結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年12月20日(土曜日)

「買うことの精神の浄化効果」と「寒さという資源」

「オフレコ」「Off the Record」
記録をOffにすること。
記録したことをなしにすること。

発したコメントや談話などを公表しないこと。
さらに非公式なものとすること。

首相官邸で安全保障政策を担当する関係者が、
「日本は核保有すべきだ」と記者団に言った。
「最後に自国を守るのは自国だ」とも説明した。
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「オフレコで」と念を押したのだと思う。

共同通信がそのオフレコを報道した。
名前は伏せたけれど内容は配信した。

メディア各社がそれを採用した。

誰でもオフレコの発言をすることはある。
それを聞くこともある。

だが今回は論外だ。
立場、内容、タイミング。

しかも多数の聞き手に対して、
オフレコはありえない。

意識の低さ、レベルの低劣さにあきれる。

核保有の手前の論議に、
「ニュークレアシェアリング(核共有)」がある。
NATOの核抑止政策で論議は有益だが、
日本にはふさわしくないと私は思う。

オフレコは、
それを発言する者、
それを聴取する者、
両者の信頼と識見の高さが必須となるのだ。

さて日経新聞夕刊のエッセイ。
まず「プロムナード」
翻訳家の村井理子さん。

タイトルは、
「執筆に行き詰まったら」

私も興味がある。

「どうしても(翻訳の)作業に行き詰まるときがある」

「どう頑張ったって、
1文字も捻(ひね)りだすことができないと、
両目の奥からじわじわと
涙が出てくるようなピンチが
週に1度程度、必ずやってくる」

そんなときに村井さんが行うこと。
「ほぼ100%の確率で復活し、
リフレッシュした気持ちで
作業を再スタートできる魔法が存在する」

それは何か。

「『散歩』である」

「なぁんだ、
そんなことかと思われたかもしれないが、
20年超のキャリアで、
執筆に行き詰まり、
散歩に出て復活できなかったことは、
たぶん一度もない。
それほどの成功率だ」

ん~、私は散歩はしない。
そんな時間がない。

「散歩をして何をするかというと、
ただただ、景色を見つつ、
せかせかと足を動かし、
途中、自動販売機でお茶を買い、
腰に手を当ておもむろに飲んで、
そして再び歩き出す」

「意識して深呼吸して、
両腕をぐるぐる回したり、腰を捻ったり、
第三者から見たら少し怪しいかもしれないが、
自分の体にエネルギーを注ぐ感じで、
とにかく、動く、呼吸する……
こんなことを意識して30分程度、
作業場から外に出て体を動かす」

「天気が悪くて外出できない場合は、
ベランダに出て深呼吸、
そして部屋のなかでストレッチ」

私はよくスクワットをする。IMG_9303

「とにかく、体を動かすことを心がける。
すると、切れていた心と頭のスイッチが再び入る」

「成功率は極めて高い。
散歩をして、体を動かして、
後悔したことなど一度もない」

もうひとつ、
心と頭のスイッチを入れる魔法。

「インターネットショッピングだ」

「なぁんだ、そんなことかと、
再び言われてしまいそうだが、
執筆が行き詰まり、
一行も書けなくなったら、
ずっと狙っていた商品を
とりあえず購入してしまう」

これはわかるし、
私もやることがある。

「クリックするだけで売買は成立だ」

「購入したら、こう考える。
『来月には支払いがあるから、
書かねばならない』」

「これだけで、いきなり
作業スピードが上がるから、
自分でも驚いてしまう」

モノを買うことは、
精神の浄化に役立つ。

モノを売ることは、
精神の浄化をお手伝いする。

食べること、飲むことも、
それに似ている。

食べるサービスの提供も、
精神の浄化に貢献する。

商売は人々の精神の浄化を促進している。
社会的機能と位置づけていいだろう。

もう一つのエッセイは「あすへの話題」

作家の多和田葉子さん。
「寒さという資源」
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「わたしは実は寒さに
魅せられているところがある」

