結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年07月22日(水曜日)

東芝の「魂入れる」と第36回「コンビニ調査」の「完全なる三占」

「利益に関して最も基本的な事実は、
そのようなものは
存在しないということである。

存在するのはコストだけである」
(1994年刊『すでに起こった未来』〈上田惇生訳〉より)

昨日のブログのエンディング。

東芝は「存在しない利益」という幻影を、
追い求める集団になっていた。

田中久雄現社長(64歳)、
前社長の佐々木則夫副会長(66歳)、
前々社長の西田厚聰相談役(71歳)は、
21日付けで辞任した。

室町正志会長(65歳)が社長を兼任する。

報道によると室町氏は、
佐々木前社長とのレースに負けて、
社長に就任することなく、
田中社長時代に会長職についた。

つまり西田派閥ではなかった。

こんなことを書いていると、
ドラマ「半沢直樹」を思い浮かべるが、
商人舎ミドルマネジメント研修会で、
いつも話す「悪い組織の兆候」が、
くっきりと見えている。

日経新聞の巻頭コラム『春秋』
「2003年に『委員会設置会社』として、
企業統治改革では先陣を切りながら、
文字通り、仏作って魂入れず。
器はいくらでも立派に作れるが、
結局は、使う人次第なのだ、
と改めて思う」

毎日新聞の社説。
「東芝には、経営の暴走を
監視するはずの仕組みが備わっていた。
4人の社外取締役に加え
社内に監査委員会も設けて、
経営全般に目を光らせる体制だった。
形の上では他企業のモデルになるようなものだ」

そして結論。
「魂を入れる経営陣の
姿勢こそが問われる」

どちらも、言うのは、
「魂を入れる」

問題はその「魂」だし、
その「魂」を入れるのは誰か、だ。

日経は「使う人次第」といい、
毎日は「経営陣の姿勢」と書く。

ピーター・ドラッカー教授が、
自著『すでに起こった未来』に関して、
翻訳者の上田惇生先生に送ったMessage。

そこに答えがある。
「企業の目的は、
顧客を創造し、富を創造し、
雇用を創出することにあります。
しかし、それらのことができるのは、
企業自体がコミュニティとなり、
そこに働く一人ひとりの人間に
働きがいと位置づけと役割を与え、
経済的な存在であることを超えて、
社会的な存在となりえたときだけです」

ここでいう「富」とは、
「幸せ」のようなものだ。

企業自体がコミュニティとなり、
社会的な存在となる。

そして働く一人ひとりの人間に、
働きがいと位置づけと役割を与える。

半沢直樹的な組織構成員すべてに、
それをもたらす仕事が、
そのすべての人々を待っている。

さて、スコットランドは、
あんなに寒かった。
DSCN6689-5

横浜は、こんなに暑い。
DSCN6694-5
しかし銀杏の葉は、
頼もしく茂り、強い風に揺れる。

日経新聞の「2014年度コンビニ調査」。
日経MJのタイトルは、
「コンビニ 寡占の時代」
私にはこの見出しに関して、
ちょっとして感慨がある。

㈱商業界の取締役時代、
1998年8月に経営専門誌『コンビニ』を、
季刊で創刊した。
その後、ステップを踏んで隔月刊にし、
2002年8月に『コンビニ』を月刊化。

この季刊化のときから、
私は編集長兼取締役だった。

月刊化のときに、
鈴木由紀夫編集長に委ねたが、
雑誌のタイトルで悩みに悩んだ。

当時、コンビニエンスストアは、
業界では「CVS」と略語で呼ばれたり、
ダイヤモンド社は「Cストア」と呼んだり、
「コンビ」と略したり、様々。

私はこれからの時代に向けて、
「コンビニ」という業態用語を、
定着させようと考えた。

そして雑誌タイトルを、
「コンビニ」に決定した。

いま、日経のタイトルも、
「第36回コンビニ調査」。

ああ、コンビニが業界に定着した。
些細なことだけれど、喜ばしい。

その今回の調査。

全店売上高は10兆1718億円。
13年度比3.7%の伸長。

百貨店やドラッグストアの6兆円を、
はるかにしのぐ規模。
そしてスーパーマーケットの18兆円に次ぐ存在。

国内総店舗数は5万5709店で、5.3%増。

セブン-イレブンが、
過去最高の1602店を開設、
ファミリーマートは1061店、
ローソンは1010店。

店数はセブンが1万7491店、
ローソンが1万2279店。
ファミリーマートが1万1328店。

全店売上高は、
セブン-イレブンが4兆0083億円、
ファミマがFCを加えて2兆0080億円、
ローソンが1兆9620億円。

つまり売上高では、
2位が逆転した。

さらに4番手のサークルKサンクスが、
9889億円で6353店。

そのサークルKサンクスは、
ファミリーマートと経営統合するから、
2兆9969億円、1万7681店となる。

その結果、上位3社の市場占拠率は、
9割近くに達する。

日経MJのタイトルは、
「寡占の時代」

しかし私は常々、
「寡占から三占、そして複占へ」と、
言い続けている。

「寡占」とは、少数の供給者が、
ある一定の市場のほとんどを支配し、
互いに競争している状態。

「三占」は私の造語だが、
三者によって市場のほとんどが
支配されてしまう状態。

そして「複占」とは、
二者によって市場のほとんどが
支配されてしまう状態。

日本のコンビニ産業、
いよいよ寡占から三占へと、
姿を変えてきた。

日経の「コンビニ寡占」は、
今さら指摘することではない。

「コンビニ 完全なる三占」
それが2014調査の正体だ。

この三占は比較的、長く続く。

その間、コンビニは、
最も重要な業態として、
産業界に君臨し続けるだろう。

そして三者、特に二者は、
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャーとして、
絶賛され続けるだろう。

何しろ小売業第2位の10兆円業態の、
圧倒的なトップ企業。

例えば百貨店における三越伊勢丹よりも、
はるかに社会的影響力は大きい。

現時点の最大問題は、
ファミリーマートとローソン、
どちらがマーケットチャレンジャーの地位を、
射止めるかだ。

そのマーケットチャレンジャーの資格は、
実はただ一つ。明白だ。

マーケットリーダーの追随模倣作戦を、
放棄する存在であること。

そう、観察し続けるだけでいい。

しかし、やがて複占に至る。
つまり二者となる。

そうなったら、
その業態自体の衰退化はもう、
はっきりしてくる。

そこで破壊的イノベーションが、
業態全体に求められる。

そこまでセブン-イレブンが、
視野に入れているか。

鈴木敏文さんに聞いてみたいところだ。
答えは分かっているけれど。

〈結城義晴〉

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