結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2017年09月04日(月曜日)

日経新聞社説「小売り値下げに2つの懸念」に物申す。

Everybody! Good Monday!
[2017vol36]

2017年の第36週、
9月も第2週に入って、
急に涼しくなった。

今日もちょっとだけ雨模様。
気象予報士の予想は、
外れっぱなし。

それなのにほとんどの気象予報士。
妙に威張りかえっている。

ただし石原良純だけは、
すぐに、率直に、謝る。
よろしい。

父親とは大違いだけれど。

夏休み返して欲しき雨幾多
〈朝日俳壇より 木更津市・本郷政信〉

そんなことを思っている子どもたちも、
きっと多いのだろう。

ふと夜の音に加はる虫の声
〈同 白山市・辰巳葉流〉

夜中に原稿など書いていると、
本当にそう感じる。

つむじ風空蝉そらを飛びにけり
〈同 横浜市・守屋雅〉

(大串章選評)
つむじ風のおかげで、
初めて空を飛ぶことができた。
空蝉の喜び。

さて日経新聞の社説。
「小売り値下げに
2つの懸念」

この社説に関して、
指摘しておきたいことがある。

「大手小売り各社が
安売り志向を強めている」
イオン、セブン&アイ、西友の名が上がる。
「食品や日用品を相次ぎ値下げした」

実際にイオンは8月25日から、
「感謝の値下げ」をしている。
IMG_3668.JPG7

商人舎流通SuperNews。
イオンnews|
8/25から再び「トップバリュ」144品目「感謝の値下げ」

イオンはPBの「トップバリュ」の値下げ。

西友news|
プライスロック/チャレンジプライス第11弾値下げ

西友は「プライスロック戦略」を、
継続して展開している。
cnr_pricelock11_ns
さらにパワーアップするのが、
「プライスチャレンジ」。

こちらはNBの値下げだ。
seiyu_price

しかしセブン&アイでは、
セブン-イレブンが3月に値下げはしたが、
この記事の「安売り志向」の指摘には、
含まれないような気がする。

セブン&アイnews|
セブン-イレブン日用雑貨61品目値下げ作戦

しかもセブン‐イレブンというコンビニの、
政策的値下げだ。

三者三様、それぞれに意図は異なるし、
セブン&アイを加えたのは、
「業界挙げて」のイメージを、
増幅させるためのように、
私には感じられる。

「イケア・ジャパンや良品計画も
家具や衣料品の価格を
引き下げている」
この2社はいずれも、
プライベートブランドの値下げだ。

ユニー・ファミリーマートが、
ドンキホーテと資本提携。
「不振のスーパーを、
ディスカウントストアに
衣替えすると決めたのも、
こうした流れと無縁ではない」

これは明らかに、
フォーマットの転換を狙いとしている。

社説は指摘する。
「安売り頼みの小売り経営には、
2つの懸念がある」

「第1は値下げの原資だ」
これに関して、
社説は2つ指摘している。

「従業員や納入先に
過剰な負担を与える値下げだとしたら、
長続きしない」

もし実際に、
そんなことがあったとしたら、
大問題だ。

中にはそんな不届きなバイヤーが、
いるかもしれない。
そんな会社があるかもしれない。
それは襟を正して、改めねばならない。

しかし、優越的地位の乱用で、
取引先に強制しているとしたら、
公正取引委員会に、
出てきてもらわねばならない。

日経新聞には、
その取材力をフル稼働して、
そんなけしからん企業は、
事実を明らかにしたうえで、
厳しく指弾してもらいたい。

値下げが従業員に、
負担をかけるというのは、
チョット理解できないが、
「値下げするから給料が安い」と、
言いたいのか。

社説が指摘するもう一つの理由は、
「今の値下げ合戦は、
ビジネスモデルの改革を
伴っているか」

西友のウォルマート式EDLPは、
ビジネスモデルを超えた企業哲学だ。

ユニーの件は明らかに、
ビジネスモデルの改革だ。

ビジネスモデルを、
粗利益構造の違いに求める考え方も、
ないわけではない。

しかしそれにしても、
価格戦略と業態・フォーマット戦略は、
根本的に異なる。

これは論点が違う。

第1の指摘は、
従って、なんだか業界をあげて、
優越的地位の乱用が、
密かに行われているようだなあ、
