結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月29日(火曜日)

被災地・陸前高田に入った看護師日記、および小売業の震災への対応と「共益」コンセプト

「JKTS」というタイトルのブログ。
東北関東大震災で被災した陸前高田に、
医療スタッフとして入ったひとりの女性看護師さん。
3月13日から23日までの10日間の日記。

昨夜2時ごろに読み始めて、
止められなくなって、
一気に最後まで読んだ。

「1、被災地へ。」から、
「14、From TOKYO」までの長編。

最後の章には29日13時現在で、
1589のコメントが寄せられている。

全国に感動を呼び起こし、
多くの人々に深く考えさせる。

是非、みなさんにも、
最後まで読んでほしい。

現地に入る前にリーダーナースの注意がある。
『想像以上に現場は壮絶。
甘い考えやボランティア精神の人はここでリタイアしてください。
現場ではどんな状況下においても絶対に泣かないこと。
私達は同情しに行くんじゃない。
看護、医療を提供しに行く』

そして被災地の真っただ中で、
時間を忘れて看護の仕事に従事。
その中で人々と交流。

仕事に打ち込み、
仕事を超える。

看護師さんの最後の言葉。

「お金を動かす人、
人々を活気づける人、
目の前の仕事を精一杯する人、
支援の形はそれぞれです」

「そして今だけでなく、
このトンネルを抜けるのは
長期戦であるということを念頭に」

「現実社会と非現実社会はいつだって隣り合わせ」

「いつかみんなの努力と流した涙が
報われるときが必ず来ますように」

是非是非、
最後まで読んでほしい。

今朝の日経新聞の国際欄。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授J. ハンターさん。
日本経済史が専門で、
過去の災害と経済の関係を研究している。

「歴史を振り返ると、
大きな自然災害や敗戦などに直面した日本は
強い復元力を示してきた。
数年内には、日本経済は、
もとの成長軌道にもどると確信している」

心強い「確信」だ。

日経新聞のコラム「一目均衡」。
編集委員の西條都夫さん。
コマツの野路国夫社長の社員に向けた言葉を紹介。
「震災の復旧、復興支援が
売上げや利益に優先します」

故倉本長治商業界主幹の『商売十訓』第一訓に通じる。
「損得より先に善悪を考えよう」

朝日新聞経済欄。
「被災地スーパー総力かけ再開」
ダイエー仙台店が被災2日後に店を開けた話。

震災後2週間の3月27日には、
ダイエー仙台店の前には買い物客の長い行列。

1995年の阪神大震災を経験したダイエーの動きが素早かった。
創業者の中内功さんが存命で、陣頭指揮を執った。
その時の経験で翌1996年にできた「地震対策マニュアル」。
それが今回、大いに活きた。

3月11日、東京江東区のダイエー本社。
「震災発生から約40分後、4階の食堂に対策本部ができた」

被災状況の報告が入ると、
対策本部スタッフはA4判のマニュアルに聞き取り情報を書き込む。

「スーパーはライフライン」として営業再開の方針が決まる。

12日夕方、人事部の3人が名古屋へ。
翌朝、飛行機で新潟に入り、
レンタカーで仙台へ。

13日中にチャーターバスで60人の応援社員が到着。
店内で寝泊まりしながら売場づくりし、顧客の誘導をした。

商品に関しては12日に千葉のセンターから、
まず水やカップめんなどをトラック配送。
13日には、食品と日用雑貨売り場をオープンさせた。

ダイエーに限らないと思う。

イオンもセブン&アイ・ホールディングスも、
ヨークベニマルも、
マルトやマイヤも、
そして中小の小売業も、
こういった店舗を開ける努力を、
素早く始め、遂行した。

仕事に打ち込む。
そしてその仕事の領域を超えて、
人間としてのあり方を知る。

女性看護師さんも、
ダイエー仙台店の人々も、
大きなものを得た。

これこそ、生きる糧となるものだと思う。

さて東北関東大震災前の2月の業態別販売実績が、
次々に発表されている。

日本百貨店協会からは、
2月の「全国百貨店売上高概況」
調査対象90社・258店舗。
売上総額は前年同月比0.7%増の約4332億円。
これは4カ月ぶりのプラス。

