結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年02月03日(土曜日)

チェーホフの「森が減り、河は涸れ」と「無人コンビニ」の未来

節分。

今年の恵方巻は、
東北東を向いて食べる。

この年になると、
無病でも息災でもないけれど。
それでも家族や会社のみんなの無事を祈り、
皆さんの仕事が充実するよう、
日本や世界が平和であるよう、
一瞬のうちに祈念する。

すべての人が本当に、
よい明日が迎えられますように。

季節を分けて、
節分の次は春が立つ。

ウクライナは泥沼となっている。
パレスチナの休戦はいつになるのだろうか。

ロシアの作家、
アントン・チェーホフ。

「人間は物を考える理性と、
物を創り出す力とを、
天から授かっています」

「それでもって、
自分に与えられているものを、
ますます殖(ふ)やして行けという
精神の思し召しなんです」

「ところが、今日まで人間は、
創り出すどころか、
ぶち毀(こわ)してばかりいました」

「森はだんだん少なくなる、
河は涸(か)れてゆく、
鳥はいなくなる、
気候はだんだん荒くなる、
そして土地は日ましに、
愈々(ますます)痩せて醜くなってゆく」
『ワーニャ伯父さん』(神西清訳)より。
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この戯曲は1899年から1900年に書かれた。
まさに19世紀最後の作品だ。

そのときに、ロシアで、
森が減っていき、河は涸れていき、
鳥はいなくなり、気候は荒くなっていた。
土地は日ましに痩せて醜くなっていった。

人間は創り出すどころか、
ぶち毀してばかりいた。

今、それはもっと酷い。

19世紀のロシア文学。
アレクサンドル・プーシキン、
フョードル・ドストエフスキー、
ニコライ・ゴーゴリ、
レフ・トルストイ、
イワン・ツルゲーネフ。

そして世紀末にチェーホフが登場した。
いい時代だった。

あの文豪たちのことを思えば、
ロシアのウクライナ侵攻は、
「なんてひどいことなんだ」とわかる。

文学的であることは、
そして哲学的であることは、
人間社会の平和につながっている。

ロシアはそれを思い出さねばならない。

日経新聞一面に、
「セブンが無人コンビニ」

昨日のイオンに次いで、
セブン-イレブンが一面に出た。

今年の春から「無人コンビニ」を展開する。
店頭に人を置かない小型コンビニエンスストア。

決済は原則的に、
スマートフォン上で完結する。
利用者は専用アプリに登録しておいて、
QRコードを読み取って入店する。
購入する商品のバーコードを、
スマホで読み取って決済。
レジはない。

アマゾン・ゴーと同じではない。
手に取って持ってくるだけ、
というシステムではない。

顧客が自分でバーコードをスキャンする。

その意味では現実的なシステムだ。

まず東京都内や大阪府の数カ所で実験開始。
セブンの常とう手段だが、
関心を持つ企業約20社と交渉を始めた。

当面、国内数十店体制を目指す。
出店立地はまずタワーマンション、
それから工場や研究所の食堂スペースなど。

店舗面積は約50㎡。
通常店は約200㎡だから、
4分の1ほどだ。

おにぎりやパン、
チルド弁当や日用品など、
アイテム数は最大1200。

レギュラー店の半分弱。

入れたてコーヒーは販売する。
これは間違いなく売れる。

通常店舗の平均日販は約70万円。
この無人店舗は10万円以上が目安。

ロケーションは限定されるが、
多分、出店の可能性は高い。

ただし10万円の日販、
1年で3650万円。

10店で3億6500万円。
100店で36億5000万円。
1000店で365億円。
1万店で3650億円。

10万店で3兆6500億円。

このくらいにならねば、
セブン&アイの事業として、
合格点はもらえない。

一大産業としての構想は広がるけれど、
その店舗開発部隊はどう動くのか。
商品補充部隊はどう運営されるのか。

まずはタグボートを成功させよ。
最初の実験をうまく運べ。

日本の自販機普及台数は、
西暦2000年に560万台を突破して、
ピークを迎えた。

その10年後の2010年には、
40万台減って520万台になった。

さらに10年後の2020年には、
404万5800台。

今、400万台くらいか。

セブン-イレブンも、
細々と自販機事業を展開している。
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これはセブンのオーナーが商品補充する。

さて無人コンビニはどうなるか。

これが普及すれば、
レギュラータイプのコンビニは減るのか、
はたまた大型店へ移行するのか。

19世紀末にチェーホフが、
森が減り、河は涸れ、
鳥は去り、気候は荒れると書いた。
土地は痩せて醜くなるとも。

それが今、ますますひどくなっていく。

無人コンビニはどうなるのだろう。

〈結城義晴〉


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