結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年11月08日(火曜日)

ららぽーと堺の[ロピア]とビバモール美原南の[万代]

目覚めると眼下に堺港。IMG_67682

昨夜10時過ぎにホテルに到着。
アゴーラリージェンシー堺は、
準定宿。

6時半にタクシーを呼んでもらって、
ららぽーと堺へ。IMG_68602
11月4日金曜日にプレオープンしていて、
今日はグランドオープン。

7時には到着して、
ロピアの中島英則さんに迎えていただいた。
中島さんはいま、
㈱ロピア取締役関西営業本部長。
関西のすべてを仕切っている。IMG_67322
中島さん自身の商売の考え方や、
関西営業本部の方針、
この店のコンセプトなど、
丁寧に説明してもらった。

準備が着々と進む。
ロピアの社員たちはこの売場づくりを、
楽しそうにやる。

それがいい。

8時から全体朝礼。
朝礼のやり方もちょっと変わった。
IMG_6705

そして9時半に開店。

顧客は行列をつくって待っていた。IMG_6736

オープンと同時にどっと店内に押し寄せる。
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すぐに入場制限。
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店は青果部門が大きく変わった。
中島さんは「長続きする売り方」といったが、
オーソドックスな売場づくりだ。IMG_69012
それから戦略の転換も図った。
私は大きな決断だと思うが、
これもいい結果を招くだろう。

そのあたり、月刊商人舎に書く。

精肉部門は「肉のロピア」と名づけられるが、
すぐに込み始める。IMG_68572

コロナも少しずつ収まり始めたので、
各所で試食販売を展開する。
それがロピアの商品を、
よりよく顧客に知らせることになる。

最後に内田貴之さんとゆっくり話した。
㈱ロピア・ホールディングス取締役経営管理本部長。
ロピアの要となる人だ。IMG_68892

その後、ららぽーとの3フロアを、
駆け足で巡った。

三井不動産news|
屋内型スタジアムコート併設の「ららぽーと堺」11/8開業

屋内型スタジアムコートが、
「Fansta X Stadium」。IMG_6890-12

テナント店舗数は全212店。
堺市初出店は97店で、
関西初出店も33店。

1階の核店がロピアで、
その反対にはTSUTAYAがある。IMG_69052
1階にはスタジアムコートを囲むように、
フードスタジアムがある。

2階はファッションを中心にしたフロア。
このフロアにも「Sakai Food Street」を設けた。

ファーストリテイリングはユニクロ。IMG_69242

そしてGUも出店。
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反対側にはH&Mとスーパースポーツゼビオ。IMG_69062
コーチやポロラルフローレンなど、
ブランドショップも並ぶ。

3階の核店はヤマダデンキ。
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反対側にフードキッチン。
これはエリア最大級の1400席を有し、
20店舗のフードサービスが集結する。IMG_69222

アパレルのcocaは実に面白い。
通販中心だがリアル店舗をここに出した。IMG_69112

平和堂はCoCoRo Plusを出店。
もう29店舗になった。IMG_69132

コスメティックのセレクトショップ。IMG_69142

この店でも幹部のみなさんが迎えてくれた。
私の隣から店長の中川智子さん、
ショップ事業部部長の藤田幸之助さん、
ブランドマネージャー統括の村下朗夫さん。IMG_69162
頑張ってほしいものだ。
専門店はとくに、
利益にストイックであってほしい。

ロピアのもどると、
レジには長い行列ができていた。
それでもロピアは入場制限がうまい。
それに慣れていて経験法則ができているからだ。

ららぽーと堺と国道309号を挟んで、
ビバモール美原南がある。IMG_68862

核店舗はスーパービバホーム美原南店。
そして万代ビバモール美原南店。
通路側からインストアベーカリーの作業場が見える。IMG_68852

この店は昨2021年9月のオープン。
入口付近はダブルコンコース仕様だ。
青果部門とベーカリー・惣菜が並ぶ。IMG_67732
さらに「美原南の陣」と銘打って、
ロピアとの対決姿勢を見せる。

