結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年07月03日(金曜日)

2008年刊「お客様のためにいちばん大切なこと」の思い

今日は月刊商人舎7月号の、
最終責了日。
今号も午前様です。
すみません。

一日中、原稿を書き、
見出しをつけて、写真を選び、
キャプションをつけて、入稿。

実際に、すべてをそろえて入稿するのは、
商人舎GMの亀谷しづえだが。

今回は、と言うか今回も、
ほとんどの記事を内製化した。

つまり、社内で書いた。

今月号では最後の原稿で、
自著をちょっと使った。
2008年4月に㈱中経出版から発刊した本。
『お客さまのためにいちばん大切なこと』IMG_75000
㈱商業界の代表取締役社長を辞したのが、
2007年8月末日だった。

その後、当時の中経出版に挨拶に行った。

「流通図書の会」という集まりで、
協力し合った仲間の会社だったからだ。

当時の杉本惇社長にお会いしたら、
「本を書きませんか?」と、
お薦めいただいた。

そこで翌2008年4月17日の、
「商人舎発足の会」を目指して、
執筆することになった。

私は30年間、商業界でお世話になった。
その思いをすべて、この本に込めた。

担当編集者には、
腕利き編集者の飯沼一洋さんが起用された。
飯沼さんはそのころ、
10万部、15万部のヒット書籍を連発する、
辣腕編集者だった。

その杉本社長、飯沼編集者に支援されて、
2008年4月に発刊することができた。

発足の会がこの本のお披露目だった。

杉本社長にもスピーチしてもらった。
0450

飯沼さんも壇上に上がってもらった。
0510

参集してくださった皆さんには、
お土産としてお持ち帰りいただいた。
だから小売りサービス産業では、
トップの皆さんがほとんど、
読んでくださったはずだ。

ほんとうにありがたいことだった。

この本の「おわりに」は、
いまでもちょっと気にいっている。

単行本の一番最後のページで、
謝辞などを入れるところ。
「はしがき」だとか「あとがき」など、
いろいろ称する。

少し長いけれど、
一部、引用させてもらおう。

「おわりに」

「私はこの本を書くために生まれてきた」

商業の世界に入って、
ここに骨をうずめよう。
私がそう、心に決めたのは、
著書のまえがきに、
この言葉を書いた人がいたからです。

倉本長治。
その本の名は、
「店は繁盛のためにあり」(㈱商業界・昭和31年刊)

商業は、これまで、
士農工商の序列の中で
一番下に位置付けられていました。
そんな偏見はなくなったとは言っても、
日本では、働きたい会社の
ランキング上位には入ってこない。
まだまだ、日本の商業やサービス業は、
「近代化の過程」にあるのだと思います。

最も強い者が、支配者となり、
その仲間が人間を打ち倒す軍人や侍になった。
次に強い者が、自然と闘い、
農作物を生産する農民となった。
三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる工の民となった。
そして一番体の弱い者が、商人となった。

