日米両政府の円買い協調介入の「シェー」の正体

40年ぶりの円安水準。
日米両政府が円買いの協調介入をした。
それで1ドル150円台となった。
片山さつき財務相が「日米協調介入」を表明し、
スコット・ベセント米財務長官も認めた。
日本政府と日本銀行は7月30日、31日と、
総額11兆~12兆円規模の為替介入を行ったようだ。
日本の為替介入の財源は、
「外貨準備」である。
財務省が保有する ドル建て資産のストックを、
「外貨準備」という。
第1は米国国債(US Treasuries)。
これが最大の構成要素。
安全性が高く、流動性も高い。
第2は外貨預金。
海外の銀行に置いているドル資金。
第3がその他の外貨建て証券。
欧州債など。
現時点の日本の外貨準備は、
総額1兆3059億ドル、約150兆円規模。
このストックを使って、
ドルを売り、円を買った。
まず政府保有の米国債などを売却する。
売却して得たドルを市場で売る。
ドル売りで得た円を買い戻す。
すると円高方向に圧力がかかる。
つまり、外貨準備を現金化して、
円を買った。
極めて異例の「連日の巨額介入」
懐かしい。
故赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』。
1962年に始まった。
六つ子の松野兄弟が主役のドタバタコメディ。
おそ松、一松、カラ松、チョロ松、トド松、十四松。
しかし主人公よりも脇役が人気となった。
それがイヤミ。
名前の通り、嫌味な男。
痩せ型で3枚の出っ歯と口髭、
顎まで伸ばした長髪。
一人称は「ミー」、二人称は「チミ」「ユー」。
語尾に「なになにザンス」をつけて話す。
そして、とても驚いた時に、
「シェー」と叫んでポーズをとる。
このギャグは、
1960年代の日本を席捲した。
主人公たちよりも、
脇役のイヤミの「シェー」が、
超のつく人気を博した。
日経新聞巻頭コラム「春秋」
通貨政策はとりわけ難しい。
ひとたび間違えるとたちまち、
大きな被害が発生し、
失策ぶりが明らかになってしまう。
福沢諭吉は明治のはじめに「通貨論」で指摘した。
「福沢の念頭にあったのは主に
紙幣発行量の調節の難しさだが、
通貨の価値を守る当局の緊張感は、
昔も今も相通ずるように思われる」

日本政府。
「さらなる協調介入も躊躇(ちゅうちょ)しない」
コラム。
「協調介入は単独より格段に
メッセージ性が強い。
数少ない過去の例も東日本大震災など
歴史的タイミングばかりだ」
アメリカ側にも過度な円安は不都合なのだ。
しかし、
「助け舟をタダで出してくれるような、
大統領ではなかろう」
「これで借りができたとすれば、
先方の言い分をさらに聞かされることにならないか
心配にもなる」
「そもそも財源の曖昧な消費減税も積極財政も
市場の疑念を招きやすい」
そう、日本政府に市場が「No」を突きつけるか。
「それと同時に円安を止められるのか」
円はすぐに150円台の後半へと逆戻りした。
「市場が突いてくるのは
政策の矛盾の隙であろう」
その通り。
福沢諭吉の弁。
「ことが国民の幸不幸にかかわる以上、
できる限り力を尽くし考えたい」
「介入で稼いだ時間をどう使うか。
政府には間違えられぬかじ取りが続く」
「シェー」の巨額介入。
それは「シェー」なりの効果があった。
164円に迫ったレートが、
8円超の急伸。
しかし時間稼ぎに過ぎないのか。
過去の協調介入は、
1985年のプラザ合意のとき、
1995年の阪神淡路大震災のあと、
1998年、アジア通貨危機のとき、
2000年、EU誕生後のユーロ防衛のとき、
そして2011年の東日本大震災のあと。
今回のシェーは、
熊本地震のためか?
いや、この円安は、
「政策の矛盾」の所為なのだろう。
消費減税をすれば、
需要が増えて、
それがインフレ圧力となる。
1年以内の短期で見れば、
ほぼ確実にインフレとなる。
ただし2年以上の中期で見れば、
財政が悪化し、その結果消費性向が低下して、
デフレ基調に戻る可能性もある。
協調介入の「シェー」は、
その印象だけ残して、
瞬間芸のギャグとしてしか残らない。
〈結城義晴〉
