このエリアのスーパーバイザー宇都宮大希さんも、
今日は休暇の日なのに、
自主的に視察見学にやってきた。IMG_67752

そして新川幸司店長(中)と小倉貴行エリアマネジャー。IMG_67972
二人とも万代知識商人大学修了生。

2017年秋の商人舎ミドルマネジメント研修会で、
小倉さんはSを獲得した。

お二人からロピア対策を聞いたが、
万代らしさを貫いてブレがない。

ロピアの新しい政策に対しても、
万代の考え方を徹底する。

この店はネットスーパーも展開していて、
そのピックアップ作業の模様も見せてもらった。

やることを決めたらやり抜く。
それが万代の特長だ。

万代はこのエリアに、
4店舗を集中出店していて、
ロピアを囲むような態勢だ。

一方のロピアは、
この店を旗艦店に位置づける。

充実した競争が展開される。
それはまさにポジショニング競争である。

決して同質化の泥沼競合ではない。

それがこれからのコンペティションである。

夕方、このエリアを辞して、
新金岡へ。

イオンのそよら新金岡と、
フレスポしんかねへ。

こちらはイオンスタイルと関西スーパーの、
隣接競争。

その模様は明日のブログへ。

帰りの新大阪の新幹線ホームからは、
皆既月食が見えた。
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月が徐々に地球の影に隠れていった。

今宵はこの皆既月食の最中に、
月の後ろに天王星が入った。
「天王星食」という。

これは442年ぶりのことだ。

ロピアと万代。
両者ともに自分らしさを出していて、
私は満足した。

〈結城義晴〉

2022年11月07日(月曜日)

清水信次さんの「訃報」とジャパン・インフォレックスの講演

Everybody! Good Monday!
[2022vol㊺]

2022年第45週。
11月第2週。

今日は立冬。
冬が立つ日。

その立冬の訃報。

清水信次さん。

とうとうそのときが来た。
私はそう思った。

㈱ライフコーポレーション名誉会長。

商人舎流通スーパーニュースに、
略歴が紹介されている。
訃報|
ライフ創業者の清水信次名誉会長逝去、96歳

清水さんは1926年4月18日、
三重県津市生まれ。

大正15年。

故渥美俊一先生と同年で同郷。

このブログに何度も書いたが、
私は大正15年生まれの人たちに、
世話になり続けた。

私の両親はともに大正15年生まれ。
そして清水さんと渥美先生。

早稲田大学商学部のゼミの教授も、
大正15年生まれの壽里茂先生だった。

清水さんが一番、長生きだった。

初めてお会いしたのは1977年。
東京駅近くの清水さんのオフィスに、
インタビューに出かけた。

おどろおどろしい事務所で、
たくさんの額や掛け軸がかかっていた。
その中に孫文の書もあった。

戦前戦後の歴史をとうとうと語り、
最後に流通産業の大義を話してくれた。

その後もずっと、
世話になりっ放しだった。

販売革新で鮮魚のカッティング技術を、
1年間かけて連載した。

そのときには清水さんの一声で、
ライフ川口領家店のバックヤードを、
毎月1回、夜間に提供していただいた。
商品も供給していただいた。

講師と技術者は、
ダイエー出身の西村弘さんだった。

「最新鮮魚マーチャンダイジング」として、
別冊号で発刊した。
売れに売れた。

これがスーパーマーケットのための、
はじめてのカッティングテクノロジーだった。

ライフは1982年、
実弟の清水三夫さんが社長となった。
信次さんは会長になった。

私は大阪に三夫さんのインタビューにも訪れた。
コンピュータなど新しいことに関心があって、
ちょっとユニークな経営者だった。

しかし、三夫さんは1988年に社長を降りて、
信次さんが会長兼社長となった。

それからは1990年代の、
怒涛の進撃。

ライフはこの進撃で、
日本のスーパーマーケット第一位となった。

2006年3月には39歳の岩崎高治さんに、
代表取締役社長兼COOを任せて、
ご自分は会長兼CEOに就任。

この眼力こそ、
清水さんの真骨頂だった。

1999年、日本スーパーマーケット協会創設。
創設のときには記念講演を仰せつかった。

タイトルは、
「スーパーマーケットよ 永遠なれ」

その後、清水さんが会長の10年間ずっと、
総会後のパネルディスカッションを、
コーディネーターとして仕切らせてもらった。

2007年8月31日に、
㈱商業界の代表取締役社長を辞すると、
日本橋の清水さんのオフィスを、
「自由に使ってくれ」と言って、
励ましてくれた。

2011年、東日本大震災のあと、
二度目の日本チェーンストア協会会長にご就任。
またパネルのコーディネーターに招かれた。

月刊商人舎創刊の準備号では、
巻頭に登場していただいた。
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いつもいつもお世話になりっ放し。
お返しはできたのだろうか。

