小川糸の「反対側にブランコを振り切る」と甘粕章の「両極の魅力」

今月号は大変だ。
いつものことだが、
とくに大変。
月刊商人舎6月号の入稿。
大量の決算資料と補足資料を、
丹念に読み込まねばならない。
そして簡潔にまとめる。
とても勉強になるけれど。
実に面白いものになります。
編集部の総力を傾けて、
全部、内製化された原稿で、
模倣困難な内容に仕上げます。
編集部にもっとパワーが加われば、
その模倣困難性はさらに高まります。
夜食を食べて、
山本恭広編集長と写真。
撮影は亀谷しづえGM。
疲れた表情は見えない。
今日も執筆と入稿。
ランチは満興楼。
食事のあとは、
血糖値をチェックしながら、
遊歩道を散策。
体調もいいし、
仕事も充実。
私もいつまでも、
これを続けることはできない。
故倉本長治主幹は82歳まで現役を続け、
正月明けに亡くなった。
私は少なくとも85歳までは、
現役で頑張る。
そう自分に言い聞かせている。
岡田卓也さんのように、
伊藤雅俊さんのように、
力強く生き続けたい。
今月ももう一息、頑張ります。
朝日新聞一面「折々のことば」
第3415回。
編著者は鷲田清一さん。
毎日毎日、ことばを選ぶ。
それが毎日、胸に響く。
「大きな、
力強い物語が
書きたかったら、
それと同じ熱量で、
反対側にブランコを
振り切る」
〈小川糸『いとしきもの』から〉
「ずーっと頑張っていると、
いざという時に力が入りませんよという、
以前取材した助産師さんの言葉が忘れられない」
小川糸は山形出身の小説家、作詞家。
「『いきむ』と『ゆるむ』。
凝集と放散」
「一方の極から反対の極への振れというか、
揺れ幅の大きな往還が、
仕事や人生の熱源になる」
編集者として駆け出しのころ、
甘粕章(あまかすあきら)さんにインタビューした。
いや、インタビューの助手をした。
1929年5月30日生まれ、
2013年11月19日没。
日本の雑誌編集者。
元マガジンハウス副社長。
学習研究社を経て、平凡出版へ入社。
『平凡パンチ』『週刊平凡』『an・an』の編集長。
『クロワッサン』『ダカーポ』などを創刊。
1984年にマガジンハウス副社長に就任。
当時、編集者としてのスターだった。
その甘粕さんが言った。
雑誌は、
「両極をもっていなければ魅力がない」
つまり右の極と左の極が、
詰まっているようなものが面白い。
その後、私の三番目の上司、
今西武編集長。
食品商業創刊者。
関西弁で言った。
「雑誌は五目飯(ごもくめし)や」
小川糸は、
山小屋というもう一つの拠点での暮らしを綴った。
都会の暮らしと山小屋の暮らし。
大きな物語を書く。
それには同じ熱量で、
反対側にブランコを振り切る。
反対側にブランコを振ると、
両極をの空間を体験することになる。
私はすぐに仕事のことを思う。
コモディティとノンコモディティ。
禁欲円と享楽円。
両極をもつ店ほど、
魅力的だ。
その振れが大きいほど、
魅惑的になる。
だからトレードオフではなく、
トレードオン。
今、編んでいるこの雑誌は、
どうだろう。
甘粕さんや今西さんに、
誇れるものになっているだろうか。
〈結城義晴〉