結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年12月21日(金曜日)

丹羽前中国大使の5W1Hとヤオコーのパートナー参加のPB開発

韓国の女性大統領・朴槿恵(パククネ)さん。
来年2月25日に就任式。

朝日新聞『天声人語』、
今日はとても良い。

「母を奪われた。
父朴正熙大統領を狙った銃弾だった。
留学先のフランスから戻り、
ファーストレディー役を担ったのが22歳。
5年後、父も側近に射殺される」

だからパククネさんは、
「悲憤で心を研ぐように強くなった」

さらに「野党党首だった6年前、
選挙応援中に右ほおを11センチ切り裂かれた。
5ミリ深ければ動脈に達し、即死していた」

その時の弁。
「まだ私にやることが残っているから
(天は)命を残したのだろうと考えると、
失うものも欲しいものもない
という気持ちがおのずとわいてきた」

無私の女性大統領。

「血に染まる肉親の着衣をすすぎながら、
『一生分の涙』を流したその人が青瓦台に還る」

青瓦台(チョンワデ)は、
ソウル特別市の北岳山の麓に所在する大統領官邸。

「『国と結婚して』独身を通す彼女は、
どうやら筋金入りの愛国者らしい

「幸か不幸か我が方には、
これだけ泣いてきた政治家はいない」

隣国のわが日本国にとっても、
「一生分の涙を流した大統領」は、
「幸」であるに違いないと、私は思う。

その朝日新聞『オピニオン』欄に、
前中国大使の丹羽宇一郎さん登場。
ご存知、伊藤忠商事㈱で社長、会長など歴任。
初の民間大使として中国に赴任。
残念ながら尖閣諸島問題がきっかけとなって、退任。

その離任を前に大使としての所感をしたためた。
「強調したのは5W1Hが大切だということです。
ビジネスも外交も同じ。
時期は適切か。やろうとしていることは正しいか。
その判断が重要なのです」

Who(誰が)
What(何を)
When(いつ)
Where(どこで)
Why(なぜ)
そしてHow(どのように)

「汚れ役」必定の中国大使を引き受けた理由。
「心を揺さぶられたからです」

「企業で仕事をしてきた私の考え方は、
国のため、社会のため、人々のために
働きなさいということです」

「自社の利益だけを追い求めることは、
長い目で見たら会社の発展に結び付きません」

ここで朝日新聞の坂尻信義記者が聞く。
「きれいごとすぎませんか?」

丹羽さん答えて曰く。
「私も若いころは自分の利益や実績。
そんなものです。
それが役員になれば会社のこと、
社長になれば政府の仕事など、
責任を負う範囲が広くなる」
丹羽さんはほんとうに正直に答える。
それがとてもいい。

ただしこの正直さが、
まことに残念ながら、
中国大使としては裏目に出た。

坂尻記者は、「取材を終えて」に書く。
「離任の朝、見送った大使公邸の中国人職員が
男泣きしたという話を大使館員から聞いた」

さて話はがらりと変わって、
日経MJ・金曜日の「マーケティングスキル」面。
「ヤオコー、PB作りに独自色」の記事。

ヤオコーのPB数は701品目。
これは2012年9月末時点。
半年前の3月末時点からは、
たったの7品目のプラス。

なぜか。

「ただ開発するのではなく、
消費者が求めているものを作る」から。

この記事のイントロダクションは、
平日の夜のヤオコー本社食堂から始まる。
約20名のパートタイマー(パートナーと呼ばれる)が集まって、
新製品となるプライベートブランド(PB)の試食会をする。
ヤオコーのバイヤーは、
「新しく提案するPBを毎月2回開く社内会議にかける」
そこで最終決定が下されるが、
その前に「パートナーの試食を通過する必要がある」
パートナーとはパートタイマーのこと。

「ほとんどの商品が試食会を重ねながら、
磨き上げられる仕組み」

その「試食会のハードルは高い」。
「1、2回で通過できる商品はほとんどない」

さらに「これまで販売にこぎつけられた商品は全体の6~7割」、
「最後まで通過できない商品が3~4割を占める」。

石塚孝則営業統括室長。
「仮に責任者がOKを出しても、
パートナーが却下すればお蔵入りになる」

それはヤオコーには、信念があるからだ。
「パートナーが地域のもっとも身近な消費者」。

スーパーマーケットの顧客は主婦。
そしてその主婦がパートタイマーとなって、
店で働き、商品開発にかかわる。

当然のことだが、
これ以上のPBの評者はいない。
その力を最大限に活用する。
それがヤオコーの強み。

従ってPB開発では、
第1にナショナルブランドよりも1割ほど高価な商品が出てくる。
これを「クォリティブランド」と呼ぶ。
メーカーは会社の使命にかけて商品をつくる。
それよりも1割も値段の高い商品は、
モニターの絶対的な支持がないとつくることはできない。

第2は、メニュー提案に活かせるPB。
「ライフスタイルブランド」と呼ぶ。
ヤオコーの「クッキングサポート」コーナーで、
積極的に提案できる商品とする。

第3は、中国などからの直接開発。
これはおそらく品質は上質で安価な領域を狙うもの。
「エコノミーブランド」と称する。

ローゼンワールドの3つの信条。
(シアーズ・ローバック中興の祖)
第1は、仕入価格を下げることにより、販売価格を下げること。
しかし品質は落としてはならない。
第2は販売経費を下げることにより、販売価格を下げること。
しかし品質は落としてはならない。
第3は一つ一つの品目に関する利益は少なくして、
しかも販売品目の増加により、総体の利益を増大させること。
しかし品質は落としてはならない。

ローゼンワールドは品質がいい加減になることを、
厳しくいさめるが、
私はさらに「品質は維持・向上させよ」とする。

ヤオコーのパートナー参加のPB開発は、
まさに「品質の維持・向上」を意図している。

しかもここでいう「品質」の概念のなかに、
ライフスタイルやメニュー提案が含まれる。

PBは粗利益が高い。
PBは集客力がある。

業界ではよく言われる。

しかし、私は問う。
「粗利益の高さ、低価格で集客力がある」ことを、
そのまま顧客に説明できるのか、と。

ヤオコーのPBは、それが可能だ。
顧客の仲間のパートタイマーが、
価値を認める商品だからだ。
そしてここには、まず、
丹羽宇一郎言うところの5W1HのWhoの条件がある。

〈結城義晴〉


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