごく微細な真理を、
見つけるだけでもいい。

ほんの少しでも真理に近づきたい。
その心意気を、
私は失いたくはない。

〈結城義晴〉

2022年04月05日(火曜日)

ウクライナ・ブチャの惨劇とドストエフスキーの「罪と罰」

ブチャの惨劇。
長く語り継がれるだろう。
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ウクライナのキーフ州から、
ロシア軍が撤退したあと、
州内の解放された街々で、
その残虐な所業が明らかになってきた。

世界史の中でも初めてのことだろう。
映像を通じて世界中の人たちが、
その非人間的な行為の実態を見せつけられた。

ロシア側はセルゲイ・ラブロフ外相が、
「フェイクだ」と返答した。

ドナルド・トランプの常套句。
これもトランプが世界に伝染させた悪習だろう。

しかしロシア軍の悪逆非道は、
隠せるものではない。
人類の歴史が許しはしない。

ウラジーミル・プーチンは、
アドルフ・ヒトラーの如く、
歴史に刻まれるであろう。

ラブロフも同罪だ。
ナチスの外相ヨアヒム・リッベントロップの如く、
裁断されるに違いない。

日本でも新聞全紙が「社説」で、
ロシアを批判した。

日経新聞社説。
ロシア「戦争犯罪」の
真相を徹底究明せよ

「ロシア軍が侵攻したウクライナで、
市民に対する殺害、性的暴行、略奪など
“戦争犯罪”に相当する行為が
次々に明らかになった」

「断固として許すことはできない」

「徹底的に調査し、
真相を明らかにせねばならない。
ロシアへの制裁強化を検討するのは当然だ」

各紙、論調は似ている。

朝日新聞社説。
侵略の惨状 
戦争犯罪を非難する

「おぞましい惨劇である」

「この残酷な侵略戦争の結果を
断じて容認できない。
国際機関による真相解明を進め、
責任者を処罰しなければならない」

読売新聞。
露の虐殺疑惑 
国連は直ちに調査団派遣せよ

「胸をえぐられるような衝撃的な映像に、
強い怒りを覚える。
国連は直ちに現地調査団を派遣し、
国際法廷による捜査と連携して、
真相の解明を図らねばならない」

「戦争犯罪を扱う国際刑事裁判所は証拠を集め、
責任者を裁きにかける必要がある」

「露軍部隊は侵略の全体像を知らされず、
短期的な軍事作戦や訓練だと
思い込んでいたという指摘もある。
予想外の反撃や統率の乱れが
蛮行につながったのか」

「ブチャでの露軍占拠が続いていた場合、
虐殺の証拠は残らなかっただろう。
こうした惨劇が全土で起きる可能性を踏まえれば、
ロシアが要求するウクライナの”非軍事化”には
到底応じられない」

「日本国内でも、人命尊重の観点からか、
“ゼレンスキー氏は国民の犠牲を減らすために、
ロシアの要求をのむべきだ”といった
論調が見られるのは理解に苦しむ」

これは橋下徹前大阪市長の「降伏論」のことだ。

毎日新聞社説。
ウクライナ侵攻 
首都近郊の虐殺 
露は独立調査受け入れを

「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の1995年、
イスラム教徒約8000人が犠牲になる
“スレブレニツァ虐殺”が起きた。
今回はそれ以来の大規模殺害になる
可能性も指摘されている」

「20世紀前半に起きた2度の世界大戦では、
多くの市民が命を落とした」

「その教訓から、国際社会は49年、
ジュネーブ条約を改正し、
戦時であっても民間人を攻撃対象とせず、
捕虜を人道的に扱うことを決めた」

「しかし、ウクライナでは産科病院や、
子どもが避難する劇場が空爆された。
これらの行為は戦争犯罪に当たるとみられる。
今回、組織的に民間人が
大量に殺害されたとすれば、
“人道に対する罪”に該当する疑いも出てくる」

