結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年07月21日(水曜日)

訃報 渥美俊一先生ご逝去/イオンが「お布施」に正札販売導入

【訃報】

渥美俊一先生が逝去されました。
享年83歳。

日本商業の近代化と流通業・サービス業の
チェーンストアづくりに一生を捧げられ、
イオンやセブン&アイ・ホールディングスに代表される
企業群を育てあげられました。

心から哀悼の意を表し、
謹んでご冥福をお祈りいたします。

*********************************************

毎月第4週には、小売業各協会から、
前の月の営業報告が発表される。

これは小売業界だけの問題ではなく、
消費傾向を読み解くカギとなっていて、
重要な数値。

先週末から今週初めにかけて、
6月の統計が発表された。

これで1月から6月までの上半期のデータが揃ったことになる。
まず日本百貨店協会発表。
調査対象は92社・265店舗。
総売上高は前年同月比マイナス6.0%。
28カ月連続の減少。

大部門では、
食品がマイナス8.4%、
衣料品はマイナス5.8%。

プラスとなったのは商品券10.1%、
家電もわずかながらプラス0.1%。

大幅減少カテゴリーは、
その他食料品マイナス13.1%、
家具マイナス11.3%、
その他衣料品マイナス10.9%。

百貨店は全体の数字で把握する業態ではなくなりつつある。
どんな立地のどんな規模のどの企業の、
どの部門のどのカテゴリーのどの品目が、
どのように売られたから、
誰に、売れたのか。
そんなディテールが重要になってきた。

リテール・イズ・ディテール。
Retail is detail.
百貨店はまさに、そうなってきた。

衰退業態の特性である。
ただし何度も言うが、百貨店が滅びることはない。
繁盛する店の立地や規模がひどく限定されてくる。
それだけのこと。

一方、日本フランチャイズチェーン協会発表、
コンビニエンスストア10社の6月販売統計。

コンビニからトレンドを予測するには、
既存店の動向がポイントとなる。

全店ベース売上高は、前年同月比プラスの0.9%だったが、
既存店は相変わらずマイナス1.5%。
13カ月連続と1年以上も減少し続ける。

客数はプラスの0.04%で、
これは1年ぶり、12カ月ぶりに増加。
平均客単価はマイナス1.6%、
コンビニの客単価549.8円。
19カ月連続減少。

コンビニも完全に、踊り場を迎え、
成熟期に突入している。

だからこそコンビニ統計には、
現在の日本の消費が色濃く反映される。

その基準となる傾向は、
売上高はマイナスの1.5%、
客数はプラスの0.04%、
客単価マイナス1.6%。

すべての小売業が、
すべての業態が、
これをひとつの基準と考えて、
自らの状態をはかればいい。

さて『週刊ポスト』に面白い記事。
「仏教界騒然!お布施定額制は善か悪か」
表紙には「イオン参入でタブーの扉が開いた」
キャッチコピーがある。

dscn5603.JPG

私は週刊誌は買ったことがないが、
思わずコンビニに飛び込んで買ってしまった。

昨2009年9月にイオンは、
葬儀ビジネスに参入した。

イオンカードの会員向けの「僧侶紹介サービス」。
菩提寺を持たない顧客のためのサービスだが、
ここで「お布施」の目安額を明示した。

通夜や葬儀などの読経と戒名のセット金額。
段階制で「信士・信女」の普通戒名は25万円、
「居士・大姉」は40万円、
「院号居士・大姉」は55万円。

「主要8宗派の寺院と提携し、約600の寺を紹介」しつつ、
価格体系を明示した。

葬儀ビジネス版「正札販売」
葬祭ビジネス版エブリデー・ロープライス。

利用者からは、「分かりやすい」と大好評。
ただし、当然ながら仏教界からは、大ブーイング。

「布施とは本来、相手への感謝を示すもの」
「施しをするという意味で、労働の対価ではない」
「布施はあくまでも贈与。贈与する側が額面を決める」
「布施が価格になることは宗教そのものの危機」

dscn5602-3.jpg

イオンリテール・イオンライフ事業部の広原章隆事業部長が、
生真面目に率直にインタビューに答えている。
「葬儀事業を行う中で、お客様から、
『お布施は一体いくらだったらいいの?』
『目安だけでも教えてほしい』という声がものすごく多かった。
そういうお客様の問い合わせに対し、
何かできることはないかと始めました」

「お布施はだれが見ても宗教行為であり、
本来はそのお方のお気持ちで決めていただくもの。
だから、あくまでもパンフレットなどには、
目安ですと但し書きをしているのです」

イオンのこの姿勢、まことに正しい。

お客は宗教行為といえども、
お金がかかることには合理的な基準を求めている。
自分の判断のための社会的な基準。

それを知らせずして、
「闇市商法」のごとき「宗教行為」がはびこっていたら、
「正札販売運動」に駆逐される。

もちろん檀家制度の中で、
そういった目安が明らかになっていれば、
問題はまったくない。

「闇市商法」は「正札販売」に打倒される。
これはわれわれ商業者がよく知る事実。
イオンがここに一石を投じたことは、
痛快。

もちろんイオンは、「宗教行為」の領域を侵害しない姿勢を、
誠実に丁寧に示している。
「価格破壊」などと、
気負ったところもない。

それがまた痛快。

これならば、
仏さまの罰が当たることも、
あるまい。

<結城義晴>

[追伸]
日本的な話題を残しつつ、
私は今日からニューヨーク州へ。
コーネル大学RMPジャパン第二期生の卒業旅行。

明日から、ブログ公開時間が、
遅くなることをお許しいただきたい。

こんなブログを書いたからといって、
仏さまの罰が当らないところへ遁走するわけではない。

あくまでも卒業旅行。
今年1年の総決算となる。

ニューヨーク州、マンハッタン周辺の商業最新報告にも、
ご期待いただきたい。

[追伸2]
商人舎ホームページの「おススメ新着ブログ」。
「人を育むストア」
小林清泰の環境デザイン研究

新原稿が届きました。
today!となっています。

第二回目は「walmartロゴマーク変更の意味」。
真の専門家の原稿は、面白い。

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