結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年03月21日(日曜日)

コロナ禍の「習慣」とトマス・アクィナスの「節制の喜び」

昨日の3月20日、地震があった。
夕方の6時09分。
発震源は宮城県沖。

地震の規模はマグニチュード6.9。
震源の深さは59km。

まだ1週間程度は、
最大震度5強程度の地震の恐れがある。

今日も福島県沖を震源とする地震があった。

これも東日本大震災の余震である。

地震のメカニズムは、
西北西から東南東方向に圧力軸を持つ、
逆断層型だったとみられる。

太平洋プレートが、
北米プレートに沈み込む境界付近で発生した。

東日本大震災の余震。
10年も続いているし、
まだまだ終わらない。

COVID-19の感染リスクも、
人類との「動的均衡」による共生状態となっても、
10年、15年と終わらないのだろう。

最悪を覚悟して、
最善を尽くす。

PRESIDENT Onlineで、
哲学者の山本芳久さんが、
インタビューに答えている。
東京大学大学院総合文化研究科教授。
トマス・アクィナスの研究者。
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タイトルは一般受けを狙うが、
内容は持論を展開していて、面白い。

「夜中に甘いものが食べたい」
三流は食べ、二流は我慢する、
では一流は?

山本さんが研究するトマス・アクィナスは、
ヨーロッパ中世の哲学者だ。
1225年頃~1274年。
主著『神学大全』。
日本語訳で全45巻の膨大な著作。

その日本語訳の第10巻は、
人間の感情の動きをテーマとしていて、
欲望に対してどう向き合うかが検討される。

トマスは、
古代ギリシアの哲学者を参考に考察する。
アリストテレスだ。

プラトンの弟子。
そのプラトンはソクラテスの弟子。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』。
4つの「枢要徳」(すうようとく)が整理される。
⑴賢慮
⑵正義
⑶勇気
⑷節制

テーマの「夜中に甘いものが食べたい」は、
第4の節制にかかわる問題。

ここでまた、
アリストテレスの4つの分類が出てくる。
⑴節制ある人
⑵抑制ある人
⑶抑制のない人
⑷放埒な人

この図表2は、
岩田靖夫著『アリストテレスの倫理思想』から、
山本さんがアレンジしてつくったものだ。
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⑵の抑制ある人は、
欲望を我慢して押さえつける。
⑴の節制ある人は、
節制のある生き方をしていることに、
喜びを感じている。

「節制」をはじめとして、
「徳」を身につけるのは、
「技術」を身につけることと似ている。
トマス・アクィナスはそう考えた。

山本さんの説明。
「たとえば子どもがピアノを習うとき、
最初はうまく弾けないから
イヤイヤ練習するけれど、
ある程度弾けるようになると、
だんだん楽しくなってくる。
技術を身につけると、
簡単に素早くできるようになるし、
それをやることに喜びが生まれてくる」

「節制」を身につけると、
欲望をコントロールすることが容易になり、
また素早くできるようになる。

夜中に甘いものを食べることに対して、
「節制を身につけた人は、
それを食べるのは自分の健康にとって
よくないことだと判断したら、
自ら進んで食べないという選択をする」

すると「今日も健康な食生活を送ることができた」
という喜びを感じることができる。

「節制」の徳を身につけることは、
何かをイヤイヤ我慢することではなくて、
むしろ自分が本当に望んでいるものを見つけ、
本当に満足するあり方へと
自分を導いていくことなのです」

「節制」の徳は、
「習慣」の積み重ねによって形成される。
トマスやアリストテレスはそう考えた。

人間が分かれ道に直面して、
どちらかの選択肢を選ぶとする。

しかしそれは、
そのときにたまたまどちらかを選んだ、
ということで終わらない。

選んだ方の選択肢を選びやすくなるような、
「習慣」が形成されてくる。

そうすると、
次に似たような状況に直面したさいにも、
そちらの選択肢を選びやすくなってくる。

これによって、
どんどんある選択肢を選びやすくなるような
性格や人柄が形成されてくる。

「習慣に気をつけなさい、
それはいつか性格になるから」
マザー・テレサだ。
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山本さん。
「私たちが毎日行っている一見些細な選択が、
実は人生全体の在り方へと
直結しているのです」

「 性格に気をつけなさい、
それはいつか運命になるから」

「習慣」は、単なる惰性ではなく、
もっと積極的な意味を持っている。

山本さん。
「人間とは”習慣のかたまり”であって、
その人が積み重ねてきた習慣が
その人らしさを形成している」

「ですから善い習慣を身につけることは、
善く生きるうえで決定的に重要なのです」

⑶の「抑制のない人」は、
「理性」が「欲望」に負けてしまう。

抑制のある人とない人には共通点がある。
どちらも「理性」と「欲望」との葛藤がある。

理性が欲望に勝つ人が、
抑制のある人。

最後に⑷の「放埒な人」。
喜ぶべきではないものに喜びを感じたり、
度を越して快楽を追求したりすることが、
生きていくうえでの基本原理になっている。

「理性」と「欲望」の葛藤もない。
「理性」が「欲望」の奴隷になり、
欲望を満たすための道具なってしまっている。

⑴の「節制ある人」は、
「理性」が健全な在り方をしているだけでなく、
「欲望」もまた徳によって整えられている。
だから葛藤がない。

しかも、この徳を身につけることによって、
「喜び」が感じられるようになる。

「節制」は「喜び」を抱いて、
真に幸福な人生を
安定的・持続的に送っていくために
不可欠な要素だということになる。

スコラ哲学の真髄だ。

マザー・テレサの考え方は、
トマス・アクィナスそのものである。

コロナ禍の「マスク」「手洗い」「三密回避」。
これらも習慣にしながら、
「節制」の「徳」のレベルにしたいものだ。
つまり「喜び」の習慣にしたいものだ。

〈結城義晴〉


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