結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年03月05日(木曜日)

セブン&アイの[米国コンビニ買収断念]を考察する

日経新聞電子版。
【イブニングスクープ】
だから日経のスクープではある。

「セブン&アイ、
米コンビニの2兆円買収を断念」

㈱セブン&アイ・ホールディングスが、
米国のコンビニ約4000店を買収する話。

断念した。

アメリカのコンビニはもう、
ほとんどがガソリンスタンド併設型だ。
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セブン‐イレブンをはじめ、
単独コンビニは駆逐されてしまった。

第1の理由は競合業態の24時間化だ。

ドラッグストアという都市部の天敵が、
どんどんコンビニ化していった。
もちろん24時間営業だ。

スーパーマーケットも、
24時間営業を徹底して、
米国コンビニの唯一の優位性を、
奪っていってしまった。

ウォルマート・スーパーセンターまで、
7000坪の店を24時間営業とした。
もちろんネイバーフッドマーケットも、
ほとんどが24時間営業だ。

24時間開いていることが、
何ら優位性にはならなくなった。

理由の第2が本質的なものだが、
ほとんどのコンビニチェーンが、
ジャンクフードの店へと衰退した。

ビールとコーラとタバコの店。
そんなイメージだ。

日本のコンビニとは大きく違う。

それでもテキサスのクイックトリップ。  IMG_18169-448x336

東海岸のワワ。
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ローカルチェーンは、
ファストフードを充実・強化して、
つまり日本化して、
人気だ。
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社会にとって必要な店でなければ、
存続していくことはできない。

ただし、
ガソリンのショートタイムでの提供は、
便利な機能として、
コンビニ業態の武器となった。

セブン&アイが交渉していたのが、
石油精製会社マラソン・ペトロリアム。
そのマラソンが保有するのが、
「スピードウェイ」というコンビニ事業。
もちろんガソリンスタンド併設型。
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アメリカのコンビニランキング。
第1位がセブン-イレブン・インク。
セブン&アイ傘下の約9000店。

第2位がアリメンテーション・カウチタード。
カナダ資本で約8000店。

そして第3位がスピードウェイで約4000店。

このトップ3の構図は米国小売業では、
よくあるパターンだ。

バラエティストアは、
1位ダラーゼネラル、
2位ファミリーダラー、
3位ダラーツリーだった。

これを私は最近、「鼎占」と名づけた。

この鼎占の中で、
ダラーゼネラルがファミリーダラーを、
買収する案件があった。
しかしそれがならず、
結局、3位のダラーツリーが傘下に収めた。

そして今、「複占」状態だ。

オフィスサプライチェーン業界も、
1位ステープルズ、
2位オフィスデポ、
3位オフィスマックスの、
鼎占だった。

こちらはオフィスデポが、
オフィスマックスを買収して、
やはり「複占」となった。

最強業態のディスカウントストア産業は、
1位ウォルマート、
2位ターゲット、
3位Kマートだったが、
シアーズホールディングスが倒産して、
その傘下にあるKマートは、
どんどん店舗閉鎖している。
こちらも鼎占から複占へ。

しかし、米国コンビニ産業は、
ちょっと違う。

トップ3は明確なものの、
約6割がローカルチェーンや個人経営だ。
寡占化は進んでいない。

人口も増えているので、
コンビニ市場は成長を続けている。

M&Aも加速している。

米国セブン-イレブンも、
2018年1月に、スノコLPから、
約3500億円で1030店を買収した。

今回の1位による3位の買収で、
約1万3000店になるところだった。

もったいない。

理由は買収額の高さ。
約220億ドル。
100円換算ならば2兆2000億円。
現在のレートの1ドル106円ならば、
2兆3320億円。

日経電子版の記事。
「複数の交渉関係者によると、
セブン&アイは同日取締役会を開き、
交渉の打ち切りを決めた。
最大のハードルとなったのが買収額だ」

そのリーク相手の言い分。
「インターネット消費が拡大する中、
実店舗の将来的な価値が減じる可能性もあり
想定通りに収益が上がらなければ、
巨額の損失を計上するリスクがあった。
新型コロナウイルスの感染拡大による
世界経済の減速懸念も影響した」

本音のところだろう。

しかし、この見解は、
産業の盛衰の観察が足りない。

「インターネット消費が拡大」
これは正しい。

「実店舗の将来的な価値が減じる可能性」
これは表層的な見方だ。

リアル店舗の価値は減らない。
良い店ならば大いに発展する。

商人舎流通スーパーニュース。
アマゾンnews|
初のキャッシャーレス食品スーパー(216坪)をシアトルに開設
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eコマースの圧倒的王者アマゾン。
「Amazon Effect」とまで言われる。

そのアマゾンがホールフーズを買収し、
いま、自らグロサリーストアを開発する。

リアル店舗の価値を、
CEOジェフ・ベゾス自身が認識している。
もちろんベゾスも、
リアルとネットのコラボを前提としている。

そして米国セブン-イレブン自身、
「エボリューションストア」
拡大展開する。

これも商人舎流通スーパーニュース。
米国セブン-イレブンnews|
「エボリューション・ストア」を拡大展開
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私は昨年、この店を訪れた。
そして可能性を見取った。
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順次、このフォーマットに変えていけば、
成長は見込める。

もちろんまだまだ試行錯誤もある。
紆余曲折もある。

やがて現在の米国セブン-イレブンも、
1万数千店のレジレス店舗に変わるだろう。
インターネットの拠点にもなるだろう。

展望はある。

日本国内のそごう・西武や、
現時点のイトーヨーカ堂よりも。

さらに米国コンビニ業界は、
これから寡占化に向かう。

もったいない買収案件だった。

もしかしたら、
アリメンテーション・カウチタードが、
スピードウェイを買うかもしれない。

経営陣の勇気が問われたが、
残念ながらそれが欠けていた。

ああ、もったいない。

〈結城義晴〉


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