私は、士農工商が生まれたプロセスを、
このように解きほぐして考えました。

しかし、現代のビジネス社会では、
かつて一番弱かった商人や
営業担当のビジネスマンが少しずつ、
力を得てきました。

この本の冒頭に掲げたように、
米国「最も働きたい企業ランキング」には、
労働集約型の、本来ハードワークを
要求されるはずの会社が並びます。

彼らの会社ではもちろん、
みなよく働き、
働きに応じた報酬が提供されます。

労働集約型産業の中に、
働く人々のモティベーションが
くっきりと示されているのです。

そしてそこに見えるのは、
アメリカ人らしい「人間力」
とでもいうべきものです。

マーチャントとして、
商人として、一番大切なことが、
彼らには、はっきりと
わかっているように思われます。

日本でも、それが見えてきました。
私は、「商業の現代化」と、
目標を設定しました。

この本は、消費財産業や
ホスピタリティビジネスに働く人々に、
「元気を出そう」と呼びかけるために、
書かれました。

自分の中から元気を生み出す。
そしてその元気を振りまく。
つまり「元気を売ろう」を
訴えるために書かれました。

毎日、元気を出す。
毎日、元気を売る。

これを繰り返しているうちに、
「人間としての力」がついてくる。
それが、多くの人々に伝わっていく。

やがて、
「商業・ホスピタリティ産業の現代化」が
成し遂げられる。
私の願いです。

2008年4月 結城義晴――

いまでも、この「おわりに」の思いは、
まったく変わらない。

昔むかし、
最も強い者が武士となった。
次に強い者が農民となった。
その次に強い者が工の民となった。
一番弱い者が商人となった。

かくて士農工商が生まれた。

私の発見。

まだまだ古いところでは、
この意識や序列は残されている。

「近代化」だけでは、
それを正すことはできなかった。
「現代化」がそれを果たすに違いない。

それでもこういったことには、
長いながい時間を要するものだ。

欧米では人種差別の問題が、
コロナ禍をきっかけに起こっている。

もしかしたらCOVID-19が、
その古くて悪い社会の序列そのものを、
改革するきっかけになるかもしれない。

月刊商人舎7月号を責了して、
そんな感慨をもった。

ありがとう。

〈結城義晴〉

2020年07月02日(木曜日)

藤井聡太「最善の手」とフィリップ・モリスの「煙のない社会」

急に思い立って、
サミットストア東中野店へ。IMG_74390

横浜の我が家から、
車で高速横羽線に乗って、
山手トンネルを使う。
ちょっと渋滞もあったが、
1時間足らずで到着。

夜中や早朝ならば、
30分かからない。
IMG_74410

副店長の大橋香介さんが、
店とバックヤードを案内してくれた。
従業員休憩室まで見せてくれた。DSCN96370
広報室/社長秘書の植川肇さんも、
本部からやって来て、説明してくれた。

お二人に感謝したい。

すぐに、横浜商人舎オフィスに戻って、
原稿書きに勤しむ。

月刊商人舎のCoverMessageと
Message of Julyを書いた。

楽しみにしてください。
今月も、いいですよ。

アベマTVでは一日中、
将棋王位戦の中継をやっていた。

第61期王位戦七番勝負の第一局。

藤井聡太七段が、
木村一基王位に挑戦している。

互いに持ち時間8時間。
2日間にわたって格闘する。
その2日目。
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プロ将棋には八大タイトル戦がある。
そのうち2日制は4つ。
名人戦、竜王戦、王将戦、
そして王位戦。
1日制は、王座戦、棋王戦、叡王戦、
そして棋聖戦。

藤井聡太はいま、
棋聖戦で渡辺明三冠と、
王位戦で木村一基九段と闘っている。

そして渡辺に2連勝。
木村とは初戦。

タイトル戦には和装で臨む。
昨日からモノトーンの書生のような姿。
これがよく似合う。
IMG_7450

第1日目からどんどん手は進んで、
2日目の封じ手を開くと、
あっという間に終盤戦へ。

後手の木村が「1四王」と逃げたのに対して、
藤井は(1三と」とと金を捨てて迫る。
このあと4手で木村、投了。
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圧倒的に攻め続けて、
そのまま勝ち切ったが、
別名「千駄ヶ谷の受け師」の木村王位に、
藤井は不気味な強さを感じたに違いない。
私はそう思った。
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対局後は場所を移して、
記者会見。
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記者の質問は、
勝負にこだわるような、
一手の損得に及んだ。

藤井は答えた。
「いつもその局面で、
最善の手を考えています」

天才藤井聡太は、
つねに最善だけを求める。

17歳にして、
求道者の心境。
それをさりげなく、言葉にする。

この大きな勝負でも、
最善を求め続け、
最短の詰みを追求して、
木村のかけた罠にはまりそうになった。

しかしここでも、
ギリギリのところで最善を求めて、
その罠をも回避した。

最善であろうとすると、
困難な状況も生まれてしまうし、
最善であろうとすれば、
その艱難からも逃れることができる。

いつも最善を求める。
凄いことです。

日経新聞「グローバルオピニオン」
ロバート・エクルズ教授。
Robert G. Eccles。
イギリスのオックスフォード大学教授。
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「社会的責任/市場で重要に」