私は清水さんを、
「ポリティカル・マーチャント」と呼んだ。
そしてこれからの商人は、
ポリティカルであるべきだと訴えた。

つまり清水信次を見倣え、と。

最後に直接お会いしたのは、
2020年4月26日、
ライフコモレ四谷店オープンのとき。
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ご家族が揃って、うれしそうだった。

最後のツーショット写真はこれ。
2019年11月6日。
日本スーパーマーケット協会20周年のとき。
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心から、心から、
ご冥福を祈りたい。

今日は午後から東京・新橋。

第一ホテルのロビーには、
大きなクリスマスツリー。
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㈱ジャパン・インフォレックスユーザー会。 IMG_66502

挨拶と事業概要の説明は、
同社の西田邦生社長。
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西田さん、かっこいい。IMG_66472

来賓挨拶は㈱ファイネットの久我章良さん。
代表取締役専務。
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さらに流通システム開発センターの森修子理事。
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その後、特別講演は結城義晴。IMG_66682

タイトルは、
「コロナはRetail DXを早めた。」

冒頭で清水信次さんのご逝去の報告をして、
この講演を清水さんに捧げる、と宣言した。
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講演の途中、脱線して、
「商品情報プラットフォーム」の話題になり、
2000年のWWREとGHX、
2005年のGS1と1WSを語った。

WWREはWorld Wide Retail Exchange、
GNXはGlobal Network Exchange。
GS1はGlobal Standard One、
1WSはOne World Sync。

いずれも世界の共同機関。
巨大チェーンによる共同商品調達機関は、
囲い込みによる閉鎖的なネットワークだった。
それがデータ中心の時代に変わると、
閉鎖性の壁がなくなる。

そこでOneになる。

これがプラットフォームの効用である。
その効用を活用しない手はない。

それでも1時間きっかり、
一気呵成に語りきった。
清水さんが導いてくれた。IMG_66772

懇親会では時岡肯平さん。
日本加工食品卸協会専務理事で、
コーネル大学・ジャパン「伝説の1期生」。
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最後に西田さんとツーショット。IMG_66892

清水信次さんは、
私にとって父のような存在だった。

ありがとうございました。

みなさんも、
ともに合掌してください。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年11月06日(日曜日)

中部銀次郎の「神髄」とフランシス・ベーコンの「帰納法」

紅葉の中のゴルフ。IMG_66372
いい日だった。

ラウンドするときには、
中部銀次郎を思う。
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「起こったことに
鋭敏に反応してはいけない」

名言だと思う。

「ミスよりもっと恐ろしいのは、
ミスしたあとの精神状態が、
劣悪になることです」

ゴルフではミスがミスを呼ぶ。
それで大たたきする。

「精神が異常になるから
“心の復元力”がなくなる」

中部銀次郎さんは、
1942年生まれ、2001年没。

中部利三郎氏の三男として生まれる。
父は大洋漁業(現マルハニチロ)副社長で、
その祖業の林兼産業社長だった。

祖父はその大洋漁業創業者の中部幾次郎氏。

銀次郎は身体が弱かった。
そこで父利三郎氏にゴルフを薦められて、
小学生のころからプレーし始めた。

甲南大学2年生の1962年、
20歳5カ月の当時史上最年少記録で、
日本アマチュアゴルフ選手権に初優勝。

その後も、1964年、1966年、1967年と三連覇、
さらに1974年、1978年にも優勝して、
史上最多の6勝を挙げた。

今ならばすぐにプロ入りしただろうけれど、
生涯アマチュアを貫いて、
「孤高のゴルファー」となった。

ゴルフに関する本を多数書いていて、
それらは「人生訓」ともなっている。
私はほとんどを読んでいる。

59歳で亡くなったが、
その短い人生に凝縮された精神は、
いつ読んでも胸を打つ。

「自分の実力を過大評価するより、
過小評価しておいたほうが、
波の少ないゴルフができる」

これは経営や仕事にも通ずる。

「”過大”には
思い上がりがあるけれど、

“過小”には謙虚さがある」
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小売業の経営者で言えば、
ダイエーの創業者中内功さんは、
“過大”をバネにして大を為したが、
イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは、
“過小”を貫いて現在のトップ企業をつくった。