戦争が人間を貶める。
戦争をこそ憎むべきだ。

ドストエフスキーの「罪と罰」
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金貸しの老婆を殺した、
主人公のラスコリーニコフは、
信じている。

「1つの罪悪は100の善行によって償われる」

そして自分の思想を語る。
「《非凡》な人間はある障害を……
それも自分の思想の実行が(中略)
それを要求する場合だけ、
ふみこえる権利がある」

プーチンやラブロフには、
このドストエフスキーの言葉が、
間違って理解されているに違いない。
いや、これらの言葉がどこかで、
救いになっているのかもしれない。

戦争の罪悪は、
どれだけの善行によっても
償われるものではないし、
プーチンもラブロフも、
誰であろうと、
自分を《非凡》な人間と思ってはいけない。

私は1日中、横浜商人舎オフィス。
月刊商人舎最終段階。

朝から晩まで、
ひたすら原稿を書き続けた。

そして疲れ果てた。IMG_2086 (002)2
私は商売について考える。
新しい競争について考察して、
それを文章にする。

それが私の役割だ。
それが私の闘いだ。

〈結城義晴〉

2022年04月04日(月曜日)

米国チェーンストア決算の明暗と「深く長い深呼吸」

Everybody! Good Monday!
[2022vol⑭]

2022年第14週。
4月は第2週だが、
昨日、今日と横浜は雨。

それも桜満開の中の氷雨。

新型コロナは、
オミクロン株の変異種BA.2株に、
置き換わっている模様。
「スティルスオミクロン」と呼ばれる。

またぞろ新規陽性確認者の数が、
ジワリと増えてきた。

一方、ウクライナ戦争は、
首都のあるキーウ州が、
ウクライナ軍によって奪還され、
「解放」された。

それによって、
ロシア軍の戦争犯罪があぶり出された。
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まだ真相が解明されたわけではないけれど、
深刻な虐待や悲惨な虐殺が行われた。

こんな時、日本にいる私たちは、
どう気持ちを落ち着けたらいいのか。
どう行動したらいいのか。

国際政治学者の篠田英朗さん。
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。
大学院生時代に国連PKOボランティアに参加。
その他にもアジア、アフリカの紛争地域で、
ボランティア活動に従事した。

『平和構築と法の支配』で大佛次郎論壇賞、
『「国家主権」という思想』でサントリー学芸賞、
『集団的自衛権の思想史』で読売・吉野作造賞を、
それぞれ受賞している。
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この篠田教授が、
橋下徹元大阪市長と論争している。

橋下版「ウクライナ降伏論」に、
篠田反論。

どう見ても、
篠田さんのほうが歩がいい。

その篠田さんのTwitter。
こんな国際状況の中で、
日常的にはどうしたらいいのか。

私の場合、音楽を聴いてコーヒーを飲み、
日常性を自分に感じさせながら、
自分ができることを考えます」

さらに追いツイート。
「けっこう重要なのは、
深く長い深呼吸を繰り返すこと」

ほぼ日の糸井重里さん。
同じことに関して。

「そうだった、
ぼくも方法を持っていたのだ」

「”黙祷”を儀式として持つことだった。
それ以外の時間の”日常”を
しっかり感じるためにも」

「深く長い深呼吸を繰り返す」
「黙祷を儀式として持つ」

私もやろう。

さて、4月に入って、
「三月、去る」と同じテンポで、
時間が過ぎてゆく気がする。

今日も月刊商人舎の原稿執筆と入稿。
もう最終段階です。

今週から決算記者会見が続々。
4月5日が平和堂、
7日がセブン&アイ・ホールディングス、
8日がイオン、
11日がライフコーポレーション。

オンライン会見が増えたが、
ライフはリアル会見。

岩崎高治社長に会うのが楽しみだ。
話したいこともある。

アメリカではすでに、
2021年通期の決算発表が終わっている。
商人舎流通スーパーニュースに掲載されている。

ウォルマートnews|
21年度営業収益57兆円・2.4%増/US部門の好調続く
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営業利益は259億ドル(2兆5942億円)で、
前年比15.1%増の増収増益。