「おそらく冬の長い土地から来た
ドストエフスキーが好きになった頃からだと思う」

多和田さんは高尚な精神の持ち主だ。

「わたしが一年のうちで
一番じっくり執筆できるのは
一番寒い1月である」

これは興味深い。

「意識が内へ内へと向かい、
素晴らしい言葉を見つけた時、
その言葉の温かさと光が身に沁(し)みる」

「寒いと空気が透き通って見え、
夏の濁りの中では見えなかったものが
見えてくるような気がする」

これは同感だ。

「寒いので腐食が進まず、
冬には古いアイデアもすぐには腐らないので
じっくり取り組むことができる」

そして結論。
「これからは寒さそのものを
地下資源のように
大切に考える時代が来るかもしれない」

温暖化の今、
寒さが資源となる。

いい視点だ。

テーマが資源となる。
故小野貴邦さんの指摘だ。

「寒さ資源」

ロシアなどが有利になることには、
ちょっと納得できないけれど、
自分では精々(せいぜい)
寒さを資源とすることにしよう。

〈結城義晴〉

2025年12月19日(金曜日)

ヤオコー年末会見の川野澄人さんと三菱食品新社長の伊藤和男さん

今年最後の商人舎入稿。
新年1月号をつくっている。

「今年」と書いてある原稿は、
「昨年」と直す。

来年になって読んでもらうのだから。

山本恭広編集長は途中で抜けて、
埼玉県の川越へ。

ヤオコー年末社長記者会見。
会場はヤオコーの「サポートセンター」。

ヤオコーは「本部」のことを、
店をサポートするセンターと位置づける。

川越駅から徒歩10分。yaoko-office

10月1日付けで、
「㈱ブルーゾーンホールディングス」設立。
ヤオコーをはじめグループ各社は、
ホールディングスの傘下となった。

サポートセンター入り口の社名。yaoko-office2
ブルーゾーンホールディングスの文字のほうが、
ヤオコーよりちょっと小さい。

会見では今年の進捗状況と来年の展望が語られる。

11月に行われた中間決算会見では、
2026年3月期の連結業績予想は、
営業収益7720億円で4.8%増、
営業利益338億円で1.2%増、
経常利益330億円で1.3%増。

通期では増収増益を見込む。

会場には約30人の記者が集まった。
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記者が順番に並んで、
まず川野社長の写真を撮る。yaoko-kawano1

冒頭、川野社長から、
営業の近況報告があった。

4月から11月までの月次数値は、
既存店売上高、客数、客単価が、
すべて前年同月を超えている。

米の単価上昇がトップラインを押し上げた。

「お客さまはより生活防衛的になった。
しかし一定の支持が得られて、
手応えを感じている」yaoko-kawano2

ヤオコーの戦略の一つ「南北政策」について、
「販促と品揃えを分けた施策を通じて、
ターゲットがより明確になってきた」

一方、昨年9月に開設した、
北の旗艦店「久喜吉葉店」は、
「まだモデル店といえるまで磨き込めていない」

南エリアのモデル店については、
既存店改装を通じてつくりあげる。

次年度について、大きな方針変更はない。
しかしマミーマートの生鮮市場TOP、
11月に関東進出を果たしたバローの名前を挙げて、
「生鮮強化と価格コンシャス対応を磨き込んでいく」。

月刊商人舎はそのあたりの企業も、
丁寧に報道している。

川野さんも読んでくれているのだろう。

さて商人舎流通SuperNews。

三菱食品news|
4/1付けで伊藤和男取締役が社長/京谷裕社長は相談役に就任

三菱食品㈱の社長が交代する。
2026年4月1日付。

伊藤和男取締役が代表取締役社長に昇格。
現在、同社の非常勤取締役、
三菱商事㈱執行役員食品流通・物流本部長。
1968年4月13日生まれの57歳。
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京谷裕社長は相談役となる。
京谷さんとは一度、対談したかった。
本当に残念だ。

伊藤和男さんは慶応義塾大学経済学部卒業。
ライフコーポレーションの岩崎高治社長の後輩。

㈱OICグループの髙木勇輔社長には先輩にあたる。

1991年4月に三菱商事入社。
最初から食品トレーディング部で食品畑。
2001年5月、イギリスのPrinces Limitedに出向。
2007年4月、同社のチェアマンとなった。
前任は岩崎高治さんだった。