アメリカの経営者団体に、
ビジネス・ラウンドテーブル(BR)がある。
この団体が、昨年、
株主第一主義からの転換を宣言した。

このブログでも8月23日に書いた。

ビジネス・ラウンドテーブルは、
「パーパス」(企業の目的)を再定義し、
株主だけでなく顧客や地域社会など
すべてのステークホルダーを
重視する声明を出した。

もうすぐ1年が経過する。

しかしこれまでのところ、
踏み込んだパーパスを公表している企業は
ほとんど見当たらない。

エクルズ教授は残念がる。

その中で数少ないが最新の事例がある。
フィリップ・モリス・インターナショナルだ。
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フィリップ・モリスの経営報告は、
先ごろ金融当局にファイリングされ、
全ての取締役が署名することで、
会社としての強い姿勢を示している。

フィリップ・モリスは、
「煙のない社会」の実現を、
会社の目標に掲げ、その手段として、
葉タバコを燃やす製品から、
加熱式たばこへの移行を進めてきた。

凄いことだ。

「最新のパーパスでは
変化の加速を強調するとともに、
規制当局と協力する姿勢も
改めて鮮明にしている」

ビジネス・ラウンドテーブルは、
短期主義の見直しを提案した。
四半期ごとの業績で株主を喜ばせるのが、
短期主義である。

さらにそれは、
「株主資本主義」の修正を標榜する。
「シェアホルダー・キャピタリズム」という。
株主利益だけを考えていれば
良しとする考え方だ。

エクルズ教授。
「資本主義のあり方を見直す必要性は、
新型コロナウイルスの災厄が
収まった後の経済を考えるにあたって、
ますます重要になっている」

「企業は
世の中をどう変えたいかを明確にし、
そのためにビジネスで
何を成すべきかを説明する。
こうした過程を通じて
市場の短期主義は是正される」。

たばこ会社のフィリップ・モリスが、
「煙のない社会」を目指す。

これこそ「最善の追求」である。

最後に朝日新聞「折々の言葉」
第1863回。
最も強いものに従うのは
必然のことである。
(ブレーズ・パスカル『パンセ』から)

「すさまじい権力や暴力をふるう者に、
人は最終的に屈服せざるをえない。
それは必然のこと、つまり、
そうでしかありえないことだ」

パスカルは17世紀フランスの思想家。
私のブログにもよく登場してもらう。

編著者の鷲田清一さん。
「ではこの言葉を反転させたらどうなるか」

最も弱い者に従うことこそ
自由だ。

「弱い者に従うのは、
人が何に強いられることなく
選びとった結果なのである」

強い棋士の手は、
最強の「必然」を求め続ける。

しかし藤井聡太の「最善の手」は、
必然と自由とを行ったり来たりする。

それが21世紀の人間の在り方だ。

〈結城義晴〉

2020年07月01日(水曜日)

