結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年07月21日(火曜日)

東芝「利益至上主義」とドラッカー「利益は明日のためのコスト」

利益至上主義が粉飾を招いた。
しかし本質は組織風土にある。
マネジメントの考え方にある。

株式会社東芝の事件。
その第三者委員会が、
調査報告書をまとめた。

要約版が公表されている。

利益操作は合計1562億円。
期間は6年と半年間。
2008年度から2014年度上半期まで。

「経営判断」によって、
不適切会計処理が行われ、
「経営トップらを含めた組織的な関与」が、
認められた。

この間に代表取締役を務めた三人が、
まず辞任する。

東芝の歴史は、
1875年(明治8年)に始まる。
創業者は、初代田中久重。
「からくり儀右衛門」と呼ばれた発明家。

からくり人形「弓曳童子」や、
和時計「万年自鳴鐘」などを開発し、
東京・銀座に工場を興す。

2代目久重の田中大吉が、
東京・芝浦に工場を移転し、
田中製造所を設立。

その後、大きな発展を遂げ、
重電メーカーの芝浦製作所となる。

一方、一般家庭向け白熱電球で、
市場を独占していたのが、
合資会社白熱舎から発展した東京電気。

1939年(昭和14年)、両者が合併して、
東京芝浦電気として発足。

1984年(昭和59年)に、
株式会社東芝に社名変更している。

歴代社長は歴史に残る名経営者揃い。
1949年(昭和24年)には、
石坂泰三氏が社長就任。
経団連会長を12年務め、
「財界総理」の異名を持つ。

1965年(昭和40年)には、
土光敏夫氏が社長に就任。
ご存知、「ミスター合理化」

この石坂・土光時代は、
日本の高度成長期にあたり、
飛躍的な発展。

しかし、当然ながら、
それには反動が出る。

1976年(昭和51年)に、
岩田弌夫氏が社長の座について、
リストラを開始。

企業の成熟期に入る。

1981年(昭和56年)、
佐波正一が社長就任し、
1999年(平成11年)には、
ゼネラル・エレクトリックから、
シックス・シグマ手法を導入し、
社内カンパニー制を採用。

成熟企業のマネジメントの苦心が伺われる。

そして2005年(平成17年)、
現相談役の西田厚聰氏が社長に就任、
積極経営に転ずる。

大抵の場合、この積極経営が、
功を奏することはない。

そして西田時代から、
不適切会計処理が始まる。

2009年(平成21年)、
現副会長の佐々木則夫氏が、
社長に就任。

リーマン・ショック、東日本大震災。
大きな環境変化と、
家電商品の国際的コモディティ化現象。

売上高は伸ばせない。
経営トップたちは、
歴代の名経営者を意識するはずもないのに、
目先の利益にこだわる。
その結果、不適切な処理が、
全社に広がっていった。

2013年(平成25年)には、
現任の田中久雄氏が社長に就任し、
今回の不適切会計処理露見に至る。

調査報告書は第6章「原因論まとめ」で、
直接的な原因を7つ指摘する。

1.経営トップらを含む
全組織的な関与であった。

2.「見かけ上の当期利益の嵩上げ」を、
目的としていた。
これはコーポレート経営トップ、
さらに社内カンパニーのトップらが、
その目的を有していた事実として、
明らかになった。

3.当期利益至上主義と
目標必達のプレッシャー。

「チャレンジ」と称して、
過大な収益改善の目標値が示され、
その目標達成を強く迫られる。

業績不振のカンパニーに対しては、
収益が改善しなければ、
事業からの撤退を示唆することもあった。

「チャレンジ」のほとんどは、
長期的な視点から設定されるものではなく、
当期または当四半期における利益を最大化する
という観点から設定される目標達成値であった。

4.上司の意向に逆らうことができないという
企業風土があった。

上意下達が厳しい東芝の企業体質が、
「ルールに基づく会計処理よりも、
上司の承認を得られなければ実行できない
という事実上のルールが存在した」

5.経営者における適切な会計処理に向けての
意識または知識の欠如。

信じられないことだが、事実だ。

6.東芝における会計処理基準、
またはその運用に問題があった。

これも驚くべき事実。

7.不適切な会計処理が、
外部からは発見しにくい巧妙な形で
行われていた。

第8章「最後に」で、
第三者委員会はコメントする。
「東芝の多くの役職員にヒアリングを実施したが、
おしなべて、真面目にかつ真摯に
業務に取り組んでいることが窺われた」

全員が真面目で真摯。

実はこれが恐ろしい。

「集団思考」に陥りやすい体質を示すからだ。

利益至上主義と集団思考。
これが東芝粉飾事件の本質だ。

石坂さんや、土光さんが、
生き返って建て直しに取り組むしか、
道はないのかもしれない。

さて、私は午前中、
商人舎magazineのWeb会議。
今回も充実の提案ばかり。

そしてランチは魚盛。
食後に写真。
IMG_6226-5
右からWebコンサルタント猪股信吾さん、
プラージュのSE谷ツ田一成さん、
facebookコンサルタントでもある内田憲一郎さん。
不動産仲介企業の若き社長。

いつも、ありがとう。

その後、東京・小平へ。
第一屋製パン㈱の営業部門への講義。
関東・関西からほぼ全員が参集。

私の講義は3時半から110分ほど。
その後、質疑応答などして、
6時に終了。

それから懇親会。

現場の報告や意見を、
それぞれから聞いて、
さらに質問に答えた。

考えることが多かった。

ドキドキ・ワクワクする仕事をしようよ。
そんな職場にしようよ。
そんな会社にしようよ。

ピーター・ドラッカー教授は指摘している。
「利益は目的や動機ではない。
事業を継続・発展させる
明日のためのコストである」

「企業人自身が利益について
基本的なことを知らない」
ドラッカーはまるで、
東芝の「チャレンジ」の場面に、
同席していたかのようだ。

「そのため彼らが互いに話していることや、
一般に向かって話していることが、
企業の本来とるべき行動を妨げ、
一般の理解を妨げる結果となっている」
東芝の事実上の粉飾の原因は、
ここにあった。

「利益に関して最も基本的な事実は、
そのようなものは存在しないということである。
存在するのはコストだけである」
1994年刊『すでに起こった未来』〈上田惇生訳〉より)

〈結城義晴〉

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