2011年と2013年に私はヨーロッパを訪れて、
伊藤さんと会った。

万代ドライデイリー会のグループに向けて、
ヨーロッパ事情をレクチャーしてもらった。
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的確な情報といい分析だった。

伊藤さんは2018年3月に日本に戻ってきて、
2019年4月、三菱商事の食糧本部長。
2021年4月、グローバル食品本部長。
2024年4月、執行役員食品流通・物流本部長。
そしてその6月に三菱食品取締役に就任。

伊藤さんとは、対談を実現させたいものだ。

来年は卸売業の多くのトップと対談するつもりだ。
よろしくお願いします。

私は「商業の現代化」をテーマにしている。

その商業は小売業と卸売業で成り立つ。
だから卸売業も「近代化」の次に、
「現代化」を目指す。

1962年に林周二著『流通革命』で、
両者は交錯した。

「問屋無用論」なども、もてはやされた。

しかし林周二は将来「超卸売業」となって、
重要な社会的機能として繁栄すると論じた。
「トンネル口銭」に甘んじる問屋がなくなると言った。

その通りになった。

しかし「現代化」とは何か。
今のトップたちに直接聞いてみたい。

商人舎1月号でも、
それをテーマにした。

しかし1月号の特集は、
タイトルや切り口で、
まだ悩んでいる。

商人舎オフィスの近くの「晴れ坊主」
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最近発見した凄い居酒屋。
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ここで実にいいアイデアがひらめいた。
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楽しみにしてください。

来年を通したテーマは何か?
それをどう表現するか?

〈結城義晴〉

2025年12月18日(木曜日)

成城石井・イオンリテール・ニトリの「食衣住」三者三様Marketing

12月中旬としては暖かい。

家のそばの妙蓮寺境内のこぶしの木。
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題目の碑がある寺の辛夷(こぶし)かな
〈政岡子規〉

商人舎流通SuperNews。
今日は衣食住の商品開発のニュースが並んだ。

成城石井news|
今季のチョコカテゴリー最大250品ラインアップ

㈱成城石井のチョコレート。
今季は最大250品をラインアップする。
凄い、魅力的だ。
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自社輸入・自社加工など、
独自の仕組みを最大限に活かす。

今季のテーマは、
「多彩なフレーバー」
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菓子担当バイヤーが世界中を探し歩いて、
定番から非定番までを厳選して品揃えする。

新商品は30品。
チョコレートトリュフ、
一口サイズの板チョコレートなど、
他の食材の味わいや風味を組み合わせた。

自社輸入の商品。
「マテス ファンタジートリュフ
ラズベリーフレーバーマカロン」
971円/170g。
「ピュア ミルクチョコレートトリュフ
ベルジャンクッキークリーム」
1178円/148g。
「パティスイス」各種
1070円/80ℊなど。

結構な高額品も多い。

セントラルキッチンで小分け包装する商品。
「成城石井 チョコバラエティアソート BOX」
1610円/(小)154gなど。

年が明けた2026年1月9日(金)からは、
バレンタインデー向けに、
「成城石井推しチョコ★発見フェア」を開催。

異様な執着。
それだけ売れるのだろう。

凄い。

イオンリテールnews|
女子小中学生向けの新アパレル「Giselly」12/23誕生

イオンリテール(株)は、
「Giselly(ジゼリー)」をリリースする。
女子小中学生向けの新ファッションブランド。20251218_aeon-giselly

SNSでの拡散などの影響で、
日本の小中学生にも、
韓国トレンドが取り入れられている。

オーストラリアでは、
16歳未満のこどもに、
原則的にSNSを禁止する法律を成立させたが。

イオンのジゼリーは、
韓国のストリートファッションと、
日本のガールズトレンドのポップさを、
ミックスした。

「Genuine(本物)」
「Shiny(輝き)」
「Lovely(かわいさ)」

この3つの言葉を組み合わせた造語。

ボトムスはウエストゴム仕様、
紐によるサイズ調整など、
着やすさとデザインを両立させる。

通学や外出の時にも合わせやすいスタイル提案。

商品ラインアップは、
「ハート刺繍プルオーバーアンサンブル」
「ヴィンテージサテンカーゴパンツ」
「ショート丈ZIPフーディ 」
「クロスモチーフミニスカート」
など、18種類。