ゴルフには伊藤さんのほうが向いている。

私はときどき、中部銀次郎を忘れる。
そして悲惨な結果を招く。

なぜだろう。

いつもそれを思い知らされる。

朝日新聞「折々のことば」
第2547回。
「正気を失わずに、
ただ信仰に属するところのもののみを
信仰にゆだねるなら、
それはたいへん健全である」
(フランシス・ベーコン『ノヴム・オルガヌム』から)
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表題の言葉よりも、
追加されたこちらがいい。
「経験より先に概念に合わせること、
少数の例から推し量ること、
密(ひそ)かに虚妄を忍び込ませること。
この三つが人の思考を歪(ゆが)める」

編著者の鷲田清一さん。
「とくに第三の点は、
社会生活についてもいえよう」

思考を歪めるものが三つある。

第1に経験より先に概念を合わせる。
これはピーター・ドラッカーも指摘することだ。
「実践に先行する理論はない」

第2は少数の例から推し量ること。
ベーコンはアリストテレスを批判した。
ギリシャの哲人の著作『オルガノン』に対して、
『ノベル・オルガヌム』をラテン語で書いた。

少ない例から考察して、
演繹法で原理を導き出すことは、
間違いだという指摘である。

ベーコンは帰納法を薦めた。

第3は密(ひそ)かに虚妄を忍び込ませること。
「虚妄」は真実ではないこと、嘘や偽り。

それを密かに忍び込ませる。

これによって議論を捻じ曲げたりする。
「嘘も方便」と言ったりする。

それが正しい思考法を歪める。

素朴な実感やわずかな経験をもとに、
そこから一般原理らしきものを設けて、
さらに論理的な演繹法によって、
考えを進める。

それは人間の実際の生活や仕事に、
役立つものにはならない。

ドラッカーもヘンリー・ミンツバーグも、
アンリ・ファヨールを否定した。

それはフランシス・ベーコンの考えと同じだ。
いやベーコンを知っていたから、
ファヨールを否定できたのだ。

鷲田さん。
「”カエサルの物はカエサルに、
神の物は神に”と、
マタイの福音書も記す」

中部銀次郎も、
数多の経験から得たものを、
帰納法によって記した。

「ゴルフの神髄」として、
「ゴルフの要諦」として、
「中部銀次郎のゴルフ」として。

それらを忘れてはいけない。

〈結城義晴〉

2022年11月05日(土曜日)

55歳・三浦知良の「ゴールに惑わされるな」

いつのまにか、
桜の葉が茶色くなっている。
雲はあるけれど、
さわやかな11月初旬の土曜日。IMG_67242
月刊商人舎11月号を責了して、
今日は心身ともにゆっくりと静養。

夕方、自由が丘に出かけた。IMG_67252

いつもの花屋。
モンソーフルールの付近は、
パリの街角のようだ。IMG_67262

いつもながら、
カラフルなプレゼンテーション。 IMG_67292

花屋の隣はアパレルショップ。
RAWLIFE(ロウライフ)は、
大人の男のためのセレクトショップ。
2階は美容室。IMG_67302

その隣はS357PLUS。
こちらは小さいサイズ専門のセレクトショップ。
身長150cm前後の小柄な女性向け。
ここも2階は美容室。
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無印良品は2棟に分かれている。
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ギャップは円形の店構え。IMG_67332

見上げると、月に叢雲。
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今日の土曜日は、
スポーツ日和。

