結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年07月27日(日曜日)

柳田国男の「一等むづかしい宿題」と「むづかしいからおもしろい」

「危険な暑さ」

最近のテレビなどが使う表現。
本当にそう思う。

朝日新聞「天声人語」

柳田国男を取り上げてくれた。

「10人ほどの子どもが、
縦書きの掲示板を見つめる白黒写真がある」

時は1928年、昭和3年。
25歳以上の男性に選挙権が与えられて、
初の「普通選挙」が行われた。

その告知を子どもたちがみている写真。

この写真は、柳田国男が、
『明治大正史/世相篇』に掲載した。81HNT0vJX8L._SL1500_
天声人語。
「衣食住から労働、恋愛など様々な分野で、
庶民の暮らしがどう変化したかを
描き出した名著である」

最後はこう結ばれている。
「すなわちわれわれは公民として
病みかつ貧しいのであった」

コラムは書く。
「なんとも不思議な響きだ」

普通選挙は昭和3年だつたのか、と思う。

フランスでは1792年。
フランス革命期の立法議会解散のとき。
それでも男子普通選挙だったし、
被選挙権は25歳以上、
投票権は21歳以上とされた。

ドイツでは1867年に、
男子普通選挙が実施された。

イギリスでは1918年に、
男子普通選挙が行われた。

そして1919年、ドイツ共和政で、
世界初の完全普通選挙が実現した。

だから日本の1928年の男子普通選挙実施が、
とくに遅かったわけではない。

先ほどの日本の写真の横には、
「一等むづかしい宿題」と、
皮肉めいた説明。

東京学芸大名誉教授の石井正己さんが、
柳田の自伝に詳細な注釈を付けた。
「石井正己校注」と表紙にある。71T4XMcmy6L._SL1500_

石井さんは言う。
「柳田は嘆いている」

「社会とは、貧富に関係なく
正しい判断ができる選挙民を育てるべきものだ。
だが、この社会にはそれができていない」

柳田国男は東京帝大卒業後、
農商務省などで働いてから、
朝日新聞社に入った。

そして1930年まで論説委員を務めた。

『明治大正史』が発刊されたのが1931年。

石井さんの見解。
「ジャーナリズムの限界を自覚し、
民俗学に専念し始めたころ」

柳田自身も書いている。
「『現実の社会事相』は、
新聞の報道より複雑だ」

「そこに限界を感じたのか、
権力者ではなく庶民の歴史をたどると決めた。
各地を旅し、人々の声をすくい上げ、
伝承を拾い集めた」

新聞の論説委員は、
権力者を追いかける者なのか。
柳田はそれを止めて、
「庶民の歴史」をたどったのか。

社会人になりたてのころ、
一人旅で遠野を訪れたことがある。
「遠野物語」に触れたいと思ったからだ。

柳田は一等むづかしい選挙や権力の問題から、
身を引いたということになってしまうのか。

コラム氏は言う。
「自戒を込めて考える。
いま、小さな声にも
耳を澄ませているだろうか。
『難しい宿題』から逃げずに
向き合っているか」

「一等むづかしい宿題」

それが正しい選挙民を育てることなのだと、
柳田国男は言いたかったのだろう。

日本では1945年に、
男女20歳以上に選挙権を与える規定に基づいて、
女性参政権が成立した。

フランスでは日本と同じ1945年に、
21歳以上の女子の選挙権が認められた。

イギリスでは1948年、
完全な普通選挙権制度が成立して、
男女に選挙権が与えられた。

日本は遅かったわけではない。
けれど「むづかしい宿題」であることは変わらない。

ドイツのワイマール共和国は、
1919年に完全選挙制を実験したが、
その意味で圧倒的に時代を先取りした、
凄い出来事だった。

今回の参議院選挙も、
「むづかしい宿題」を私たちに投げかけた。
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しかしむづかしいからこそ、
たいせつなのだ。

翻って私たちの自身の仕事。
「むづかしい宿題」を後回しにしていないか。
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やさしいことからはじめるのは、
一つの方法だけれど、
「むづかしい宿題」に、
いつまでも正面から取り組まないのは、
やっぱりいけない。

夏休みはすぐに終わってしまう。

「むづかしいからおもしろい」
このスタンスを貫きたい。

私も自戒を込めて。

〈結城義晴〉

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