アマゾンnews|
第4Q営業収益1374億ドル9%増/通期4698億ドル22%増
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ウォルマートの伸びは2.4%増、
アマゾンは21.7%増。

ほぼ10兆円の差まで迫ってきた。
来期には追い付いてしまう。

CVSヘルスnews|
’21年営業収益2921億ドル8.7%増/小売部門9.8%増
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ドラッグストアも順調だ。

クローガーnews|
21年度通期1378億ドルの13.5%増/CFCの開発に注力
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売上高は13.5%増で、
デジタルは2019年比113%の増。
2年間で2倍以上の成長だ。

ホームデポnews|
21年通期売上高1511億ドル14.4%増・純利益27.7%増
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ロウズnews|
21年通期962億ドル7.4%・純利益44.7%増/既存店6.9%増
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「複占」されたホームセンターは、
両社とも絶好調だ。

ターゲットnews|
’21年売上高1046億ドル13.2%増、純利益59%増
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営業利益は89億4600万ドルで36.8%増、
純利益は69億4600万ドルで59.0%増。

ターゲットはウォルマートの同業態ライバル。
アメリカでは、
「総合スーパー」の両雄も絶好調。

TJXnews|
’21年通期売上高485億ドル51%増/店舗再開で大きな反動
tjx

2019年度比で売上高16.4%増、
純利益0.3%増。
コロナ前の水準より上回った。

メイシーズnews|
’21年通期245億ドル41%/19年比では0.4%減
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百貨店の雄も回復してきた。

メイシーズで売れ残った商品が、
TJXで売られる。

売れ残り品側が51%増の4兆8500億円、
新品側が41%増の2兆4500億円。

この皮肉。

スプラウツnews|
’21年通期売上高61億ドル6%減/純利益15%減の減収減益
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オーガニック中心の、
ファーマーズマーケット。

COVID-19パンデミックで、
ワンストップショッピングが増えた。
その結果、食品メインで、
なおかつ専門的な品揃えのスプラウツは、
減収減益となった。

アメリカでも明暗は分かれている。

それでも「強い企業」は、
例外なく伸びている。

コロナは強い者、総合的な者を、
後押ししたことになる。

日本とは違う。

さて日本小売業の決算は、
どうなのだろう。

では、みなさん、今週も、
困ったら、鬱になりそうになったら、
「深く長い深呼吸」を繰り返そう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年04月03日(日曜日)

清志郎の「夢のカタチ」とブッダの「幸せであれ」

朝日新聞の一面コラム「天声人語」
読売新聞の「編集手帳」と並んで、
名文が多いと言われる。

大学受験のテスト問題などに、
ときどき使われたりする。

昨日のコラムは忌野清志郎。
早世したロックミュージシャン。

その清志郎の「夢をカタチにするやり方」

「高校時代、なりたい自分を
マンガに描いていた」

「落書きのような絵の中の
自分と仲間たちは売れっ子のバンドで、
人気がありすぎて困っている。
ビートルズのように
レコード会社を設立して、
好きなように音楽をやっている」