私は体を休ませながら、
テレビ観戦日和。

居間のソファに寝転んで、
なかばうたた寝しながら、
あちこちとチャンネルを変えて、
スポーツ番組を観る。

東京六大学野球の早慶戦では、
わが早稲田が劇的なサヨナラ勝ち。

監督は小宮山悟。
早稲田のエースピッチャーから、
プロ野球のロッテに入団して活躍し、
大リーグにも行った。
もう57歳になった。

試合は3対4と逆転されて迎えた9回裏。
2死満塁の場面。

松木大芽外野手は、
2ストライクと追い込まれた。

そこからライト前へ、
ポトリと落ちる適時打。
いわゆるポテンヒット。
2点が入ってサヨナラ勝ち。

この最終節で勝ち点を取れば、
慶応の優勝を阻むことができる。

一方、
サッカーJ1リーグは最終節。
全9ゲームが行われて最後の最後に、
横浜F・マリノスの優勝が決まった。

2年連続優勝の川崎フロンターレと、
デッドヒートを演じて、
3年ぶり5度目の優勝。

このところ神奈川のチームは強い。
川崎と横浜が覇権を制し続けている。

それに代わってサッカー王国静岡からは、
とうとうJ1チームが消えた。

そのJ2に落ちる清水エスパルスから、
日本代表にが選ばれていて、
今月下旬にワールドカップが開催される。
ゴールキーパーの権田修一選手だ。

日経新聞のスポーツ欄。
意外かもしれないが、
いい記事が多い。

連載「サッカー人として」は、
カズこと三浦知良が書いている。

11月4日のタイトルは、
「ゴールに惑わされずに」
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元日本代表のフォワード。
今、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに所属。

JFLは日本フットボールリーグの略で、
このリーグはJリーグの、
いわば4番目のクラスだ。

カズは今、55歳の現役選手だが、
10月30日にティアモ枚方との一戦で、
ゴールを挙げた。

カズは述懐する。
「サッカーにおいて、ゴールは
良くも悪くもすごいエネルギーを持っている」

「チームがどんなに悪くても、
ゴール一つでびっくりするくらい生き返る」

商売では「売上げはすべてを癒す」。
中内功さんの言葉だ。

「残り1分でゴールが入って1-0なら、
それまでの89分間も帳消し、
みんな幸せになってしまう。
それほどの劇薬」

野球にはホームランがある。
しかし野球はポテンヒットでも、
点が入る。

「サッカーって、
数字に出にくいよなと常々思う」

「野球ならヒットを打てばヒット1本。
ではサッカーで
“ヒット”にあたるものは何かとなると、
答えが出ない」

「ゴールに入らないと形に残らないとなり、
数字として目に見えるものは
ゴールと勝利だけ、となっていく」

商売で数字になるのは、
売上げだけだ。

顧客の満足も喜びも、
数字として残るのは、
売上げだけだ。

「でも、それにとらわれて
”点を取りさえすればいい”ととらえるのは
僕は好きじゃない」

商売でも、
売上げさえ上げればいいと考えるのは、
私も好きではない。

「55歳でのあの1得点に、
惑わされることなく僕はやりたい」

「変わらず次のゴールへ、
今まで通り良い準備を。
特別でないことの積み重ねが、
特別なことにつながるというかね」

昨日このブログで書いた、
「基本の徹底」をカズも言う。

特別でないことの積み重ねが、
特別なことにつながる。

商売も同じだ。
そして仕事はみんな同じだ。

55歳得点を挙げた枚方戦も、
コーナーキックの直前に途中出場した。
そしてチームがペナルティキックを得て、
カズがゴールを決めた。

「「ほんの1プレー後だったら
PKの場面に僕はピッチにおらず、
得点もなかった」

「ちょっとしたボタンの掛け違えのように
いい具合でもたらされたゴール。
入るはずだったのに入らなかったゴール」

ピーター・ドラッカーが言う「予期せぬこと」。

「サッカーを生きていれば
どちらにも、何回も出くわすよ」

そしてワールドカップに一言。
「ワールドカップメンバーについても、
招集されておかしくないのに、
選ばれるはずだったのに、
選ばれなかった選手たちがいる」

「その悔しさを察すると、つらい。
でも、だからといってサッカーまでもが
終わるわけじゃないんだ」

「今、32歳の選手は4年後に36歳。
うらやましいよ、
僕より20歳も若いのだから」

カズは体が動く限りの現役、
いわば生涯現役を目指す。
「現役をやめるのは死ぬときかも」と言う。

私の仕事はカズのハードさに比べると、
ひどく楽なものだが、
それでも生涯現役のつもりだ。

「それぞれの次に向かってほしい。
返り咲くチャンスはいくらでもある。
W杯だけが日本代表でもないのだから」

カズは優しい。
一筋にサッカーを続けているから、
優しくなれたのだ。

「続けていってほしい。
形として現れた現実だけに、
惑わされずにね」

「いちばん大切なことは、
目に見えない」
星の王子様のひとこと。

私も拙著『コロナが時間を早める』の、
最後に使った。

そう、形として現れた現実や数字だけに、
惑わされてはいけない。

〈結城義晴〉

2022年11月04日(金曜日)