商品別の売上高伸び率を高い順に見ると、
家庭用品 229億 前年同月比プラス3.2%、
身のまわり品 513億 プラス2.5%、
雑貨 627億 マイナス2.2%、
食料品 1277億 プラス0.9%、
衣料品 1418億 プラス0.5%。

一方、日本フランチャイズチェーン協会からは、
「コンビニエンスストア統計調査月報」。
調査対象は大手コンビニチェーン10社。

2月の既存店売上高は5699億円で、
前年同月比プラス6.5%。
こちらは相変わらず好調を維持。
来店客数は9億5891万人で、プラス2.0%。
売上高、客数ともに4カ月連続のプラス。

平均客単価は594.4円で、プラス4.3%。
これも3カ月連続のプラスとなった。

全店の売上高は6207億で、プラス8.7%、
来店客数は10億3257万人で、プラス3.6%増、
平均客単価は601.2円で、プラス4.9%。

引き続き、たばこが金額ベースで前年を大きく上回るほか、
デザートや惣菜など日配食品も好調だった。

そして、3協会合同のスーパーマーケット販売統計発表。
先週3月25日、日本橋の日本スーパーマーケット協会で行われた。

まずはじめに、震災の被害にあわれた方々へ、
会場内の全員で黙とうを捧げた。
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通常は統計発表の後に、
ゲストスピーカーによる販売動向の発表があるが、
今月は東北関東大震災の発生を受け、
3協会の副会長、専務理事が一同に集結。
新日本スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長(真ん中)、
日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事(右)、
オール日本スーパーマーケット協会の松本光雄専務理事(左)。
20110326120716.jpg

日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事から、
2月の販売実績速報値が発表された。

総売上高は昨対プラス2.7%
7058億3924万円。

食品合計はプラス3.1%の6119億2767万円、
生鮮3部門はプラス3.1%、2235億6452万円。
青果は良かった。プラス5.7%で905億5754万円。
水産はプラス0.7%で、632億1619万円、
畜産はプラス2.2%の697億9079万円、
惣菜はプラス4.3%で622億5815万円、
一般食品・他はプラス2.9%で、3261億0500万円。

そして非食品合計はプラス1.0%で、939億1157万円。

「2月の雪が売上げに貢献した。
雪と台風は食品スーパーマーケットに強く、
その前後に必ず山ができる」

「寒くなったため、鍋商材は価格の張るものが動いた。
節分やバレンタインなどのイベントへの取組み、
とくに節分の恵方巻が前年を大きく上回った」

「また、新興国の需要増加による、
コーヒー、小麦などの値上げも売上げを後押しした。
結果、2月度はたいへん良い成績を残すことができた」

「ただ、正直なところ、
この2月度の263社の実績数値を集計するのに、
非常に苦労をした。
(地震のあった)3月11日以降、
連絡がなかなか取れない企業もあった。
昨日やっと最後の1社と連絡が取れ、
なんとか、一通りの情報を入手することができた」

景況感調査については、
震災前と震災後の回収サンプルの反応が異なるため、
前後での数値の比較を行った。

今後2~3カ月の売上判断の見通しは、
北海道・東北地方以外、すべての地域で、
震災被災企業の数値が下がる。
客単価に関しては、
北海道・東北、関東は上がる。

次に震災発生後の各協会の対応について、
それぞれの協会から発表があった。

まず大塚専務理事。
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日本スーパーマーケット協会の
会員企業1社を例に挙げて説明。

期末を前に3月1日からチラシや還元セールを行っていたので、
既存昨比は101.2%と伸ばしていた。
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しかし震災の日は、売上げがガクンと落ち込んだ。
翌12~14日はいわゆる、「震災特需」。
15日以降は、商品がなくなったのか、
落ち着きを取り戻したのか、
いつもとあまり変わらず推移するようになった。