サイズは130~160cmを用意する。

イメージモデルには、
「あいみお」として活動している、
双子モデルのあいなさんとみおなさんを起用。

デジタルサイネージやSNSを通して、
情報を発信していく。

私には予測できない。
ヒットするのかどうか。
しかし開発の意欲は評価しよう。

ニトリnews|
工具不要「組合せ自在な収納ボックス」12上旬発売

㈱ニトリが新発売するのは、
「組合せ自在な収納ボックス」シリーズ。

部屋のスペースに合わせて、
自由に組み合わせができる。

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リビングや子供部屋では、
成長やライフスタイルの変化に合わせて、
収納方法を柔軟に変えたいというニーズが高まる。

収納家具は収納物を「見せる」ことで、
インテリアの一部として楽しむニーズもある。

このような要望に対して、
➀使う人が自由に組み合わせを選択できる
②どの部屋にもなじみやすいシンプルなデザイン
③組合せ自在な収納ボックス

シリーズは3種類。
3マスタイプ・6マスタイプ・16マスタイプ。

縦方向への積み重ねは最大4段まで可能。
各ボックス1個あたりの耐荷重は約2kg。
雑貨や本、おもちゃなど。
日常的によく使うアイテムの収納には、
十分な強度が確保されている。

成城石井、イオンリテール、ニトリ。

三者三様の商品開発。
12月商戦の中でのお披露目。

「バイイングはマーケティングである」
商人舎バイヤー研修会の結城義晴の主張。

そのMarketingに関して、
フィリップ・コトラーは言う。
「マーケティングの基本となる
最も重要な概念は、
人間のニーズである」

コトラーは続ける。
「市場の変化とは、本質的に、
顧客の行動の変化である」

三者三様のマーケティングの意欲は、
大いに評価しよう。

成果は未知数だ。

それもマーケティングである。

〈結城義晴〉

2025年12月17日(水曜日)

「民主主義に二度万歳」とチェーンストアの「正月休業」

朝からオンライン会議。

㈱True Dataの取締役会。
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ビッグデータマーケティングは今、
最もトレンディな「仕事」です。

だから多くの企業から、
アライアンスの申し込みがあります。

ありがとうございます。
精一杯、お応えします。

午前中、Teamsで会議をして、
それから商人舎オフィスに出社。

冬空。
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月刊商人舎1月号の原稿が上がってきている。
二人の筆者の原稿と、
編集部の取材記事。

それらを読んで、手直しをして、
タイトルをつける。
そしてデザイナーに入稿する。

夜まで集中して「仕事」した。
3本仕上げた。

順調だ、気分がいい。

夜の新田間川。
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寒い。
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さて朝日新聞「天声人語」

「民主主義には二度万歳をしよう」
20世紀のイギリスの作家、E・M・フォースター。
(1879年~1970年)

「私の信条」と題したエッセーに、
その理由を説明した。
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一度目は多様性を許すから。
二度目は批判を許すから。

「フォースターは民主主義を擁護しつつ、
その限界も認識せよと説いた」

最近の世界中の動向を見ていると、
その限界を強く感じさせられる。

フォースターは釘を刺す。
「ただし、二度で充分。
三度も喝采することはない」

文学ならばそれでいい。

コラムニスト。
「多様性と批判を許容し、
見解が異なっても議論を尽くすのは
民主主義の根幹だ」

問題はその先だ。

「フォースターの小説は、
価値観が異なる者たちが出会い、
わかり合えずに衝突、葛藤する描写が秀逸だ」

「二度にとどめた万歳は、
理想と現実を冷静に見据えて
たどりついた境地だったか」

会社や組織の民主主義は、
多様性を認め、批判を許しつつ、
結論を出し、実行される。

そしてそこに成果を求める。

成果がよく見えるところで使われるとき、
デモクラシーは最良の手段なのだと思う。

一方、「折々のことば」第3543回。
明日には目が見えなくなる
かもしれない
と思って、
世界を見てください。
〈ヘレン・ケラー〉

見えず、聞こえず、
当初は話すこともできなかった米国女性。

「もし3日間だけ視力が与えられたら、
まず自分を支えてくれた大切な人を見たい」

「翌日は人類のこれまでを見るため
博物館や劇場を」

「3日目は働く人を見るため大都会を訪ねたい」

三番目が、とくにいい。

『もしも3日間だけ目が見えたなら』から。
原題は「Three Days to See」
この直截的な英語の方を味わってください。
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「目が見えない私から、
目の見える宝物を与えられた皆さんへ」

