結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年04月06日(金曜日)

若年労働者から搾取する会社と『流通ニュース&日経新聞』決算記事

今朝、横浜駅西口裏手で、小火騒ぎ。
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ビルが密集して、
飲食店、サービス業、小売業が集積している辺り。

写真の右下が新田間川。
その左岸に屋台群。

救急車も出動して消し止め、
大事には至らず。
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一安心。

新田間川縁を歩くと、
桜が七分咲きか。
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こちらはのどかな風景。

遊歩道と対岸の桜。
毎年、一番先に美しく咲き乱れる。
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今週末くらいが満開で、
まさに花見頃。
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しかしそのウィークエンドにかけて、
「花冷え」らしい。

きれいな日本語です。
この感覚を味わえるだけで、
日本に生まれて良かったと思う。

あと何回、満開の桜と花冷えを堪能することができるのか。
私も今年、還暦です。

さて、今朝、ふと考えた。
小売流通業・サービス業の社員・従業員のこと。
社員は正社員、
従業員はパートタイマーやアルバイトを含めた人々のこと。
明治・大正・昭和の時代も、
もちろん商売は存在した。

しかし戦後間もないころまで、
ほとんどの小売りサービス企業・事業の従業員は、
若年層に絞られていた。

若年労働者を丁稚として採用し、
こき使って働かせ、
年月を経て給料が高くなると、
ほんの一握りの番頭候補だけ残して、
退職させてしまう。
首を切る。
あるいは辞めていく。

それが会社や店の収益を確保する手段だった。
経営者や店主だけは太っていった。

つまり収益性が低いうえに、
経営者のモラルも低い。
それが大半の小売商業・サービス業だった。

商業界の倉本長治、
ペガサスクラブの渥美俊一、

多くの経営指導家は、
この状態からの脱出を提唱した。
商業の近代化はそれを志向した。

大卒を採用し、教育・訓練を施し、
高齢者にもポストを用意し、
キャリアを積ませ、
そんな高齢者が定年を迎えると、
退職金を支払う。

団塊の世代が定年を迎え、
しかも彼らの自らのスキルで、
定年後も働くことができるようになった。

これは商業近代化の成果である。

だから現在の企業群を見渡して、
若年層の社員・従業員しかいない会社があるとしたら、
それはいまだ、前近代的なものだと考えてよい。

経営者一族だけが、
懐にため込んで、
若年労働者たちから搾取している。
サービス残業も当たり前。

労働基準法をはじめとする法律や労働組合の存在の意義は、
この悪徳資本家然とした経営者を駆逐することにある。

私は「商業・サービス業の現代化」を標榜している。
近代化を「モダン」といい、
現代化は「ポスト・モダン」と称する。

現代化はしたがって、
近代化が果たされた後の、
いわば理想郷の世界を目指す。

私の中学高校の友人たちも、
今年、還暦を迎える。
一流企業の役職員や公務員として、
60歳まで働いた。

しかし彼らの多くは、
いま、新しいことを一から始めて、
わずかな収入を得ようとしている。

小売り・サービス業のスキルを持つ人たちの方が、
定年後の仕事の範囲は格段に広い。

かつての番頭さんと丁稚どんの時代と比べると、
隔世の観あり。

倉本長治先生、岡田徹先生、新保民八先生、
川崎進一先生、渥美俊一先生、
さらに多くの先生たちに、
心から感謝しつつ、
あらためて商業現代化への志を固めたい。

桜の季節。
還暦を迎える結城義晴、
物思いにふける。

さて、商人舎ホームページ巻頭テロップの『流通ニュース』
アクセス数は絶好調の伸びで、
小売流通・サービス業界トップ。

その流通ニュースの昨日の年度末決算発表の見出し。
まず、セブン&アイホールディングス。
セブン&アイ/2月期は売上高6.5%減、営業利益2割増の2920億円
イトーヨーカ堂/2月期は売上高0.9%減、営業利益5.8倍
セブン-イレブン/2月期は売上高4.9%増、営業利益8.3%増
そごう・西武/2月期は売上高1.9%減、営業利益51.1%増
イオンモール/2月期は売上高4.0%増、営業利益2.5%増
ヨークベニマル/2月期は売上高1.5%増、営業利益68.5%増
セブン&アイ・フード/2月期は売上高1.8%減、営業利益2200万円

イオンのグループ企業の2月期決算。
マックスバリュ西日本/2月期は売上高4.4%増、営業利益4.9%減
イオン九州/2月期は売上高2.2%減、営業利益2.4%増
マックスバリュ九州/2月期は売上高6.1%増、営業利益7.9%増
CFS/2月期は売上高12.2%減、営業利益3.5%減
イオンクレジット/2月期は売上高0.4%増、営業利益17.2%増
マックスバリュ東北/2月期は売上高1.2%増、営業利益25.8%増
サンデー/2月期は売上高8.2%増、営業利益4.8倍