コロナ時代を先導するドイツ「社会的市場経済」の「協調と競争」

7月1日だ。
2020年は今日から後半戦に突入する。

COVID-19禍がなければいまごろは、
東京五輪一色だったに違いない。

今月第4週の金曜日24日が、
オリンピック開会式の日で、
スポーツの日として祝日になった。

その前日の23日は、
もともとの祝日「海の日」で、
この週末は4連休である。

オリンピックは一応、
来年に延期されたが、
それもどうなるかわからない。

世界のCOVID-19拡大は、
現時点で最大風速を示す。

WHOの見解では、
コロナはこれから加速し、
最悪の事態はこの後、起こる。

世界中では約1000万人が感染し、
約50万人が死亡している。

東京都は今日、新規感染者67名。
緊急事態宣言解除後、最多。

まだまだ「Afterコロナ」などと、
呑気なことを言っているときではない。

COVID-19から、
いかに世界を救うか。

そんな中で、
今日の日経新聞「大機小機」
「メルケル氏が導くコロナ後」
コラムニストは無垢(むく)氏。

「コロナ危機ほど
世界の指導者の優劣を
はっきりさせた例はないだろう」

「強権政治家やポピュリストが
相次いで馬脚を現すなかで、
光彩を放つのはメルケル独首相である」
メルケル
コラムニストは、
主要国のリーダーを評価する。

中国の習近平国家主席。
「危機の発生源である習主席は、
初動の遅れで大流行を招いた。
責任は重大だ」
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米国ドナルド・トランプ。
「最大の感染国になった大統領は、
楽観論から初期対応が遅れた
自らの責任を棚上げし、
大統領選目当てで米中対立をあおる」
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英国ボリス・ジョンソン首相。
「過信から欧州最悪の危機を招いた首相には、
混乱のなかで
合意なきEU離脱の危険がつきまとう」
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日本の安倍晋三首相。
「先進国最悪の財政危機にありながら
巨額の債務を積み増すしかない」

さらに、「大幅遅れのデジタル化を、
“1丁目1番地”と位置付けるしかない」
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しかし、
アンゲラ・メルケル首相。
その対応は、水際立っている。
「医療支援を先行させ、
医療体制を整えるとともに、
消費減税など
大胆な経済対策を打ち出した」

「財政健全主義を貫いてきたからこそ、
思い切った転換ができる」

「メルケル政権の真髄は、
その文化政策にある。
首相は”ドイツは文化の国だ”とし
芸術支援を優先順位リストの
最上位に置いている」

素晴らしい。
自国のポジショニングを鮮明にして、
その政策を断固、進める。

マクロン仏大統領とは、
大規模なEU復興基金を推進する。

最大の経済危機を前に、
「かけるべき橋は大きくなる」と大転換。

財源に国際炭素税やデジタル税を当てれば、
経済の仕組みは変わる。

コロナ危機は大恐慌以来の、
資本主義そのものの危機である。

そこで新たな世界標準に浮上するのは、
ドイツ流の「社会的市場経済」だろう、
と、コラムニストは絶賛する。

賛成だ。

「メルケル首相の復活は
コロナ危機下の救いである」

「自国本位主義を排し
国際協調を先導する
“敗れざるメルケル”は、
コロナ後の世界に
道しるべを示している」

「社会的市場経済」とは、
1950年代の西ドイツの時代から、
東西ドイツの統一を経ても継続されている、
ドイツ特有の社会福祉政策と経済政策の思想だ。
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私も詳しいわけではないが、
ドイツを旅するとそれが実感できる。

経済思想・経済秩序として、
流動性があるにもかかわらず、
3つの一貫した特徴がある。

第1は、市場と国家の共生を目指している。
競争を機能化しているし、
その競争が社会に役立っている。

アルディ、リドル、メトロ、エデカなど、
流通においても、競争は機能化されている。
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第2は、生産的な秩序政策の戦略を、
強く支持している。
だからインフラ政策、地域振興、
そして職業教育や専門教育も、
国家の責務として充実させている。

第3は、生産のために、
社会システムが必要とするものだけに、
限定している。

ドイツは間違いなく、
いつになるかわからないポスト・コロナ時代の、
国際的リーダー国家である。

自国本位主義を排し、
国際協調を先導する。 DSCN87988_DSCN87968_
これは、
企業の戦略にも当てはまる。

自社本位主義を排し、
産業内外の協調を先導する。
しかし競争も機能化させる。

つまり「利他と無私」である。
そして「協調と競争」でもある。

私たちはこれから、
難しいことをやり遂げねばならない。

わかりやすくて、
すぐにできそうなことだけでは、
コロナ時代を切り抜けられない。

「すぐ役立つことは、
すぐに役立たなくなる」
(橋本武)

そのことを強く心にとめて、
7月を生きていきたい。

〈結城義晴〉

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