「貴方が持っている
当たり前の機能を最大限に活用し、
全てのものに目を向け、
本当に価値のあるもの、
大切なものを見極めてください」

「 私は、全ての感覚の中でも、
自分の目で見る光景こそが、
人生に最大の喜びを与えてくれるものと
信じています」

ヘレン・ケラーさんが見たいもの。

第1は、大切な人。
第2は、人類の歴史。

第3が、働く人。
それも人が集まる大都会の。

人のために働くことの価値を、
ヘレンは訴えた。

商人舎特任研究員が送ってくれたのが、
チェーンの年始の営業日リスト。

元旦から営業するのが、
イオンとマックスバリュ各社。
イトーヨーカ堂。

報告にはないがハローズも、
年中無休だ。

1月1日休業で2日から営業するのが、
ヤオコー、マルエツ、いなげや。

1月2日まで休業するのが、
バローと関西フードマーケット。

一番多いのが三が日休業の会社。
ライフコーポレーション、サミット、オーケー、
関西では万代、アプロ。

そして1月4日まで休業するのが、
ロピア、コノミヤ、エイビイ。

私は「それぞれ」でいいと思う。

故上田惇生先生がドラッカーを読むとき、
「それぞれのドラッカー」をお薦めしていた。

ちなみに㈱商人舎は4日まで休業。
5日が仕事始めだ。

営業日に関しても、
意図をもって休業日を決め、
それを働く人たちに了解、納得してもらう。
お客様にもお知らせする。

それでいい。

自社らしさがあれば。
その自分らしさが、
想定した成果につながれば。
それもポジショニングである。

しかしヘレン・ケラーは、
目が見える3日のうちの最後の日に、
働く人を見たいと思う。

モノをつくる、
モノを運ぶ、
モノを売る。

これはみな、仕事だ。

「仕事」とは、
するべきこと、
しなければならないこと。

「働く」とは、
精出して仕事すること。
他人のために奔走すること。
効果を出すこと。

「働く」ことこそ、
人間の価値を示すものだ。

休むときは休む。
働くときは働く。

それを見ているのは、
気分がいいものだ。

成果が出ていればなお、
いい気分だろう。

〈結城義晴〉

2025年12月16日(火曜日)

ウォルマート「NYSEからNASDAQへ」の証券市場転換の意味

商人舎流通SuperNews。

ウォルマートnews|
株式上場先をニューヨーク証券取引所からNasdaqへ変更

ウォルマートのダグ・マクミロンCEO、
多分、最後の仕事だ。

12月9日(火)、株式上場先を変更した。
ニューヨーク証券取引所からナスダックへ。
前者はNYSE、後者はNASDAQ。
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アメリカの2大証券市場。

2025年5月末時点で、
両市場の時価総額は、
約62兆ドル。

1ドル150円で換算すると、
9300兆円。

凄い市場だ。

ウォルマートは1972年10月1日に、
ニューヨーク証券取引所に初上場した。

1株は16ドル50セントをつけた。

1945年の創業は、
ベンフランクリンの加盟店だった。
1962年にディスカウントストアを開発した。
「ウォルマート」の店名だった。

それから10年後に、
ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

ナスダックは1971年に設立された。
世界で初めて完全電子取引を採用した市場だった。

しかしまだまだ圧倒的にニューヨークが、
社会的権威と資金調達力を持っていた。
NYSEは1792年の設立だ。

だからサム・ウォルトンは迷わず、
NYSEに上場した。
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それから8年後にサムは、
店舗フォーマットを改革した。
「1980年代対策店舗」と呼んだ。

