4月最後の日。
1日中、横浜商人舎オフィスで、
月刊商人舎5月号の入稿。
自分の特集のあとがきを書き終えて、
山本恭広編集長の長い原稿に手を入れて、
最後に表紙をつくって、
今日は終わり。
残るは特別企画のまとめ原稿とMessage。
最近は「アンカー」の役割になってきた。
アンカーはリレーの最終走者のこと。
つまり最後のまとめ役。
松本清張をはじめとして、
作家やジャーナリストは、
歳を取ってくると現場に行かずに、
レポーターたちの報告を読み込んで、
最後に自分の名前で原稿にした。
私はできるだけ現場に行くけれど、
すべての取材を直接することはできない。
だから雑誌のアンカーになってきた。
工藤澄人さんが商人舎に入社して、
その傾向はさらに高まる。
山本さんは元食品商業編集長、
工藤さんは元商業界本誌の編集長。
彼らがときにはレポーター役となってくれる。
贅沢な編集態勢で、本当にありがたい。
そうして「月刊商人舎」は、
取材記事とその総括記事で構成されるようになる。
総括分析のない雑誌は多い。
それは本質に迫っていないことも多い。
さてイギリス連邦王国国王、
チャールズ三世。
1948年11月14日生まれの77歳。
日本で言えば団塊の世代、
欧米ではベビーブーマー。
アメリカ合衆国を訪れて、
ワシントンD.C.の連邦議会で演説した。

約30分間のスピーチ。
英国王が米議会で演説するのは、
1991年のエリザベス女王以来、35年ぶり。
ビデオでその演説を見た。
冒頭で故エリザベス女王の演説に触れた。
「時代は変わった。
しかし、米英の友情は変わらない」
演説の中心は、米英関係の再確認だった。
オスカー・ワイルドの言葉を借りれば、
「今日では我々はアメリカと
ほとんどすべてを共有している。
ただしもちろん、言語を除いては」
民主主義・自由・法の支配。
これらの価値を共有する両国の結束を、
「人類史上もっとも重要な同盟」と位置づけた。
「ディケンズなら、
『二人のジョージの物語』と
呼んだかもしれません。
初代大統領ジョージ・ワシントンと、
私の五代前の祖先ジョージ三世です」
第二次世界大戦、冷戦、テロとの戦い。
世界が揺れるたびに、米英は肩を並べてきた。
その歴史を踏まえて、
「今こそ再び協力が必要だ」と訴えた。
さらに現在の国際情勢に深い懸念を示した。
イラン情勢の緊張、中東の不安定化、
そしてウクライナ侵略の継続。
「これらは、
世界秩序を揺るがす重大な危機だ。
米英が協力しなければ、
世界はより危険になる」
そして、この文脈で国王は静かに語った。
「鍬(くわ)を剣に打ち直さないよう願う」
旧約聖書のイザヤ書にある。
「彼らは剣を打ち直して鍬とする」
平和が到来すると武器が農具に変わる。
チャールズ国王はこれを逆に引用した。
チャールズ国王は環境活動家である。
今回の演説でも、気候危機を、
「世代を超えた課題」と位置づけた。
これらのテーマで米英が協力すれば、
「世界を動かす力がある」
環境問題を「政治」ではなく、
「文明の課題」として語った。
国王はさらに、
未来分野での米英協力を強調した。
AI、サイバーセキュリティ、
防衛産業、クリーンテック。
演説の最後に国王は、
アメリカという国の多様性、創造性、
そして寛容さを称賛した。
チャールズ国王の演説は、
実に淡々としていた。
ドナルド・トランプ大統領とは、
正反対の印象を与えた。
ちなみにトランプはこの議事堂には姿を見せず、
バンス副大統領が国王の後ろで聴いていた。
チャールズ三世の演説は、
米英同盟の歴史と未来を静かに見据える、
本当の「王の言葉」だった。
旧約聖書からの引用。
オスカー・ワイルドや、
チャールズ・ディケンズの引用。
良いものだと思った。
同じ日の日本の昭和100年の記念式典では、
なぜか今上天皇の言葉はなかった。

首相と衆議院・参議院議長の偏ったスピーチ、
そして最高裁判所長官のコメントだけだった。
日本のスピーチでも、
こういった引用は好ましい。
昭和100年式典には一つもなかったし、
トランプの演説でも、
そういった引用は聞いたことがない。
ディケンズは、
ヴィクトリア朝時代を代表する英国の作家だ。
下層階級を主人公として、
弱者の視点で社会を諷刺した。

私の好きな、その言葉。
「生きている人間に魂がないことは、
死人に魂がないことよりはるかに恐ろしい」
どこかの大統領に当てはまる。
「誰もがたくさんもっている、
今の幸せに目を向けなさい。
誰もが少しは持っている、
過去の不幸は忘れなさい」
今の幸せに目を向けよう。
〈結城義晴〉
























