結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年05月20日(金曜日)

「桃・柿育英会」と「負けるな! びはん」そしてコーネル・ジャパンの労務問題講座

読売新聞の一面コラム『編集手帳』。
「桃・柿育英会東日本大震災遺児育英資金」を取り上げた。
新設された東日本大震災の遺児に給付する育英資金の制度。
発起人は建築家の安藤忠雄さん、ノーベル物理学賞の小柴昌俊さんらで、
安藤さんが実行委員長。

小売業界ではファーストリテイリングの柳井正さんが発起人として参加、
運営資金としてまず約2億2000万円を寄付する。

寄付金の募集活動は、
すでに4月9、10日、および4月23日~5月8日、
日本国内のユニクロ店舗で展開。
商品1枚について100円を寄付する支援プログラム。

編集手帳のコラムニストは武者小路実篤を引き合いに出す。
〈桃栗三年 柿八年 だるまは九年 おれは一生〉。
「桃と栗は3年、柿は8年かかってやっと実がなる。
達(だる)磨(ま)大師の場合は『面壁九年(めんぺきくねん)』、
壁に向かって座禅を組むこと9年にして悟りを開いた。
自分はこつこつと一生をかけて実るのだ」

私は中学生だったか高校の初めだったか、
白樺派の武者小路を読み漁っていた時期がある。

だから余計に「桃・柿」に対しても親近感がある。

イオンの岡田卓也名誉会長が、ながく、
「風樹会」という奨学金制度やっていたが、
こちらは交通遺児の育英資金供与。
できることをやる。
それがとても尊い。

昨日、横浜の商人舎にお手紙が届いた。
便せん3枚にびっしりと書かれた文字。
意志を感じさせる。
間瀬慶蔵さんからのものだった。
㈱びはんコーポレーション専務取締役。
岩手県下閉伊郡山田町で被災したスーパーマーケットの経営者。

朝日新聞に掲載された記事「店はなくても青空市」。
それがびはんの物語。
私はブログに書いて応援した。
ご了解を得て掲載させていただく。

初めまして、私は
岩手県山田町にあるスーパー「びはん」を経営している
間瀬慶蔵と申します。

結城さんのブログを見つけ、拝見させていただきました。
『食品商業』や『販売革新』を読んでいたので、
結城さんのことは知っておりましたが、
あまりの感激に目にじわっとくるものがありました。
感動しました。ありがとうございます。

この震災をきっかけに、
他のスーパーが町内に参入しようとする動きがある中、
「がんばろう びはん、負けるな びはん」の激励の言葉、
勇気づけられました。心からお礼申し上げます。

少し自己紹介をさせてください。
私は、大学卒業後、イオン㈱に入社し、
8年間修業の上、山田町には3年前に帰ってきました。
社長の父は健在ではありますが、私は専務として日々、
店の指揮をとっておりました。

3月11日、私は店内にいまして、
従業員といっしょにお客さまを避難させ、
その後従業員も避難させ、店に施錠をして、店横の高台に行き、
津波が来るのを見ていました。

もちろん、店がのみこまれる瞬間もこの目で見ていました。
その時はもう恐ろしくて恐ろしくて、
自分の命のこと、家族のことばかり考えていました。

波が引き、次の波はもっと高いのではないかと思い、
他の避難者といっしょに海水の中、
さらに高台へと連れて行きました。
その後、やはり家族が心配で探しに行きました。

全員の無事を確認し、
その日の夜は子供と2人でお寺に避難しました。
津波直後から町内のあちこちで火事が発生していて、
プロパンガスの「ドーン」と爆発する音、
スタンドの爆発する音、
大きな余震、
さむい夜に子供と2人で眠れぬ夜を過ごしました。

翌日、翌々日は、店のあった場所に行き、
わずかに残った菓子、食品、飲料などを、
他にも集まってきた従業員と
避難所に配って歩きました。

その時に声をかけてきた町民の方々に
「びはんはどうするの?」という言葉に、
自然と「またやりますよ」という言葉が出ていました。

たくさんの方の期待の言葉にはげまされ、
13日の夜は眠れませんでした。
14日には、内陸の取引先を回り、
なんとか商品を仕入れることができないか交渉して、
15日の青空市開店にこぎつけました。
開店したのはいいのですが、
新聞も広告もない状態で、
開店を町民に知らせる必要がありました。

拡声器を役場から借り、
流されずに残った軽トラで町内を走らせました。

そこで言われた言葉が
「こっちに売りに来い」でした。

逆に叱られました。

そんな言葉が多数あり、
移動販売もすぐに始めました。

その時のお客さまの言葉
「待ってた~」
「助かる~」
「ありがとう!!」
「また来て~!」
この言葉に元気をもらった時、
やっぱり自分は商売人なんだなと、
つくづく感じました。