つまり1972年から8年間は、
株式市場から調達した資金をもとに、
ハイ&ローで成長した時期だった。

この成長をばねに1980年から、
エブリデーロープライス戦略に転換する。

ウォルマートは投資家たちの需要に応えるため、
何度も株式分割を実施した。

実際に2024年に12回も、
株式分割をしている。

イトーヨーカ堂時代の伊藤雅俊さんは、
同じように株式分割を繰り返して、
株主の期待に応えた。

株主の多くが従業員だったからでもある。
これもサムと同じだ。

サムは40年以上連続で、
株主への年間配当を増額した。

マクミロンCEOは、
その伝統のニューヨーク市場から、
ナスダックへの変更を決定して、
花道を飾る。

そして語る。
「人間主導でテクノロジーを活用する
オムニチャネル小売業者として、
ウォルマートがイノベーションと成長に
深くコミットしていることを反映しています」

上場変更の理由は一言で示せば、
オムニチャネルリテーラーとなったからだ。

「ナスダックのテクノロジーへの注力と、
デジタル変革を推進する企業への支援は、
ウォルマートの戦略ビジョンと
完全に一致しています」

「お客さま、会員さま、アソシエートたち、
そして株主の皆さまにとって、
スムーズで円滑な摩擦のない
未来を築き続ける上で、
ナスダックへの上場は
新たな章の始まりです」

「新たなチャプターを準備して、
私は去ります」

マクミロン(右)の誇らしげな顔が思い浮かぶ。
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ニューヨーク証券取引所には、
グローバル大企業が上場している。
ジョンソン&ジョンソンやコカ・コーラ、
日本のトヨタなどもニューヨーク市場組だ。

一方、ナスダック(NASDAQ)には、
GAFAを始め、名だたるIT企業が並ぶ。

12月時点の時価総額をランクすると、
1 エヌビディアNASDAQ
2 アップルNASDAQ
3 マイクロソフトNASDAQ
4 アマゾン・ドット・コムNASDAQ
5 アルファベットGoogl NASDAQ
6 アルファベットGoog NASDAQ
7 ブロードコムNASDAQ
8 テスラNASDAQ
9 メタ・プラットフォームズNASDAQ
10 イーライリリーNYSE

10位がやっとニューヨーク市場の薬品会社だ。

そして11位がウォルマート(NYSE⇒NASDAQ)。

以下、
12JPモルガン・チェースNYSE
13バークシャーハサウェイNYSE
14ビザNYSE
15オラクルNYSE
16ジョンソン・エンド・ジョンソンNYSE
17マスターカード NYSE
18エクソン・モービルNYSE
19ネットフリックスNASDAQ
20パランティア・テクノロジーズNASDAQ

24コストコ・ホールセールNASDAQ
25ホーム・デポNYSE
26プロクター・アンド・ギャンブルNYSE
30ユナイテッド・ヘルスNYSE

かつてのアメリカでは、
大企業の「オールドエコノミー」がNYSE、
新興企業の「ニューエコノミー」がNASDAQだった。

棲み分けがあった。

しかし、現在は、
いやウォルマートの変更以降は、
その垣根は全くなくなったと言っていい。

もちろんNASDAQは、
電子取引システムを活用する。
取引スピードが速く、コストが低い。

だから多くの投資家にとって魅力がある。

NASDAQは革新性がある。
常に新しいテクノロジーやビジネスモデルの企業を、
市場に招いている。

これがアメリカ経済のダイナミズムをつくっている。

NYSEの通常取引時間は、
午前9時30分から午後4時まで。
NASDAQはこの時間帯以外に、
プレマーケット(通常取引前)と、
アフターマーケット(通常取引後)もある。

この延長取引の時間帯に、
迅速な投資活動が進む。

ウォルマートのNASDAQへの移行は、
当然の流れであると考えられるし、
新しい企業への転換であるとも判断できる。

ダグ・マクミロンは、
サム・ウォルトンのつけた社名から、
「ストアーズ」を削除し、
サム・ウォルトンが果たした上場市場も、
NASDAQに変えた。

ウォルマートの新しい「章」が始まる。

〈結城義晴〉

2025年12月15日(月曜日)