「うまくいっていない店」の「安上がりにやれること」

「セルコレポート」が届いた。IMG_67092
セルコグループの機関誌。

私の連載は、
「艱難は商人を鍛える」

今回は「第七回・日下静夫の正札販売」
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戦後の商業界運動の指導者。
岡山県津山市の故日下静夫さん。

「日本一の下駄屋」と称された。
その艱難の物語。

この連載は結構、時間をかけて書く。
手に入る方は読んでみてください。

今日は月刊商人舎11月号の責了日。
毎月毎月、深夜までかかるが、
今回は比較的順調な進行だった。

最後に山本恭広編集長と写真。
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満足げな顔つきです。IMG_67202
ご期待ください。

「ほぼ日刊イトイ新聞」の巻頭エッセイ。
糸井重里の「今日のダーリン」
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「うまくいってない店」を論じる。

「うまくいってない店というのを、
たくさん見た。
やっぱり地方都市をうろうろしていると、
よく見る」

「いかにもうまくいってないことが、
目に見えてしまう。
壊れた建物、むやみに多い張り紙、
整理されない什器、
曇ったガラス、汚れたままの床…。」

「それをだれかが
注意することもないのだろう」

糸井さんにこう言われると、
自分のことのように恥ずかしくなる。

でも、糸井さんは優しい。
「その店にはきっと
いくつかの事情があるのだ」

「人手がないとか、
お金がないとか、
やる気を失ったとか、
要するに儲かってないだとか」

「でも、同じくらいのきびしい条件のなかでも、
わるくない感じの店だってある」

「どこがちがうのか、どうすればいいのか」

そこで門外漢ではあるけれど、
糸井さんが考えてくれた。

「無料、あるいは
安上がりにやれることを、
するかしないか」

ん~、安上がりでやれること、か。

「客の来ないひまな時間が
たっぷりあるのだから、
それを修理や掃除にあてても、
おそらく無料なのだ」

そこで伊藤雅俊さんを思い浮かべる。
イトーヨーカ堂創業者。
伊藤雅俊
「お客さまは来てくださらないもの」
そう思って、ひたすら誠実に商売をする。

糸井さんの思いついたことは、
伊藤さんに通じる。

「政治がわるいも経済が無策だも
言っててもいいが、
店の掃除をするのはじぶんの仕事なのだし、
お客がくるように考えたり
動いたりするのもそうだ」

「昔から、よく先生やら親やらが、
“挨拶をちゃんとしなさい、
清潔を守りなさい、
謙虚でありなさい”と
説教をしてくれてたけれど、
その理由が、ものすごく
よくわかるようになった」

「それは、
ものすごく安いコスト(ほぼ無料)で、
いろんなことを
うまくいかせる方法だったのだ」

これは「基本の徹底」である。

「”あとは自由でいいから”と付けたら
もっと理解できる」

こちらは「変化への対応」である。
応用編である。

そう、イトーヨーカ堂の社是。
「基本の徹底と変化への対応」

糸井さん。
「商いをしている人だったら、
痛いほどわかると思うのだ」

「ほとんど無料でできるいくつかのことを、
素直にやる」

どんな仕事もどんな業務も、
実際は人時(マンアワー)がかかっている。
だから無料ではない。

しかし基本の徹底は、
毎日毎日繰り返すから、
商人ならば必ず熟練してくる。
そして短時間でできるようになる。

野球選手ならば、
キャッチボールが当たり前にできるように、
サッカー選手なら、
ドリブルやパスは楽にできるように、
商売や仕事の基本は、
どんな商人もできるようになる。