といったニュアンスを与える。

そのために書かれている。

「第2は値下げする対象だ」

「一般的な普及品の値下げが目立つが、
チェーンストアの原点は、
『良いものをより安く』にある」

これも矛盾に満ちた表現だ。

「一般的な普及品」が、
まず、何のことかわからない。

食品や日用品なのだろうが、
それとてもコモディティ商品もあれば、
ノンコモディティ商品もある。
NBもあればPBもあるが、
それは書かれていない。

PBならば自社で責任をもって、
品質管理し、売価設定している。

それをさらに、
イオンならば「感謝の値下げ」をする。
イケアや良品計画も、
根拠のある値下げをする。

西友はNBを、
これは企業哲学で価格凍結し、
ロールバックする。

次に問題の表現は、
「チェーンストアの原点は、
『良いものをより安く』にある」

しかしこれは、
チェーンストアに限らない。

トヨタもパナソニックも、
キャノンも花王、ライオンも、
味の素も日本ハムも、
「良いものをより安く」。
それに命を懸けている。

悪いけれど、チェーンストアの部外者に、
「原点」を振りかざしてはもらいたくない。

社説は続ける。
「欲しいが高くて手が出ないものを
工夫で値下げしてこそ、
消費者の満足度が高まり
需要喚起につながる」

そんな小売業もあるだろう。

しかし、人々が毎日、
食べ、使い、着る、普通のものを、
工夫して値下げすることは、
極めて社会的な意義ある仕事だ。

アマゾン・ドット・コムが、
買収したホールフーズで値下げを始めた。
それが事例として出てくる。
「有機野菜や産直の肉などのぜいたく品を
手の届く価格で提供し、
健康志向の中間層に歓迎されている」

ホールフーズはこれまで、
売価が高すぎた。
多くのメディアも消費者も、
それを指摘している。
だから原資が調達できれば、
それをするのは当然の策だ。

「日本でもドラッグストア業界は
かつての安売り店から脱皮しつつある」

これはドラッグストア業界が全体として、
インバウンド消費の恩恵を受けて、
値下げせずとも売れる、
という状況が生まれたからだ。

コスモス薬品などは相変わらず、
食品の安売りに徹して、
しかも伸び続けている。

「健康に配慮した食品や化粧品を集め、
見やすく陳列して、
働く女性などの支持を獲得」
それもあるかもしれない。

「業界全体の売上高は百貨店を超えた」

ドラッグストアが、
百貨店業界の年商を超えたのは、
「欲しいが高くて手が出ないものを
工夫で値下げ」したからではない。

もし、そうだとするならば、
百貨店の再生は簡単だ。
「高くて手が出ないもの」を、
一番たくさん売っているのは、
百貨店だからである。

安売りすればいい。

そこでアメリカの百貨店は、
ほとんど例外なく、
オフプライスストアを展開している。

ドラッグストアの業態としての、
社会的貢献度が、
その商品構成や便利性、
サービスや価格も含めて、
高まってきた。

それが百貨店を超えた。

最後の言葉。
「小売業界には創意工夫で
ビジネスモデルの創出や斬新な店づくり、
市場の開拓に挑んでほしい」

これまた当たり前のことだ。
どんな業種にも、どんな産業にも、
新聞社にすら求められることだ。

「安売り」はけしからん。
社説の担当者に、頭から、
そんな意識があるようだ。

「良いものをより安く」
これはいい。

そのための競争も、いい。

安売りが蔓延したら、
逆にちょっとグレードの高い商品を、
リーズナブルな価格で提供する。
あるいは驚くべき売価で販売する。

それもいい。

要は商人は自由なのだ。

そして、ひたすら顧客に、
喜んでもらえることを考える。
そのために自分ができることを実行する。

Amazon.comのジェフ・ベゾスは、
それを「Customer Obsession」と言う。
これは月刊商人舎9月号で書く。

ただし、他に何もできないから、
「安売りする」というのは、
これは全然、駄目だけれど。

それに売れないものは、
いくら安くしても売れないことも、
確かだけれど。

ちと、怒りつつ、
では、みなさん、今週も、
Customer Obsessionで、
Good Monday!

〈結城義晴〉


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