服部真也日本アクセス社長との対談の「産業財Marketing」

今日は横浜商人舎オフィス。

ランチをしてから東京・大崎に向かった。

㈱日本アクセス本社を訪問。
JR大崎駅から徒歩10分の大崎ガーデンタワー。
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服部真也社長との対談。
16階の応接室。
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2023年4月に代表取締役社長に就任。
雪印アクセス時代から数えて六代目の社長。
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日本アクセスの2024年度売上高は2兆4188億円。
2022年3月期に三菱食品㈱を抜いて、
食品卸でトップになった。

かつて日本の食品卸は、
[日本橋・京橋・平和島]と呼ばれた。

日本橋の国分、京橋の明治屋、
そして平和島の菱食(現三菱食品)。

今はさしずめ「大崎」か。
その大崎の日本アクセスが首位となった。

もともとは雪印乳業系の卸売会社だった。
1993年に卸売業5社が経営統合して、
雪印アクセスとなった。

しかし2000年に雪印集団食中毒事件が起こった。

その試練を乗り越えて2004年、
社名は㈱日本アクセスと変わった。

当時の社長は三代目の吉野芳夫さん。
今でもお元気で、ときどきお会いする。

2006年に伊藤忠商事㈱が親会社となった。

2015年に四代目社長の田中茂治さんと対談した。

月刊商人舎12月号特集。
「流通革命論」の軛を断つ
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田中さんには卸売業界を代表して、
存分に語ってもらった。
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あれから10年か。

2016年に佐々木淳一さんが、
第五代社長に就任した。

佐々木さんとも一度、対談したかった。
互いに「やろう、やろう」と話し合っていた。

それが出来なかった。
申し訳ありません。

そして一昨年、服部さんが第六代社長に就任。

服部さんは1982年、伊藤忠商事に入社。
ずっと産業用繊維資材を専門としてきた。

「産業財マーケティング・マネジメント」という本がある。
700ページに及ぶ分厚い専門書だ。
マイケル・ハットとトーマス・スペイの共著。
立教大学大学院教授だった笠原英一さんが、
翻訳し解説している。
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笠原さんは私の元同僚で、
優れたマーケティング学者である。

服部さんは、
産業財マーケティングの実務に携わって、
それをずっとやっていたんだ。

私は話を聞きながら、
この本を思い浮かべ、そう思った。
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2019年2月に日本アクセスの執行役員になると、
それがすぐに活かされた。

チルドの流通、常温流通、冷凍流通、
そこに次世代型の新しい領域が加わっていく。

服部真也さんは、
マーケティングの人である。

フルラインの卸であるから、
強味の要冷蔵商品に限らず、
さまざまなカテゴリーに対して、
多様な施策が構想され、実行されている。

服部社長は今の消費をこう、表現した。
「二極化ではなく多極化」

その通り! 同感‼

次々に持論が展開され、
スリリングなインタビューだった。

第9次中期経営計画のキーワードの一つは、
「ソリューションプロバイダー」
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その意味や取り組みは1月号で語ってもらう。

楽しみにしてください。

さて朝日新聞「折々のことば」
第3541回、12月12日版。
What do you bring to the table?
〈熊谷アントニオ〉

2006年生まれの社会活動家・熊谷沙羅さん。
『私と家族と「川の図書館」』。
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ベネズエラ出身の父アントニオさんが、
よく口にするのが、
What do you bring to the table?”
「家族の食卓に何を持ってくる?」

それで食事時には話題を持ち寄るのが、
熊谷家の習慣となった。

「じっと聞いてもらえるなら、
発言にも責任を持たなくちゃと、
先に下調べもする」

「そんな習慣が幼い頃についた」
と、娘の沙羅さんは言う。

編著者の鷲田誠一さん。
「家族生活に
デモクラシーの原点があった」

いいなあ。

服部真也さんのマーケティングに、
これは通じるものがある。
私はそう思った。

〈結城義晴〉

2025年12月14日(日曜日)

浜田宏一の「アベノミクスのABE」とケインズの「あなたはどうか」

長野の善光寺から帰ってきたら、
横浜の妙蓮寺。

その竹垣。IMG_9147 (002)

氷雨が降って、木々も寒そう。IMG_9149 (002)