「決意を示すためだろうか、
ラジオの深夜番組にも送りつけた」

『ロックで独立する方法』(新潮社)から。41qUmDGc0AL._SX347_BO1,204,203,200_
「意志の強い人らしい逸話である」

「スポーツでのイメージトレーニングに近い話だ」

清志郎は1951年4月2日生まれ。
このコラムが書かれたのが同じ日だ。

1968年、RCサクセションを結成。
17歳の高校生のときである。
もちろんアマチュアバンド。

1970年にはレコードデビュー。
19歳でプロになってしまう。

72年、「僕の好きな先生」がヒットする。
21歳。

それ以来、紆余曲折を経て、
類のない日本のロックスターに。

1980年代には、
ファッションや言動も含めて、
さまざまに時代を席捲した。

2009年、58歳で逝去。

コラムは夢にもどる。
「”はかない”や”かなわぬ”などの
形容詞が似合う夢ではあるが、
絵にすると一歩近づく気がするかもしれない」

「春という季節は、
夢や希望、憧れと相性がいい」

「重いコートを脱いで、身軽になるからか。
新年度が始まり、多くの人が
新しい学びや仕事に足を踏み入れるからか」

「もし1枚目に描いた夢が破れたり、
そこから心が離れたりしたら、
2枚目、3枚目を描けばいい」

「そのたびに自分になじんでくる。
そういうことだってある」

同感だ。

夢をもとう。
夢を絵に描こう。
夢を文にしよう。

今年はとくにそう思う。

「いかなる生物生類(しょうるい)であっても、
(おび)えているものでも
強剛(きょうごう)なものでも、
(ことごと)く、
長いものでも、
大きなものでも、
中くらいのものでも、
短いものでも、
微細なものでも、
粗大なものでも、
目に見えるものでも、
見えないものでも、
遠くに住むものでも、
近くに住むものでも、
すでに生まれたものでも、
これから生まれようと欲するものでも、
一切の生きとし生けるものは、
幸せであれ」
(『ブッダのことば』岩波文庫)
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ブッダは仏教の開祖。
ゴータマ・シッダールタ。

紀元前463年4月8日に、
小国カピラバストゥの王子として生まれたが、
29歳のときに宮殿を逃れて苦行し、
35歳のときに、悟りを開いて、
ブッダとなった。

紀元前383年に、
52歳で亡くなったとされる。

ブッダも夢を描く人だった。

ウクライナの人々も、
ロシアの人々さえも、
そして私たちも、
夢をもつことが必要だ。
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夢を描けることが大事だ。

〈結城義晴〉

2022年04月02日(土曜日)

開高健「量ガ質へ転化スル」と鈴木敏文「質は量でカバーできない」

45年前の1977年も、
入社2日目に休日出勤をした。

現在は㈱商人舎代表取締役社長であるから、
休暇も何もあったものではないが、
出社して、原稿執筆と入稿をした。

オフィスには、
「明治マーケティングレビュー」が届いていた。IMG_E20762
㈱明治が発行する季刊誌。

私の連載は第49回になる。
「小売業のスーパーマーケティング」

超級のマーケティングであり、
スーパーマーケットのマーケティング。

このタイトル、気に入っている。

今回のテーマは、
「ポスト・コロナのマーケティング」IMG_E20782
手に入る方は読んでください。

この連載は「ですます調」の文体で、
それもあってリラックスして執筆している。

桑原節(たかし)サンのイラストがとてもいい。

有難い連載となっている。

このマーケティングレビューの最終ページは、
「豊・食・人・語」というエッセイの連載だ。
今回のテーマは、
「グルメはグルマン」

作家・開高健の言葉が取り上げられている。

「グルメ」は「食通」。
「グルマン」は「大食漢」、「大食い」。

『眼ある花々/開口一番』の中の文章。
「美食家はかならず大食家であり、
その哲学は《量ガ質へ転化スル》を
第一条としている」
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一方、
『鈴木敏文 仕事の原則』
2015年、日本経済新聞出版社刊。
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緒方知行さんが亡くなる直前に、
鈴木さんの言葉を編集した本だ。
ちょっと雑駁な印象がある。