そして、ファッション専門店の雄。
しまむら/2月期は売上高6.0%増、営業利益10.3%増

見出しだけでも、有益だ。
是非とも『流通ニュース』を、
ご愛読いただきたい。

先日、㈱伊藤園副社長の本庄周介さんと話した。
本庄さんは『流通ニュース』を絶賛してくれていて、
社員にも愛読を薦めているとか。

今朝の日経新聞にも決算情報。
『決算 深読み』の見出し。
「セブン&アイ、5期ぶり
経常益最高前期2931億円

スーパー・百貨店が復調 構造改革の成果じわり」

事業別業態別の営業利益は、
「スーパーと百貨店の復調が鮮明」。

もういい加減に、日経にも業態を理解してもらいたいところだ。
「スーパー」と表現されているが、
ここには「総合スーパー」と「食料品スーパー」が包含されている。

「総合スーパー」「食料品スーパー」は経済産業省の業態用語。
国際的な専門用語は前者を「ハイパーマーケット」、
後者を「スーパーマーケット」と区別し、
荒井伸也さんが指摘した社会的機能の違いが、
明確に認識されている。

「スーパー」が良かったといっても、
食品が好調だったのか、
衣料品・住関連品が復調したのかは、
全く分からない。

「スーパーマーケットが好調」ならば、
「ああ、食生活関連分野が堅調なんだ」とわかる。
「ハイパーマーケットが復調」ならば、
「生活全般に大衆品が伸びつつあるんだ」と理解できる。

食品は好調なのに、衣料品が絶不調で、
全体で低調だった場合、
「スーパー」は不調となってしまう。
例えば、数年前のように、
ヨークベニマルやヨークマートがまあまあ、
イトーヨーカ堂が落ち込んだ結果として、
セブン&アイの「スーパーは不調」と、
一括されてしまうことがある。
これはおかしい。
業態概念でものを書いてほしいものだ。

さて記事にもどって、
「コンビニの10%増(2146億円)に対して、
スーパーは2.1倍の324億円、
百貨店は77%増の99億円
と伸びが目立った」

「イトーヨーカ堂の営業利益は5倍の105億円」。
だからヨークベニマルとヨークマートを合わせると、
営業利益219億円ということになる。

イトーヨーカ堂は「キャッシュバックセール」などを止めた。
これで年間50億円以上が浮いた。
粗利益率が29.7%になった。
0.6ポイントの改善。

「そごう・西武」は営業利益111億円、51%増。

結果、フリーキャッシュフローは1200億円。
これは新規出店や改装に投資される。

日経の決算関連記事の二つ目は、
「イオンモール、経常益最高
前期390億円 既存SC堅調」

さらに「ABCマート、
経常益最高前期8期連続」

売上高は11%増の約1410億円。
前期末の店舗数は13%増の650。
売上高総利益率は微減の57%台半ば。

そして「しまむら、前期3期連続で
純利益最高 PB商品伸びる」

前期の売上高(営業収入を含む)は6%増の4673億円。
営業利益は10%増の439億円。
純利益が前期比7%増の252億円。
全店舗数は2月末時点で1742。
新規出店数は台湾の4店を含めて73店。

しまむらの最近の大変身は、
プライベートブランドの売上高比率が、
45%
まで高まっていること。
これは前期比約4ポイントの上昇。

ユニクロは100%プライベートブランドで、
しまむらは仕入れ商品。
この対比が鮮明だったが、
しまむらも45%に伸びてきて、
今年度には5割を超えそうだ。

セブン&アイ、イオン、しまむら、ABCマート。
その過去最高の決算。

そして社員・従業員の採用・教育・待遇改善と、
収益性の上昇。

どれも商業近代化から現代化への必須条件だ。
いまだ前近代の会社もあるけれど、
そんな会社に我が物顔させて、
のさばらせておいてはいけない。

そして万一、そんな会社を継いだり、
そんな会社に入ってしまった人は、
まず謙虚に、近代化を志向してほしい。

桜の季節の、
私の思い。

<結城義晴>


2 件のコメント

  • 21世紀の60歳代は非常に若いです。昭和の頃と比較しても各年代マイナス15歳は若くなっている気がします。4/4日経MJ誌の消費分析でも40-60歳代は「中高年」と聞いて自分のこととは思わない。シニアや中高年といった意識が消滅しかかっているとありました。博報堂のアンケートによると「何歳になっても若々しい見た目でありたい」と思う60代は70.6%にも及んでいて、これが「金時持ち」と掛け算になって大きな消費のポテンシャルになっているとか。裏返せば、そのマインドやトレンドを知る60代の方にはビジネスチャンスが大きいということも言えるのでしょうか。

  • キャットマン様、ありがとう。
    自覚症状、あります。
    頑張ります。
    私、「85歳まで現役」を、
    標榜しております。

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