日経新聞の「大機小機」
このところの指摘は共感できる。

12月11日は「市場の反乱を招く前に」
コラムニストは希さん。

とてもいい。

「アベノミクスの師と呼ばれた浜田宏一氏が
高市早苗首相の経済政策を批判して、
日銀に利上げを求めたことが注目されている」

浜田宏一氏は東京大学名誉教授、
エール大学名誉教授。
第2次安倍晋三内閣官房参与。
89歳。
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「事実が変われば
私は考えを変える。
あなたはどうか」
ジョン・メイナード・ケインズの言葉。
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浜田教授もこの忠告を守っている。
だから今、高市経済政策を批判している。

コラムニスト。
「浜田氏の提言は経済学の教科書通りであり、
驚くことは何もない」

「アベノミクスが始まる頃、
日本経済の最大の問題はデフレであり、
産業界は円高を恐れていた」

2011年が1ドル79.7円。
2013年でも97.6円だった。

「だから金融緩和、財政出動という、
政策の方向感に関する異論はなかった」

「論点は政策金利がゼロにある中で、
これ以上の金融緩和に効果があるか否かだった」

日銀の黒田東彦前総裁のもとで、
量的緩和などの実験が試みられた。
結果は円安・株高などで、
デフレではない状態にはなったが、
2%のインフレターゲットとはほど遠かった。

「国債市場の機能不全など、
副作用も無視できなかった」

「現在の日本のマクロ経済環境は、
その頃とは大きく違っている」

2025年12月現在、155.8円。

「2%超のインフレが3年半以上続き、
人々は円安に伴う物価高に不満を募らせている」

「この状態で金融緩和を続け、
財政支出を膨らませれば、
円安・物価高に拍車をかけることは
明らかだろう」

正論だ。

「確かにインフレの結果、
政府債務残高の対名目GDPの比率は、
低下している」

「しかし、これは名目成長率が高まると、
直ちに税収が増える一方、
国債の金利負担は新発債の分しか増えない」

タイムラグがある。

「おまけにマクロの需要不足もほぼ解消した」

「だから、マクロ経済学の教科書に従えば、
今は財政赤字を抑制して、
金利を引き上げるべき時だということになる」

「ここで積極財政を唱えて、
経済対策の規模を21兆円超に膨らませた、
高市政権の経済政策には、
批判が高まってもおかしくない」

週明けの国会で決まってしまう補正予算は、
一般会計の総額で約18兆3000億円となる。

「筆者が知る限り、経済専門家の大多数は、
今年の経済対策に批判的な立場だ」

「それでも表立っての反対が目立たないのは、
高市首相への支持率が著しく高いことが
影響していよう」

期待は大きくても、
間違いは間違いだ。

コラムニスト。
「だが、外交問題などと違って、
経済政策には市場という審判がいる」

「ここ2カ月ほど円安が大きく進み、
国債の利回りが急上昇していることは、
金融市場が高市政権の財政運営に
強い不安を抱いている証左だ」

「首相には、市場の反乱を招く前に、
経済政策の弾力化を進めてほしいと願う」

実に正当な見解だ。

先述の浜田教授は2013年11月15日、
中央大学で講演して語っている。
「アベノミクスの三本の矢を、
大学の通知表にならって採点すると、
金融緩和はAプラス、財政政策はB
成長戦略の第三の矢はEだ」

あわせると「ABE」というダジャレ。

実際に第1の矢によるトリクルダウン効果が、
具体的に現れて国民生活を潤した。

トリクルダウンとは、
「富める者が富めば、
貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、
経済全体が良くなる」という、
シャンパンシャワーのような理論。

しかし第3の矢の成長戦略は、
Eの成績のごとく実行されなかった。
だからシャンパンは流れてこなかった。

それから12年、コロナ禍もあって、
富める者と貧しい者の格差は広がった。

現在の根本的な状況はここにある。

浜田教授も今年10月31日、
ニューズウィーク日本版Comに自ら書いている。
「SANAENOMICS AND ABENOMICS」
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「経済政策の舵取りとしては、
私は金融緩和でなく、むしろ、
円高を目指す金融引き締めへの転換を
高市政権には選択してほしいと思う」

安倍時代は円高、高市時代は円安。
真逆の経済の中にある。

「事実が変われば
私は考えを変える。
あなたはどうか」

もちろん私は、考えを変える。

〈結城義晴〉

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