だがその「仕事の原則23」。
「質を量でカバーすることは絶対にできない」

開高健の「量ガ質へ転化スル」と、
鈴木敏文の「質は量でカバーできない」。

あなたはどう考えるだろうか。

開高健は哲学のことを言っている。
つまり人間としての考え方や生き方のことだ。

多くの本を読む。
たくさんの体験をする。

それを開高は「量」と呼ぶ。

その学習の量が積み重なると、
質が上がる。

たくさんのものを食べる。
すると食に精通するようになる。

だから美食家はかならず大食家である。

誰よりもたくさんの練習をしたから、
絶対に負けない。

これはアスリートの哲学だ。

何億もの手筋を考えたから、
最善の一手が打てる。

これは藤井聡太の勝負の哲学だ。

たくさんの文章を書く。
するといい文章を書けるようになる。

文章家の哲学だ。
もちろん私もこれを実践してきた。

一方、鈴木敏文さんは、
「モノ」の「数」のことを「量」と言っている。
あるいは「人間」の数のことを問題にしている。

鈴木さんの「量」とは「数」である。

だから本の中で言っている。
「すべての物事について当てはまることは、
量は質を絶対にカバーすることは
できないということ」

一般的には、
数を集めても質が良くはならない。
工業製品などがそれだ。

しかし農産品などで、
大量に集めてその一番いい部分だけ、
少しずつ抜き出して製品をつくれば、
量が質を生み出すこともある。

吟醸酒づくりの発想だ。

精米歩合が60%以下の酒を「吟醸」という。
50%以下が「大吟醸」である。

山田錦という酒専用の米を磨いて、
6割以下を使うのが吟醸。
5割以下しか使わないのが大吟醸。

山県健酒田市の「楯野川 光明」は、
精米歩合1%の大吟醸だ。
1%しか使わないから1升74万円也。sd1_1a0fb5c439b37be9e9bf46802625f6384ae2cacb
1升つくるためには、
山田錦の量が必要となる。
これは開高の哲学に通じる。

一方、鈴木敏文さん。
「多くの人は、
量で質をカバーできると思っています。
質を上げるためには量を増やせばいい
と考えているのは間違いです」

これはこれで正しい。

一般的なモノはいくら量を集めても、
それ自体が質に変わることはない。

人に関しても「数」を問題にする。

「どこの会社でも
バイヤーの数を増やすことがいいことだ
と思っていますが、
人数が増えればいい仕事ができる
と思ったら大きな間違いです」

「バイヤーの数は少ないほうがいい。
その数が増えれば増えるほど情報は分散する」

人の「数」を問題にしている。

ただし一人ひとりのバイヤーや店長は、
多くの経験をして成長していく。

食品のバイヤーは、
大食家であるほうがいい。

衣料品や住関連などのバイヤーも、
多くの現場を踏む方がいい。

一人ひとりの人間としては、
「量ハ質ニ転化スル」のである。

けれど組織として一番強いのは、
「量が質に転化する」の経験をした人間の「数」が、
他を圧するほど多いことである。

そして個人は、
「量ハ質ニ転化スル」を信じるべきだ。

何度失敗しても、
「量ハ質ニ転化スル」を思えば、
その失敗を糧(かて)にすることができる。

私はそれを貫こうと思っている。

〈結城義晴〉

2022年04月01日(金曜日)