しかし、
プロ野球選手のキャッチボールはすごい。
プロサッカー選手のドリブルやパスも神業だ。

3Sの「整理・整頓・清掃」、
あるいは5Sの「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」。

これが自然にできる。
神業のようにできる。

それが基本のプロだ。

糸井さん。
「これが、人ならモテちゃうし
店なら儲かっちゃう秘法だと、
ぼくもいままで
わかってなかったんだよなー」

「あ、じぶんが老人になってからわかる
“秘法”なのか⁉」

謙虚だなぁ。
糸井さんは。

最後に自分の言説が説教臭いと気づいて、
「老人の説教だから許してくれ」と、
付け加えた。

しかしこれは老人の説教ではない。
商売の鉄則だ。

それがイトーヨーカ堂の社是であり、
セブン&アイ・ホールディングスの大原則だ。

あらためて糸井さんから指摘されて、
そんな店があることに、
ちょっと恥じ入りもしたが、
「基本の徹底」のプロになることは、
むしろ他の世界の人たちに誇れるものだ。

「複合危機」だとか「六重苦」だとか、
そんな時代だからこそ、
「基本のプロ」であるための日々の精進は、
大切である、貴重である。

月刊商人舎もそれをベースにしていたい。

糸井さんの指摘、
ありがたい。

〈結城義晴〉

2022年11月03日(木曜日)

「文化の日」の憲法の「結城義晴前文改訂」と第九条「篠田英朗改定」

文化の日。

1946年、日本国憲法が公布された日。
その日本国憲法は、
「平和」と「文化」を重視している。

だから「文化の日」となった。

その前文には、こう示されている。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、
人間相互の関係を支配する
崇高な理想を深く自覚するのであって、
平和を愛する諸国民の
公正と信義を信頼して、
われらの安全と生存を
保持しようと決意した」

「われらは平和を維持し、
専制と隷従、圧迫と偏狭を
地上から永遠に除去しようと努めている
国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う」

「われらは全世界の国民が、
ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和の内に生存する権利を
有することを確認する」

中学生のころだったか、
この全文を丸暗記した。

英語の関係代名詞のところを、
ほぼ直訳している。

だから日本語としては悪文だ。

だから私流に改訂すると、
「日本国民は、
恒久の平和を念願する。
人間相互の関係を支配する、
崇高な理想を深く自覚する」

「国際社会の諸国民は、

平和を愛するものである。
私たちは、
その公正と信義を信頼する」

「したがって私たちは、
私たち自身の安全と生存を、
私たち自身で保持しようと
決意するものである」

「国際社会は平和を維持し、
専制と隷従、圧迫と偏狭を
永遠に地上から除去しようと努めている。
私たちはその国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う」

「私たちは全世界の国民が、
ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和の内に生存する権利を有することを
確認する」

さらに、重要なのは、
日本国憲法の「第2章 戦争の放棄」である。
その「第9条」が議論の対象となっている。

「日本国民は、
正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、
永久にこれを放棄する」 

「前項の目的を達成するため、
陸海空軍その他の戦力
これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない」

国際政治学者の篠田英朗さんは、
『はじめての憲法』のなかで、
この第九条に以下の文面を加えて、
その部分の改憲をすればいい、と主張する。
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「前二項の規定は、
本条の目的にそった
軍隊を含む組織の活動を禁止しない」

私も篠田さんに賛成するものだ。

「戦争の放棄」は「原理」ではなく、
「目的」である。

これならば、
「自衛隊」という組織が正当化されて、
憲法に記される。

私の訂正した前文とも一致する。

やはり11月3日は、
「文化の日」ではなくて、
「平和の日」であるべきだった。

その文化の日。

いい天気、
快適な陽気。
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けれど私は、
自宅の自室にこもって、
原稿執筆。

いい日が、終わっていく。

私自身はこの自室の中で、
平和だ。

そして1日中、
少なくとも「文化」に資することをやっている。

それはそれで満足だ。

いい日だ。

朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。

〈結城義晴〉

2022年11月02日(水曜日)

55回食品産業功労賞と将棋A級順位戦「マスク反則負けの裁定」

1日中、原稿執筆と入稿。

月末と月初めは、
月刊商人舎の仕事に集中する。

山本恭広さんが、
編集長として商人舎に参加してから、
私はずいぶん楽になった。

有難い。

それでも考えること、書くことは、
続けていくし、絶対に手を抜かない。

このブログにも、
月刊商人舎に執筆していることを書けば、
楽に進むのだけれど、
そうはいかない。

1日中原稿を書いて、
家に帰ってからまた気持ちを改めて、
ブログを書く。

昨日の11月1日には、
ホテルニューオータニ東京で、
日本食糧新聞社主催の賞の贈呈式があった。
第55回食品産業功労賞、
第31回食品安全安心・環境貢献賞。

冒頭のあいさつは、
今野正義日本食糧新聞社会長。
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原稿に追われていて、
今年は参加することができなかった。