震災後4日間の動向として、
一番売れたのが乾電池や、
トイレットペーパー、ティッシュなどの住居関連商品。
また、加工食品・菓子類などの保存食。
日配品に関しては、パンや乳製品、納豆、豆腐などは、
ずっと欠品状態が続いているため、
POSデータ上のズレがあり、正確ではない。

放射能問題がでてきた、ここ数日の状況としては、
野菜部門は売上げは変わっていない。
葉物の売上げは半分くらいになっているが、
他の野菜にシフトしている。

水に関しては現場でも混乱が続いている。
通常8万ケース在庫している企業(中堅より少し小さいクラス)は
一晩にしてすべての在庫が動いてしまった。
あるスーパーマーケットは通常1カ月2000ケースなのに、
昨日いきなり2万ケースの発注があった。

関東は東北からの物流が多いので、
しばらくはタイトな状況が続くだろう。

特に牛乳は北海道からの生乳が日立港に入港できないため、
まず関東に入れてから、製造工場に戻すなど、
時間がかかっている。
さらには計画停電のため、
殺菌に通常より時間がかかってしまっていることも、
牛乳の品薄状態が続いている原因のようだ。

3月17日、流通3団体で、
「スーパーマーケット東日本大震災対策本部」を設置。
当面の活動として、まずは会員企業に対する募金活動を、
それぞれの協会を通して要請した。
また会員企業の負担を減らすため、
情報や行政への要望をとりまとめ、
3協会で足並みをそろえる。

オール日本スーパーマーケット協会の松本光雄専務理事。
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「震災後、どの企業も即営業を再開するために、
どんな状況下でも可能な限り最大限の努力をしていた。
スーパーマーケットの本来の役割を自覚して、行動していた。
これには改めて、各企業とも、すごいと思った」

先日、状況把握のため、
AJSのメンバーで気仙沼に入った。
実質滞在したのは3時間くらいだったが、
意外とスムーズに入ることができた。

津波が来た場所と来なかった場所で、
被害の差が目に見えて大きかった。
地元のスーパーマーケットで、
2店舗ともやられてしまったところもある。

会員企業では、本部が流されてしまったり、
店舗が損壊してしまった企業もあるが、
営業している店舗では、
精肉や青果がだいぶ揃っていた。
パンも納品されていた。

ただ、カップ麺、水、生理用品、コンロは不足していた。

コプロでは被害状況を3区分に別け、
優先順位をつけて配給している。

新日本スーパーマーケット協会からは、
増井徳太郎副会長。

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15日に行われた新日本スーパーマーケット協会の通常総会で、
流通3団体のトップ会議をした。
3団体で協力できることがあるのではないかという話し合い。

これから復興に何年かかるか想像もできないが、最後まで、
被害を受けた方たちに目を向けて行こうと決意した。

福島の原発問題によって夏場の電力問題や計画停電が危惧される。
これらに関する要望を3団体でまとめて、行政に出していく。

計画停電に関し、現場から上がっている声は、
・予定が立たない
・毎日時間が変わる
・計画されていても、やらないこともある
(停電が行われないと、急きょパートさんなどを呼ばなくてはいけない)
・日中の時間帯の停電が一番つらい
(受発注のトラブル、納品伝票の訂正、
POSの起動に時間がかかる、温度管理が大変)

これらをまとめ、
とにかく予定をしっかり立てられるように、
停電を行ってほしいという要望を東京電力に出していく。

以上がスーパーマーケット3協会からの現場報告と対応策。

ハーバード大学のマイケル・ポーター教授。
最近、提唱しているのが「共益」。
英語で「Shared Value」。
先述の「一目均衡」で西條さんが触れている。

「企業は社会から遊離したまま、
利益を生み出すことはできない」
社会問題の解決に、
「企業自ら取り組むことで、
持続的な富の創造やイノベーションが可能になる」

スーパーマーケットは社会的存在である。
ライフラインを守る役割を有する。

そのうえで、いま、社会のために、
企業を超えて協力し合うことが必須である。

「共益」の意義が、
ビンビンと感じられる。

<結城義晴>


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