結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年11月12日(金曜日)

「尖閣映像流出」に関する4人のオピニオンとヤオコー川野清巳社長の「まねする文化」批判

「尖閣映像流出問題」
新聞・テレビが連日の報道合戦。
それが終わると週刊誌が暴露合戦。
その週刊誌暴露ネタをもとに、
またテレビが大放流。

かくて「You Tube」の「オリジナル?」投稿映像は、
繰り返しの繰り返しの大放出で、
守秘すべき秘密でも何でもなくなってしまう。
タイトルも、そのたびに短くなり、
通称化し、「尖閣映像」にまで縮まった。

今朝の朝日新聞「オピニオン」欄の「耕論」。
4人のオピニオン・リーダーがこの問題に丁寧なコメント。
朝日新聞はこういった企画がいい。

まずはジャーナリストの西山太吉さん
「沖縄返還時の日米密約」をすっぱ抜いた元毎日新聞記者。
彼自身の「西山事件」は、最高裁まで上がって裁定された。
自身の体験に照らして、「罰則強化は民主主義の後退」と主張。
しかし、自民党や民主党の権力に対して、
この人は相当に怨念を持っている。

対して、元外務省主任分析官の佐藤優さん
「同情にも称賛にも値しない」と、海上保安官に手厳しい。

「犯行に至る経緯を徹底的に究明し、
形式にのっとって厳正に処分すべきだ」

「『国民の知る権利』に応えようとする者であるならば、
まず、上司に公表を求め、
受け入れられないなら、辞表を提出し、
一私人となってからデータを流す手順が不可欠だった」

あとの二人は学者。
東京大学教授で憲法学者の長谷部恭男さん。
「犯罪捜査の資料が勝手に公開されたわけで、
全面肯定はしにくい」

「ビデオを表に出すかどうかは、
事態に照らして具体的に考えるべきで、
知る権利を振りかざすべきではない」

最後に関西学院大学准教授・鈴木健介さん。
理論社会学専攻で、ネット、サブカルチャーなどの論者。

「一言でいえば、政府のガバナンスの失敗」
しかし「政府の情報管理の甘さだけを批判するのはやや的外れ」

「情報をどこまで出せば国民が納得するか、
それを判断する能力を政府が欠いていたことが本質的な問題です」

組織人としてのあり方からすれば、佐藤優さんの指摘通り。
法的に考えれば、長谷部先生が筋が通っている。
そして「政府のガバナンス喪失」という鈴木さんの見解も妥当。

このあたりで、大放出大会は打ち止めにして、
国際世論が日本を見直すような論議に持って行きたい。
APECも、明日から首脳会議だ。

さて、日経新聞・企業総合欄「人こと」。
ヤオコー社長の川野清巳さんが登場して発言。
「米国にはまねする文化がない」
米国視察で50店舗もスーパーマーケットなどを巡って、
帰国したばかりの感想。

「日本のスーパーマーケットは、
品揃えがどこも似通って商品力がない」

こう、断じる。

アメリカやヨーロッパに比べて、
日本は「真似文化」が行き過ぎている。
もちろん、「模倣」が悪いわけではない。

私は自著『メッセージ』に「模倣と創造」という文章を書いている。

「ベストプラクティス」とは、
最良の実践成功例を意味します。

だからベストプラクティスは常に、必ず、
その手法を、さまざまな他者から学びとられてしまいます。

学ぶ側は、最良の実例と同じ手順を踏むことで、
同じような結果を享受することができます。

このノウハウの学習と蓄積によって、
時間短縮と経費削減の成果が生まれます。

しかし、成果獲得の結果主義に頼りきってしまうと、
今度は停滞と後退が訪れます。
突き詰めればそれは、模倣だからです。

模倣には、失敗の経験がありません。
創造の苦しみもありません。
百を目指している限り、
決して千にも一万にもならないのです。

それでは私たちはなぜ、
歴史が好きなのでしょう。
なぜ歴史を学ぶのでしょう。

そこには経験的法則と進化の軌跡が存在するからです。

そうです。
まず、現状を否定してかかる。
現状を肯定的に支えている成功要素を拒否してみる。
同時に、身近な事例の歴史に学び、
小さな経験法則を探る。

すべては現状を客観化するために、
過剰に現実を評価するところから始まる。

そのうえで、模倣によって、
スピードアップとコストダウンの改善を果たす。
創造によって、市場の拡大と技術の革新を図る。

模倣と創造。
イミテーションとイノベーション。
経営のスピードと運営のコスト。
成功体験と経験法則。

進化とは、階段をひとつ登っては、
しばらく停滞することの繰り返しによって、
成し遂げられるものです。

そのために私たちは、
模倣を過度に恥じることはないし、
創造だけをことさらに尊ぶこともないのです。
<第6章 「イノベーション」より>

倉本長治は『商売十訓』において、
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」と諭した。
ただし、「真似」の比重が高すぎると、
「今度は停滞と後退が訪れる」

ヤオコーも一時期、ヨークベニマルを、
徹底的にベンチマークした。

そのうえで、ヤオコー・スタイルを生みだした。
さらに今、〈イノベーション〉にチャレンジしている。

だからこそ川野さんの発言は、
小気味いいし、時宜を得ている。
「販売不振はもう景気の問題ではない」
イノベーションという「脱マネリング」を川野さんは訴える。

さて昨日は、午後1時から東京・銀座。
パチンコチェーンストア協会。
第81回拡大人事問題研究部会で講義。
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テーマは「やり甲斐とやる気をいかに高めるか?」
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マネジメントの系譜を分かりやすく体系化し、
そのうえで、「モチベーション論」のセオリーをちょっと詳細に。
2時間講義して、1時間ほど質疑応答。
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昨日はスーパーマーケットの戦略論。
今日はサービス業のモチベーション論。

あっちこっちテーマは飛びまくっているが、
結城義晴が中核に座っているから、
何とか持っている。

あっちこっちのテーマを求められる。
これにも感謝しなければならない。

今月の標語を思い出しつつ。
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」

<結城義晴>

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