すみません。

食品産業功労賞は、
生産部門と技術部門、
流通・情報部門と外食部門がある。
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その流通・情報部門で6人のみなさんが受賞。

よく知る人ばかりだった。

三枝富博㈱イトーヨーカ堂取締役会長、
佐々木淳一㈱日本アクセス代表取締役社長、
森山透三菱食品㈱前代表取締役社長、
川田一光東京青果㈱代表取締役会長兼社長、
荒木章カナカン㈱代表取締役会長。
西田邦生㈱ジャパン・インフォレックス代表取締役社長。

小売業からは三枝さん。
現在、日本チェーンストア協会会長。

佐々木さん、森山さん、
そして荒木さんは食品卸売業、
川田さんは世界最大の青果市場の荷受け。

そして西田さんは、
世界最大の商品マスターを構築した。
情報部門の受賞にふさわしい。

食品安全安心・環境貢献賞は、
㈱ライフコーポレーションと、
ワタミ㈱、㈱クラダシ、㈱デリモ。
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ライフコーポレーションの授賞理由は、
「BIO-RAL」による健康増進への取組み。
森下留寿専務が出席して、
挨拶のスピーチをした。
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ワタミの授賞理由は、
資源循環に向けた食品リサイクルループの構築。
渡邉美樹会長兼社長が参加していた。

みなさん、
おめでとうございます。

世間は朝鮮半島の話題でもちきりだ。
韓国・ソウルの雑踏事故の話題、
北朝鮮の3発の弾道ミサイル発射。

それから将棋界では、
名人戦のA級順位戦の対局で、
佐藤天彦九段が反則負けと判定された事件。
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10月28日の対局者は、
佐藤天彦元名人と永瀬拓也王座。

佐藤は34歳の福岡出身の棋士。
永瀬は30歳の横浜出身のプロ。

私はどちらの出身地にも縁がある。

佐藤は18歳、永瀬は17歳でプロ棋士になった、
両者ともに天才だ。

佐藤はその趣味から「貴族」と渾名され、
永瀬はその勝負に徹する姿勢から「軍曹」と呼ばれる。

順位戦は両者の持ち時間6時間で、
対局は深夜に及ぶことが多い。

その夜の11時ごろ、
佐藤が約30分間ずつ2回、
マスクを外して盤に向かった。

その模様は、
リアルにテレ朝チャンネルで放送されていた。

2月に臨時対局規定が制定されていて、
マスク着用が義務づけられている。

佐藤の行為はこのルールに反するとして、
日本将棋連盟の鈴木大介常務理事から、
反則負けが言い渡された。

鈴木も20歳でプロ入りした48歳の九段。

最近は「見る将(みるしょう)」などと言われ、
自分で将棋は指さないが、
見るだけの将棋ファンがいる。

そんな人たちも含めて、
将棋界は騒然としている。

マスク規定は付け加えている。
判定に不服があれば1週間以内に提訴できる。

そこで佐藤九段はA4版4枚の提訴状を出した。
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ここでまた騒然。

成り行きはどうなるかわからない。

佐藤がかわいそう、という同情論。
ルールは守るもの、というある意味の正論。
マスクはもう必要ない、という暴論。
永瀬は卑怯だ、という中傷。
連盟が悪い、という体制批判。

YouTubeで私もこの瞬間を見た。
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しかし将棋の勝敗はあくまでも、
盤上で決められるべきである。
私はそう考えている。

ただ、それだけだ。

盤外作戦など、邪道である。

商売に勝ち負けはないが、
その優劣があるとすれば、
店頭で、顧客によって、
決められる。

同じことだ。

盤上以外のことは、
よく話し合って、
理解し合って、
解決してほしいものだ。

マスク着用は、
対局する棋士を守るためのルールだ。
その盤外ルールによって、
守るべき棋士が負けと判定されるのは、
おかしい。

外野からの声も、
必要ない。

商売も、
売れさえすれば何をしてもいい、
という考え方には、
反対したい。

〈結城義晴〉

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