結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年01月06日(水曜日)

長谷部恭男・杉田敦両教授の多元性理論と伊藤元重教授の三つの生き残り法

今朝の新聞各紙は充実している。
正月休みが、完全に明けたことを証明している。

全紙一面トップの藤井裕久財務大臣の辞意表明は、
鳩山内閣の波乱万丈を予感させるが、
それ以外のニュースやインタビュー、
対談、コラムなどに、見逃せない記事が並んだ。
2010年の今を読み取って、
時代を考えるのに好適の教材がそろった。

朝日新聞では二人の学者が対談している。
長谷部恭男東京大学法学部教授は憲法学者。
杉田敦法政大学法学部教授は政治学者。
「政治主導と民主主義の行方」がタイトル。  

杉田さんが言う。
「今の主流は、一元的な権力観です」  
民主党や鳩山・小沢のことを示している。

「権力一元化の論理は歴史的に見ても危険がある。
権力が偏在して政治が硬直化する恐れがあるからです」

「自由民主主義体制は、
権力一元化の論理と、
それを制約する論理の合わせ技で、
なんとか維持されてきました」  

「私は人々の多様な意見を代表するために、
権力は常に多元性を持ち続けるべきだと思っています」

その通りだ。

長谷部さんも続ける。
「憲法に権力一元化の直接の手掛かりはありません。
憲法が定めているのは多元的な統治システムです」  

「議会が制定した法律について裁判所が憲法違反だという。
それが長期的には国民の利益になるという考え方」

両者そろって、結論付ける。
「政治改革以来の民主主義のとらえ方は問題を残している」
「日本の民主主義は、まだ過渡期にある」

私は議論を、いつも企業経営にスライドさせる癖がある。
企業経営にとって、権力一元化は果たして有益なのか。
企業経営にとって、民主主義は果たして有効なのか。  

この論議の中で交わされたこと。
「権力一元化の論理」と、
それを「制約する論理」の「合わせ技」。  

これで「なんとかやってきた」政治体制の、
「なんとか」のリアリティこそ、
企業経営なのだと思う。

企業内における経営者と労働組合の「合わせ技」など、
その好例だろう。

ただし、優れた経営者が必要であると同時に、
賢い労働組合が不可欠だ。

権力一元化の論理も、
それを制約する論理も、
どちらも論理的でなければいけない。

そしてその合わせ技で、
「なんとか」やっていくのが、
2010年だとも思う。

ただし、経営者と労働組合の企業経営のメカニズムが、
政治体制とダブる時代は終わった。

つまり、資本家と労働者との「対立構造」では、
問題の根本解決は図れないことが判明した。

それでも、「権力一元化の論理」と「制約を与える論理」、
あるいはさらに進めて多元的なシステムや組織の多元性は、
もっともっと検討されるべきだろう。

ルネッサンスの政治学者マキアベッリなど、
「良いカリスマ」の存在こそ、
もっとも優れた統治システムだと断言する。
チェーザレ・ボルジアを指している。

マキアベッリも企業経営にこそ、
当てはめてとらえるべき教材だろう。

中小企業においては、
マキアベッリの『君主論』は有益だからだ。

しかし現代国家や巨大企業では、
統治システムの多元性は、必須のものだと思う。

今朝の新聞からもう一つ。
日経MJが、よい。
その中で、伊藤元重東京大学大学院教授の連載コラム。
「ニュースな見方」  
伊藤さんの持論がわかりやすく展開される。

企業存続の三つの条件。
①もっとがんばる
②他の企業とちがうことをする
③競争相手が消滅するように仕組む  

わかりやす過ぎて、疑いたくなるくらいだが、
これは一つの重要な考え方。
伊藤さんは、言う。
「すべての企業がこのどれかに当てはまる」

①の「もっとがんばる」は、
「日本経済が右肩上がりの時」の常とう手段。
そして中国などアジア市場では、
現在もこのパターンが生きる。、

③のパターンは、今年、国内で先行する。
「過剰供給、過剰企業の状況」の多くの分野では、
「いかに早く競争相手に退出してもらうのか、
あるいは戦略的に合併・吸収・リストラなどを断行して、
産業全体として適正規模を実現するかが鍵だ」
伊藤さんは極めてクールだ。

もっとも期待されるのが②のパターン。
「新たな分野で新規需要を切り開く企業」
その登場を、伊藤さんは希求する。

最後に伊藤さんが強調すること。
「個々の企業が3つのどれかを徹底して行う必要がある」

まあ、大抵の企業は、
①と②を徹底して実践・実行することである。

すなわち、
もっと頑張れ、
他と違いを出せ。  

私の言葉にすれば、
「徹底する」
すなわち「詳細に、厳密に、継続する」  
そして「差異が価値を生む」  

この時、同時に組織の多元性を、
是非とも体内化してほしいものだ。

<結城義晴>  

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