松本隆「コツに頼るな」と鈴木敏文・柳井正「成功を捨てよ」

「三月はライオンのように来て、
子ヒツジのように行く」

その三月が去って、四月。

新年度がスタートした。
2022年4月1日金曜日。

私は1977年4月1日に㈱商業界に入社して、
社会人の一歩を記した。

ちょうど45年前のことだ。
その45年前の4月1日も、
金曜日だった。

翌日、私は休日出勤した。
そして稲垣佳伸さんに会った。

稲垣さんは㈱Do Houseの前身の会社、
ドゥタンクダイナックスの新人で、
自分で企画した「フリーマーケット」を、
実験的に運営していた。

極めて早い時期の、
先鋭的な試みだった。
日本の世の中にはフリーマーケットなど、
まったくなかった。

それを手伝いつつ、取材した。
記事にはならなかった。

当時の商業界は、
完全週休2日制で、
祝祭日ももちろん休日。
労働組合員は、
5月1日のメーデーの日も、
会社に出なくてよかった。

年間有給休暇も、初年度は20日。
翌年から1日ずつ増えて、
最大、40日を取得することができた。
その年に消化できなければ、
翌年に持ち越すことが可能だった。

休日出勤も有給休暇に、
振り替えることができた。

極めて先進的だった。
サラリーマンにとっては、
天国みたいな会社だった。

しかし、先進的過ぎることは、
よい結果を招きはしない。

出版社の仕事や経営は、
それでは成り立たない。

私の入社から43年後の4月2日、
㈱商業界は自己破産した。

私はこの会社の体制を無視して、
遮二無二、働いた。

30年を経過したときに、
代表取締役社長を辞して退社した。

「商人舎発足を祝う会」が、
翌年の4月17日に開催された。
0369

ここで「商業界を卒業した」と言ったら、
㈱アークス社長の横山清さんに叱られた。
0380
「卒業なんて気に食わないし、
独立も実は気に食わない。
新しい世界に入学というのならばいい」

「何はともあれ、
結城義晴君に大いに期待する」

私は新しい世界に入学したと、
考えることにした。

持っていたものを捨てることにした。

だから大学院の教員にもなった。
産業内大学や企業内大学もつくった。

そして15年が経過する。

新しい世界は、
新しいなりの価値があった。

今日はそんなことをしみじみと思った。

商人舎オフィスのそばの新田間川。
沿道に桜が満開。
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オフィス裏の遊歩道。
早咲きの桜でもう散っている。IMG_2065 (002)2

それでも桜は散り際がいい。IMG_2067 (002)2
遊歩道に面して、
Roof Top Cafeがある。IMG_2074 (002)2

2階の窓辺から遊歩道が見降ろせる。IMG_2070 (002)2

ここから見る桜も大好きだ。IMG_2071 (002)2
今日は1日、原稿執筆と入稿。
月刊商人舎4月号。

69歳の編集者。
まだまだ遮二無二の仕事は続いている。

3月9日の「折々のことば」
朝日新聞の一面コラム。
その第2315回。

コツに頼らないこと、
いつも白紙に戻すことが、
大事だと思っている。
(作詞家・松本隆)

「詞を書く時に
“コツで書かない”ようにしている」

「”こうやったら売れる”という
体で憶(おぼ)えた方法論に頼らず、
むしろそれをつねに外してゆくこと」

「不安ではあるが、そうしないと、
今人々に足りないもの、
つまり時代の”ひび割れ”が見えず、
だからその向こうも見えずに
終わってしまう」

『松本隆のことばの力』から。
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松本隆ははっぴいえんどのころから、
よく聴いていた。

松本はドラマーで作詞担当(左上)。
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一番才能のあった大瀧詠一(左下)は、
早くして死んだ。
一番若かったギタリスト鈴木茂(右上)も、
もう70歳になった。
一番ものを考えた細野晴臣(右下)は、
巨匠になった。

松本の言葉。
「体で憶(おぼ)えた方法論に頼らず、
むしろそれをつねに外してゆくこと」

一流になるためには、
「売れる経験」は必須だ。

ミュージシャンも小説家も、
編集長もジャーナリストも、
経営者も商人も。

しかしその売れた方法論ばかりに頼っていると、
売れなくなる。

鈴木敏文さんの言葉。
セブン&アイ・ホールディングス元会長。
「過去の成功体験を捨てろ」
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柳井正さん。
ファーストリテイリング会長兼社長。
「成功は一日で捨て去れ」
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松本。
「不安ではあるが、そうしないと、
今人々に足りないもの、
つまり時代の”ひび割れ”が見えず、
だからその向こうも見えずに
終わってしまう」

不安ではあるが、
過去の成功体験を捨てないと、
新しい成功体験はできない。

「卒業ではなく、入学と言え」

過去の成功体験に、
少しでも頼ろうとする心根は、
あらためなくてはいけない。

私は遮二無二、そうしてきた。

失敗だらけだった。
去年も事業を一つ、止めた。

けれど商業や小売業を通して、
「時代のひび割れ」を見たいと思った。

「まだまだ」の4月1日です。

「♫春らんまんだ~ね⤴」

〈結城義晴〉

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