橋の上。右が神奈川、左が静岡。
緑が深くなった。
ウェルシティ湯河原。
第15回商人舎ミドルマネジメント研修会。
略してMMS。
その最終日、3日目。
東日本大震災の翌年の2012年から、
毎年、初夏と秋に二度ずつ開催して、
8年目。
もう1200人ほどの知識商人が修了した。
その人たちのパワーの総力を想像すると、
うれしくなってくる。
静岡にいるので静岡新聞。
巻頭コラムは「大自在」
「人工知能(AI)の進化は目覚ましい」
否定することなし。
「将棋や囲碁の世界では、
プロ棋士がAIに勝てなくなってきた」
「だが、ファンがプロ棋士に求めるのは、
単なる勝ち負けだけではない。
長考で頭をかきむしり、
扇子をせわしなくあおぐ―。
知恵と気力を振り絞り、
最善手を競い合う、
そんな生身の人間の迫力ある姿こそが
盤上の魅力だろう」
私も将棋を指すし、
将棋ファンでもあるから、同感。
「威圧感、強さ、駆け引き。
棋譜からでは分からない強さを
感じさせられた」
故大山康晴15世名人。
1992年、69歳で、現役で、
しかもA級棋士のまま亡くなった。
大山康晴対升田幸三。
本当にすごい勝負だった。
その大山名人と10代から対戦を重ねたのが、
羽生善治九段。
48歳。
王位戦リーグ白組プレーオフで、
永瀬拓矢叡王(26歳)を破って、
通算1434勝。
大山名人の記録を27年ぶりに更新した。
こちらも凄い。
超のつく天才ばかりだが、
大山、羽生、そして藤井聡太だろうか。
大山が昭和の大棋士、
羽生は平成最強の大棋士、
そして藤井が令和のトップになるのか。
大山が69歳で1433勝、
羽生は48歳で1434勝。
羽生の凄さがわかる。
その羽生の永瀬叡王との対局。
1996年に史上初の全七冠同時制覇を遂げた、
「平成最強棋士」の羽生が、
下座に着いていた叡王に上座を譲った。
プロの将棋では、
上座に上位者が座る。
羽生は昨年12月に、
竜王戦七番勝負第7局で敗れて、
現在、27年ぶりの無冠。
だから下座に座らねばならない。
しかし、実績から考えても当然なことだが、
永瀬が自然に下座に着いていた。
それを羽生は決まり通りにした。
実に謙虚な男なのだ。
大山名人だったら、
初めから上座に座ったと思う。
昭和の人間と平成の人間の違いだ。
令和の人間はどうするのだろう。
コラム。
「若手台頭の中、タイトル奪回へ、
勝利への執着心は強い」
羽生の言葉。
「集中してひのき舞台に立てるよう頑張りたい」
優等生の発言。
前人未到の通算獲得タイトル100期、
さらに通算1500勝も視野に入る。
これは確実だ。
羽生と同じ時代に生きていて、
本当に幸せだ。
奇跡的な手を、何度も編み出した。
それを雑誌や新聞で体験できた。
しかし藤井聡太は、
abemaTVなどで、
リアル体験できる。
これまた幸せなことだ。
コラムニスト。
「AIには描くことができぬドラマを
見せてくれるに違いない」
しかしそのAIと上手に付き合う棋士、
それを使いこなす棋士が、
これからは最強となる。
藤井聡太がそれだ。
さて、MMS3日目は、
理解度テストから始まる。
今回の2度目のテスト。
全員が真剣に問題と取り組む姿勢は美しい。
計算問題もあるし、
記述問題もある。
第2回は6つの設問。
それに30分で答える。
相当大変なテストだが、
全問正解者もいる。
優良者は「S」獲得者として、
表彰する。
研修中の2回の理解度テストが、
それぞれ25%ずつの評価。
そして研修終了後の課題レポートが、
50%の評価。
理解度テストで失敗しても、
取り戻すことができる。
「敗者復活の可能性を残す」
私はそう言っている。
最後の設問は「コミュニケーションの4つの基本」
それを自分の言葉で記述する。
もちろんドラッカーの文章や、
結城義晴の講義内容を使ってもいい。
テストが終わった瞬間は、
急に空気が和む。
しかし最終日の講義は続く。
高野保男先生の講義は、
「作業システムとL.S.P.」
レイバースケジューリングプログラム。
人手不足は深刻だ。
働き方改革も進む。
この難題に対する問題解決が、
高野先生の専門。
だから日本中を駆け巡って、
休みなしで指導・教授を続ける。
2カ月に1回くらいしか休まない。
凄い先生です。
スライド、ビデオを使った講義が終わると、
質疑応答。
関西スーパーの速水良さん。
高野先生は丁寧に答えてくださる。
同じく関西スーパーの蜂谷圭一さん。
現場は深刻な課題を抱えている。
それを解決することは、
トップや本部の助力がなければできない。
もちろん将来はAIも使うことになる。
高野先生の講義が終わって、
二人で写真。
そして結城義晴の最後の講義。
理解度テストの解答を解説しつつ、
講義は深くなっていく。
受講生の顔つきや態度を見ながら講義すると、
どんどん脱線するし、場合によっては、
内容を突っ込んでいく。
チーム・マネジメントについては、
私もパワーポイントを使う。
ランチはカレーライス。
それが終わって総括講義。
ミドルマネジメントが知らねばならない、
「チェーンストア理論」の根幹の部分。
それから競争理論の初歩。
さらにサービス理論のエッセンス。
最後の最後は「自ら、変われ」
ご清聴を感謝した。
そして拍手をいただいた。
ありがとう。
講義が終わると、
すぐに身支度して、
みんな、帰っていく。
そのバスを見送った。
理論は実践されねばならない。
実践が第一に来る。
理論は現実に従う。
原則として理論が実践に優先されることはない。
全員がPracticeを進めてほしい。
健闘を祈りたい。
さて朝日新聞「折々のことば」
第1484回。
楽こそ恐ろしい
(村田喜代子の小説『飛族(ひぞく)』から)
編著者は鷲田清一さん。
「90前後の女性が
二人きりで暮らす西の離島」
「今後のことを相談しようと
里帰りした娘」
「今も海に潜る母の連れに
ウェットスーツとフィンの装着を勧めると、
こう返された」
楽こそ恐ろしい
「体が冷える、息が切れる
という苦痛があるから、
耳を壊したり、命を落としたりする前に
引き返せる」
苦しいから命を守れる。
仕事も同じだ。
苦しいこと、辛いことを、
体験し、乗り越えねばならない。
楽こそ恐ろしい。
健闘を祈る。
〈結城義晴〉