結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2018年09月29日(土曜日)

糸井重里の「脅し=暴力」と1年前の「国難突破」

台風24号が来る前の秋の夜空。
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そして株式会社ほぼ日、
糸井重里代表取締役社長。
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運営するメディアは、
「ほぼ日刊イトイ新聞」。
その巻頭言が「今日のダーリン」。

――人になにかを
してもらいたいときには、
いくつかのやり方があります。
今日のダーリン。
⑴「お願いする」
というのは、まずひとつの方法です。

「ぱんを買ってきてください」

お願いというより、
⑵「命令のかたちをとる」
場合もあります。

「ぱん買ってこい」

相手との間に上下の関係がある場合に
かぎられますね。

⑶「相談を持ちかける」
というやり方もあります。
「50円あげるから、
ぱん買ってきてください」

50円なのか、10円なのか、
100円なのかは、その都度。

そして、⑷「脅かす」
というやり方があります。
「ぱんを買ってこないと、
大変なことが起こるよ」
「もう、ぱんが無くなってしまうぞ」
「ぱんを買わないで
不幸になった人を知ってるんだ」
「ぱんを買えという規則ができたんだ」
とかね――。

――脅かすというのはいけないと、
たぶん、これ読んでる人は
思っているでしょう。

だけど、よくよく考えると、
世の中脅かしだらけですよ。

脅かしが、いちばん
やりやすいんですよね。

いわば、暴力で
言うことをきかせるのと同じです。
そして、暴力のように、
すぐ効くんでしょうね――。

「脅かし=暴力」

――以上のことを知らないと、
あちこちの脅しをぜんぶ
引き受けるようなことになって、
あなたはただの「ぱしり」に
なってしまうでしょう
‥‥と書き添えたら、
これも脅しですよ(笑)――。

――いまいる場所が不安定な人には、
脅しはよく効きます。

病気の人だとか、
家にもめごとがある人、
受験生、新人、
行き詰まってる人、
失敗した人‥‥。

思えば、ちょっと弱ってる
ふつうの人はぜんぶです。

みんな、脅しに弱いんだと思うのです。
おそらく、ぼく自身も、
ほんとは弱いと思います――。

――そこからすり抜ける方法は、
ひとつあります。

「あ、これは脅しだ」
と気づくことです――。

いいなあ、糸井重里。

「脅し」から逃れるためには、
ちょっと弱っているふつうの人も、
「脅し」に弱いのだと知ること。

そして「脅し」に対して敏感であること。

小さな脅し、
中くらいの脅し。
大きな脅し。

生活上の脅し、
仕事上の脅し。

政治的な脅し、
経済的な脅し、
商業的な脅し。

様々な脅しが、
世の中にあふれている。

ジャーナリズムとは、
広辞苑では、
「新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどで
時事的な問題の
報道・解説・批評などを行う活動。
また、その事業・組織」

最近はメディアが多様化してきて、
Webによる報道・解説・批評が加わる。

日本大百科全書は、
「マス・メディアが
時事的な事実や問題に関する報道・論評を
伝達する活動の総称」

様々なメディアがある。
月刊「住職」と月刊「地主と家主」
面白い。
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しかし、全体を見渡して、
わかりやすく言えば、
世の中に発生する「脅し」の実態を、
明らかにするのが、
ジャーナリズムの役目の一つだ。

一昨日27日の毎日新聞夕刊。
特集ワイドは、
「衆院解散から1年」
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昨年の9月28日。
ちょうど1年前。

安倍晋三首相は、
「国難突破」を掲げて、
衆議院を解散した。
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この「国難突破」は、
国民への「脅し」ではなかったか。

今月の自民党総裁選の共同記者会見で、
安倍首相はアベノミクスの「成果」を強調。
「5年半前と比べて60兆円、
GDPが伸びています」

財政学者の井手英策慶応義塾大学教授。

「1人当たりのGDPをドル換算すると、
安倍政権になってから、
経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中で、
大きく順位を下げているのです」

内閣府の統計で確認。
「民主党政権時代の2012年、
1人当たりの名目GDPは4万8597ドル、
加盟35カ国(当時)のうち11位だったが、
安倍政権の16年は3万8968ドルで18位」

「ドル換算した名目GDPは、
12年が6.2兆ドル。
16年は4.9兆ドル」

アベノミクスの異次元金融緩和で、
円安が進行したからだ。

井手教授。
「米国経済が100カ月以上も景気拡大する
絶好の経済環境にありながら、
安倍政権下では、
物価変動の影響をのぞいた
実質GDP成長率の平均値は1.3%程度」

「1990年代のバブル崩壊後と
それほど変わっていない数字です。
つまり、アベノミクスを掲げても、
日本経済が成長できなくなっている」

井手教授。
「経済を成長させ、所得を増やし、
貯蓄で安心を買うという
成長重視のモデルはすでに限界なのです。
なのにアベノミクスは国民に
“成長する”という幻想を見せ続けている」

毎日新聞の特集はこの後、
アベノミクスの「人づくり革命」から、
外交政策まで論評する。

海野素央明治大学教授は、
安倍首相とトランプ大統領は、
その政治スタイルが一致するという。
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「強いリーダーであることを
国民に印象付けようとしている点は
一致しているかもしれません。
でも、今となっては、そのことで
着地点が見いだせなくなっています」

海野教授は続ける。
「”正直/うそ/真実”といったキーワードが
政治上重要になっている」

「国難突破」の昨年秋の時点に戻れば、
「森友・加計学園問題で追及されても、
北朝鮮のミサイル発射問題で
国民やメディアの関心を
外交・安全保障問題へと
振り向けることができた」

「その後、公文書の改ざんや隠蔽、
いいかげんなデータの提出などが
次々に明らかになった」

毎日新聞は安倍政権に、
真っ向から斬り込んでいる。
それを真のジャーナリズムと見るか否かは
読者の見識によるだろう。

「脅し」をかけておいて、
「幻想」を見せる。

トランプとキム・ジョンウンは、
「脅しと幻想」が先行する政治家だ。

しかし政治だけではない。
流通のコンサルタントなどでも、
「脅し⇒幻想」を商売に使う者が多い。

糸井さんが語るように、
弱っている人は脅しに弱いからだし、
脅しはよく効くからだ。

それを明らかにするのも、
ジャーナリズムの仕事だ。

その意味で糸井重里こそ、
頭のいい、良いジャーナリストだと思う。

「ぱんを買ってこないと、
大変なことが起こるよ」

「もう、ぱんが無くなってしまうぞ」

「ぱんを買わないで
不幸になった人を知ってるんだ」

「ぱんを買えという規則ができたんだ」

この糸井さんの使った「ぱん」を、
別の言葉に置き換えると、
「脅し」の実態が見えてくる。

〈結城義晴〉


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