現在では、青森のマエダストアーさんから
無償でゴンドラや冷ケースを頂き、
被災しなかった旧山田病院にて、
約20坪の程度の売り場を設け、
青空と2か所で営業しています。

商品は、同じく被災したマイヤさんから仕入れております。
皆さまの支援に感謝!!感謝!!です。
今後は、前、核店舗であった店を
同じ場所に8月上旬オープンの目標で
準備を進めている状況です。

必ず「びはん」は復活し、
山田町も復興させます。
見ていてください。

長々と書かせていただきました。
同梱の「山田の醤油」は、
当社のブランドで、
内陸の業者でつくらせていたので無事でした。

甘~い味で、
白身魚のお刺身や煮物に最適です。

どうぞご賞味ください。

びはん 間瀬より

読んでいて、涙が出てきた。
応援したい。
ずっと、ずっと。

「ひとつずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ」

「山田の醤油」を売る運動もやろうと思う。
仕入れたい企業、店舗。
どんどんお知らせください。

間瀬さんにお願いして、
手当てします。

全国のお客様も、
「山田の醤油」、
どんどん買って、
どんどん使ってくれるに違いありません。

さて、昨日はコーネル大学RMPジャパン5月講義の二日目。
1日4時限で労務問題講座が連続する。

第1講座は弥富拓海さん。
賃金管理研究所所長。

テーマは「強い企業であり続けるための賃金体系と福利厚生」
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弥富先生の考え方は、
「企業は力強く成長し続けなければならない」20110520105747.jpg
そのためにいかに人財を育てるか。
企業成長のために賃金や給与、福利厚生がある。

弥富先生の講義は、単なる賃金体系づくりではない。
企業のあり方、成長を前提にしている。

もちろんピーター・ドラッカーの思想が底辺に流れている。
第2講座の講師はUIゼンセン同盟会長の落合清四さん。
「労働組合問題~民主的労働組合と労使関係」20110520105830.jpg
UIゼンセン同盟は組合員110万人、
世界最大の労働組合。

このうち、流通サービス業が約80万人、繊維産業が約30万人。
そしてどちらにも含まれるが、
パートタイマー、派遣などの臨時労働者が約45万人。

これだけの人々を組織する落合さんは、
旧ニチイのご出身。
我々の仲間。

落合さんの講義は、
日本労働運動の歴史概観に始まり、
労働者の位置、働くことの意味、
健全な労使関係の構築、
そして流通産業の課題まで。
極めてレベルの高い講義。

コーネル・ジャパンでしか聞くことのできない貴重な話だった。
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企業は、人間尊重と社会との関係性と、
そして自らの成長とを正三角形で保ちつつ、
発展していかねばならない。

会社と労働者と顧客も、
等関係で自律していなければならない。

落合さんの話は、
顧客満足(Customer Satisfaction)と
従業員満足(Employee Satisfaction )との一致を意味している。
それが労働運動の指導者の主張であるところに大きな意味がある。
第3・第4講座は木下潮音さんによる「小売業の労務問題」
木下さんは第一芙蓉法律事務所の弁護士。20110520110035.jpg
流通・サービス業、チェーンストア専門に労務問題の指導をしている。
豊富な経験に基づいた的確な指摘は小気味良いし、実務的である。20110520110731.jpg
滑舌のよい講義はあっという間に2時間がすぎ、
質疑応答の時間。

関西スーパーマーケットの岡秀夫さんが真っ先に質問。
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木下さんは三期生からの質問に、
これまたてきぱきと、
丁寧に答えてくださった。
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そして、最後に、6月のSMシミュレーションゲームについて、
私からの短いガイダンス。

伝説の1期生、奇跡の2期生も同様に、
このゲームを楽しみ、学んだ。

3期生もぜひ、来月の2日間、しっかりコミュニケーションをとり、
楽しみつつ、経営の醍醐味を味わってほしいものだ。
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コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン。
3期生もあっという間に、8カ月が終わった。

3月4月は大震災のために、
授業が順延となったが、
期間は8カ月を経過して、
本来ならばあと2回。

本当にあっという間だった。

しかし短く感じるほどに、
中身は充実している。

あとわずか。
もちろん、延期した講義は、
時期をずらして再現される。

そして7月下旬にはニューヨーク州イサカへの卒業旅行。

私はこの産業内大学が存在していることを、
すべての人々に感謝したい。

ドラッカーの唱えたポスト・モダン。

日本商業のポスト・モダンを、
このビジネススクールは目指す。

まだまだだけれど、
続いていることそのものが、
ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ、
現代化を推進していると信じたい。
<結城義晴>

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